幕間 死闘の跡地にて
この幕間はなろうとカクヨムだけに投稿しています
これはグラフィエル・フィン・クロノアスが邪神核との死闘を終えた後の誰も知らない話である
大地に大きなクレーターが出来上がり、汚染区域が浄化された様だった
真偽を確かめる為に竜王国兵士達は汚染区域だった場所に死をも想定して数名が足を踏み入れる
拡大し続けていた汚染区域は浄化されたと確認され、王の元へと報告される
王は国民に浄化完了の御触れを出し、国民は歓喜に湧く
一方で汚染区域であった場所では、軍が中心地に向けて進軍していた
所々で汚染調査を行い、どこまで浄化されたかを確認していく
半日程経った所で、上空から先行偵察に出ていた竜達より報告が入る
[中心地に魔物の姿無し。人族1名と同胞1名が地に伏している]
この報告を聞いた軍司令官は急ぎ王城へと連絡を入れる
その間にも軍幹部の者達は直ぐに進軍できるように準備を進める
王城からの返答は凄まじく早く、全軍が救助へと動いた
しかし、大軍移動はやはり時間がかかり、竜達が2名を救助する事となる
竜達が軍へと帰還し救助者2名を軍医が診察する
救助された2名とはグラフィエル・フィン・クロノアスと風牙である
両名ともかなり衰弱しており、発見が遅ければ命の危険があった
軍内で応急治療し、竜達によって直ぐに王城へと護送される
連絡を受けた王城でも受け入れ態勢を急ピッチで進めた
竜王国の迅速な対応によって両名は命を繋いだのだった
グラフィエル達が救助された激戦地後では少しの間だけ監視者が消えていた
それは竜王国軍や竜達だけでなく神達もであった
監視が消えていた時間は僅か数十分
しかし、その数十分で中心地の邪神核が滅びた地中から一つの人影が出てくる
姿を現した人影は、顔を空に向けて
「こいつは予想外だろうな。俺自身も予測できねぇ事柄だし」
そう呟くと、辺りを見回した後、どこからともなく現れた服を着始める
服を着終わり、移動しようとして立ち止まる
先程まで消えていた監視の目が復活していたのだ
そして、時が止まり二柱の女神が姿を見せる
「残念ですがここから先には行かせませんよ」
「後始末は私達がする」
全知神シルと死神シーエンであった
「チッ」と思わず舌打ちする人影
だが、二柱なら逃げる事は可能かと思い、一つだけ確認を取る
答えてくれれば儲けもの程度ではあるが
「他の神も視てるのか?」
暫し沈黙が流れ、シルが答える
「いえ。今は誰も見てません。もうすぐ視に来るでしょうが」
その答えに人影は思案する
真実か嘘か
真実なら対話しても良いと思っている
嘘なら逃亡するのが第一だが
だからこそ言葉を重ねる
「それが本当だという証拠がどこにある?と言う訳で俺は逃げるぜ」
とある言葉が聞きたい人影はわざと逃亡宣言をする
この言葉に過敏に反応したのはシーエンだ
逃がさないようにと一気に攻撃態勢に入り
「逃がさない。ラフィの為にもここで終わらせる」
そう言葉を発する
それを聞いた人影は、口角を吊り上げニヤリと笑い
「そうかそうか。あいつの為か。くっくっく、なるほどな。・・・・提案なんだが話し合いしねぇか?当然だが対価はある」
そう笑い、提案する人影に応じぬとばかりにシーエンが動こうとするも、シルがシーエンを止める
シーエンは当然の如く問い詰める
「どういうこと?もしかしてシルは・・・」
「勘違いしないでシーエン。私はあれが何を言うか気になっただけ。対話するつもりはないわ」
シルとシーエンはお互いに警戒し合う
シルもシーエンも望ましくない状況となり、実質は三竦みの状態になった
人影にとってはこの上ない状況ではある
今の状況は少なくとも対話が可能な状況であったからだ
人影は一方的に話をし始める
「あんたら二人はラフィの味方って事で良いな?つうか死神は確実に味方だと解釈しているが」
「何を根拠に?」
「んあ?・・・・・いや、何を根拠にって、さっきあいつの為にって言ってたじゃねぇか。少なくとも敵対関係のある奴に言う言葉じゃねぇ」
「ああ。そういう事ですか。・・・・良い機会ですからシーエンにも伝えておきましょうか。私は彼の味方ですよ」
「全知の言葉は信用できねぇな。信じられるもんは「全智神核を与えていますが?」」
「シル。それ、初めて聞いた。・・・・ううん、それよりも何故、後日の雑談で嘘を吐いた?」
後日の雑談とは、龍神・獣神・破壊神を除く8女神が何を渡したのか話し合っていた事である
その話の中でシルは全智神核の話をしていなかった
シルが与えたスキルは言語理解や演算系などと話していたからだ
そもそも全智神核とはシルの権能を劣化させたものである
シルの権能は全ての記憶
即ち、元始から全ての事象、想念、感情が記録されているという世界記憶の概念であり、多次元世界の事柄すら記録される普遍的記憶である
人はそれを全元始記録アカシックレコードと呼ぶ
グラフィエルに与えられたのは劣化版全元始記録アカシックレコードと言われても間違いではない代物であった
それをシーエンに語ったシルはシーエンの質問にも答える
「あの場だと誰が敵かわかりませんからね。欺瞞工作は必要です。それに、もう相手にはバレていますから」
「納得した。確かにあれは知識が無いと無理。失礼だけどラフィの知識じゃ無理」
「何気に酷いですね。でも、本人の前で言っては駄目ですよ」
「流石に言わない」
唇を尖らせ、少し頬を膨らませてシーエンは拗ねる
二柱の話が終わるまで人影は放置プレイされていた
流石に放置されたままでは不味いと思い話を進めようとする
「あー・・・話が終わったんなら本題に入りてぇんだが?」
「そうですね。ではお聞きしますが私は合格で?」
「問題ねぇよ。先ずは対価の話だが俺の元の権能をあいつにやる」
「!・・・・・持っているのですか!?」
「正確には欠片の大部分を持っているだな。まぁあいつならスキルとして復活させれるだろう。そもそもスキルとは権能の劣化版か一欠片だしな」
「・・・・・・少し気が変わりました。貴方は何を話すのかしら?」
「良いの、シル?」
「問題ありません。それよりも」
「わかってる。いつでも動ける」
「何もしねぇよ!ったく。最初に言っとくが俺は神喰いじゃなくなってるからな」
「では何だというのですか?」
「混ざりもんかな。色々混ざってるが肉体のベースは竜と人だな」
「竜人ですか。新しい種族を生み出すのは容認できかねますね」
「そんな大したものじゃねぇし、色々隠せるようになるから問題ねぇ。それよりも問題は神力についてだ」
「神喰いでもなく神でも無いなら人でしょう?」
「ところがぎっちょん!扱える力は神力だったりする。だが、俺の神格は砕かれているから権能は使えない」
「それで?」
「砕かれた神格の中心核はラフィが持っている。で、浄化が終わった欠片の大半を渡せば?」
「神格が蘇る・・・いえ、修復される可能性があるわけですか」
「ちょっと違う。俺の権能は既に簒奪されている。つまり・・・」
「新たな神候補に・・・・いえ、彼は既に原初の使徒。だとすれば」
「完璧な現神人になるだろうな。いや、この場合は原神人か?」
「誰が上手いこと言えと。しかし、それが対話の内容なら取引する材料にはなりませんね」
シルはその言葉を発し、話は終わりだとばかりに攻撃態勢に入るも人影は、否、神喰いは更に話を続ける
「最後まで話は聞け。俺は奴に借りを返したい。あんたらはラフィを守りたい。そして奴の興味は幸か不幸かラフィに向いている」
「何が言いたいのですか?」
「共闘しないかと提案している」
「世迷言を」
そして、シルは攻撃を放とうとして・・・・止める
神喰いが全く防御していなかったがために
シルは全知であり、法を重んじる神でもある
その為に攻撃を躊躇った
シーエンもまた、神喰いに敵意が無いので躊躇ってしまう
そんな二柱に神喰いは更に提案する
「俺は暫く表舞台には出ないし、裏からラフィを手助けもする。それと、本来は渡すつもりなど無かったが効率変換も渡してやる」
「破格すぎて逆に疑わしい」
「ラフィは話が分かる奴だからな。それに面白れぇ。嫌いじゃない性格だな」
「それには同意。でも、何かイラッとする」
「あらあら。私も理解できてしまうわね。人で言うなら弟って感じかしら」
「なら俺は兄って所「貴方みたいな兄も弟も欲しくないわ」・・・・・」
「シルってたまに猛毒吐く」
「食神でも神喰いでもこの猛毒は喰えねぇわ」
この言葉を最後に3人はニヤリと笑う
誰も口にはしないが今ここに秘密協定がなされた瞬間だった
そして、口を開くのは神喰いだった者
「俺は暫くの間は地下に篭る。後はラフィの夢の中にお邪魔かな」
「私達は無意識集合体を消滅させたことにします」
「これを持って行くと良い」
「ん?隠遁の外套インビジブルマントか。しかも、ご丁寧に死神の恩恵仕様で上からの目くらましも可能か」
「裏切ったら直ぐにわかる様にもしてある」
「おお、怖っ!精々裏切らないように気を付けるか」
「連絡の手段は?」
「バレると面倒だからな。連絡は一切しねぇ。それに・・・・」
「一番警戒する国は西側ですか」
「そういうこった。ついでに原初様にでも会いに行っとくか」
「滅ぼされても知りませんよ?」
「多分大丈夫だと思うんだが。まぁ行くわ」
そう言って神喰いだった者は去って行く
後に残るは二柱の女神達であった
「さて、少しだけ神の恩恵を与えておきましょうか」
そして時が動き出し二柱の女神も消える
消えると同時に中心地から地下水が溢れ出し、クレーターは人工湖となってグラフィエルの逸話と神話性が新たに足されることになった
そして、神喰いだった者はグラフィエルと夢の中で会話する
実はこの会話が夢で無いと知るのは数年後の話である
皆さんに聞きたいのですがカクヨムとなろうで違った話にするか一部変えるか同じにするか
どれがお好みですが?
一応ノベルバとはこの幕間で分岐させました
(途中の話は同じですけど)
良ければ是非ご意見ご感想を頂ければと思います




