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43話 竜王国と名付け

龍島全ての竜達と共に竜王国に向けて海上を進む


海専門の竜族である海竜シードラゴンも同行している


戦場が陸地のみの場合はあまり役に立たないのだが、水中戦があった場合を想定しての同行だ




竜王国は大陸の最東部に開けており帝国領からリュンヌ王国にかけて山脈が連なっている


傭兵国とは一部が地続きであるために、援軍を呼びやすくもありまた攻められやすくもある


現在、傭兵国が攻め込んだという話は無かった


竜王国に辿り着くまでは・・・・・




龍島を出立して2日


後1日で竜王国の海上に出る所で攻撃を受ける


船からの魔法攻撃により幾ばくかの竜達が被弾するも態勢を立て直す


傷は浅いので胸を撫で下ろすが尚も攻撃は続いている




「どこの奴らだ?」




「我が主君よ。あれは傭兵国の船団だ。この位置での攻撃となると、断定はできないが海上から竜王国への進軍の可能性がある」




炎竜からの答えに俺は拡声魔法で呼びかける




「こちらは敵対するつもりはないがこれ以上攻撃するなら容赦はしない。そちらの所属を明かせ。こちらは竜王国に用がある」




そう告げると攻撃魔法の頻度が上がった


船に国旗がはためかせられる


船の数は38隻


靡く旗印は傭兵国


攻撃はさらに増していき俺の中で傭兵国が侵略を始めたと確信した


これからあの不器用な風竜に一発ぶん殴ってから救う国だ


傭兵国?上等!!敵対するなら殲滅するまで!




「全竜達に告げる!奴らを殲滅しろ!」




その言葉に竜達は咆哮を上げ、船団へと突っ込んでいく


海中からは海竜達が攻撃を仕掛けて沈没させ、上空からは火・雷・風・氷のブレスが降り注ぐ


僅か数分で船団の4分の3が海の藻屑となる


船団は撤退して行くが、今逃がせば再編成し再侵攻してくるに違いないので徹底的に叩いた


生き残った者達が恐怖を伝えてくれるだろう


戦闘開始10分で全ての船が沈没し、竜達は勝利の咆哮を上げ、再び竜王国を目指す


生き残った兵達は後にこう語る





「あれは、戦じゃない・・・ただの蹂躙だ・・・・・。俺達は竜の怒りに触れたんだ」






あながち間違ってもいないが、竜の怒りではなくラフィの八つ当たりに近いものであった事は一生知られることは無いだろう





海上での戦闘を終わらせて、一行は竜王国の領海へと入る


領海に入り数時間後、二匹の風竜達と出会う


二匹は人語は喋れないが理解はしているらしく先導していく


飛び続けて半日、ようやく大地が見え遠目には城らしきものが見える


更に2時間ほど飛び、一行は竜王国王都ゴショクへと降り立つ




竜王国の人々は何事だと慌てふためくも攻撃はしてこない


現在降り立ったのは王都郊外である


そこへ兵を伴い王族らしき人達が姿を見せ更に風竜が姿を見せる




「貴様は何者だ!」




そう叫ぶ兵に王らしき人は、風竜達が頭を垂れている事に気付き、手を上げて兵士を止める


そこに風竜の長が現れて




「我が主様。ようこそ竜王国へ。出迎えをすると言ったにも拘らず出来なかった非礼をお詫びいたします」




そう言われるが俺はその言葉には返答せず不機嫌オーラを出す


風竜の長は何か言おうとしたがそれを遮り問う




「風竜よ。何か俺に伝えてない事はあるか?」




そう告げられ風竜は目を見開き、言いづらそうにしていたので一発殴り問いかける


周囲がざわつくが気にせず続ける




「お前は俺に竜王国に来いと言った。肝心な部分は隠してな。何故言わない?」




「・・・・・・・」




風竜は黙ったままである


俺は更に言葉を紡ぐ




「貴様は盟友の願いと主への忠誠は別だと思っているな?それは正解であるし不正解だ。忠誠を誓った主の命に背くなら不正解。主の命に従うなら正解。だがそんなに簡単な話じゃぁない。俺にも守りたいものがある様にお前にも守りたいものがある。何故言わない?断られると思ったのか?」




「・・・・・」




風竜の長は何も言わない


ただ、主への忠誠を踏みにじったと考えていた


この償いはただ一つ、全てが終った後に命を持って清算すろと決意するも、その考えは次の言葉に霧散し心酔する事になる




「俺はお前たちの主だ。俺の守りたいものへ害が及ぶなら手は貸せないがお前の願いは竜王国を救い存続させる事。違うか?ならば何故頼らない?何故願わない?貴様の前にいるのは誰だ?矜持がそれを邪魔するのなら捨てろ。誇りが邪魔をするなら犬にでも食わせろ。貴様にとって竜王国はその程度の物か?今一度問う!貴様の望みは何だ!!」




「竜王国を・・・・・友が作り、愛した国を守りたい」




「風竜よ!貴様の真なる願い、聞き届けた!!主たる俺が貴様の望みを叶えてやる!!勝手に死ぬことは許さん!!忠義に背いたと思うならその働きによって忠誠を示せ!!誇り高き風竜に名を送ろう。お前は今から風牙だ!その誇り高き風の牙にて我が敵を屠れ!願いを叶えよ!忠誠を尽くせ!」




「忠誠を裏切りしわが身に過分な名を頂き恐悦至極に存じます。主の期待を裏切らぬ様に。願いを叶えるために。この名に誓い新たなる忠誠を。我が望みを叶える為、我が主よ!どうかお力を!!」




「風牙の願い叶えよう!我と共に戦え!!」




その言葉を最後にここに集いし竜達が一斉に咆哮する


我らが主の為に!同胞の願いの為に!かつての友の為に!


咆哮が鳴き止むと風牙が今一度頭を垂れ謝罪する


俺は頬を一撫でし、「救うぞ竜王国を!」と一言だけ告げると竜族にはめったに見られない本気泣きを見せ目から涙を零した




状況確認に来た者達は呆気に取られている


状況が整理できない


我が国の守護竜が殴られた?主と呼んでいる?たった一人の少年が国を救う?


様々なものが頭の中を交錯する中、王はおもむろに告げられる




「状況確認がしたい!話し合いの場を設けて貰いたい!」




俺がそう言うと我に返った兵達がおもむろに剣を抜いて戦闘態勢に移り、攻撃を仕掛けようとするも風竜達によってその身を地に伏せられる


未だ状況は理解できないが風牙の一言により王は我に返る




「王よ。こちらは我らが主様だ。失礼のないように頼む。風竜族以外は主様に忠誠を誓った竜達であろう。心配はいらん。何かあれば主様の鉄拳制裁が飛ぶからな。今は何よりも迅速さが大事だ。呆けてないで急がんか!」




風牙に言われ、王を含めた家臣達は一先ず俺の指示通りに、竜達には水と食料と休息を与えるように指示し、状況確認できる場所への案内と話し合いを求めた


風牙を交えて話をするため王城の庭を会議場所にすると告げられて了承する


とりあえず状況は理解出来てはいないが、敵ではないと結論付けた様で、会議の用意の間に休息をとる事となった




用意された食事を取りつつ休息をとっているとそこへ俺より年下っぽい女の子が顔を見せに来る


傍らには女性がおり二人の服装や振舞いから上位貴族以上であると結論付けた


二人共興味津々と言った感じだが、母親であろうか?女性の方は少し警戒しつつ自己紹介を始めた




「お初にお目にかかます。オーディール竜王国王妃イリュイア・ゴショク・フィン・オーディールと申します。こちらは娘のシャラナ・ゴショク・フィン・オーディールです」




「シャラナ・ゴショク・フィン・オーディールです。初めまして神竜騎士様」




二人は王族だった


そういえばさっき見たような気もするがそれよりも気になったのが




「神竜騎士って何?」




と、自分の自己紹介も忘れて聞き直してしまった


あっ、と気づき慌てて自己紹介をする




「失礼しました。グラフィエル・フィン・クロノアスです。で、神竜騎士って何ですか?」




再度聞き直すとクスクスと笑われてしまった


最近横柄な態度になりがちなので気を付けないとダメだな


二人も警戒が和らいだので気を取り直して話をする




「神竜騎士とは我が国の伝承に残る騎士の事です。初代国王が竜と友になり圧政者から民を救い王となる伝承です。真実かは分かりませんが少なくとも風竜様は友であったのだと我が国では皆が信じており守護竜として崇めております」




「守護竜様はきっと神の使いで一番偉い竜なんだよ」




真実を知っている俺としては何とも言い難いが夢を壊すのも良くないので曖昧に返事しておいた


しかし、神竜騎士・・・か


これ以上変な称号が尽きませんようにと願うしかないな


フラグっぽい気がしないでもないが




話を続けると、ここには俺の念願の食べ物が生産されていた


この国では普通に食べられているそうで俄然やる気が出る


いや、元々やる気はあるよ


ただ話を聞いて天元突破しただけで




天元突破した理由は米が栽培されていて、普通に食べられている事だ


更には味噌と醤油もあるとの事でこれは相当嬉しかった


味噌と醤油はミセウとセイウと言う名前で問題は味だ


二人に頼んで味見させてもらうと、ミセウは濃い目の味噌って感じでセイウはかなり濃いが味は一応醤油だったので思わずガッツポーズした




ついでに米も味見させてもらうが何とも言えない感じだ


味、粘り気、米の形は日本米なのだが、味だけが知ってる前世の米より数段落ちる


色んな改良をしているそうだが成果が中々出ず、更には汚染のせいで改良も少しずつ困難になっているそうだ


ここ数年で味は更に上がったそうでこれからに期待する為にも絶対に汚染の完全除去と元凶の排除をすると心に決めた




二人と話をしていると兵の一人が呼びに来て、用意が出来たと案内される


まだ警戒されているが、王妃と王女も同席するらしく、二人はさっきのガッツポーズ以降は完全に警戒を解いていた


ナイスだ!俺のガッツポーズ!




用意された会議場所に行くと既に国王、臣下、風牙が待っていた


先ずは状況確認の為に現在の敵対者の確認をする


現在の敵は腐竜ドラゴンゾンビを統率か生み出してる何かという認識だったが俺はそこに情報を付け足す




「ここに来る前に海上で傭兵国の船団と交戦した。宣戦布告は届いてないのか?」




この言葉に王を始め臣下達は「バカな・・」と青褪めていた


信じたくないという顔をしているが竜を発見しこちらの警告を無視した上で攻撃してきた以上は敵対国家である可能性は非常に高い


そんな中で新しい情報が届く




汚染地域が新たに広がった報告と国境沿いに傭兵国が軍を展開したとの報告だ


最悪の情報に俺以外の全員が懸念の表情を見せるが鼻で笑う


それが気に食わないのか、臣下達が罵詈雑言を並び立てるが風牙により黙らされる


王妃も王女も今にも泣きそうな顔をしているが情報が足りないので更に問う


汚染はどこから始まったのか?どうやって食い止めているのか?


返された答えは食い止めていたわけではないだった




汚染は腐竜の侵攻に合わせて広がるので既に汚染された地域から出さなければ広がらない


しかし、汚染拡大の報告が入り、それは同時に部隊が敗走したか壊滅したのと同意義であった


汚染域の中心地は西の山脈寄りと言うのも判明した


ここで浄化をどうするか?なのだが風牙が答える




「白竜族は光を司る種族です。協力か主様を認めさせれば」




「生息域はどこにある?知っているのか?」




「現在の生息域は北方です。この地図ですと帝国領内の更に北になります」




「遠いな。風牙は風竜族で一番足の速いものを使者に送ってくれ。こちらに出向いてさえもらえれば何とかする。傭兵国については俺が前線に出て追い払おう。炎竜族と雷竜族は被害の拡大を食い止めてくれ。水龍族はまた船団が来ても敵わないから海の方を。残りの風竜族と俺で傭兵国を追い払う」




「主様。兵達はどう動けば?」




「未だ疑心暗鬼の者は役に立たない。今回は置いて行く」




「委細承知。早速伝えてまいりましょう」




風牙は翼をはためかせ休息を取る竜達へと指示を伝える


兵達は「風竜様になんて口を」だの「今に神罰が下る」とか「誰が貴様の指示で動くものか」などほざいているが完全無視を決め込む


次に兵達はどのようにして腐竜の進行を阻止していたかを聞く


だが、兵達は答えない


自分の国なのに動こうとしない奴らにいい加減腹が立つ


軽く威圧してやろうかと殺気を出そうとした時、王女が兵達に問う




「あなた方は何を意固地になっているのですか?我が国とは全く関係ない方が我が国を救おうとしてくださってるのですよ」




その言葉に兵達は顔をしかめる


頭ではわかっている


しかし心がそれを許さない


彼らの心情はわかるが、今は非常時だ


俺は肩を竦め、ため息一つ吐き、風牙に問い投げかけた言葉をもう一度言う




「貴方達の心情は理解できる。だからこそ敢えて言わせてもらおう。先に風牙にも言ったが、何故頼らない?何故願わない?矜持がそれを邪魔するのなら捨てろ。誇りが邪魔をするなら犬にでも食わせろ。貴様らにとって竜王国はその程度の物か?」




その言葉を聞き更に顔をしかめる中、王が声を上げる




「一つだけお聞きしたい。この国を救うにあたって貴殿に何の得が?」




「先にも言った通りだ。風牙が望み、願い、俺の害へとならないのなら、配下の望みを叶えるのは主の務めだ」




「本当にそんな理由で?」




「ま、今はそれだけじゃないけど」




「他の理由を聞いても?」




「探し求めていた食材と調味料があった!これを失うのは世界にとっての大損失だ!米はまだまだ改良の余地があり、今後に期待できる!それが理由だ!」




理由を聞いた者達が呆れているが王と臣下は違った




「我らの努力の結晶を損失と言って下さるのか」




「古来より伝わってきた米だがいつか未曽有の危機の時にきっと役に立つと言われてきたが・・・・・ふふふ、そなたは面白い」




呟きとも何かを決意したとも取れる発言だが迷いは消えたようだ




「兵達よ!思う所はあるだろう!だが今は国を救うため、希望を絶やさぬために彼に協力を!全ての責任は私が取る!」




王の発言により兵達も渋々ながら情報を公開し始めた


まだ渋々なので俺は条件を付ける




「傭兵国を追い払ったら少しは信じろよ。さっき言った言葉に嘘偽りはない。12神に誓おう」




「そうです。神竜騎士様は嘘は言っていません!さっき味見をされてガッツポーズしていました!」




王女が援護射撃をしてくれるがガッツポーズは言わなくても良いんじゃないかな?


気恥ずかしくなり頬をかくと王が盛大に笑う


娘が見て話した内容に先の言葉は嘘が無いと判断したようだ


王は声高らかに宣言する


王の声にはもう迷いも疑いもなかった




「兵よ!臣下よ!国を守るため、我らは我らの出来る事をするべきだ!風竜様が主と認めた者なのだ。その力は推して知るべきなのであろう。だが彼は我らに頼れ、願えと言った!ならば我らは頼り、願い、協力しようでは無いか!彼は我らの国の食を損失と言った!祖先が積み上げてきた努力の一つを認めたのだ!ならば我らは認めし彼に最大の敬意を払おう!今、我らに必要なのは矜持でも誇りでもなく存続である!故に王は汝らに告ぐ!彼に続け!!」




王の言葉にこの場にいる臣下達は震え、兵達は敬礼する


兵達は俺に一度頭を下げ、各々が資料を取りに行き、臣下達は情報の整理に入る


王妃は王にウットリしている


完全に惚れてるなぁ


王女は「流石お父様です!」と誇らしげだ


そこへ一人の青年が姿を現す




「父上!傭兵国軍が国境線にて戦闘を開始しました!兵力差があり、防衛しつつ撤退戦しか出来ません!」




その言葉に王は




「今暫く持たせよ!間も無く援軍が向かう!」




と答え、息子である王子に指示を出す


今の状況なら先に敵を叩いた方が余裕を作れると判断した俺は




「情報整理には時間がかかるだろう。先に見えている敵を叩く」




そう言って風牙を呼び、その背へと飛び乗る




「行くぞ風牙!目的地は国境砦!敵は傭兵国軍!しくじるなよ?」




「承知!風竜族、全竜よ!主と共に!!」




風牙の言葉に咆哮する風竜達


大空へと翼をはためかせ、咆哮し、全ての風竜が飛び立つ


さぁ、反撃開始だ!!

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