表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/14

10 勇者4

「・・・・やっぱり開いてませんね」

 所は南の街目前。南の街の出入り口である巨大な門の前である。南の街はこの小さな首長国の街でも小さいほうで、最も国境に近いため真っ先に魔王軍に落とされた。もっともこの街を守っていた連合国軍も、守る必要を感じなかったのか戦わず逃げ出したらしいが。

 「どうするんですか勇者様。流石に正面から入るつもりはなかったんでしょうがこの街は外壁も高くて忍び込むのは無理ですよ。例えよじ登ってもすぐに見つかってしまうでしょうし・・・」

 イリーナが傍らのレンブラントに尋ねる。

 「もともと忍び込むつもりなんてないよ。ただ単に閉まっているのなら開けてもらえば良いだけさ」

 そう言いレンブラントは少し城壁に近づき懐から何かを取り出した。

 小さな笛だ。

 レンブラントはその笛に口をつけると、吹き始めた。

 ヒュー、ヒュー、ヒュー、と三度短く鋭い音がした。

 「うん。これで良し。後はちょっと待ってるだけで扉は開くよ」

 首だけ振り返り、笑顔を見せる。

 「?それってどういう・・・」

 ゾワッ・・・。

 「ひぃ!!?」

 瞬間、酷い悪寒を感じた。

 それはまるで、腹をすかせた狼の群れに放り出されたような恐怖感を伴ってイリーナを貫く。

 「な、何・・・?」

 幻聴だろうか、かすかな悲鳴が聞こえてくる。一人、また一人と誰かが誰かに殺される。そんな光景すら目に浮かぶ。

 肩を震わせるイリーナに気づいたレンブラントは怪訝な顔をして、

 「?どうしたんだい?寒いのかい?羽織るもの持ってるけど貸そうか?」

 懐を探りながら近づいてくる。

 「あ・・・大丈夫で、す。ちょっと眩暈が・・・」

 「そう?まぁここまで結構急いできたからね、今日はしっかり休みなよ」

 レンブラントと話をしている内、悪寒は嘘の様に消え去った。本当に短い間だったのだが、イリーナは冷や汗が止まらなかった。

 「それで、、、今の笛は一体・・・?」

 顔を少し引きつらせながらも笑顔でレンブラントに聞く。

 「ああ、ただの合図だよ。この町にいる仲間へのね」

 「そ、そうだったんですか。その方たちが門を開けてくださるのですね」

 「そう。この街にいる魔族を皆殺しにしてからね」


 一瞬。耳を疑った。

 「そ、そうなんです、か」

 動揺を悟られまいと懸命に笑顔を装うが、今度ばかりは自信が無かった。

 そんなイリーナを気にすることなくレンブラントは門に近づく。

 「ほら、鍵が開いたようだよ。今開けよう」

 レンブラントはその鉄で出来た巨大な扉をこんこんと叩くと、まるで自分の家の扉かのように押した。まるで現実味の無い話だが、たったそれだけで扉は開いてしまった。

 そしてそんな彼に目を奪われていたせいで


 

 門の向こうに現れた死体の山を直視してしまった。

次で過去編終わらせます。

その後も「勇者編」を書くかは未定。

普通に魔王編と混ぜちゃえばいい気がするんで。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ