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256話 主従でミスとか笑えん

次は年末年始投稿になります。

1日目は29日から。

6日間連続投稿です。

 神造ダンジョンから帰還した八木の第一声――任務完了の報告と、鬼畜陛下という悪態。

 何があった? と思うが、冷静に考えたら喧嘩売られてなくね?


「八木君、喧嘩売ってるなら買うよ?」


「悪態くらい受け入れて欲しいっすね。マジで死にかけたんっすから」


 鬼畜陛下を撤回する気は無いらしい。

 よろしい、ならば戦争――。


「ラフィ、今回はお前が悪い」


「ゼロ? 一体、何があった?」


 ゼロの言葉に頷く、ツクヨと神喰。

 どうやら今回は、八木の味方であるらしい。

 という事はだ、ゼロ達でもヤバい事があったと見るべきなのか?


「話しの前に、飯にしてくれ。流石に、のんびり食いてぇ」


「神喰に同意ね。私はお風呂が先だけど」


「俺も風呂だな。ツクヨ、一緒に入る――ブフォッ!」


「おーー、三回転半捻りで宙を舞ったっすね」


「成長しねぇなぁ、ゼロ」


「あの、治療しなくて良いのですか?」


 書類仕事を手伝ってくれていたミリアが心配そうな声を上げるが、実はそんなにダメージは無い。

 あー、いや、訂正。

 痙攣するくらいのダメージはあるけど、ゼロからしたら命に別状がないので、無いに等しいだけ。

 三回転半捻りで宙を舞ったのは、単に面白くするための演出に過ぎない。

 まぁ、浸透系の攻撃だから、足腰は暫く立たないが、許容範囲であろう。

 それをミリアに話してから、話の続きをする。

 とりあえずは時間だな。


「風呂と飯は用意するけど、食いながら話で良いのか?」


「それで構わないっすけど、少し休憩はしたいっすから、食事は二時間後位にして欲しいっすね」


「それは構わんけど、三人もそれで良いのか?」


 八木の提案と俺からの確認に頷く3人。

 あれ? いつの間にか、八木がリーダーになってね?


「そこも含めて話っすよ。ただ、一つだけ先に言っとくっす」


「なんだ?」


「下階層――別称、裏階層っすけど、攻略禁止か制限を設けるべきと言っておくっす」


「え? そんなにヤバかったのか?」


 裏階層の危険度指数について尋ねると、攻略組全員が乾いた笑みを浮かべた後、どこか遠くを見始めた。

 あ、これは精神的ダメージが高い奴だ。


「あーー、八木は彼女に会いに行くと良いよ。休みも作るから」


「助かるっすね。流石に休みたかったっすから」


「ゼロとツクヨも休みは作るから」


「「1週間でっ!」」


「お、おう……。あ、神喰は無しね」


「なんでだよっ!」


 神喰だけ休み無しに、三人以外にもミリアやリーゼ迄、鬼ですか!? って顔で見て来たが、ちゃんと理由はある。


「お前、サボってたよな?」


「ギクッ――な、なんのことか、わからねぇなぁ」


「ほぅ?」


 ゲ◯ドウポーズで、神喰を睨む。

 たじろぐ神喰――既に逃亡体制だが、逃がすわけねぇだろうが。

 ゲ◯ドウポーズに移行する時に、逃亡阻止の結界は構築済みなんだよっ。

 なので、こっからは休み無しの理由説明に移る。


「お前、遷都する前の駐屯地で、見張りをサボっただろ。報告は上がってるから、言い訳しても無駄だぞ?」


「いや、あれはだな……」


「だな?」


「あれはですね……何と言いますか……」


「既に証拠は挙がってるんだよ、この馬神喰がっ! 見張りを理由に、つまみ食いしてたのも分かってるからな!」


「あ、謝るし、休み無しで良いから、結界だけは勘弁して下さい! お願いしますっ!」


 神喰君、ジャンピング土下座で謝罪。

 俺も鬼では無いので、結界は勘弁してやろうと思う。

 でも、サボった分の仕事はして貰う。


「神喰、お前、収穫祭まで休み無しな。それと、次サボったら、問答無用で結界な」


「お慈悲に感謝をーーーーっ! あ、食事は出ますか?」


「今日の分は、慰労会って事で出してやる。但し、明日からは俺の仕事を手伝えよ?」


「ラッジャーー!!」


 皆、知ってるか? こいつ、腐っても神の座に君臨できるんだぜ? でもなぁ、三下感が凄いんだよ。

 なんだろう、この雑魚の舎弟臭が凄いのは。


「原因の半分はお前だろうに」


「あ、復活したのかゼロ。で、何か文句でも?」


「ねぇよ。ねぇけど、もう少し優しさをやってくれ。今回、八木指揮下の元で、死ぬ気で頑張ったんだからよ」


「ふむ……。八木からの報告を聞いてからだな。つか、八木がリーダーで良いのか?」


「4人で動く時は、その方が上手く回るのよ。勿論、私が補佐役だけど」


「ツクヨ、苦労かけるな」


「そうでもないわ。八木って、土壇場での状況判断と火事場の力は凄いから」


「ほう?」


 詳しく聞きたかったが、まずは休息だろう。

 ナリアに命じて、風呂と食事の用意を頼み、俺達は用意が出来るまで書類を片付けて行った……んだが、八木達が休憩中にもう一騒動する事に。

 それは珍しくも、ブラガスのミスから始まった。


「申し訳ございませんっ。今回は、私の落ち度です」


「いや、ブラガスは良くやってくれている。頼り過ぎたこちらにも問題があった。だから気にするな」


「陛下、ご恩情、大変に嬉しく。ですが、どうされますか?」


「不参加は出来ない。国家元首としても、元ランシェス貴族としてもな」


 事態は割と深刻だ。

 まずミスについてだが、これは単純にブラガスの部下のミスである。

 では、何をしたのかだが、それは各国からの招待状を後回しにしてしまった事だ。

 他国の国家元首の手紙を、通常の書類に分けてしまった事にある。

 さて、ここで一つ疑問が出た事だろう。

 そもそも同盟各国には、スマホもどきが提供されている。

 ならば、わざわざ手紙では無くても、通話で済ませられるのではないかと思っただろうが、前世でも国家間に関わる重要事には、必ず何かしらの正式書簡で執り行われていたはずだ。

 それは世界が変わっても同じで、こちらへの正式な招待――国賓として招待するのだから、手順を踏んだ訳だ。

 あ、結構重要な話を通話で決めてないかって話は言うなよ? 時には、時間を優先させなければならない事もあるのだから。

 この辺りの匙加減は意外と難しく、各国が寛容なだけだとも覚えておいてくれ。

 そして、その正式な書簡で届いた招待状を、およそ2週間放置していた――というのが、今回のミスだ。


「部下の教育は後回しにするとして、どのくらいヤバい?」


「直ぐに返事を出さなければ、時間的な面を考えても非常に厳しい問題です。ですが、致命的な状態ではありません。直ぐに返事を出せば――ですが」


「直ぐに返事、ねぇ……。それって、言い訳書いた上で、強制出席だよな?」


「どちらにしても、断れないでしょう。ですが問題は、そこではありません」


 ブラガスの言う問題――出席日時と滞在時間に関してだ。

 そこで忘れてはいけない事は二つ。

 一つは、収穫祭のパーティーは、戦勝祝賀会も兼ねているという事。

 所謂、戦勝パーティーだな。

 そしてもう一つ、これが特に重要で、元ランシェス貴族が独立して国を興しているという点。

 今回の戦勝祝賀会には、ランシェス貴族として最後の参加という点と、新国王を招待という、二つの面倒な事情が絡んでいる事だ。

 後者の、新国王の招待だけならば、断る口実は山のようにあるのだが、前者のランシェス貴族が絡むとそうもいかない。

 何故かって? ランシェス王、テオブラム陛下の面子を潰す行為だから。

 顔に泥を塗るとか、恩を仇で返す等の、背信行為に近いと見做されるからだ。

 なので、余程の緊急事態でも無ければ、ランシェス王国への参加は強制となるわけだ。

 そうなると、他国への配慮も必要になる訳で……。


「全ての同盟国家の招待に応じないと駄目なわけだな、これが」


「唯一の救いは、帝国、傭兵国が日程調整した節があるところですね」


「それと、全ての同盟国が、ランシェス王国に配慮している点もだな」


「王族も貴族も、本当に面倒ですな」


「そういうブラガスも、筆頭家宰だけどな」


 ブラガスだけは、実は貴族にならない。

 本人が頑として譲らなかったためだ。


『私は、陛下の家宰で十分ですから』


 これが、ブラガスの言い分であった。

 しかし、周りがそれを許すはずもなく、妥協点として、ブラガスに子供が出来たら、適性年齢に達したところで爵位授与の形にした。

 それまでは、ブラガスが摂生として爵位を預かって、家の維持に努めるわけだが、だからこそ忙しかったりする。

 ぶっちゃけ、仕事量3倍だからな。

 国に帰順している臣の部下は、家の維持には使えないし。

 まぁ、話は逸れたが、そういった面もあるからこそ、今回のようなミスに気付けなかったのもある。


「なぁ、やっぱ爵位――「嫌です」……即答かよ」


「その話は、今は良いでしょう。それよりも、返事を出すにはギリギリですので、全てのお返事に出席としてください。予定の調整は、こちらでします」


「滞在時間に関してもか?」


「開催日程調整を行った国と、元から開催日が違う国は、陛下の調整を行えば済む話ですから、返事さえ間に合えば良いのです。問題は……」


「皇国、か」


「リーゼ様の前でこの様な言い方は不敬でしょうが、敢えて言わせて頂きます。皇王陛下は馬鹿なのですか?」


「返す言葉もありません」


 書類を片付けながらなので、当然、手伝っていたリーゼもいるわけで、耳に痛い話なのだろう。

 そんなリーゼを慰める、ミリア、リリィ、ミナの三名。

 ブラガスの気持ちが痛いほどわかる俺と、リーゼの心中も理解できる俺。

 下手な言葉は、藪から蛇を――いや、藪からゴブリンを……出て来ても瞬殺だから、藪から邪神が正解か? とにかく、何か出て来ても困るので、問題の解決に思考を偏らせる。

 リーゼに関しては、後で慰める。


「聖樹国も日程被りしているけど、どうするんだ?」


「あそこは、日程調整が難しいでしょう。宗教国家ですし」


「そこは織り込み済みなわけか。皇国が割り込まなければ、調整は楽だったのか?」


「そうですね。帝国、傭兵国、竜王国は、丸一日参加できるような調整ですし」


「聖樹国は、元から参加可能時間が短いと考えているよな?」


「陛下の仰られる通りです。元々、ランシェスとは友好国ですし、宗教の自由を認めてもおりますので、小勢力の宗教はありますが、国教は聖樹国ですからね」


「でもそうなると、何か変だな」


「どういう事でしょうか?」


 どの国も、その国で出来る配慮は行っている。

 しかしだ、皇国だけはしていない。

 あの皇王が、そんな事をするだろうか?

 後で各国から、文句は言われ放題だし、ランシェスとの溝にもなりかねない。

 先見の明は確かな王だけに、余りにも不自然だ。


「リーゼ」


「……はい」


「一つ聞きたい。もし、この招待日程に意図があるとしたら、何が含まれていると思う?」


「意図、ですか?」


「はっきり言って、余りにも不自然な配慮の無さだ。俺は、意図があると踏んだんだが、どう見る?」


「……可能性としては二つでしょうか?」


 リーゼの回答だが、一つはそれで良いのか、皇国よ……って感じの答えだった。

 で、リーゼが答えたのは、一つは、滞在時間を圧倒的に短くして、自国の貴族との関りを薄くすること。

 もう一つは、初めから不参加を前提にしているというものだった。


「どうしてそう思う?」


「野心家の貴族は多いからです。下手に利益供与などを含んだ会話を避けさせるためではないでしょうか。不参加に関しては、名代でも構わないぞ、といった感じではないかと」


「どっちが正解かね?」


「わかりません。あの父ですから、勢いのままにとも考えられますし、関係各所からの嘆願書に嫌気がさした可能性もありますから」


「意図があるなら前者、無いなら後者か。ええい、なんて面倒な……」


 考えるだけ無駄だな、これは。

 で、解決方法は、直接本人に聞く――だ。

 そして真相だが、多少の違いはあるが、後者が正解だった。

 関係各所からの嘆願書が、無視できない量で届いたらしく、調整も難しかったので、駄目元で招待状を出したそうだ。


『最悪、不参加でも良いから。出来れば、名代とは思うがな』


「わかりました。善処はしましょう」


 まぁ、この時点で不参加も名代も無いんだけどな。

 通話を切って、ブラガスに視線を移すと、静かに頷かれた。

 どうにかするらしい。

 なら、ちょっとだけ便乗しようかな。


「調整を第一に。それをブラガスへの罰とする。部下への罰は、調整が終わるまでブラガス付きで休み無し。給金はきちんと計算して出すように」


「承知しました」


 以上が、ブラガスのミスにまつわる話。

 ただ、ブラガスは非常に部下思いで、超頑固だという事が分かった話でもある。

 最後まで、ミスした部下の名前を言わなかったのだ。

 徹底して、部下のミスは上司である自分のミスだと言い張り、全ての責は自分が負うと譲らなかった。

 漢気あるな、ブラガスって。

 そして話は終わり、次は八木達からの報告だが、ブラガスの事を言えないミスだったわ。


「さて……なんで、危険種認定して、絶滅させた魔物が最上階に君臨していたか、詳しく聞きましょうか?」


「まてまてっ! 俺はその辺りはマジで知らんから! おい、リエル!」


「こっちも知りませんよっ! なんでそんな魔物が生まれてるんですかっ!?」


「い・い・か・ら、吐きなさい」


「「本当に知らないんだって!」」


 第一声は、ツクヨのこわぁい笑顔からの詰問――いや、尋問だった。

 因みに言っておくが、俺は本当に何も知らん。

 どんな魔物が生まれていて、冒険者達に開放可能なダンジョンなのかを調査するのが名目だ。

 別任務は、旧ダグレスト王国の徴税関連の帳簿や内務関係の資料など、国家運営に必要な書類関係の確保などだ。

 状況によっては、探索調査班の判断で、宝物庫内にあった物と国庫の回収も頼んでいた。

 全て吸収されている可能性もあったので、発見した場合のみとも言ってある。

 その報告を受ける前に、ツクヨからの尋問を受けたのだ。

 勘弁してくれ……と言いたかったが、他の報告に頬を引き攣らせてしまった。


「上階層――表階層は最上階のみおかしかったっすけど、ランク分けによる階層制限は必須っすよ」


「それは俺も賛成だ。法則的な物はないが、とある階層を攻略して次に臨んだ瞬間、一気にレベルが変わるからな」


「とりあえず、50階層攻略後と80階層攻略後だな」


「で、下階層は?」


「あーー……、暫くは規制した方が無難だ」


 ゼロの話によると、下階層1階――否、下階層100階から上に上がっていく感じらしいが、一番弱い100階層でも、表階層90階クラスらしい。

 で、引き攣ったのはこっからの話で、まず一つ目が、脱出用転移陣が一切無い点。

 攻略するか死ぬかの二択だそう。


「リエル、お前……」


「知りません! 冤罪です! そもそも、どんな魔物が生まれるとか、階層形成には関与してないと、先に言ったはずですっ」


「聞いてはいるけど、前科があるし」


「酷いっ」


 その後の裏階層の話を聞いて行くが、頭おかしいんじゃねぇの!? ってくらいヤバかった。

 迷宮探索は無いが、出てくる魔物の強さや数が段違いであった点だ。

 裏階層の61階層からは、量より質と言った感じに切り替わっていったそうだ。


「は? 61階層はドラゴンゾンビの群れ? その後、数は減少するけど、質が上がって厄介になる? うわぁ……」


 リエルを見ると同じ様に引き攣っていた。

 61階層から70階層までがアンデット階で、しかも敵の質が上がっていくという……。

 あれ? 一番質が悪い61階層で、ドラゴンゾンビの群れ? え? じゃあ、70階層は?


「……腐竜と70階層までに出た、各種魔物のゾンビ……」


「はぁっ!!?」


 え、いや、それは流石にアカンだろ。

 誰も攻略不可能じゃね?


「能力の一つ、【|我領侵展《俺の部屋に入ってくんな》】は無かったから、どうにかなったようなもんだ」


「何、そのスキル。引き籠りスキルかっ」


「言い得て妙だな。間違ってないから、余計にしっくりくるわ」


「つまりお前は、引きこもりの成れの果て、と」


「それを言うな!」


 神喰を弄ってる様にしてるが、実は冷静に頭を働かせるためにやっている。

 正直に言おう――もう既に、お腹一杯です!

 でもな、この続きがあんだよ。

 胸焼け起こしそうだわ。


「起こして良いっすよ。んで、90階層からは、天使とバトルっすね」


「八木、遂に真の某深◯卿に……」


「なるかぁぁぁぁっ!! あんなんなったら、廃人まっしぐらになるわっ!」


「マジツッコミで、素が出てんなぁ。で、発病してないんだったら、なんで厨二ワードが出てくるんだ?」


 始めに言っとくと、この世界にも神界にも、天使は存在しない。

 神使はいても、天使はいないのだ。

 尚、神使とは、主に従属神の事を指す。


「八木の世界風に言ったのが不味ったな。神使もどきで間違いねぇ」


「良く勝てたな、八木」


「何度か死んだと思ったっすね。生の簒奪者とか、死を誘う者とか」


「そういや、ひっどい名前の奴もいたよなぁ」


 神喰がそう言うと、ブルりと身震いする三人。

 何て名前の奴だ?


「性の終焉者だったか?」


「特性は?」


「名前の通りに加えて、種の存続が出来なくなるだったか?」


「え? なにそれ? こっわっ!」


「怖いっすよねぇ。わかるっすか? 恐怖に震えながら戦った自分らの姿が」


「うん……臨時報酬出すわ」


 尚、裏階層の最後は、マジもんの神だったそう。

 あ、神とは言っても、邪神もどきではあるそうで、力の類は神と同等らしいけど、神格は無いし、邪神には遠く及ばないらしい。

 喰邪神の超劣化版というのが、神喰とゼロの総評だった。

 但し、ヤバいのには変わりないとの事だったが。

 それと、装備類に関してはミスったと言わざるを得ない。

 過剰戦力装備と思っていたが、まさか表最上階で大半を使い果たしているとは思わなかった。

 撤退の判断をしなかった件に対しては、八木以外の三人が判断ミスして八木を道連れにしたと判断して叱ったが、言い分は納得できる部分もあったので、今後は注意するように留めた。

 しかし、まさかあの装備でなぁ……。


「結構えげつない、過剰装備だと思っていたんだが……」


「ラフィさんの見解で間違いないっすよ。あれは、あの最上階の魔物がおかしんっすよ」


「うん、まぁ、それはそれとして、だ。八木に一つ聞きたんだが?」


「なんっすか?」


「その過剰戦力装備の大半を失った状態で、ゼロ達と寸分違わぬ戦いをしたって事だよな?」


「どうなんっすかね」


「ゼロ」


「八木? 普通に化け物さんだが? もう装備がぁぁぁ! とか言いながらも、何処からともなく、装備補充してやがったからな」


「ちょっ!?」


「冒険者でパーティー組むなら、うちの宿六や神喰よりも、八木が良いわね。指揮、判断、兵站、戦闘、どの能力を見ても、天下一品だもの。劣化版ラフィって感じがするわ」


「劣化版でも、ラフィさんにはなりたくないんっすが?」


「八木ぃ、喧嘩売ってんのかな?」


「だって、柵一杯で書類仕事に忙殺されて、各国と付き合いもあって、そこに神様も絡んでくるんですよ? 自分なら、たった一つでお腹一杯っすよ」


 八木に言われて、認識していた現状を改めて客観的に再認識させられるとは……。

 それと、言われて考えてみると、確かにお腹一杯だな。

 ならば、道連れを作ろう。


「八木、何かある時は、今の面子で任務な」


「げっ」


「あら? 不満なのかしら?」


「ツクヨさんは良いんっすよ、ツクヨさんは。問題は、制御しきれない二人で」


「あん?」

「あ?」


「ほら、そっくりっしょ」


「……そうね。旦那については、少しだけ躾けておくわ」


「なら、神喰の躾けは俺がやるか。あ、お前、各国のパーティー行きで護衛にすっからな。いらんことしたら……分かってるよなぁ?」


「誠心誠意、全身全霊で、務め差て頂きまっす!」


 食事をしながら、報告とこれからの指示を決め、残る時間は雑談と、八木の頑張りや戦闘評価についての話を時間一杯して、慰労会はお開きとなった。


(やっぱ、SSSじゃ勿体ないなぁ。クッキーさんに直訴するか)


 八木、EXランク計画を頭の片隅に置いて、残った書類を片付けに、天幕へと戻った。






 そして後日、何故か秘密にしていた話だったのだが、文官達だけならず、軍部、民達にも部下思いの話だけ広がって行き、ブラガスの人気は不動のものになった。

 あ、俺の人気は下がりました。

 何故って? 便乗して穏便に済ませただけなのに、罰は与えたから。

 責任を取ったのなら、罰は必要無いだろうって。

 軍部はともかく、国民からの人気は著しく下がったね。

 泣いて良い? あ、リーゼが慰めてくれるんだね。

 え? 迷惑かけてすみませんって? いや、俺の対応が悪かっただけだから、そう落ち込むなって。

 結局、二人で慰め合いました。


 (しかし、主従揃ってミスをするとは、たるんでるのかね、俺達。もう少し、気を引き締めよう)

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