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68話 尋問と不穏な影

翌朝


4人で遅めの朝食を取り、今日の予定を話し合う


昨日は遅かったのと精神的に相当疲れてみたいで珍しく寝坊した


起きたら7時過ぎで俺自身が驚いたほどだ


てなわけで、今日の朝食は8時である




予定についてだが、ミリアにはリアを連れて、王城に報告を任せた


俺とナユは事情聴取と言う名の尋問へと向かう


尚、リアに報告を任せたのは貴族だからだ


ナユが陛下に謁見してみろ・・気絶しそうだろうが!


本人はそんなこと無いと言うが、気絶したら大変なのでリアである


ミリアが同伴なのは、スムーズに事を運ぶためである




報告後は2人と合流するのだが、リリィとティアも来そうだし、何よりリアフェル王妃も来そうなのが予想出来て怖い


誰か、リアフェル王妃を諫めて下さい




朝食を終え、リビングで食後の休憩をしながら談笑し、9時半過ぎに各々動き出す


尋問は9時から行っているのだが、来栖と阿藤は一番厳しい人に任せた


俺は残り3人の尋問である


何故3人なのかと言えば、聖域迷宮での判断に基づいて決めた


状況判断を出来てた方が話はしやすいと考えたからだ


後、もう一つ付け加えるなら敵意の差だな


3人は来栖の助命を求めて以降、敵意を抱かなかった


畏怖はしていたが、どうにも話を聞いて欲しい感が出ていたのも理由だ




俺とナユは馬車で兵庁へと向かい、10分程で着く


尋問は9時から18時まで行われるのだが、尋問部屋は8つあり、そこに1人ずつ放り込まれ、複数の尋問官が同席する


弁護士などというものは存在しない


そして、尋問官が暴力を振るう事も基本は無い


自衛の場合はその限りではないが、何もしなければ良いだけの話




兵庁の他には詰め所があり、前世の交番のようなことをしている


後は兵舎だが、こちらは独身者用と既婚者用に分かれている


理由は・・・・・まぁ、察してやってくれ




兵庁に入ると兵団長が応接室へ案内してくれた


本来は尋問部屋で取り調べを行うのだが、3人同時聴取にしたいので、この部屋で話を聞く事にした


普通は尋問官も付き添うのだが、今回は兵団長のみである


SSSとSの冒険者がこの場にいるので、問題無いと判断されたからだ


聞かれたくない話もあるので、兵団長にも途中退席はしてもらうけどな




兵士が3人を連れてくるが落ち着きがない


まぁ、仕方が無い事なので、俺が3人に座る様にと指示を出す


兵士には申し訳ないがお茶の用意を頼んでおいた


快く了承してくれた兵士だが、実は3年前のスタンビートの時に新兵として前線に出て、俺に助けられたそうだ


俺には感謝と憧れがあるそうで、今日も張り切っていると兵団長が教えてくれた




お茶を用意し、お替わり分も用意してから、兵士は部屋を出る


出る前に握手を求められたので快く応じる


兵団長は何か言いたそうであったが、合図を送って黙ってもらった


彼の行動は、これから聴取をする3人へ良い結果を招きそうだと判断したためだ


3人に向き直り、再度座る様に勧め、全員が椅子に座り、俺は尋問を始める




聴取だが、実際は迷宮内で聞いた事を、この場でもう一度、話して貰うだけだ


その後は、兵団長に席を外して貰う予定である


いや、確実に外してもらう・・・・多分、あの人が来るだろうから・・・




3人は迷宮内で話した内容をもう一度同じ様に話し、兵団長の質問にも答えていく


兵団長も途中、頭を抱えたり、3人が怯えたりとあったが、概ね順調である


そこに腹の虫の鳴く音が響く・・・八木の腹の音であった


八木はしまった!と、顔を青くしたが、俺が笑い出すとナユを除く全員が口を開けたまま呆然とする


兵団長に何か軽い食事の用意を頼み、一旦、休憩にする


尋問らしくない尋問に耐えかねたのか、姫埼が質問をする




「あの、こんなほのぼのした感じで良いんですか?」




「もっと厳しくしてほしいなら、そうするけど?あ「違います!!」」




「ごほん、失礼しました。想像と違ったのでつい質問を・・・」




「そう言えば、来栖君と阿藤君は?」




「あの二人は別室で尋問中だね。姫埼さんが想像した通りの尋問中だと思うよ」




春宮の質問に対し、別室でと答えた俺に青褪める3人


何か勘違いをしてそうなので説明する




「言っとくけど、尋問官に手を出さない限り、こちらから暴力行為を行う事はないぞ。ちょっと怖い尋問官とお話し中なだけさ。ここほど、ほのぼのとはしてないし、お茶も軽食も出ないけど」




そう言って茶を飲み、お菓子をつまむ


3人は安堵したような顔をしてはいるが複雑なのであろう


俺がニヤッて笑うと苦笑いしてたからな




休憩も終わり、尋問再開と言った所であの人が来た


期待を裏切らないので、ある意味、楽ではあるが・・・


・・・・・・・・応接室に緊張が走る


俺の婚約者が勢ぞろいに加え、お忍び陛下、リアフェル王妃、イリュイア王妃、ヴァルケノズさんと、3国のトップがこの応接室にいるのだから


八木、春宮、姫埼に加え、兵団長も緊張しっぱなしである


兵庁の兵達も3トップの来訪のせいかピリピリしている




そして、予想の上を言った事態に俺も困っている


イリュイア王妃とヴァルケノズさんは転生者を知らない


頭を抱え、どうするか悩んで・・・2人に誓約を吞ませた


誓約内容は他言無用で墓まで持っていく事


この結論に達した理由は、どうやっても回避不能だから




了承した2人に全てを見せ、反応を伺うが、イリュイア王妃は大物ではなかろうか?


見た後の反応は、ヴァルケノズさんみたいに固まるのが普通の反応だ


しかし、イリュイア王妃は「あらあら、まぁまぁ・・凄いわねぇ」で済ませたのだ


王妃って、どの国も胆力が異常じゃね?いや、リアフェル王妃もこれ見た時は驚いてたし、イリュイア王妃が凄いのか?


なお、兵団長には〝見ざる聞かざる〟を物理的にさせてある




こちらの用事が終り、話を再開させていき、兵団長に、もう聞くことは無いか尋ねる


概ね聞いたらしく、後はこちらの判断だけらしい


それならば!と、兵団長に退出を求めるが、自国のトップと他国のトップが来てれば、警護もあるし、退出は出来んよな


リアフェル王妃に目配せをし、王族の命令で退出させることにした


流石に、王妃の命令では退出するしか無く、渋々だが出て行った


さて・・この3人にも誓約して貰うか




「3人共、今から大事な話をするが誓約を吞んで貰わないといけない。内容は他言無用、墓まで持って行けだ。魔法で喋らされても発動するから気を付けないといけないが、まぁこちらの誓約の方が強いと思うから問題無いだろう」




この言葉に3人は顔を見合わせ、誓約の内容を聞く


喋ったら死ぬ・・・ただ、それだけである


誓約が吞めないなら話は終わり


国外追放処分して、もう会う事も無いだろう




3人は少しだけ相談したいと言うので了承する


5分後、3人は誓約を吞むと言って来たので全部話してやる


そう、彼らの称号に隠された意味も含めて全部である




「まず最初に、君達は日本人で間違いないか?」




「何で知ってるの!?まさか、あなたも?」




「俺は転生者だよ。向こうの俺は既に死んでいる。でだ、日本人で間違いないか?」




「え、ええ・・間違いないわ。にしても転生者って・・」




「だよな・・どこかのラノベじゃあるまいし」




そう言って話す、姫埼と八木


春宮は黙ったまま話を聞いている


リアフェル王妃達は驚いていた


俺が転生者を3人に明かしたからだ


では何故、俺が転生者を明かしたか?


誓約があるとはいえ、それを明かすのは俺にとってはデメリットしかない


だが、それを明かしてでも、確認しないといけないことがある


その情報は武器となり、必ずメリットになるものだから


そう自分に言い聞かせ、話を進める


次に聞く内容は、確実に話して貰わないといけないからな




「君達は、何年から来て何歳だ?」




「私達は16歳よ。来栖と阿藤も同じ。全員が同じ学校で友達で来栖と優華・・春宮は幼馴染。私と優華は中学からの親友。八木は高校からの悪友で、阿藤は来栖の友達ね。正直、阿藤の事は良く知らない。私達は平寧って時代からこの世界に来たわ」




「平寧だと?何年だ?」




「?。28年だけど・・・」




「そうか・・」




その答えを聞き、俺は少し黙ってしまった


俺が死んだ年から召喚されていたか


前の世界と時間の流れが違うのは神界で聞いていたけど、召喚に対する時間軸が明らかに可笑しい


そもそも、この世界への転生者や転移に召喚をさせないために、時空神様がいる


その時空神様の目を盗んで、召喚を成功させる?明らかに異質だ


ただの人が神の目を欺くなどできない


とすれば、考えられる事は現時点で2つ




神喰いの力を、それも強力な方を持った人間が、自我を持ちながら、力を制御して行使できているか、黒幕が手助けしているか




他にも何かあるかもしれないが、今の情報で得られるのはこの程度だろう


俺は、片手で頭を押さえ、ため息を吐く




「ラフィ様、大丈夫ですか?」




「大丈夫だ、ミリア。俺には皆が居るからな」




ミリアが心配そうに声を掛けて手を握り、俺も握り返す


リリィとティアは頭を撫で、ラナは服を掴み、リアとナユは俺を見つめ、ピンク色の世界が作られ・・る前に、王妃の咳払いで全員ハッ!となり、顔を赤らめるも何とか体裁を繕い、話に戻る事にする




3人は顔が真っ赤である


特に春宮と姫埼の顏はかなり赤い


八木も赤いが、その後に出た言葉は「リア充爆発しろ!」である


今回はやっちまったと思うので甘んじて受け入れよう




ちょっと和んだので、この分なら大丈夫かな?と考え、話を進める


俺は転生者で、色々と事情があり、この世界に前世の記憶と知識を持って生まれた事


前世の知識は衰えていないが、記憶はいくつか朧気である事


冒険者として活動しており、その中で異世界人の召喚は事実上不可能である事を告げたのだが、これには反論された


なので、どうやったのか調べると言っておいた


戻れるなら戻りたいかと聞くと、八木と姫埼は意外にもどちらでもいいらしい


八木は家庭環境が複雑で、姫崎は養子なのでいてもいなくても関係ないそうだ


春宮は戻りたくないとはっきり告げたので、帰還については調べない事にした




次に称号の話だが「気後れするな。それと、来栖と阿藤には伝えるな」と言って反論されるが、それも説明すると言って話をする




「称号に召喚転移者ってあるだろう?実はそれ、巧妙に隠蔽がされている。今から表に出すから、自分で確かめてくれ」




そう言って彼らのステータスの隠蔽を解除する


3人は確認をすると絶句する


そこには【隷属の魂印】と表示されていた


青褪めた彼らにヴァルケノズさんが見せて欲しいと頼み、それを見た瞬間、ヴァルケノズさんは珍しく怒っていた




「何と言う事を!これは奴隷の中でも厳しい処分を受けた者か非合法奴隷に使われる邪法じゃないですか!誰がこんな事を・・」




「彼らの話を聞くと、怪しいのはダグレスト王国だが、誰がどのように召喚したのかがわからない」




「あの・・・解除は無理なんですか?」




「春宮さん。残念ですがこの邪法は解除した瞬間、使った者にバレてしまいます。3人なら、ギリギリ時間的に間に合うでしょうが・・」




「俺は反対だな。ただ、3人の事も考えて保険はかけられるぞ」




「どうされるのですか?グラフィエル君」




「発動した瞬間に打ち消し、解除される様にすれば良いだけさ」




「それが出来たら苦労は・・・出来るんでしょうなぁ。グラフィエル君なら」




「可能ですよ。バレると面倒だし、体内に隠せるようにするか。ただ、作るのは3人分だな」




「来栖と阿藤の分は作らないんですか?」




「作る理由がない。姫埼達は敵意も向けず、こちらに協力的だ。ならば、助けても惜しくはないと思える。だが、あの二人は非協力的で敵意がありすぎる。特に来栖は今後敵対する可能性がある以上無理だ」




「俺達も敵に回るかもしれないぜ?」




「そうなれば潰すだけだ。だがな八木、なんで俺がそんなリスクを冒してまで助けようとするかわかるか?」




「・・・何か利があるから?」




「半分正解だ春宮さん。作るのは小型の魔道具だが、これには人の声を収音できるようにして、更に発信機を付ける。魔法が発動されたらこの魔道具は消滅してしまうが、同時に君達の鎖も消える仕様にする。ただ、発動されたのがわかる様にしないといけないから、少し熱が発生するようにする。胃に留まるから、胃の辺りが熱くなれば発動した合図だ。そして、迷宮で見せた現状把握能力があれば、どう行動したら良いか自分達で気付くだろ?それがもう半分の理由だ」




「スパイをやれって事ですか?」




「少し違うかな。情報は欲しいが、一番は君達が見て判断してくれればいい。それで敵対するなら、さっきも言った通りだ。ただ、現状で君達が戻らなければ、色々と面倒じゃないかと思ってね。一応は俺なりのやさしさかな」




「ですが、グラフィエル君?彼らの安全を最優先するなら直ぐに除去し、こちらで保護するべきでは?」




「それだと万が一、彼らが知らない人質が居た時に対処できなくなる。隠蔽までしてたんだ。無いとは言い切れない」




議論と説明が交わされる中、リアフェル王妃が一つ疑問を問う




「その魔道具ですが、発動したらクロノアス卿にはわかるのですか?」




苗字呼び・・・今回は、公の仕事ですか


言葉遣いに気を付けないと駄目だな




「探知魔法を応用します。発信機と言うのは、相手の位置を特定するものなので、反応が消えれば、魔道具が消失したことになります」




「最悪の想定で、彼らが死んでた場合には?」




「生命反応に応じて、発信される内容を変更すれば問題はありません」




「ならば、クロノアス卿。残り2人分も作りなさい。個での識別も可能なのでしょう?でしたら、誰が味方で誰が敵かわかりやすくなります。但し、別室二人の分は消滅しないようにしなさい」




「面倒な注文ですね。それは勅命ですか?」




「勅命が良いというならしますが・・」




「はぁ・・わかりました。そのように作ります」




「物分かりが良いのは好きですよ」




こうして黒い会話は終わりを告げた


3人は思う所もあるようだが、こちらの案を受け入れた


話も終わり、兵団長から二人の様子を聞くべく、中に招き入れる


二人は案の定、非協力的であった




阿藤はほぼ黙秘で、迷宮内で話した内容と同じことしか喋っていない様だ


来栖に至っては支離滅裂で、自己中心的な盲目主義であり、尋問官が「話すのもあほらしい」と、地下のホテルに戻した様だ


それからまたうるさいらしく、3人がいないことに対してとか、色々喚いているそうなので、俺が出向き「これ以上こちらの手を煩わせるなら不問の件は無し」と伝えれば大人しくなった




応接室に戻り、サクッと魔道具を作り、3人に渡す


来栖と阿藤には




「国外追放処分なので、ランシェス王国内に入った場合に作動する魔道具を飲んでもらう。これを飲まないと釈放は不可能だから」




と言ったらあっさり飲んだ


こうして尋問は終了


翌朝、5人は馬車で国境沿い迄護送された






俺は王城へと出向き、封印の聖域での話をすることになる

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