表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/14

12 勇者5

 「紹介するよ。この3人が僕の協力者だ」

 レンブラントは開け放った門の奥、死体の山に佇む3人に手を向けた。

 イリーナはただ立ち尽くしている。漂う血の匂いと視覚的ショックでそれに反応することが出来なかった。

 「一番右のおっさん臭い青年がバッカス。その左の女の子がヘーゼル。それで一番左の暗ーい少年がルカ。みんなまだ子供だけど仲良くしてあげてね」

 おどけた口調で笑う。

 「父様ひどーい!子供だなんて、私はもう大人ですー」

 その言葉に、真ん中に立っている、髪を左右で結んだ少女がレンブラントにつっかかる。

 自分の目がおかしくなったのかと思った。死体の山で笑いあう子供たちなんて性質の悪い笑い話だ。

 「あはは。ごめんごめんそうだね。ヘーゼルはもう大人だね。あ、イリーナ。ちなみに父様って言うのはあだ名みたいなもので、別に本当の親子って訳じゃないよ」

 うるさいだまれ。きいてもいないことをべらべらと。

 イリーナの顔色はこれ以上は無いと言うほど青ざめていた。

 「皆にも紹介しておくけどこの奇麗な人はイリーナって言ってね、僕たちの新しい仲間だ」

 漂う死臭の中で、この四人はまるで草原で語り合うかのように笑っている。

 「へぇ。でもその人魔族なんじゃないの?」

 背の高いほうの男、バッカスが不思議そうに訊く。死肉を踏み潰しながら。

 「あぁ。そうだよ。でもそんな事気にしちゃ駄目だよせっかく協力してくれるって言うんだし、差別は悪いことだ」

 そう言いながらレンブラントは足元に転がっていた塊・・・腕、を死体の山の方へ蹴り飛ばす。

 「それにしてもまた派手にやったね。ゴミを一箇所に集めるのは良いけどこの後どうするの?」

 「燃やします」

 背の低いほうの少年。ルカが小さく、小さく呟いた。


 もう限界だった。まるで悪夢、血の匂いのせいでまともな思考が出来ない。いや、まともじゃないのはこいつらの方か

 イリーナはそこで目を閉じ意識を手放した。





 「それで、この人結局なんなの父様」

 イリーナを担いでいるレンブラントに向かって、ヘーゼルは不機嫌そうに問い詰める。

 「何って・・・さっき言っただろ。新しい仲間だ」

 レンブラントはぶっきら棒に。

 「新しい仲間、ね。だったら今のは酷かったと思いますよ師匠。まるで狂人ですよあの言動は、死体をあんな風に扱って・・・」

 担がれているイリーナを含め今この5人は、この街に一つしかない宿へ向かっている。

 あたりはもう暗く、月明かりだけが道を照らしている。

 「まぁ、軽いジャブみたいなもんだ。あんまり気にしなくて良い。それにあんなところに死体集めたのはお前らだろ。アレがなきゃあんな事はしなかったよ」

 バッカスの非難に、レンブラントは小さく笑った。

 「ジャブ、ね。まぁどういう事情があるかは知らないけど、あたしはこいつ好きになれそうにない」

 ヘーゼルはイリーナの顔を軽くはたいた。

 「こらこら止めなさい。ヘーゼル。そんな乱暴な子に育ってお兄ちゃん悲しいぞ」

 「黙れバッカス。次妹扱いしたらその両目潰すから」

 ヘーゼルがバッカスを見上げた。その目は左右違う色で、不思議と暗かった。

 「お前その目どうした」

 『いつも』と違うヘーゼルの目にレンブラントは気づく。

 「えへへ、奪っちゃった♪格好良いでしょ」

 「止めとけよ汚いから・・・。それに取り込んでないから不気味だし腐るぞ」

 「ん〜・・・わかってないなぁ父様、そこが良いんじゃない」

 「腐るのが良いのか」

 「違うわよ不気味なのが却って可愛いって言ってるの・・・・ああもう良いや。分からず屋だね父様、外せば良いんでしょ」

 ヘーゼルは顔を下に向け、手で目を覆い頭を振った。

 ぽろっと目が、取れた。

 「ちゃんと眼帯しとけよ。不気味だから」

 レンブラントは特に驚かない。

 実はヘーゼルは、10年も前に両方の目を失っている。今まではずっと眼帯をして過ごしていたが、飽き性のヘーゼルの事だ。目が欲しくなったんだろう。色々問題はあるが。

 そんな事を話していると、今まで一言も喋らなかったルカが、レンブラントの前に立ち、足を止めながら口を開いた。

 「勇者様。これからの事について、僕はまだ聞いていません」

 その声は無機質で。無感情で。無心だった。

 「魔王に会った後にどうするか決めると仰っておりましたが、もうお決めになられたのですか」

 暗い瞳が真っ直ぐ届く。

 「そう、俺も知りたいです。最近動いていなかったから体が鈍ってしまって・・・。戦うのなら早いところ始めたいです」

 バッカスは腰に差した剣に手を当てる。

 「ああ・・・。もう決めてる。・・・魔王は殺さない」

 「・・・何だ、じゃぁ俺達出番無いですね」

 残念そうに溜息をつくバッカスをレンブラントは右手で制す。

 「待て待て話は最後まで聞け、魔王は殺さない・・・が、魔王軍は邪魔だ。あの餓鬼には不必要、だから・・・この国に入り込んだ魔王軍は、早急に殲滅しろ」

 三人はその言葉にそれぞれ無表情に、楽しそうに、小さく笑い応えた。

 




 そしてこの日から3週間後、魔王は絶体絶命の窮地に立たされる事になる。

色々あって遅れました。すみません

そして悪魔の子登場、誰とは言わないけど。


っていうかバッカスのイメージが全然固まらない。

こいつ削っても良かったんじゃ・・・?いや駄目か。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ