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61話 収穫祭と婚約発表

本日は収穫祭開催日で収穫祭1日目だ


朝9時に国王が国民へ演説を行ってから収穫祭が始まる


いつもなら5分程度の言葉で終わるのだが、今年は王女の婚約発表が行われる為に少し長めの演説となる


過去にも婚約発表で時間が伸びたりはしたが、せいぜい5~10分だ


本来なら王城のバルコニーには陛下、王妃、婚約者の王女か王子しか出ないのだが、今回は色々な事情もあって俺、ミリア、ラナ、教皇、イリュイア王妃も顔見せする


色々な事情の一つである4か国同盟発表も併せて行うのでかなり長めの演説予定だ


後、表には出ないが俺の婚約者は全員が王城に集まっている


発表の後は、貴族のパーティーが演説の後にあるからだ




現在の時刻は朝7時


今日も俺はいつもと同じ時間に起きているが鍛錬はしていない


先に話した王城でのパーティーがあるからだ


婚約者達も常時は大体6時から6時半に起き、メイド達も俺より30分遅く起きるのだが今日は全員が1時間以上早く起きていた


朝食もいつもより早い時間だが軽い量で済ませている


王城でパーティーが開かれるので、お腹に余裕を持たせないといけないからな


ナユは朝から・・いや、昨日の夜から緊張しっぱなしである




ナユは王城のパーティーには無関係と思っていたそうだ


だが、帰り際にリアフェル王妃から「ドレスは用意しましたか?」と聞かれ、首を傾げていた


理解してないと確信したリアフェル王妃は「あなたもパーティーは参加ですよ」とナユに告げるが、平民で冒険者のナユがドレスなど持っているはずも無く、そこから一気に慌ただしくなり、衣装合わせやアクセサリーなどを合わせる時からずっと緊張しっぱなしなのだ


昨日の晩は眠れないと訪ねてくる有様である




闇魔法で強制睡眠させ、時間が来たら起きれるようにした


便利の良い目覚まし魔法である(本来は違うぞ)


そうそう、婚約者全員分のドレスとアクセサリー類は全額を俺が出している


婚約者の家族全員が自分達で出すと最後まで妥協しなかったが、とある理由により妥協せざるを得なくなった


そのとある理由とはリアとナユである




リアの実家は王都平民よりは裕福だが、零細貴族で領地も無く、収益は指南としての給料と特別兵としての給料だけ


特別兵とは近衛に似たもので、各指南役のみで構成された少数精鋭の特殊部隊だ


あまり表で活躍する事は無いが、給料は近衛より下で分隊長より上になり、指南役の給料と合わせれば近衛と同等


そして、リアの実家は大家族で結果的にあまり余裕がない


それでもドレス代位は出す貯えはあるのだが




次に、ナユの実家はランシェス国境沿いの農村で、神聖国の国民である


立地的には王都と神都の丁度中間の位置にあり、国境線上は神聖国側だが、冒険者家業は王国側が盛んなので、登録と仕事は王国側でしていた


学業は神聖国側で学び、信仰も兼ねて神官服での冒険者業だった


そんなナユの実家だが、蓄えはあるけどドレス1着分(金貨数枚)位で、それも質がそこそこの物が買える程度の貯えしかない


流石にそれは・・と王妃も思ったようで、1着贈ると告げると、それならば神聖国が出す!と揉めたのである




ナユの場合、パーティー会場と婚約者は王国側で神聖国側の平民と上流階級の面子としては非常に面倒な立ち位置なのだ


俺もナユには良い物を着て欲しい


なので「俺が出す」と言えば全員が「「面子があるから!!」」と一蹴されてしまう


ならば!と、俺が全員分を出せば各国も相手方が全て出したと面子も保てるのでは?と提案し、その案が通った形だ


尚、ナユのドレスは服飾屋を叩き起こし急いで仕上げて貰った


勿論、割増料金で払いましたとも・・大金貨6枚を


服飾屋は大変だったようだがその顔は笑顔だった




そして現在、軽い朝食を食べ終え、俺とナユは王城へと馬車で向かっていた


ついでだからと宿に宿泊しているナユの両親を拾い、実家によって王城迄馬車2台で一緒に向かう


ナユの両親の服はクロノアス家から貸し出した


後で服飾屋に出しといてくれれば良いと言ったのだが、せめてそれくらいは払わせて欲しいと言われた


因みに、この世界にもクリーニング屋は存在する


服飾屋がクリーニング屋も兼業しているがクリーニングと言う言葉は無い


出す時は「洗浄をお願いします」である


なので、服飾屋に出しといてくれれば良い訳だ


話が少し逸れたが、そんな感じで馬車2台は王城へと向かい到着する


今回は門番もわかっているようで止めなかった




王城に入り男性陣、女性陣、婚約者でそれぞれ分かれて部屋に入る


服飾屋も最終調整で朝早くから王城へ呼ばれている


男性陣も着替えをしていき、そこへ服飾屋の店主が挨拶に来る


満面の笑顔で店主は「この度は誠にありがとうございました」と頭を下げて1礼し、顔を上げて「今後もご贔屓にお願いします」と言って男性陣の服の調整を始めた


最終調整と言ってはいるが、万が一があってはいけないので問題が出てないかの確認と言った方が正しい


全員分を確認するが大丈夫なようで店主は1礼して部屋を出て行く




全員が着替えを終えたそうで、残り1時間弱は雑談タイムである


最もナユの両親は自国、他国の頂点を前に何も話せなかったが


また、1時間前からは貴族達が続々と王城へと集まってきている


中には早速、俺に挨拶をと言っている貴族もいるそうだが、パーティーが始まるまではと何とか止めているそうだ


そんな感じで時間となり、陛下はバルコニーへ出て国民の前に姿を現す




『我が愛すべき国民よ!よくぞ集まってくれた!今年もこの時期がやって来た!実りの祭りである!今日から13日間大いに騒ぎ、楽しみ、来年もまた迎えられる様にしよう!』




声が王都中に響く


本来は魔道具を使って行うのだが、今年は俺が拡声魔法を使用している


魔道具でも良かったのだが、より遠くまで届かせたいとの話を聞き、拡声魔法なら王都中に届けられると提案した


魔道具より広範囲に届くので今年はこちらの案が採用された


拡声魔法を維持しつつ、陛下の言葉を待つ




『今年は重大発表がある!我がランシェス王国はセフィッド神聖国、レラフォード神樹国、オーディール竜王国と同盟を結び4ヶ同盟を実現させた!今日はその同盟に尽力した者を紹介する!グラフィエル・フィン・クロノアス男爵!』




陛下に呼ばれ、バルコニーへと赴く




『この者は4ヶ国同盟に尽力し、実現させた者だ!また、この者は各国にて特別な称号を承りし者である!そこで、今ここで私から彼に爵位を贈ろうと思う!クロノアス男爵を辺境伯とし、その功績に報いよう!』




ん?何か聞いてた話と違うぞ!?


こんな大勢の前で陞爵とか聞いて無いんですけど!?しかも3階級陞爵とかあり得ないんですけど!?


振り向くわけにもいかず、国民からは歓声が上がっているのでそのままの体制でいる


陛下がこちらを向いたので跪き、爵位の授与が執り行われる


聞いてないんですけど!ってオーラを出すのは忘れてないが流石は王族で、柳に風、暖簾に腕押しって感じである


国民の前での授与式も終わり、陛下は言葉を続ける




『次に我が娘の婚約を発表する!第5王女リリアーヌは、先程紹介したクロノアス辺境伯と婚約した!』




その言葉の後、ヴァルケノズさんとイリュイア王妃もバルコニーへ現れて、婚約の発表をする




『セフィッド神聖国御子、ミリアンヌ・フィン・ジルドーラも時を同じくして、グラフィエル・フィン・クロノアス辺境伯との婚約を発表する!』




神聖国の御子は、他国でもその地位は有名である


当然、驚きと歓声が沸き上がる中、更に続けて




『オーディール竜王国王女、シャラナ・ゴショク・フィン・オーディールも同じく、グラフィエル・フィン・クロノアス辺境伯との婚約を発表します!』




流石にこれには静寂が流れたが・・直ぐに大歓声が起こった


貴族の子息とはいえ、3男で何も無ければ平民落ち確定の者が、新しいクロノアス家を立ち上げて当主となり、3国の重要人物と婚約し、更に爵位まで上げたのだ


成り上がりどころではなく、物語の様な光景だ


当然、大歓声は起こるべくして起こって・・貴族達は当然面白くなく、拍手はしているが大部分は嫉妬と悪意の感情に満ちていた


俺が気付かないわけが無いので、そいつらは要注意人物として覚えておこう


陛下の言葉を最後に、祭は幕を開ける




『皆の者!今年は少し長くなったが、収穫祭の幕開けである!神に感謝し、大いに楽しむように!祭の始まりである!!』




そして、収穫祭は始まったのである




収穫祭の開会と4ヶ国同盟の発表に婚約発表と、一応は滞りなく終わり、現在はパーティーの真っ最中である


婚約パーティーは別途行うので、収穫祭のパーティーだ


と言う事で、俺は現在、老若男女関わらず取り囲まれている


何故こんな状況になっているのか?答えは簡単である・・・陛下のせいだ




王族との婚約に3段飛ばしでの辺境伯への陞爵に加え、冒険者ランクはSSSと世界最高峰のランク持ちで資金も潤沢であり、このパーティーに出されている竜肉も俺が狩って来た物だと陛下が喋ったので、顔を覚えて貰おうと必死なのである


未婚で婚約者のいない女性は何とか結婚できないかと躍起になっている


正直、面倒で威圧して気絶させたい位なのだが、各国の体裁もあるので、我慢に我慢を重ねている状況だ


こういうのに婚約者達は敏感なので本来は助けに来てくれるのだが、現在はナユを除く全員が貴族のお相手中である




リアの家族はちょっとした嫌味などもあったりしてるので、かなぁりブチキレそうであるのだが、リアが目線で気にしない様にと訴えているのでギリギリ耐えてはいる


ナユの両親は平民なので、貴族達はガン無視か嫌味を言いに行くとかだが、酷い場合は自分の娘と変われとか言うアホもいる


これには流石に堪忍袋の緒が切れたので、OHANASHIしてからOSHIOKIしてご退場頂いた


勿論暴力的な事はしてないぞ


ちょっと話して軽~く脅して周りがざわつき、陛下の耳に入っただけだ




周りの反応は相手貴族がアホだと呆れているのが半分で、もう半分はあれは終わったなという表情である


後日、その貴族は爵位を下げられるのであった


王城の王族主催パーティーで、面子もあるから当然の処分ではある





今日は1日中パーティーなので正直かなり疲れる


時刻は・・・まだ昼過ぎだが、精神的に疲れ切っていた


そこへ、ティアとリアがこちらへきて飲み物を渡してくれる


ナユは両親の事が心配なのでずっと付き添っている


「ありがとう」と飲み物を受け取り、一気に飲み干す


息を一つ吐き、一言




「あ~、しんどい・・・早く帰りたいわ」




この言葉にティアは




「そう言わないでラフィ君。収穫祭が終ったら、今度は婚約パーティーだよ」




そう返されて思わず無しで、と言いそうになって何とか留めた


流石に冗談でも言って良い事と悪い事があるのだ


貴族の、それも公爵令嬢には色々柵がある


そこは割り切らなければ駄目だろう


だから「ちょっとした愚痴だよ・・」と言って少し甘えてみた


甘え甘えられてではあるが、愚痴を零して俺が甘えるのは相当珍しいので、二人は驚きつつも頭を撫でて「頑張ろう」と微笑んで癒しをくれた




会場に戻ると・・・うん・・ミリア、リリィ、ラナは凄いわ・・・


疲れなどまるで見せず、ずっと貴族の相手をしている


流石王族と言うレベルじゃないだろう


そこでリアが小声で俺に話しかける




「3人共、ラフィ君の負担を減らす為に頑張ってるみたいだよ」




リアの言葉に俺は正直情けないなぁと感じた


リリィと目が合うと「気にしないで」と視線を送ってくる


ミリア、ラナにも目線を送ると「苦手な部分は引き受けますから」、「お仕事と割り切ってるです」と二人共視線を送って来た


ほんと、良い女達だよ・・


ティアとリアの手を取ると二人は頷いてくれた


(これは頑張るしかないな)と、自分に喝を入れて会場の輪の中に戻る


2時間後・・休憩室で燃え尽きている俺をメイドが見つけて、婚約者達が駆け寄ったのは祭後のちょっとした笑い話である




夕方になり、パーティーも終盤である


今は各々が好きに話をしたり、ダンスに興じている


俺も6人と順番に踊ったりしたのだが、最後のナユと踊り終えると女性陣から休みなくダンスを申し込まれる状況に陥った


貴族としては断りづらい相手もいるのでお相手するが流石に休憩したい・・・


そこへ、救いの手が差し伸べられた


リアフェル王妃とイリュイア王妃がこちらに来たのだ




「少し話をしましょう」との申し込みに俺は飛びついた


女性陣も自他国の王族相手では引き下がるを得なく、遠巻きに話が終るのを待っていたのだが・・4人だけは話に加わっていた


級友の貴族令嬢達である


周りは嫉妬の目で見ているが全員気にしてない模様


それもそのはずで、王妃に連れられて話に加わっているのだから気にしても仕方ないし、俺としても気心知れた人との会話は有難かった


そこへリアフェル王妃が面倒な事を言う




「楽しめて・・るのか微妙な感じですが、この4人を連れてきたのはこの前の話の続きがしたかったからですよ」




「他の貴族から新しくってやつですか?節操無し・・・とは、俺が言えた義理じゃないか・・・」




「それが貴族というものですよ。それで、どうですか?少なくとも知らない仲じゃないでしょうし」




そう言って4人を見るが・・ん~、皆可愛いけど好意は無いんだよなぁ


ヴィオレッタは憧れっぽいし、ミュリアムは友達って感じだな


クリュレナは好意はあるが好奇心が勝ってる感じっぽい


セージェナは家の為で俺なら歓迎って感じか


そんな感じが印象と雰囲気で感じ取れたので




「今は何ともって感じですね・・・婚約って感じでは無いです。俺には俺で譲れないものがありますから」




「そうですか・・・今の貴方の中ではどんな感じですか?」




「特には、って感じですね。まだ級友止まりですが、この先はどうなるかは神のみぞ知るって事で」




「わかりました。ああ、竜王国での話を聞かせてもらえませんか?あなたも良い時間潰しになるでしょうし」




「喜んで」




話せる内容のみを話して時間を潰す


あ、そうだ!ついでだしリアフェル王妃に一つ頼み事をしよう




「リアフェル王妃。一つお願いがあるのですが?」




「おや?あなたから頼み事とは珍しい・・一体何かしら?」




「パーティー後に、6人だけに話したい事があるので、部屋を一つお借りしたいのですが。この話は6人以外が聞いたら死ぬので、影は付けない事をお勧めします」




「皆に危険は無いんですね?」




「神に誓って。一応、遮断結界は展開させますけど万が一があるので」




「わかりました。ただ、話の開始はメイドがお茶を持って行ってから話し始めなさい。長くなる事も想定してね」




「わかりました。ありがとうございます」




そう言って話が終り、王妃達は別の場所へと向かう


パーティー終了迄は残り1時間と言った所か・・


女性陣がまたも群がりそうになり、足を止める


そこには一人の貴族が立っていた




「王妃様との談笑も済んだようなので挨拶させてもらうよ」




「ドバイグス侯爵・・・何か御用ですか?」




「あまり敵意を向けないでくれ。収穫祭後でも構わないので、時間を作ってもらえないか?勿論収穫祭中でも構わない」




「それは構いませんが、一体なぜ?」




「君とゆっくり話がしたくてね。家の者には君が来たら通すように申し渡しておく」




「わかりました。突然お邪魔する事になるかもしれませんが・・」




「構わんよ。君との話が最優先だからね。では、待っている」




そう言うとドバイグス侯爵は去って行った


また面倒事の様な気がしないでもないが仕方ないか・・・


天を仰ぎつつ憂いていると周りから「素敵・・」とか「あんな顔されたら私・・」とか艶っぽい声が聞こえてきたがスルーする


パーティーが終るまで何人かの女性と踊り、パーティーは陛下の挨拶を持って幕を下ろした

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