38話 新魔法と翼竜殲滅
会議室を出て王族ご一行と鉢合わせしそして会議室へ連行される
何故にまた会議室へ逆戻り?
そんな思いを知ってか知らずか状況説明するようにリアフェル王妃に言われるのだがヴァルケノズさんに聞けば良いじゃんと思う俺はキッと睨まれてしまい肩をすくめて「わかりましたよ・・」と答えるしかなかった
5分程で簡単に説明し、手ごろな場所で戦闘をしようと会議室を出て行こうと席を立つのだが
何故かミリアとリリィが両隣に立って行く手を遮る
今度は何だ?と思うと同時に二人から突拍子も無い事を言われ、思わず「はっ?」と漏らしてしまった
仕方ないと思うぞ?だって「夕食は食べましたか?」に「まだならここで食べていかれてください」だったのだから
緊張感の欠片も無く、周りも「何を言ってるんだこの非常時に」と半ば呆れている
だが、二人はどこ吹く風で俺からの返事を待っている
「串焼き2本を夕食代わりに食べたから」
そう言って再度会議室を出ようとするが両腕を捕らわれてしまいそのまま椅子に座らされてしまう
二人は笑顔のまま、決定事項と言わんばかりに告げる
「きちんと食べてはいないのですね。でも食べ過ぎも行けませんから軽めのものを用意致しましょう」
「ご飯はきちんと食べないとダメよ。ラフィ」
そう言って二人は「「ラフィ(様)が勝手に出て行かれない様に監視していて下さいね」」とだけ言い残して会議室を後にする
聖騎士達は御子の言葉でもあるので「「「「「はっ!」」」」」と敬礼をするのだが二人の笑顔に額から汗が落ちる
ため息一つし、肩を竦め、今度こそ会議室を出ようとするが聖騎士達に入り口を固められてしまう
更にはリアフェル王妃やフェルにも引き止められ挙句には他の王妃様に王女達にルラーナ姉迄もが引き止めるので諦めた
10分ほどして二人がメイドを引き連れて戻って来る
カートの上にはパン・スープ・サラダ・果実が乗っておりメイドではなく二人が料理の配膳をする
王女と御子に配膳させて良いのか?とも思ったが両国のトップは特に何も言わなかった
用意された食事もそこそこの量があるのだが問題はそこじゃない
用意された食事は一人分しか無く、俺の分だけだった
思わずヴァルケノズさんが「え~と・・他の人の分は?」と聞くと、ミリアは「食堂の料理人が作っていますのでそちらで後で食べてください」とやはり笑顔を崩さず答えた
周りには嫉妬と殺意が渦巻いていた
俺もこんな中で食えねぇよと口を開き始め・・る前にリリィが「空腹で戦うのはダメよ」と有無を言わさずここで食えという
更に二人の笑顔のダメ押しが来る
退路は既に無くなっていたので一言
「え~・・みなさん、何かすいません。食べないと出れそうにないので申し訳ないですがいただきます・・・」
そう言って食事を始める事となった
周囲の視線が痛い中、食事を始めるのだが味を楽しむのが俺である
もう開き直って食事を楽しむことにした
まずはスープを一口、うん、美味い
これは豆のスープか?このスープは結構薄味になりやすいのだがしっかりとした旨みが出ている
次にサラダを口に運び、ふむふむ、このドレッシングは中々だな
酸味が強めだがそれに負けない果実の甘みみたいなのがあり塩っ気が上手くそれを引き出している
パンを手に取ると中には燻製の魚と少量の野菜が挟んである
パンはバターロールみたいな形状でバターロールより二回りほど大きい
かぶりつくと柑橘系の酸味と塩っ気が燻製の魚と野菜の旨みを引き出す
どれも美味いので自然と顔が綻ぶと「ゴクッ」と喉を鳴らす音が聞こえて来たが開き直ってる俺は気にせず食事を堪能する
スープを口に運びつつ料理を見渡したところで「ん?」と思わず声を上げてしまった
二人は何か口に合わなかった!?と顔に出ていたので「違うから大丈夫だよ」と言い少し考えに耽る
食べながらどの魔法を使用するか考えていたのだが、いくつかの魔法を思い浮かべたら閃めくも、何か足りないなと思い、つい声を出してしまったのだ
「弾丸・・電力・・飽和・・圧縮?収縮?いや・・」
とぶつぶつと呟く俺に周りは何事とかとざわつくが無視する
何か足りないなと思いスキル全智神核を使ってみる
すると頭に声が響き聞こえてきた
『初めて私を使ってくれましたねマスター!嬉しいです。知りたい事は何ですか?』
全智神核って対話できるのか
話し方は念話とほぼ同じだし問題なさそうだ
そう結論付けて全智神核に答えを求める
『荷電粒子砲若しくは超電磁砲を魔法で再現可能か?』
そう告げると直ぐに回答が来る
『超電磁砲は再現可能です。荷電粒子砲は類似で良いなら再現は可能ですが魔力消費が多いです。超電磁砲より火力が高く荷電粒子砲より消費量が低いなら熱を利用した陽光砲を提案します』
『避けられない為に速さは必須だがそれに関しては?』
『でしたら超電磁陽光砲で如何でしょうか?火力に関しては荷電粒子砲とほぼ同等威力で速さは超電磁砲と同じですが問題点を上げるなら核が必要になり熱に耐えれる素材が必要ですが』
『荷電粒子砲の類似について説明を頼みたい』
『荷電粒子砲には荷電粒子に原子核が必要ですがそちらの生成には問題ありません。加速器についても問題はありませんが地磁気の影響を受けやすく途方もない演算が必要になります。なのでこちらも陽光を使いますが魔力消費が超電磁陽光砲の8倍となります』
『俺の魔力は持つのか?倒れるのは論外なのだが?』
『魔力は足りますが消費の仕方によっては軽くて倦怠感か目眩で酷い場合は気絶があり得ます。なので超電磁陽光砲を推奨します。核に関しては本来であれば金属を使いますが魔法で代用も可能です。但し消費魔力は増えます。それでも荷電粒子砲よりは遥かに少ない消費量で実行可能です』
『構築を頼めるか?正直途中までは予測できるがどうやって陽光を加速さるかわからん』
『正確には加速させるのではなく陽光の中に雷を含ませ2本のレール上で雷撃を発生させ収束と反射させた陽光を撃ち出します。速さを求めてるとの事でしたので更に速さを乗せてみました。』
『つまり核は雷撃の魔力を核として収束・固定・圧縮・反射した陽光を2本のレールに雷を這わせさらに加速するで良いのか?』
『概ね正解ですがレールで加速させずとも視認は困難な速さです。更に瞬時に燃やし尽くすというより溶かすが正解ですね。なので火力に関しても問題ありません。どちらにしますか?』
『試し撃ちは必要だな。多重展開は可能か?』
『可能です。多重展開しても荷電粒子砲の10分の1の魔力消費かありません。懸念されていた事にはまずならないかと』
『陽光だけでも視認は困難な速さになるか?』
『なります。発射と同時に0.3秒ほどでの着弾になりますので陽光のみでも充分です。先程の方法の場合は0.01秒で更にレールを這わせた場合には更に加速されます。陽光砲だけでも多重展開すれば回避はほぼ不可能で絶命させることが可能でしょう』
『陽光砲だと光と火の属性に時空間魔法だけか?』
『水も必要です。構築しますか?』
『実戦でいきなりは怖いからな。念のために構築を。一度は自分で出来るか試してみる』
『イエス・マイマスター』
全智神核と話を終え意識を戻す
二人が心配そうに見つめていた
時間して15分位経っていた
その間微動だにせず一点を見たままだったそうだ
心配する二人に「ちょっと新魔法の開発してた」と告げると二人は安心した顔になる
俺ってそんなに心配されるほど危なっかしいんかね?
ヴァルケノズさんに急ぐ必要は無くなったが試したいことがあるから一度神都の外に出て実験してくる旨を伝え今度こそ会議室を後にする
あ、出された食事は全部美味しくいただきました
神都外へ出て空間結界を展開し認識阻害をかけ実験を行う
手の平に火と光を発動させ疑似太陽光を作る
更に水魔法で反射用のレンズを作り光を収束させる
そこで気付いてしまった
別に反射要らなくね?
一度魔法を消し再度疑似太陽光を作るがそこで更に気付く
そもそも疑似太陽光を圧縮して撃てば良いのではと?
試してみると視認できる速さだった
なので疑似太陽光に本来は身体強化である雷化を付与して放つ
放つと同時に岩が溶けている
全智神核を呼び出しこれを告げるとお互いに沈黙が流れた
俺がやったのは全智神核が提案した超電磁陽光砲と同じものであった
全智神核の言い訳はそもそも魔法に魔法を付与とかあり得ないのでそれ自体を排除していたそうだ
それが出来るなら今構築してる方法よりも更に消費量が少なく構築が可能でもある
全智神核さんよ、しっかりしてくれ
今後は付与も視野に入れて提案すると聞き、多重展開用の構築だけ任せてリンクを切った
実験と試射も終わったので神都に戻る
戻ると全員が待っていた様で結果を聞いてくるので問題無しと答えておく
明日は日が昇る前に起きる予定なので教会本部で寝る事を告げ部屋を用意して貰って就寝する
避難してきたランシェス王国組はミリアを含めて話をしたそうだったが寝坊するわけにもいかないので辞退した
ルリとハクについては念の為にルリは南へハクは王族の護衛に回した
ご褒美はミリアの料理にしよう
そんなことを考えつつ意識は落ちて行った
翌日、日の出前
俺は起床し、窓から空を見る
日はまだ上っておらず辺りは暗い
今回はワイバーンとは言え灰色だ
念には念を入れて神器装備で行く
教会本部は夜勤組が巡回していて軽く挨拶をし食堂へと向かう
本来は明かりが落ちているが非常事態の上に防衛の騎士が大多数いるので明るいままだ
軽く何か胃に入れようと食堂のカウンターへ行くと複数の騎士が絡んでくるのでとりあえず半殺しにして表に放り出した
何を言われたかって?そりゃ「御子様に相応しくない!」だの「昨日の会議では舐めた態度を!」だの「ランシェス王国の王女も終わった」とか、かなり舐めた口を聞いてくれたのでいつもより3割増しで半殺しにしました
当然の如く、騒ぎは大きくなるわけで騎士団長や近衛が来て、更には枢機卿の一人が土下座をする事態にまで陥る
一応なんで絡んできたか聞くと、やはり人の口に戸は立てれなかった様で、色々と噂が流れており、聞いてる内に許容できない部分が多々あって暴走したっぽいな
とりあえず許した俺は戦場に誰か付いてくるのか確認を取ると近衛2名と今半殺しにされた奴らと第1聖騎士団から数名付いてくるそうだ
聞くと第1聖騎士団団長自らが同行するらしい
近衛である第0聖騎士団は団長を筆頭に副長がおりその下に11の近衛聖騎士がいる
各聖騎士団から騎士を回し、11の近衛騎士の部下につける事で近衛騎士団を構築していた
今回は防衛に着く聖騎士団とは別に第1聖騎士団の騎士達が近衛直下に入るそうで第1聖騎士団団長と副団長は個人で動けるので俺の方に着いてくるそうだ
万が一には俺を守るのが仕事だそうだが半殺しにされた奴らは当てにならんだろ
そんな他愛もない話をしつつ夜が明けて日が昇ると突如、鐘が鳴り響く
ワイバーンの群れが視認できたのだ
距離はまだあるが数時間のうちに神都に辿り着く位置だ
おもむろに席を立ちあがり食堂を出て入り口に行くとそこにはミリアとリリィがいた
見送りかな?と考えていると二人は着いて行くと言い出した
これには俺以外の全員が慌てた
俺は着いてきても被害は出ないと確信していたのだがある理由の為に却下した
二人は不服そうだが万が一の為に渋々了承した
理由はワイバーン殲滅後に俺は直ぐに南へと行かなければならない
二人は置いてきぼりになるのでそれなら
「ワイバーン殲滅後に南へ来た方がより安全で一緒に帰れるよ」
と提案したら渋々了承したのだ
二人に見送られて東へ向かう面々
神都を出て15分ほど歩いた場所で俺は歩みを止める
「どうかされたのですか?」
そう聞かれ、ニヤッっと笑いながら答える
「ここで迎撃する。多分殲滅できると思うが、出来なくてもここに辿り着けるのは灰色だけだろう」
それだけ言うと魔法の行使に入る
多重多層展開をし更には一つの疑似太陽光から複数方向に展開されるようにする
要するに乱れ撃ちだ
群れを面と考えそこに対空砲火(そんな生温いものではないが)をする
空に対する絨毯爆撃だ
鐘が鳴ってからここに来るまで1時間弱で射程距離には十分届いている
もう1時間もすればワイバーン共の射程距離に入るが勿論そこまで待つ必要はない
10数秒で展開を終わらせ、地上から光の線が幾重にも空に放たれる
全弾発射フルバーストして一気に屠っていく
ワイバーンは1匹、また1匹と空から地上に向けて落ちていく
探知魔法で地に落ちたワイバーンに息が無いかを確認するが地に落ちたものは全部死んでいた
空にはまだいるが第2射、第3射と放ち4射目を打ち終わった後には空には1匹も残っていなかった
探索魔法で生き残りがいないか確認すると1匹だけ地に落ちた中に生き残りがいた
多分灰色の奴だろうと思い、生き残ってる奴に狙いをつけ魔法を放つ
そして生き残りはいなくなった
見ていた騎士達は茫然自失で目と口が大きく開いている
僅か数分で絶望が消え去ったのだから彼らの反応も仕方ないと言える
そんな彼らに俺は
「じゃ、次は南に行くから後始末よろしく~」
とだけ残して南の戦場へと向かう
未だ彼らは茫然自失で我に返るのにそれから数分の時間を要した




