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258話 ランシェスに残した問題の解決

 戦勝パーティーも兼ねた収穫祭に各国から国賓でと招待され、ついでに自国の東西南北辺境伯が主体となった収穫祭にも呼ばれ、南部辺境伯邸のパーティーに出席し、次は東部辺境伯家への出席となった後、シンビオーシス王族である俺達は1週間ほどの余裕を持って、ランシェスの大使館となった元屋敷へと無事に到着した。

 当然というか、東部も南部と似たような感じのパーティーだったので、疲れたとだけ言っておく。


「貴族って、ほんっと面倒だと思う」


「私もそう思います。陛下」


 相槌を打ったのは、処刑された元皇太子の娘であり、帝国内乱後にナリアへ弟子入りした女の子である。

 侍女序列にはきっちり入っており、諸事情を加味たとしても上位に食い込んでいたりする傑物で、ナリアの愛弟子の1人でもある。

 ナリア直轄の護衛侍女部隊の序列四位で、名前はイルリカ。

 皇族の名どころか、母親の実家である商家で平民の母方性も名乗れないので、ただのイルリカになっている。

 そんな彼女だが、才能があったのだろう。

 わずか半年で序列に食い込むほどだった。

 ナリア曰く、後が無いのもあるが、武芸全般は皇族の血もある――らしい。

 因みにだが、母親も一緒にメイドをしているが、流石に序列入りはしていない。

 ただ、商家の娘だけあって、算術などの商家に必要な教育は受けていたので、家臣の子供達の教育係に落ち着いていた。

 余計な思想も無いので、大手を振って任せられたのは大きかったな。


「どうされたのですか?」


「いや。そう言えば、もう一人は?」


「屋敷の警備と冒険者業を半々でこなしております」


「その母親は?」


「形式上は侍女ですが、ほぼ文官ですね」


「ランシェスだとやりづらいか。……三人を呼んできてくれ」


「かしこまりました」


 イルリカが、自身の母親も含めた三人を呼びに行く。

 会話に出したもう一人も、俺達が帰るまでは大使館の警備に殉じているので、休憩時間でもない限り揃わないなんて事は無い。

 なので、今後の話をしていくわけだ。

 大使館で仕事をするか、公国に移るか。

 どういう選択をするのかな? と考えていたら、イルリカが三人を連れて戻って来た。


「お待たせしてしまい、申し訳ありません」


「いや、それほど待ってないから。後、なんで三人はちょっと怖がっているのかな?」


「陛下がお気になさることではありません」


 ニッコリと笑って、些事です――と言い切るイルリカ。

 うん、流石はナリアの愛弟子だわ。

 所作が一緒で、ちょっと怖いんだが?


「それも些事です。陛下」


「え? お前にまで考えが読まれんの、俺?」


「些事です」


「うん……後でナリアを問い詰めるわ」


 ちょっとした決意が新たに生まれたが、とりあえず置いておこう。

 それよりも三人への確認だな。

 結果としては、イルリカの母親と例のもう一人、処刑された元皇太子の嫡男であったワディックは、ランシェスに滞在。

 ワディックの母親は、公国にて文官へと鞍替えする事で決定した。


「私はどちらに?」


「こっちに来てもらう。ナリアからの指示だ」


「委細、承知しました」


「後釜には、ダブルナンバーを置くそうだ」


「なるほど。私は、選抜戦に不参加ですか」


「らしいな。なんでかは知らんが」


「侍女長の愛弟子だからというのが一つでしょう。だからこそ、三位も不参加なのでは?」


「年齢的な話があるからな。三位は参戦らしいぞ」


「……なんとなく、読めた気がします」


「そ、そうか」


 イルリカ、既にナリア二世になりつつあるな。

 あ、そういや、もう一つあったな。


「結婚相手、どうする?」


「陛下の御心のままに」


 そう言って、肩に手をかけて服を脱ぎ出そうとするイルリカ。

 慌てて母親が止めに入る。

 イルリカお母さん、グッジョブ!


「勘違いすんな! 婚約者がいなくなったから、自分で決めるのか、こっちで決めるのかって意味だ!」


「(チッ)そうでしたか。早とちりをしました。申し訳ありません。この無礼には、死んでお詫びを……」


「だぁぁっ! 極論過ぎんだよっ! 後、舌打ちしたよな?」


「舌打ち? 何の事でしょうか? しかし、陛下がそう感じられたのなら無礼を働いたという事になりますので、私への罰は陛下の夜伽などさせて頂ければと」


「ミリア達に殺されるわ!」


 こいつ、マジで極論過ぎんだろ! ミリア達が今この場にいたら、極寒の地へ早変わりに待ったなしだぞ!


「すみませんすみません」


 ほら、イルリカお母さんがめっちゃ謝ってるじゃん。

 え? まだ成人前だからセーフ? アウトだよ!


「全く……」


「本当にすみません! この上は、娘共々教会に――」


「あー、この娘にして、この母親か。君ら、極論過ぎ」


 ナリアよ、イルリカを洗脳とかしてないだろうな?

 軽く恐怖なんだが?

 ほんと、ミリア達がこの場に居なくて良かったわ。

 とりあえず、伝える事と決定事項は確認したので、三人には退室してもらい、仕事を続ける。

 なんのって? ブラガスから持たされた書類の山とクラン関係の書類だよ。

 そういや、冒険者ギルドとクランにも顔を出さないといけない。

 ……あれ? 休み無くね?


「陛下、それを口に出してはいけません」


「イルリカ、お前もブラガス側か」


 こうして、数日は書類を決裁していく日々を送った。

 パーティーまで後4日となった所で、次は冒険者ギルドへと向かい、今後の話をする。


「白銀のクラマスも、今や王族ですか」


「ギルマスが驚かんでください。俺だって、しっくり来てないんですから」


 軽く雑談を交えてから本題に移ることにする。

 議題は、クラン本部をどうするかについて。

 まず前提として、解散は無いというのを共通認識させる。

 では、公国のクランは支部にするのかという話だが、これについては拒否った。

 正確に言えば、拒否るしかない。

 冒険者ランクEXのクラマスのお膝元が支部? それはダメだと、色んな所からダメ出しを食らった。

 特に、傭兵王とクッキーさんからのお小言が凄かった。


『創設地は大切だけどよ、王族になった以上は話が通らねぇ。しかもだ、冒険者ランク最高位ってのもある。だから、本部をランシェスにした状態はダメだ』


『冒険者ってぇ、言ってしまえば仕官を目指す者達の巣窟でもあるのよぉ。だからぁ、クラマスが王族になった以上はぁ、本部はお膝元が良いのよねぇ』


 正論で言われ、ちょっと別方向で解決できないか提示したらお小言を言われの繰り返しで、今に至る。

 なので、本部移転は決定事項ではある。

 だが、創設地を支部に? という話もある。

 言ってしまえば格付けの話だな。

 でだ、ランシェスのギルマスが異議を本部に唱えて、話し合いってわけだが、ではどうすれば良いのか?

 ランシェスのギルマスは、本部移転は受け入れる方向ではあるが、他国の支部と同列にはしたくない考えと聞いている。

 じゃ、そっちで勝手に考えろと言いたいが、例外を除いた積極的介入をしたく無いのが、冒険者ギルドの方針であった。

 結果、話し合いってわけだが、手はある。

 問題は、納得するかの話なんだが……。


「本部移転と所属冒険者を割る事。これがこちらの譲れない部分ですね」


「冒険者は根無し草ですから、強制しなければ構いません。但し――」


「ダグレストで捕縛され、降格した冒険者を補填する。こちらはクッキーさんが主導で行っているから、時間が欲しい。移転込みで、冬前か春先が良いと考えてる」


「総合本部が絡んでますか……。わかりました。冒険者の移動に関しては、こちらが折れましょう」


「問題は、格付けですよね?」


 核心を突くと、頷くギルマス。

 では、どこまでなら許容できるのかを聞くと、第一位は公国側で構わないとの事。

 だが、第二位は譲れないと言われた。

 最低でも俺が冒険者を引退するまでは譲れないらしい。

 じゃ、引退の定義はどの辺りまでと聞けば、クラマス引退までと言われてしまった。


「それって、後数十年はって事ですよね?」


「色々と情勢が動きましたからな。指名依頼なんて、もう受けられないでしょう?」


「まぁ、確かに。お忍びでワンチャン?」


「はぁ……。無理に決まってるでしょう」


 前にも言ったが、冒険者の引退宣言にはいくつかの種類がある。

 指名依頼を受け付けないのが第一引退、依頼を受けないのが第二引退、ギルドカードの返納が完全引退。

 あ、返納しても身分証は必要だから、別枠で発行はして貰えるぞ。

 確か、生涯ランクカードだったか?


「完全引退に片足突っ込んでいるだろうに、なんで他人事みたいに……」


「第二引退する気が無いからだな。指名依頼はともかく、通常依頼はクラン経由のお忍びが出来そうだし」


「息抜きですか?」


「そんなもんだね。後は、狩猟デートとか?」


「流石に、デートにしたらバレると思いますがね」


 雑談で牽制し合いながら、落し所を探り合う。

 さて、こっちはどう切り出そうかな?


「何か妙案がおありで?」


「何故バレる!」


「顔に出やすいからですな」


「……解せぬ」


 俺って、そんなに出やすいのかねぇ。

 まぁ、バレたものはしょうがないので、とりあえず提示してみる。

 とは言っても、独自名称にするってだけの話だけどな。

 その事を伝えて、いくつか候補を上げて行く。


「旧本部、第二本部、創設元地、特級支部……他になんかあるかな?」


「旧本部と第二本部は却下ですな。あまり縁起が良くない」


「そうなると、創設元地か特級支部か」


「創設元地は、旧本部の言い回しで良いので?」


「言い回しというか、我がクランの創設地をより強く言い表した感じだな」


 元創設地では安直過ぎるから、少し弄ったってのもあるけど。

 後は思いつかんから、気に入らなかったら考えてくれ。


「ふーむ……まぁ、支部には落ちるのでしょうし、どちらかが無難でしょうな」


「こっちはどっちでも良いので、決まったら連絡してください」


「わかりました。それと、各支部の冒険者達ですが」


「再編して再配置が無難でしょう。特に役職持ちは」


「それなのですが、各支部からの陳情がギルドにですね……」


「……マジかよ」


 何故か冒険者ギルド宛で届いた陳情の手紙だが、簡単に言えばこうだ。


 ――動かされたら、職員が泣く――


 うん、流石に無視するわけにはいかないな。

 とは言えだ、そこまでヤバい状況なのかって話でもある。

 なので、ギルマスに聞いてみたが、内情なんて知らないと言われてしまった。

 至極ごもっともである。

 要調査対象が増えてしまった。

 あれ? 仕事が増えてね?


「頑張ってください」


「良い笑顔で言いやがって。精々頑張りますよ」


 ちょっとだけ拗ねた感じにしてから部屋を出て、冒険者ギルドを後にして、クランへと向かう。

 到着早々に統括職員と話をしたが、めっちゃ怖い事を言われたよ。


「え? 再編ですか? 各支部や本部も役職付きが減る? そんなことしたら、何処も発狂ものですよ、クラマス」


「え? そんなに酷いの? 職員の増員とかしたよね?」


「仕事の多さに、根性無しは辞めましたが? 新人で残っているのは、責任感が異常に強い者と、賃金が良くて辞めるに辞められない者と、ドМだけですが?」


 思っていた以上に酷い惨状に、思わず頭を抱えそうになったわ。

 見かねた役職付きが、手の空いてるときは手伝って、どうにか回している状況との事。

 その役職付きも、面倒見の良い人物ばかりで、職員は泣いて喜んでるらしい。

 つか、最後のドМってなんだよ!


「言葉の通りですが?」


「思っていた以上に、ブラック企業化してるとか……。流石に笑えねぇ。どうすっかなぁ……」」


 話し合った結果、再編はするが役職付きの移動は見送りにした。

 代わりにだが、実力があって人格者であるも、パイの配分に負けた高ランク冒険者はいるとの事。

 たまに手伝いもしてくれるらしいが無償奉仕と同義だから、各職員推薦の元で話をしてみたらどうかと言われてしまった。

 勿論、強制は禁止。

 ではいつ話す? え? 何人かは今日も手伝い中? 早速呼ぶ? 待て待て、まずはリストアップをだな。


「してる時間なんてあるんですか?」


「うぐっ、痛い所を」


「では、早速呼んできます」


 集められるだけ集まった無料奉仕者と面談していき、どうにか必要人員数の確保には成功したが、職員の社畜化は改善しないといけない。


(ブラガスと相談するしかなさそうだな)


 新たな問題を抱えたままクランを後にして、最大の問題を片付けに向かう。

 そう、父上の元へだ。

 今日は休みと聞いているので、時間の余裕はある筈だからな。

 ……うちみたいだと、流石に無いかもしれんけど。

 そんな事を考えていると実家に到着したので、侍女に案内されて応接室で父上を待つ。


「待たせたな。それで、相談というのは?」


「結婚についての話です」


 父上が座るのを待ってから、本題の話へ移る。

 問題というのは、持参金や結納金、家族の立ち位置についてなどだ。

 別家ではあったが、ランシェス貴族として進めて来た式だが、他国の王族となってしまったので修正が必要ではないのか? と考えた為だ。

 その事を話すと、父上は腕を組んで考え始め、ちょっと唸っていた。

 あれ? この件って、相当な問題?


「招待する貴族家については、再選別が必要だろう。自国の貴族を蔑ろにも出来んし、国同士の関係もある」


「ランシェスの大臣関係は外した方が良いと?」


「いや。呼ぶならば、各国の大臣も――って話だな。招待客を増やすのか、減らすのかの話になる」


「それはこちらの匙加減って事ですか。来るにしろ、来ないにしろ、招待状は送った方が良いと」


「それで構わんな。結納金と持参金に関してだが、これはそこまで気にする必要はない」


「何故ですか?」


「親が出す持参金についてだが、結納金は子供の元に行くからな。ランシェス貴族ではあるが、親としての側面の方が強い。お前が出す分については問題無いだろうし、結納金も貴族か王族かの違いだけだから問題無い」


「では、何に唸っていたのですか?」


「ランシェス貴族に対する招待状についてだな」


 父が言うには、兄達の式に来ていた貴族家も招待予定ではあったが、他国の王族となってしまった以上、それは難しいらしい。

 それをやると、他国の貴族も招待しないといけなくなるらしく、際限がなくなるそうだ。

 ただ救いはあって、他国の王族を嫁にするわけなので、招待のしやすさはあるらしい。

 但し、下級貴族――子爵以下の参加は見送った方が良いと言われた。

 名誉伯爵も見送る方向で、実際に招待するならば、各国の王達が選んだ招待客とした方が、余計な手間が省けて楽だそう。


「良いんですかね?」


「各国とて、思惑があるから手を貸すのだ。それにだ、新しい国には、他国からの紹介で家臣を形成しているだろう? 要は、貸してる状態とも言える」


「泣きついてないからですか?」


「うむ。どちらが先にという話だな。ただ、自国の貴族子弟に関してのポストも必要だろう。その辺りはどうなっている?」


「ブラガスに丸投げしました。俺は承認するだけですね」


「ならば、家宰のブラガスに相談してみれば良い。出来れば、エルーナやルナエラも参列させたくはあるがな」


「その辺りは大丈夫ですよ。ブラガスが調べて来ましたが、貴族だろうが王族だろうが、新興である初代は、幾分やりやすいらしいので。それと、我が国の国是もありますからね」


「ランシェス以上の、多種族共生国家か……。問題は……色々ありそうだな」


「ありますが、色々と改善策は用意してますよ。各国を巻き込みますけどね」


「聞かなかったことにする。ただな、あまり陛下の心労をだな……」


「善処はしますけど、多分乗ってきますよ? 悪い話ではないので」


 その後は、雑談も交えて巻き込む系の改善策を概要だけ話す。

 あくまでザックリした話なので、修正ありきだと説明したら、父上も納得はしてくれたが、代わりにすべきことがあると言われてしまった。


「その策をするならば、やはり他国の貴族家の参列はさせた方が良いだろう。顔繋ぎは出来るであろうし、貴族の特性を上手く利用できてもいるしな」


「スポンサーには色んな商家も巻き込みますしね。国営でやるので、利益率も考えています」


「あまり露骨にやるなよ?」


「八百長ですか? やりませんよ。参加する貴族にも言い聞かせますし、もしやったら永久追放とかしますし」


「色々考えてはいるのだな。……わかった。私と懇意にしている上級貴族家には話を通しておこう。ただし、だ――」


「披露宴の招待は必須ですね? あまり派手にはしたく無かったんですが、やらざるを得ないって事ですね」


「見返りも大きいからな。先行投資だと思えば良い」


 その後も、父上からの有難い助言と、偶にお小言と、馬車は使う様にしろと口酸っぱく言われて、夕食を一緒に食べて、大使館である屋敷へと戻った。


「おかえりなさいませ。皆様、お揃いです」


「そうか……。さて、皇国対策を話し合わないとな」


「もしよろしければ、私が給仕を」


「任せた。もし煮詰まった時に打開策があるなら、発言はしてくれ」


「承りました」


 斯くして、皇国対策をミリア達と話し合うのだが、波乱を呼んだわ。

 まぁ、結局その方法しか出なくて、渋々ミリア達も了承したのだが……イルリカよ、お前はそれで本当に良いんだな?

 後戻りは出来ないので再確認するのだが、問題無いと言われてしまった。

 ミリア達もイルリカなら――と受け入れていたし、仕方ないのかね。

 全員に言わせると、これも王族の運命(さだめ)らしい。

 うん……こっち系の運命(さだめ)は勘弁して欲しいなぁ……。

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