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225話 激突! VS反乱軍

年末年始投稿12日目、最終日となります。

次回投稿予定日は、21日を予定しています。

 立食会後、物資やら、人手やら、色々な書類の決裁に追われながら過ごし、遂にXDay……反乱軍が王都に襲撃する日となった。

 ランシェス軍は地の利を生かすため、郊外に布陣して敵を迎え撃ち、撃滅後に国境へと進軍する手筈となっている。

 早く片が付けば、ゲートを使用して国境へと進軍する手筈となってはいるが、どれだけ時間が掛かるかは不明。

 時間を憂いた陛下は、傭兵国と雇用契約を交わし、国境砦に傭兵を派遣する事を決定した。

 そして現在、数時間後には激突する両軍であったのだが、俺がいるのは最前線では無かったりする。

 では、屋敷で守りに入っているのか? 違います……例の如く、運搬業でっす!


「陛下ぁ……恨みますよぉ」


「お前も苦労してんだなぁ……」


「傭兵王に同情されるとか……何という屈辱っ!」


「てめぇ、喧嘩売ってんのか!?」


 いつもの如く傭兵王を弄りながら、ゲートを起動して傭兵たちを送って行く。

 その数、1万人。

 二つ国を挟んだ傭兵国ではあるが、ダグレストの魔物使役を危険と判断したらしい傭兵王。

 頑張って声を掛け、集めたと言われた。

 そして、王自らが見送りに来て激励と言う形を取っているのが今の状況だったりする。

 そんな中、最後の傭兵がゲートを潜り、送り出しは終了。

 次に、奥の手の一つの送り出しに掛かる。


「シャイアス殿、それと、ネデット傭兵団の皆さん、よろしく頼みます」


「任せてくれ。なぁ、諸君!」


「「「おうっ!!」」


 奥の手の一つ、ネデット傭兵団の個人雇用。

 ネデット傭兵団は5つの部隊に分け、戦闘に参加する。

 簡単に言えば、隣接する三国に貸しを作ったのだ。

 個人雇用と言う事は、俺の固有戦力と同義であるからして、その部隊を派遣する事で、同盟戦力の貸し出しに応えると共に、私財を投げ売ってまで応えた――と言う、屁理屈にしたのだ。

 尚、この案を提示したのは、まさかのリーゼである。


『なぁ、祖国なのに良いのか?』


『何やら悪巧みしてるみたいですので、こちらも悪巧みで返しても問題無いですよ?』


 このリーゼの言葉に、もう一つの隣国である帝国が祖国のミナも同意してたりする。


『悪巧みには悪巧みで返しましょう』


『いや、それで良いのか?』


 疑問をぶつけたのだが、誰もが『何か問題でも?』と言わんばかりの顏だったのは、ちょっと怖かった。

 と言う訳で、分割派遣をする事になったのだが、残る二つは何処に配置されるかと言う話だ。

 残る二つの部隊の内、一つは屋敷の守りに。

 もう一つは、直轄部隊――俺直参の部隊となる。

 そして、直轄部隊の人数は少数精鋭部隊とした。

 結果、あの人物が参戦すると言う事になってしまった。


「あの……本当に参戦するので?」


「勿論じゃ! 孫の為に……ひいては、まだ見ぬ曾孫の為に、一暴れしてやるぞい」


「シャイアス殿、良いんですか?」


「言い出したら聞かないのは、君も知っていると思うんだが?」


「そうでしたね……。義祖父は、そういう人でしたよねぇ……」


「言っとくが、何度も止めはしたからね」


「無理だったんですね? 傭兵王、何か一言」


「先代団長だから……としか言えんな」


 とまぁ、雑談をしてはいるが、既にゲートは起動しており、指定された場所から潜っている状況だ。

 ただ、ネデット傭兵団がゲートを潜り始めると同時に、傭兵王が身支度を始めたんだが、まさか……。


「なんで身支度してるのか、聞いても?」


「あん? 俺も行くに決まってるからだが?」


「………あんた、傭兵国の王」


「内政は、俺が居なくても回るようにしてきたぞ?」


「リュンヌへの対抗力」


「既に軍を国境沿いに派遣済みだよ。しかも、大軍をな」


「首都の防衛は?」


「問題ねぇよ。それとな、もう一人来るから」


 傭兵国よ……それで良いのか? と言いたい。

 ただ流石に、護衛無しという訳では無かった。

 あの、物理で黙らせるメイドさんが、お目付け役兼護衛を務めると、傭兵王から説明された。


「クロノアス様には、お手を煩わせ申し訳ありません」


「いやまぁ、そちらも大変ですね」


「そうですね。無能では無いんですが、思い付きで行動されたり、面白そうだからと行動されたり、困ったものです」


「ちょっ、おまっ――」


「後はですね、独身女性で好みの方を見つけたら、直ぐに声を掛けたりですとか」


「それは今関係な――」


「子供みたいに屋台で買い食いして、『大人買いだーー!』 と言って買われて、結局食べ切れずに臣下に押し付けたりとか」


「お裾分けと言え!」


「他にも沢山ありまして」


 傭兵王の臣下は、結構大変みたいだな。

 ただ、このメイドさん、ちょっと楽しそうに話している気がしないでもな――あ、そういうことか。

 なんとなく、そうだろうなぁ――とは思ったが、一応確認。


「(シャイアス殿)」


「(気付いたのかい?)」


「(ええ。あのメイドさん、傭兵王の事、好きですよね?)」


「(ジャバのすぐ近くに春はあるんだけどねぇ。本人が気づいていない)」


「(知ってます? 傭兵王の場合は鈍感って言って、メイドさんはツンデレって言うんですよ)」


「(鈍感は分かるが、ツンデレとは?)」


 腐れ縁でもあるシャイアス殿とコソコソ話し、ついでにツンデレとはどんなものかも話していく。

 一通り聞いたシャイアス殿は、もの凄く納得していた。

 そして、その説明が終わると同時に、雑談の時間は終わりを迎える。

 ネデット傭兵団の全員がゲートを潜り終え、残るは俺達だけ――になったところで、最凶の援軍が現れたからだ。

 そう、人類最強人型決戦兵器――その名をクッキー。


「おまたせぇ。それでぇ、何を話していたのかしらぁ?」


「傭兵王の恋愛事情」


「おい!」


「それはちょっとぉ、興味があるわねぇん。後で教えてねぇん」


「教えるのは構わないけど、なんでクッキーさんがここに? ギルマスは不介入の立場のはず」


「今回のダグレストは、無視できないからよ」


「!?」


 え? あのクッキーさんが、おねぇ言葉ではあるが真面目に話しているだと!?

 まさか、世界は今日終わったりするのか? 転生後に童貞のまま終わりたくねぇんだけど……。


「こっから先は、真面目モードってだけよ。周りを見てみなさい」


 クッキーさんに言われ周りを見てみると、今までふざけてたり緩く雑談していた顔が引き締まっていた。

 なるほど……スイッチを切り替えた訳か。

 なら俺も、切り替えて作戦概要を伝えるべきだな。


「……。では、作戦概要を伝えます。尚、この場にいる者達だけに伝えるのは、秘匿性を保つためです。それと、奥の手はいくつか話せない事はご了承願いたい」


 こちらの言葉に、全員が頷いて了承する。

 そして、誰が何処を受け持つかを話していく。


「クッキーさんは、先に送り出した傭兵1万人の取り纏めをお願いしたい。魔物に関しては殲滅の方向で」


「ダグレストの兵士はどうするの?」


「余裕があるなら、生かして捕縛の方向で。但し、判断は現場に任せます」


「死にそうになるくらいなら、捕縛は無しで良いのね。分かったわ」


 クッキーさんとの会話はそれだけ。

 察しが良い人なので、要点だけ伝えたら、後は上手くやってくれるだろう。

 次に、傭兵王の扱いについて聞いて行く。


「傭兵王は、どういった扱いでの参戦ですか?」


「一時的に、ネデット傭兵団に復帰――と言う形になっている」


「了解です。傭兵王は直轄部隊に組み込みましょう。三人だけで行けますよね?」


「無論じゃ。曾孫を見るまでは死ねんわっ」


「では、一つだけ注意事項を。反乱軍内の貴族当主と、その嫡男については、生かして捕縛を優先して下さい。但し――」


「こちらが危険な時は仕方ない訳だな? ……手足の一本や二本は良いのかね?」


「四肢が無くても良いですよ。生きていれば」


「ほぅ。中々に言いよるの」


「おー怖っ。四肢無しの場合は、焼いて止血だな」


「ぶっちゃけると、死んでなければどうでも良いです。関心は無いので」


 打ち合わせも終わり、ゲートを開いて持ち場へと潜って行く。

 開戦まで、そう時間も無い。

 直ぐに配置につくことになるだろう。

 皆は、上手くやってくれてるかね?

 完勝できることを願いながら、ゲートを潜る……。














 時は少し経って、ランシェス郊外。

 俺は直轄部隊を伴って、軍の……何故か参謀本部内に招集されていた。

 いや、俺は必要無い気がするんだけど?


「クロノアス卿は、何を言ってるのかな? 私の護衛をして貰わないといけないのに」


「………その喋り方、違和感しかねぇ」


「クロノアス卿!」


 どこぞの貴族が不敬と言いそうになって、殿下――フェルが止める。


「まぁまぁ。私とクロノアス卿は級友でもあるからね。違和感があるのは仕方ないのだよ」


「ですが、殿下!」


「本当はね、彼を前面に出した方が被害が少ないんだよ。彼の婚約者も危険に晒さずに済むからね。でも、彼はこの場にいる。何故か分かるかい?」


「……武功、でしょうか?」


「その通りだよ。この天幕には、私が優秀だと思う者しか参加する事を許していない。ホント、面倒な話だよねぇ」


「殿下、それ以上は……」


「そうだね。だからさ、私と陛下は、彼に二つ、特権を与えたんだ」


「特権、ですか?」


「そう。一つは、話し方。友人だからね。国の危機だっていうのに、武功を考えなくちゃならない。その為には、彼には後方にいて貰わないとね。その代わりに――ってやつさ」


「もう一つを、お聞きしても良いでしょうか?」


「この後の行軍に支障が出る――と、彼が判断した場合、私の指揮下から外れる。あ、危険って思ったよね? でもね、危険は無いんだよ。前線に出て、大暴れするだけだから」


「万が一、と言うのは?」


「彼が? 無いよ。する理由が無い。その気になれば、全ての国を相手取れるんだから。領地をひたすら断り続けてる彼だよ? 騙されるか、どうしてもと押し付けられない限り、領地運営なんてするわけがない。そうだよね?」


「そうだな。だって、面倒だし」


「き、貴様――」


 おや、問答してた貴族がゆでだこの様に。

 そんなに顔を赤くすると、血圧上がるよー。

 頭の血管とか、ブチ切れないだろうね? 切れても、俺は悪くないと主張するけど。


「ラフィも、喧嘩腰に言うのは勘弁して欲しいな。頭が固いのは否定しないけどさ」


「殿下まで、何を仰られるか!」


「失言だったね。でもさ、はっきり言ってしまうと、クロノアス卿は爵位を欲しがってはいないんだよね。完全に、こっち側の事情ってわけ」


「それは……理解しておりますが」


「理解しているなら、これ以上は不要だよね。心配は有難いけど、時には柔軟さも必要だよ。君は私の、教育係だったのだから」


「へぇー。それは知らなんだ」


「幼少期にイタズラしたらさ、今みたいに顔が真っ赤になるんだよ」


「ゆでだこ貴族か」


「誰がタコか!」


「適格だと思うよ。周知させてみようかな?」


「殿下まで! お戯れを!」


「あはは。……さて、そろそろ時間のようだ」


「反乱貴族のご到着か」


 フェルの時間と言う言葉を聞いた後、全員の表情が変わる。

 ここから先は、同国民との戦いだ。

 なるべく早く、首謀者共を取り押さえて終結させないといけないわけだが、どうせ後方だろうなぁ。

 ……直轄部隊を別動隊として、後方強襲させるべきだろうか?


「ラフィ、それはダメだよ。相手も警戒はしてるだろうから」


「なんでわかった?」


「そういう顔をしてたからかな。後は雰囲気」


「はぁ。なんでこう、バレるかなぁ」


「そういう運命なんじゃない?」


「いやな運命だなぁ……」


 なんて言ってる間に、お互いの第一陣同士がぶつかったと伝令が入った。

 相手の第一陣は魔物で、力押しされているとの事。

 練度は圧倒的にこちらの方が上なので、今は拮抗してるとの事だったが……。


「まずいね」


「ああ。拮抗はまずいな」


 俺とフェルの意見は一致していたが、他の貴族達は分かっていないようだった。

 そんな中、一人の貴族が聞いて来たので、二人で説明する事に。


「理由はね、人――であるからなんだ」


「意味が分かりませぬ」


「簡単に言うとだな、人には限界がある。だが、魔物たちは事実上、限界が無い」


「どういう、意味ですかな?」


 まだわからないのかと、二人同時に溜息を吐く。

 その態度に苛立ったのか、一人の貴族が立ちあがって抗議しようとして、先程のゆでだこ貴族に止められた。

 ふむ……どうやら彼は、理解した様だ。


「体力、集中力、そして士気――ですな?」


「正解。じゃあ、最も早く限界が来そうなのは?」


「……集中力でしょうか? いえ、士気もですかな?」


「これまた正解。より正確に言えば、精神力が削られる」


 今の状態は、張り詰めた糸のようなものだ。

 個人差が最も大きいものだと思う。

 そして、ピンと張りつめた糸が切れた時、そこから復帰するとなると時間が掛かる。

 いや、復帰できれば良い方で、大半は復帰が不可能か命を落とすだろう。

 仮に精神力チートだったとしても、体力にも限界が来る。

 泉が枯れるように無くなって行くだろう。

 そうなってしまっては、精神力だけでどうにかするのは難しい。

 寧ろ、体力があるうちに精神を擦り減らして後方退避の方が、生存率だけ見るなら上がるだろう。

 幾ら魔法があっても、限界点は自ずとやってくるのだ。

 だからこそ……。


「初手は優位、悪くてもやや優位じゃないと厳しい」


「人間相手なら、また別なんだけどね」


「加えて、後方に控えてるあれだ」


「ゴーレムっぽい奴だね?」


 反乱貴族軍の中に、人の兵は見られない。

 離反の大半は法衣貴族だから、こちらが傭兵を雇っている以上、大規模な兵は用意できない。

 とは言え、だ。

 領主の一部も離反しているから、多少の人の軍勢はあっても良い筈なのだ。

 なのに皆無である。

 これは異常と言わざるを得ないだろう。

 そしてそこから小1時間戦闘が続き、遂に恐れていたことが起きる。


「中央、押されています! 左翼の一部が孤立し、被害多数!」


「右翼は?」


「はっ。右翼は戦線を維持しておりますが、緩やかに後退を」


「押されてきてるな」


「そうだね。どうしよっか?」


「倒しても倒しても、キリがない状態だからな。終わりはあるが、先が見通せてない状況だ」


「……中央の指揮は誰がしているのかな?」


「デレンサー男爵ですな。堅実な男です」


 話しによると、軍才は素晴らしい人物で、人格者でもあるそう。

 但し、将才には見放された、非常に惜しい軍人との事。


「千人位の指揮しか出来ませんが、軍略には長けています。彼が押されていると言う事は……」


「軍略が効かない相手に加え、真っ向勝負で叩くのが不向きか?」


「いえ……。恐らくですが、想像以上に兵の消耗が激しいのかと」


「そんなに強い魔物なのかい?」


 フェルの疑問は尤もだ。

 事前情報では、強くても中級魔物程度しかいなかったはず。

 ランシェス軍の兵の練度なら、押し負けはしないと思うのだが。


「中級魔物の数が多いのです。ゴブリンやコボルトなど、下位魔物は既に殲滅したとの報告が上がっています」


「そうなると、オークやトロール。後はミノタウロスか」


「後は蟲型の魔物だろうね。ワームとかもいるんじゃない?」


「灰色も確認しております」


「上位種の亜種か。確かに、そうなると厳しい」


 死者の報告が無いだけ、マシと言うものだろう。

 集団暴走(スタンピード)の時は、かなりの死者が出たからな。

 ただ、負傷者はかなり多く出ているとの事。

 腕や足を喰い千切られたりして、復帰が絶望な者までいるとか。

 これは武功とか体裁とか、言ってられないのではないだろうか?

 だが、俺が出るには被害が少なすぎる。

 他の貴族達からの苦情が待ったなしだ。

 こうなると、フェルの一声が必要だ。

 どうするんだ?


「ラフィ。直衛を投入したい」


「殿下!」


「最早、体裁や武功と言っていられる状況じゃないよ。でも私は、クロノアス卿の前線投入を認めてはいない」


「……クロノアス卿の、固有戦力の投入のみ――と言う事ですか?」


「ラフィにとっては、不服だろうけどね」


 確かに不服ではある。

 だが、フェルの立場も理解してはいる。

 だから、条件付きでの投入なら……。


「一つ、条件を付けたい」


「不敬だぞ!」


「静まれ! で、何かな?」


「固有戦力の誰かが、危機的状況に陥った場合、即時戦闘加入を認めて貰えるなら」


「良いよ」


「殿下!」


「婚約者の誰かも、出すんだよね?」


「そうなるな」


「じゃ、仕方ない。私だって、同じ立場なら同じ条件を出しただろうから」


「悪いな」


「貸し一つ、で良いかい?」


「勘弁してくれ」


 最後に冗談を交えてから、直属の部隊に出陣命令を下す。

 今、この戦場で待機している婚約者は3人。

 リュール、ヴェルグ、リアのみ。

 それに加え、転生者組の内2人を待機させている。

 それと、最強の傭兵たち。

 問題は、集中させるのか分散させるのかだ。


「中央を盛り返す。出来るなら、食い破って欲しいかな」


「伝えておく。但し、深追いはさせねぇからな?」


「それで良いよ。頼むね」


「りょーかい」


 了承の旨を伝えて、天幕を出て歩く。

 歩いた先には、思い思いに寛ぐ精鋭部隊の姿がある。

 まぁ一名、無駄に気を引こうとして、脳天チョップ食らって悶絶してる老人が居たりするが……。


「おまた」


「ラフィが来たって事は……」


「持たなかったと見るべき」


「ラフィも出るのかな?」


「俺はもう一つ先だな」


 三人が代表して話してはいるが、戦況に関しては把握している模様。

 把握が済んでるなら、方針を話すのは楽だな。


「さて。方針だけどな、中央集中一点突破だ」


「ほぅ。大胆にも、食い破りですか」


「腕が鳴るわい」


「先代よぉ。歳考えろよ」


「ほんとにそう。ジジィは家帰って寝てよろしく」


「相変わらず酷くないかの!?」


 リュールと祖父のやり取りに、思わず全員が苦笑する。

 いや、傭兵王だけは笑っていたが。

 後が大丈夫だろうか? ……ツンデレさんがいるから大丈夫な気がする。

 ツンデレさん、多分、ナリアより強いと思うし。


「なぁ、ラフィ」


「なんだ、潤」


「どこまで突破すんの?」


「あ」


 やっべ! 聞いてなかった! ……聞きに戻るのめんどいな。

 俺の判断でも良いよね。

 え? 良くない? 聞きに戻れ? 寧ろ、お付共が気付いて言いに来い! うん、暴論だな。

 とは言え、ランシェス軍への命令では無くて、俺の私兵への命令だし、問題あるかと言われたら無いんだよね。

 ……良し! 決めた!


「聞くの忘れたから、俺の判断で言うわ」


「いや、聞きに行けよ」


「めんどい。で、どこまでかだが、魔物軍最後尾まで密集隊形で食い破ったら、反転分散して食い破りながら戻って来て」


「一人で?」


「流石に一人は危険だから、二人一組で」


「組み合わせは?」


 潤の指摘もあったので、全員を集合させて再説明。

 途中までは一緒なので、最後尾についてからの行動と組み合わせだけを言って行く。

 組み合わせは、潤と箒、傭兵王とツンデレメイド、新旧団長、リュールとリアで組み合わせた。


「あれ? ボクだけ仲間外れ?」


「ちゃうわ。ヴェルグは突入せずに後方支援。良く考えたら、このメンバーで魔法寄りなのって、俺とヴェルグしかいねぇんだわ。メイドさんは未知数だし、ジャバの護衛もあるからな」


「傭兵王とは言わないんだ」


「この戦争中は、ネデット傭兵団トップ5のジャバさんらしい。さん付けが癪だから、呼び捨て一択だけどな」


「最後のいらねぇだろうがっ」


 またも笑いが起こる。

 後詰の兵士たちは、この状況で笑えるのか――と言う顔をしているが、スルーしておく。

 変に関わるとめんどいから。


「まぁ、ヴェルグは実質、俺とペアだな。嬉しいだろ?」


「嬉しすぎて抱きつきそう」


「それは、戦争が終わってからだな。誰かピンチだったら、助けに入ってくれ」


「わかったよ」


 説明も終わり、全員が戦闘態勢に入る。

 さて、それじゃ、号令と行きますか。


「五体満足に帰って来る事。それじゃあ……蹂躙開始!!」


 その合図の後、全員が出陣した。

 結果は……火を見るより明らかであった。

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