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幕間 婚約指輪

本日は二話投稿します

クラン用の建物を探していた時、俺はとある店をたまたま見ていた


その時は何気なく通り過ぎたのだが、ドバイクス侯爵とシアに会い、建物も決まり、落ち着いた所でふと考えてしまった


そして・・・思い出してしまった


ある物を渡していなかったことを




俺は家に帰り、夕食も食べず、自己嫌悪に陥り落ち込んだ


はっきり言おう!俺は婚約者として、否!男として終わっていた


もうなんだろうね?申し訳なさでいっぱいですとも


婚約して1年未満だけど半年は過ぎてるんだよ


そして、そこまで気付かないって駄目だろ!




俺がここまで自分を責める理由


そう!それは未だに婚約指輪を渡してないからだ!


とある店とは貴金属店で、ふと考えたら、婚約指輪を渡してないどころか買ってもいない事に気付いたのだ!


うん、威張って言う事じゃないね


ごめんなさい!すいません!ごめんなさい!


心の中で謝りつつ、明日は指輪を買いに行こうと決意した





翌日、貴金属店の前に来てある事に気付き呟く




「・・・・・・皆の指輪のサイズ知らねぇ」




早くも撃沈した俺は店の前で四つん這いになり敗北した




さてどうしようか?


四つん這いから復活して、どうしようか考えこむ


今はお昼前で、何人かの婚約者は間違いなく捕まらない




後、渡す順番もあるんだよな


この世界の指輪の渡し方だが、一番初めに正室へ渡す


次に側室へ序列順に渡していき、妾や愛人等だと特に決まりは無い


側室が子を産むと嫡室となるのだが、今は関係ないな




「(となると、1番初めはミリアに渡さないとな)」




ランシェス王国の貴族である俺は、本来ならばリリィを正室にしなければいけない


しかし、国家間や宗教関係の柵しがらみがある


なので、1教である神聖国のミリアを正室にする事が同盟会議で決まっている




次席はランシェスに気を使い、2妃がリリィ


竜王国王女ということで3妃がラナになった


ランシェス公爵令嬢ということでティアが4妃に


ランシェス王国侯爵家のシアが5妃に


同じく騎士爵家のリアが6妃に


平民のナユルが7妃となっている


爵位の関係もあり対外的にはこのような形になった


貴族とは本当に面倒な生き物である




さて、話は逸れたが問題の解決には至っていない


本当にどうしようか?・・・・・う~ん


・・・・・悩む事15分・・・・・


ずっと貴金属店の前にいたので不審がられたのか、衛兵が近寄って来て




「そこの君、店先で何をしている?」




職質されてしまった




「・・・ちょっと考え事を」




そう返し、顔を見た衛兵は、俺の正体に気付き、敬礼をする


あ~・・・衛兵さんの仕事増やしちゃったか


衛兵に「悪かったね」と告げ、立ち去ろうとすると




「実は・・この貴金属店の店員から通報されまして」




と言われた


どうやら裏口から通報された模様




「(通報されて怪しまれた以上、この店で買うのは無理か)」




衛兵に店側への事情説明を頼み、今度こそ店前を後にする


そのままブラブラと歩き(何処か他に貴金属店は無いかな?)と散策する


あまり意識したことも無い店なので記憶にないからな


シャミット商会にも顔を出してみるが




「指のサイズがわからないと、どうしようも・・・」




と言われ、これ以上は仕事の邪魔になると考えて店を後にする


仕方ない・・翌日にミリア達を誘って再び来るか


そう結論を出し、屋敷に帰ろうと歩いていると




「お、お待ちください!」




声を掛けられ、誰かに呼び止められる


「ん?」と振り向くと、髪がオールバックの男性がいた


歳は40後半位かな?背丈は190位でやせ型




「(はて?こんな男性が知り合いに居ただろうか?)」




記憶を辿るが覚えがない


しかし、覚えが無くて当たり前であった


彼は先程、衛兵に通報した店員のいる、貴金属店のオーナーだったのだから




「(この感じだと、何か文句でも言いに来たのかな?)」




と考えるも、直ぐに否定した


こういった考えに至るのが前世の部分で抜けきってない所だろう


商人とはいえ、相手は平民である


貴族に文句を言えば、最悪の場合は潰されかねない


だから、表立って文句を言う訳が無いのだ




それは見事に的を得ており、逆に謝罪されてしまった


通報したのは店員で




「クビにするから穏便にしていただけませんか?」




とまで言われる始末


「(流石にやり過ぎだな)」と思った俺は、貴族らしくしてみた




「なら、詫び代わりに一つ相談に乗って貰えないだろうか?それでこの件は無かった事にしよう」




相手からすれば破格の条件である


店主は直ぐに承諾し、店へと案内され、VIP部屋に通される


少し待つと店員が紅茶を持ってきて謝罪してきた




「先程は、大変申し訳ありませんでした」




通報したのはこの女性店員らしく、服装などを見て判断するように言われてたらしい


だが、どうしても怪しさが拭えずに通報したようだ


俺ってそんなに怪しんですかね?




そう見えたのだから仕方ない


俺は彼女を許した


最後に彼女は




「顔さえ見えていれば、絶対に通報はしなかったです」




と言って、部屋から退出していった


理由は簡単で有名人だから


誤解も解け、和解もしたので、オーナーに相談を持ち掛ける




「実は、婚約指輪を買いに来たんだが、相手のサイズがわからなくてな。後日にするか、他に何か手があるか悩んでたんだ」




「それは少々難しゅうございますな。やはり、サイズがわからないとお作り出来ませんし」




やはり難しいか


「(後日来るか)」と決めて立ち上がろうとする


そこで先程の女性店員が戻ってきて




「それでしたらサイズ以外を選んでしまわれては?」




この言葉にバッ!と目を向ける


女性店員はタジタジだ!


しかし、盲点というか・・俺は何故、気付かないかね?


オーナーもそんな手が!みたいな顔をしているし


となると、選ぶのは宝石とデザインか


後はサイズだけと言えばサプライズにもなりそうだな




俺は女性店員にサムズアップする


女性店員は戸惑いながらも、真似をしてサムズアップ返しをしてくれた


問題の一つが解決したので、早速オーナーに商品を見せて貰う




・・・・・ふむ、この店の品揃えは凄いの一言だな


ただ、これといってピンとくる物にはまだ出会ってない


尚、宝石を見始めてもうすぐ30分経つ




「(全く決まらない・・ヤバいな)」




と思った所でふととある宝石が目に留まる


色は中心が無色透明で光加減によって5色に光る宝石




「これ、良いな・・」




だが、オーナーに曰く、その宝石は失敗作らしい




「成功作は5色ではなく、7色に光ります。まぁ、失敗作でも売れるのですが・・・」




失敗作でも元が珍しい宝石で、お値段も普通の宝石の何十倍もの値段になるという


それだけの価値なら・・・だが、そこでふと考える




「(台座になるリングが負けないかな?)」




しかし、その心配は無用だった


この宝石のリング部分は特注で作られるそうだ


それなら!と声を出しそうになり思い留まる




「(この宝石って数はあるのかな?)」




オーナーに確認すると失敗と成功を重ねれば数は用意できるとの事


但し、原石が非常に入手しずらく、とある魔物の核であると判明した


その魔物は単体Aランクのアダマンタイトゴーレム


生息地も非常に少なく、基本は魔物の領域の奥深くに生息しているので、発見自体が困難であった


しかし!そこは俺のスキルで問題解決です!


なので、オーナーに加工の成功率はどの程度か聞く




「2個に1個の割合で成功します。ただ、職人の状態にも左右されますので、大体4割くらいかと」




そう聞かされたので30匹ほど狩りに行こうと思います!






と言う事で翌日、俺は早速【全智神核】を使った広域探知魔法を使い、徹底的に狩り尽くしてきた


ランシェス内の生息地は8か所と多かったが、個体数はそこまで多くなかった


それでも平均10体はおり、33個回収して貴金属店に持ち込む


オーナーには14個渡し、出来上がり時期を聞いておく




「宝石7個の加工には約2週間程掛かります。とりあえず、1個出来たら連絡いたしましょうか?」




と言われ、現物を先に確認したかったので




「屋敷に伝えに来てくれ」




とだけ返し、屋敷への帰路についた






2日後


貴金属店からの使者が来たので、出来栄えを見に行く


成功作の宝石は失敗作の比では無かった


中央部分は変わらず無色透明なのだが、少しの光加減で色が次々と変わって行き、明るめの色から濃い目の色まで表現する


7色と言っていたが、実際に見ると何十色もある様に見える


また宝石も細かく加工されており、職人の腕の良さもわかる最高の一品であった




因みに、失敗作が白金貨3枚で成功作は大白金貨1枚


普通の宝石は過去最高額で白金貨2枚


この宝石が如何に高いか・・分かって貰えると思う


余談だが、大抵の貴族は高くても大金貨数枚程度の宝石を買っていく




そうなると、俺にそれだけの資金力があるのか?という話になる


答えはYESだ


そもそも、失敗作はいらないのでオーナーに渡すつもりであった


しかし、商売だからとオーナーは白金貨2枚で買い取ってくれた


これで白金貨14枚になり1つ分は稼いだ


と思っていたが




「指輪に欠かせない宝石部分の材料を持ち込みして頂きましたので、加工費のみだけで結構でございます」




そう言われ、白金貨3.5枚分が引かれる事になり必要経費の約半分を稼いでしまった


元々買えるだけの資金は持っているが礼を言って、後日に婚約者達と再度訪店する事を伝えて帰路に着いた




6日後


全員の都合がついたので、婚約者全員と何故か婚約者全員の家族に俺の家族も付いて来た


「(まぁいっか)」と思い、一行は貴金属店に入る


店に入るとオーナーが待っており




「ようこそおいで下さいました」




と出迎える


その言葉にこちらも




「今日はよろしく頼む」




と返し、全員がVIP室に案内される


婚約者達全員の指のサイズを測り、その後はリングのデザインを決める


因みに、宝石はまだ見せていない


出来上がった時に見せたいので内緒だ


皆がデザインを選んでる間に




「少々お話が・・」




とオーナーに言われ、部屋に戻る


部屋に戻ると、大白金貨2枚を渡された


意味が解らず話を聞くと




「職人が宝石の加工をほとんど失敗しませんでして。成功品が12個出来上がりました」




なるほど・・『残った宝石は好きにして良い』と言ってあったのだが、流石に何も無しでは不味いと


婚約指輪7つ分の代金を差し引いても利益が出る為「少ないですが」と、大白金貨を渡されたわけだ




「まぁ、そう言う事なら」




と有難くもらい、オーナーに




「結婚指輪もここで買うから」




と告げて、皆の元に戻る


皆の元に戻ると、全員が指輪のデザインを決め終えていたので、再び部屋に戻る




「夕方迄には仕上がります」




との事なので、全員で街をぶらつき、各々に買い物をして、夕方に貴金属店に戻る




オーナーはにこやかに出迎え、俺に箱を7つ手渡す


俺はそれを受け取り、ミリアから順番に1人ずつ手渡し、全員に渡し終わったところで・・俺の気持ちを見せる




開けられた箱の中には


【中心が無色透明で周りが7色に変化し、煌びやかな光を放つ宝石】


をつけた指輪に全員が目を見張る


周りで見ていた家族も、俺が用意した婚約指輪に度肝を抜かれていた




「これが皆に対する俺の本気です!」




婚約者達は皆笑顔で、嬉しさでちょっと泣いていたけど、喜んでもらえて何よりである




「ラフィ様。ありがとうございます」




「ラフィ。凄く綺麗ね」




「ラフィ君の本気度が分かる指輪ね」




「流石ラフィ様です!」




「ラフィには毎度驚かされるよ」




「わ、私に、似合いますかね!?」




「ナユルさん。大丈夫です。ラフィ様の婚約者なら堂々としないとダメです」




各々がお礼や感想を伝えてきた


それを聞いた俺は、安堵した


ただ後で、ご家族に呼ばれ「いくらしたんだ!?」と聞かれた


金額言ったら台無しやんけ!と思ったが、どうやら自分達も欲しいらしい


それなら・・とオーナーに全部任せた




こうして無事に婚約指輪も渡せたし、暫くはゆっくりできるかな?







後にこの貴金属店は、英雄御用達の店として名を馳せる

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