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44話 反撃の狼煙

西の国境線


現在、竜王国守備隊と傭兵国軍が戦闘を開始した


互いの兵力は竜王国軍3千に対し傭兵国軍4万2千


14倍の兵力である




開戦より既に1時間経つが砦は何とか防衛を維持していた


竜王国は侵略を一切しない国である


逆に幾度となく帝国に侵略されて守り通してきた国でもある


故に防衛という一点においては世界随一とさえ言われる国であった




だが、その防衛は破られようとしている


兵力差14倍・・・・・いくら守り自慢の竜王国兵でも、奇襲に近い状況に加えて数の暴力も合わさり、良く1時間も持たせたと称賛されるべきものだろう


絶望が支配する戦場


しかし、兵は諦めない




王からの勅命は今暫く死守せよだ


援軍が来るとわかっているのにここを通してなるものかと兵は奮起する


だが、誰の目から見ても後1時間持ちこたるのは不可能という状況


そんな中、竜王国兵は遠くから聞こえる声に驚愕し、歓喜する


その声は風竜達の咆哮


未だ遠くにその姿はあるが、間違いなくこちらに向かってきている


それを確認した司令官は檄を飛ばして兵を鼓舞する




「貴様らー!ここが正念場だ!意地でも持たせろー!我らは竜と共にあり!国と共に死す!されど死す時は悔いを残すな!悔いがある者は生きて帰れ!竜王国に神竜様の導きがあらんことを!!」




「「「「「「「オオオオオオオオオオ!!!」」」」」」」




兵達は司令官の言葉に士気を上げ、援軍が着くまで持たせることに成功する


だが、被害は甚大で死者1300人に重傷者1100人


動ける者は僅か600人ほどしか残らなかった












~~~~~~~~~~~~~~~~~~


時は少し遡り、国境線へと飛び立った頃に戻る


国境線までは竜達でも1日はかかる


そこで俺は時空間魔法を応用して短縮を図る事にした




先ずは遠見の魔法で最大望遠して場所を確認


ゲートを開き全竜通過を繰り返す


ゲートは本人が行った場所しか使えないと教わるが実はそうではない


少し面倒ではあるが座標軸さえ固定すれば目視した場所も繋ぐことができる


今回は座標軸の固定し、ゲートを応用して使った




普通のゲートより演算も魔力消費も多いが俺には問題がない


思考超加速、並列思考、全智神核、五感強化を使えば簡単である


チート?ご都合主義?何とでも言え!


使える物を使って何が悪い!


今回は時間との勝負だ


間に合わなければ意味が無い




目視してから座標軸を固定してからゲートを乱発し、本来の時間を短縮しまくった結果、僅か30分で砦の見える位置にまで来ることに成功した


砦は既に黒煙を幾つか上げており陥落は時間の問題みたいだ


その光景を見た風牙を筆頭に風竜達は一斉に咆哮する


何だ?と思ったが即座に理解した


理解できたのは幾度も咆哮を聞いたせいだ




竜の咆哮はとにかく耳が痛い


大きな声量なので、1匹ならまだ良いが複数になると耳がキーンとなり、数が集まれば耳を塞ぎたくなるほどの大音量になる


竜達に失礼だから塞ぎはしないがとにかく大変なのだ




俺と共に向かっている風竜族は風牙を除き53体


それが一斉に咆哮すれば間も無く援軍が到着する事を伝えられ鼓舞も出来る


竜王国ならではのやり方である


砦までは30分程で着くが、被害を抑えるために敵本陣の真上へゲートを開いて、一気に突入することを竜達に伝える


奇襲には奇襲をして意趣返しだ




ゲートを開き敵のど真ん中へ出ると同時に一斉にブレスを放つ風竜達


突然の攻撃に慌てふためく傭兵国軍


砦内の竜王国兵も救助しないといけないので




「風牙、ここの戦場は任せる。竜王国内には入れるな。逃げる敵は敵総大将と幹部のみ追って、生きて連れてこい。俺は砦内部を制圧する」




「承知しました。それ以外は好きにしても?」




「問題ない。但し誰一人死ぬことは許さん!」




「はっ!我らが忠誠にかけて!」




風牙に後を任せ、視認してゲートを開き、砦前に出る


傭兵国軍兵は直ぐに襲い掛かってくるが右手に大剣、左手に片手直剣を握り無造作に切り捨てる


予備動作すらない剣戟に斬りかかった兵は縦、横、斜めと真っ二つに切り裂かれる


砦内に味方もいるので大規模魔法は使えないのでちょっと時間がかかりそうだな


神銃で誤射しても大変なので今回は剣のみだ


魔法は探索魔法と結界魔法のみを使用して敵兵魔法への対処と防御に加え、敵味方の選別を行い制圧して行く事にしよう


砦の周りの兵を数分で全員斬り捨てて、砦内部に入るとかなりの敵兵がいた




これだけ侵入されてよく耐えたものだと感嘆する


守りの竜王国とは名に恥じないな


兵が優秀なのか指揮官が優秀なのか?


・・・・・・いや、両者共に優秀で国を思えばこそか




何となく笑みが零れる


何故零れたかは自分でもわからない


敵兵から見れば只々不気味であろう


敵兵から見れば眼前に立つ俺は死神と同義であろう


だが俺は、あの不器用で実直な死神シーエン様を知っているので、そんな感情を抱いた奴は失礼な奴認定して真っ先にぶった斬った




砦1階には1千以上の敵兵がいた


1階の竜王国へと抜ける門の前で交戦してるのを探知魔法で確認したので、眼前にいる敵兵には全員この世からご退場して頂いた


下手に情けをかけてこっちが危険に晒されるのは嫌なんでね


所要時間は僅か5分


1千の敵兵が首ちょんぱされて絶命した




2階と3階には生き残りがおらず4階に100弱


門前で交戦しているのが450位か?とそこで100人程の気配を察知する


200名程と交戦してるが別に1千名程の生存者がいる


俺は先に100名程の方を優先した


間違いなく負傷兵だからだ


放っておけば被害が拡大するのは目に見えている




縦横無尽に立体機動的な動きで負傷兵たちの元に辿り着くと大剣一閃


一振りで十数人の首を飛ばす


何が起こったか両軍共に理解出来なかったが、理解する前に更に残っていた敵兵半分の首を飛ばす


「て、敵襲!」と、敵分隊長らしき者が声を上げるが遅い


声を上げた直後に胴を周りにいた敵兵達を巻き込んで横薙ぎに斬って絶命させる


残りは30を切っていたので大剣二振りで首を飛ばして一気に殲滅する




「無事か?」




そう問いかけるも警戒する竜王国兵


警戒されても仕方ないので、簡潔に伝えるだけ伝えて次に向かう事にする




「俺は援軍だ。外では風竜達が敵軍に攻撃している。門の前で防衛してる奴らがいるから助けに行く。負傷者は任せるぞ。一応、1階の敵は今はいないが2階以降はいるから気を付ける様に。理解したか?」




矢継ぎ早に告げる俺に警戒しつつも呆然とする兵達だが、いち早く理解したのであろうか?一人の兵が「了解した」と告げる


返答を聞いた俺は竜王国に続く門防衛部隊の援護に向かう


呆然とする兵達だが、ハッ!と我に返り、再び負傷兵の護衛に入る




門の前で防衛する竜王国兵


全員生きてはいるが無傷な者は誰一人おらず、中には瀕死の者もいた


傭兵国軍はこの時、突破は確実だと確信していた


その背に死を運ぶ者が現れるまでは


竜王国兵も同じであっただろう


俺が現れるまでは




負傷兵の護衛を救助し、砦内を駆け抜け、門前の交戦場所に辿り着くや一気に背後から突撃し、大剣を一閃させて敵兵の首を飛ばす


縦斬りではなく横薙ぎなのは一撃で数を稼ぐためだ


両手剣ではなく大剣を片手で扱っているのもその為である


敵がこちらに振り向き、視認し、声を上げるまでに出来る限り数を減らす


数が多すぎる為に俺は一気に殲滅する方法を取る




門前には敵兵1千5百が詰め寄っていたが、ある程度密集しており、また竜王国兵を半円陣で取り囲んでいるのが仇となった


大剣に光魔法と火魔法を付与して時空間にて固定


イメージとしては◯ーㇺサーベルっぽい付与魔法だ


一定距離を伸縮可能な光炎の刃を伸ばし味方に当たらぬ様に横薙ぎ一閃して首を飛ばす


傷口は瞬時に焼かれ、血すら出ず、1千近い敵兵が一撃の下に命を散らす


俺以外の全ての人間が、今の光景を理解できなかった


包囲陣は崩壊し左翼と中央は誰一人生き残っていなかった


呆然とする両兵達だが俺はその隙を見逃すほど甘くない


何が起こったか理解する事も無く、残った敵兵も同じ攻撃で首を飛ばされ、この世に別れを告げる事となった




大剣を肩に担ぎ、防衛の兵を見ると明らかに持ちそうにない者が何人もいる


かろうじて息があったので、広域回復魔法【ヒーリングフィールド】を展開し、一命だけは取り留めさせて他の者達もある程度癒す


呆然としている兵達に向けて




「この場の指揮官は誰だ!」




と声を張り上げると一人の中年兵士が出てきた


相手の言葉を聞かず、俺は一方的に告げる




「1階は上階から来ない限り完全に制圧した。負傷兵もその護衛も無事だ。この場で死にそうだった者達の一命は繋いだ。流れた血は戻らないから無理はさせるな。これより上階に上がり砦内の制圧に入る。引き続き任務を継続されたし」




それだけ告げ、その場を後にして上階へと向かう


残された兵士達は未だ理解が出来ないのであったが任務は継続するのであった




上階に上がり敵を一閃の元に斬り捨てているのだが数が多すぎる


2階で300人、3階で200人斬り捨てたのだが3階の敵が未だ数多く残っている


2階は制圧し終えて階下に逃がさないようにしているのだが3階と4階合わせて未だ1千以上いる


既に3千以上斬っているので一体どれほど攻め込んだのだろうか?


しかも制圧し終えて、ようやく敵兵力の1割である


数の暴力の恐ろしさを改めて実感し、魔法での戦いは楽な戦いだったなとまた改めて実感した


砦ごと殲滅できたらどれだけ楽か


しかし味方の砦を吹き飛ばすわけにもいかず地道に掃討していくしかなかった








砦に突入して30分位経った所で、ようやく3階の制圧に成功したのだがここで状況が一変する


傭兵国軍が撤退の合図を出し、引き上げ始めた


4階に攻めあげていた敵兵が3階に降りると、そこには死が蔓延していた


たった一人の少年によって


突入部隊の指揮官であろう男は絶句する


延べ4千5百人の突入部隊が最早自分達5百人足らずしか残って無い事を瞬時に理解した


目の前には死神足らん少年


上階からは反撃に出た竜王国軍


情勢は決した


男は一歩前に出て降伏を宣言する




「部下の命だけは保証してもらいたい」




「これだけやっといてそれは無いだろう?最後まであがけよ。と言いたいところだが、降伏を認めよう。お前たちの命は保証する。武装放棄し、上階から来る竜王国兵に従え。降伏後に味方に危害を加えた際には一人残らず殺す」




それだけ告げ、上階から竜王国兵が来るのを待ち、降伏の受諾を告げて捕縛を任せる




「貴殿の協力に感謝する」




そう言って礼を述べるのは国境防衛隊の司令官だ


どうやら彼は俺の事を知っているようで、話を聞くと連絡用の魔道具があり王都から連絡を受け取っていたらしく




「一先ず何とかなりましたな」




と言う彼に、俺は




「まだだ。俺はこれから外に出て敵総司令官を捕らえる。この場は任せた」




それだけ告げて3階の窓から飛び降りる


慌てる指揮官であったが直後、巨大な影が下から上へと伸びる


その正体は風牙である


念話で状況を聞き、総司令官の捕縛には至っていないと報告を受けていたので、砦の下へ迎えに来るように指示を出していたのだ


最も3階から飛び降りるとは予想していなかった様で慌てていたが


その一部始終を見ていた両国の兵士達


竜王国側の兵士は「神竜騎士・・」と呟き、傭兵国側の兵士は「我々は神の怒りに触れたのかもしれない」と呟いていた





風牙に跨り空を翔けながら、撤退し敗走する傭兵国軍を見下ろす


風竜達は追撃戦を仕掛けており、降伏する兵すら殺していく


そこで全竜に念話を飛ばし、降伏する兵は殺すなと伝え、拡声魔法で




「降伏する者は武器を捨てろ。武器を捨てた者は5分以内に鎧を脱げ。敵対しない意思を見せた者はそのまま砦まで歩き捕縛されろ。そうすれば命は助けてやる。躊躇っていると死ぬぞ?」




この様な降伏勧告を出した


恐慌、錯乱状態の敵兵達は、我先にと武器を投げ捨て鎧を脱いでいく


未だ武器を持ったままの兵達は竜達によって殺されていく


傭兵国側から見れば戦場は阿鼻叫喚の地獄絵図である


そんな中、俺は上空から望遠で敵総司令官と幹部達を探す


辺りを見回していると一際豪華な鎧の一団を発見した


当たりを付けた俺は風牙と共にゲートを潜り一団の前に姿を現す




「お前達が軍の総司令官と幹部達だな?」




「き、貴様は何者だ?俺を前傭兵国王の息子と知っての事か!」




30後半でひげ面の男が吠える


傭兵国と言うから鍛えているかと思えば、デブのひげ面とか悪徳貴族って感じの姿だ


ぎゃーぎゃー喚いてやかましいので風牙に一声上げさせると黙った


そして、同じ質問をする




「もう一度聞くぞ?お前らが総司令官と幹部達だな?」




「そ、そうだ。な、何の用だ?まさか!?こ、殺しに来たのか!?」




「いや、捕えに来た。賠償金取らないと泣き寝入りだし。大人しく捕縛されるなら5体満足で多分帰れるけど、どうする?」




「所詮竜がいなければ何もできないのだろう?この卑怯者が!」




「我が主様を侮辱するか!その罪、死して贖え!!」




敵総司令官の言葉に風牙がキレて殺そうとするが制止する


俺もちょっとむかついたので条件を出してやった




「じゃ、こうしようか?俺一人対お前ら全員で俺の攻撃をかい潜って抜けたら見逃してやるよ。但し失敗したら死にはしないが5体満足は諦めろよ」




「小僧が!舐めた口を利きやがる!貴様らこのガキ殺して逃げるぞ!」




「交渉成立っと。勝負の開始は風牙の咆哮な。んじゃ頼むわ、風牙」




「承知しました。主様」




その言葉の後、相手が布陣し終わったのを見て風牙が咆哮する


一歩踏み出した敵は2歩目を踏み出すことはなかった


右手に片手直剣を構えた俺が一振り


それだけで敵総司令官と幹部8名は四肢を斬り落とされると同時に傷口を焼かれ地べたを転げる


何が起こったか全員が理解できずにいた


風牙ですらも何をしたのか全く解らないでいた


そして遅れて聞こえる絶叫


全員、四肢が無い事に気付き、絶叫し、気絶する


風牙は未だ何をしたか理解できず、俺に聞く




「主様。何をされたのですか?」




「簡単な事だよ。剣に炎と時空間魔法を付与しただけさ」




「炎は理解できるのですが何故、時空間魔法を?それになぜ一振りで全員の四肢が斬られたのか理解できないのですが」




「原理は視認してゲートを開くのと同じだよ。それで距離を無くして時空間魔法で剣戟をいくつもの空間へと分離させ分ける。後は開いたゲートの場所にそれを通せば一撃でこうなるのさ」




簡単に言ってるがその演算は人の身で不可能だ


今の所業は神の御業と同じレベルである


風牙は戦慄した


我が主はどれほどの強者であるかと


同時に安堵し歓喜した


あの時に敵対せずに良かったと


主は全ての竜を従えし者になると


竜王国は主の元に救われると


盟友との誓いを果たせると


風牙は頭こうべを垂れ、俺に再度忠誠を、否、崇拝とも言うべき言葉を捧げる




「我、風牙は主様に絶対の忠誠を。主様の為なら喜んでこの命、差し出しましょう。この言葉に偽りはなく、風竜族の言葉でもなく、我、風牙個人の忠誠と宣誓であります。この身、この命、主様と共に」




キョトンしてしまったがこれは風牙の決意であると理解した


この言葉に返す言葉は一つしかない




「俺と共に在れ。汝が想い受け取った」




「有難き幸せ」




そして、風牙は咆哮する


歓喜の咆哮を


一度、主を謀った身でありながら我が忠誠を宣誓を想いを全てを受け入れてくれた事に


主の深き度量に


主の愛に




風牙は風竜族の長ではなく神龍族の眷属としてでもなく風牙個人が真なる主を得た瞬間であった

作者です

もしかしたら1週間ほどお休みするかもしれません

ここ数日眼痛疲労や後頭部などが痛くて

更新が止まったら最悪入院してるかもしれません

なるべく継続して投稿しますがご理解のほどよろしくお願いします

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