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222話 歴史が動いた日

年末年始投稿9日目です。

 ルナエラ姉の結婚式から数日後、前触れもなく出された、ダグレストからの宣戦布告。

 クランに用事があって出向いていた俺が、その報をきいたのが昼過ぎ。

 市井に出回ったのが、多分それくらいなのだろう。

 そしてそれは、民を混乱に……導かなかった。


「前から噂はありましたし、あの国とはずっと仲が悪いですしね。今更ですよ」


「そ、そんなもんなのか……」


「強いて言うなら、なんで今? でしょうか」


「まぁ、仕掛けやすい季節ではあるけど」


「それを除いて、なんで今? なんですよ」


 クラン職員とそんな話をしているのだが、言われてみれば確かにそうだ。

 理由を考えようとしたところで、別の職員に声を掛けられる。


「クラマス、王城から使いの方が」


「通して」


 王城からの使い……間違いなく、宣戦布告の件でお呼び出しだな。

 今回の宣戦布告は、ランシェスだけではなく各国に対してだから、同盟盟主としての意見も必要と言う事なのだろう。

 まぁどっちにしても、陛下が呼んでいる以上、断る選択肢なんて元からないけど。

 だから、使いの兵士と共に王城へと向かう。

 ただ、どういうわけか使いの兵士は、馬車持参で来ていた。

 完ッ全に、陛下に行動を読まれているなぁ……とか思いつつ、王城へと向かった。




 ドタドタッ――。 

 バタバタッ――。

 ドタバタッ――ビッターンッ!

 貴様、何を遊んでおるかっ!


 王城の会議室までに続く廊下で、文官達が忙しくなく走り回り、一部、運動音痴? な文官が派手に転び、書類をぶちまけ、上司に怒られる――と言う、一連の流れを数回見て会議室に辿り着く。


(あれ? なんか予想と大分違う気が……)


 陛下も戦争自体は予見していたから、それなりに準備は進めてきたはず。

 なのに何故か想定よりも慌ただしい。

 これは、かなり想定外の事態になっている可能性があるのでは? と考えながら部屋に入り、それは的中する事になった。


「お待たせしました」


「良い。直ぐに始めるので席に着け」


 陛下の言葉を待ってから席に着く。

 周りにはいつもの大臣達に加え、知らない者が二人。

 この場に居るのだから、恐らくは貴族なのだろうが、一体誰なのだろうか?


「時間が無いから紹介は簡潔に行う。そこの二名は主流派と強硬派の筆頭だ。もう一人は、お主も分かるであろう?」


「ええ。お義父さんですから」


「うむ。では、始めるとしよう」


 陛下の言葉で会議が始まるのだが、誰もが口を開かない。

 誰も何も喋らないから、詳細が分からない。

 俺にどうしろと言うのだろうか?


「そう言えば、お主は詳細を聞いておるのか?」


「いえ、全く。ここに来るまでに、資料すら貰ってません」


「着いたら渡せと言っておったのだがな。軍務卿、詳細を頼む」


 陛下からの言葉で、軍務卿が詳細を説明してくれたのだが、正直、開いた口が塞がらなかった。


「は? 魔物の軍勢が50万? しかも使役されている?」


「正確に言うとな、こっちに向かってるだけで50万だ。皇国と帝国には30万ずつ向かってるぞ」


 軍務卿の言葉に、次は「はい?」としか言えなかった。

 いやいやいや――どうやったら、それだけの数を用意できるんだって話だ。

 仮にテイマーが、一人頭5体を使役したとしても、22万人が必要なんだが?


「ダグレストは、テイマーを大量に揃えたのですか?」


 俺の疑問に、陛下と軍務卿が首を振った。

 そもそもの話、テイマー自体の数は少ない。

 それに加え、一人のテイマーが使役できる数だって、そこまで多くは無い。

 少ないテイマーは1体、多くても3体程度しか使役出来ないと言われている。

 仮に5体出来たとしても、自身の能力以上になる可能性が極めて高い。

 魔物の主食原は魔力な為、テイム後は主の魔力供給が必要になるからだ。

 そこまで魔力量があるテイマー自体を聞いた事が無いし、いれば間違いなく有名人になっている。

 じゃあ召喚術士と召喚獣なら? 答えは変わらない――だ。

 どっちにしても魔力が主食だから、大量使役は出来ない。

 コスパで言えば、テイマーの方が断然良い。

 だから、素っ頓狂な声が出てしまったわけだ。


「だから悩んでいるんだよ――って、聞いてるか?」


「聞いてますよ。だから軍務卿、睨まないでくれませんかね?」


「睨んでないぞ。今は目つきが鋭くなってるだけだ」


「まぁ、有事ですしね。変顔になるのも仕方ないですか」


「誰が変な顔だ!」


 場の空気を変えようと、軍務卿を軽く弄ってみた。

 この人の性格ならツッコんでくれると信じていたが、やっぱり合いの手を打ってくれたので、場の雰囲気も変わ……りはしなかった。

 寧ろ、めっちゃ睨まれた。

 陛下に至っては、溜息で返されてしまう。


(やべっ、失敗した臭い……)


 場の雰囲気は更に最悪になりかけた。

 どう修正しようかな……とか考えていると、陛下から救いの手が!


「全く……。お主は相変わらずだの」


「あはは……。申し訳ありません。唸っていても解決はしませんし、場の雰囲気が変われば良い案も浮かぶかも――と」


「気遣いには感謝するが、良い案などないの。それとも、原因が分かれば解決方法があるのか?」


「無いですね。どっちにしても、殲滅の方向でしょうから」


「で、あろうな。しかし、戦力がのぅ……」


 何気なく話す陛下であるが、さっきから目は、何かを訴えていたのに気付かない俺ではない。

 そして、最後の言葉で理解した。

 同盟戦力を出して欲しい――いや、俺の固有戦力を出せないか? と言っているわけだ。

 さて、どう答えるのが正解かな?


「陛下、1つお尋ねしたいのですが、良いですか?」


「構わんぞ」


「陛下は、私の固有戦力をお望みですか? それとも、同盟戦力をお望みですか?」


「むっ……」


 こちらの質問に、陛下は顔を強張らせた。

 その目が物語っている――直球で聞く奴があるかっ! と。

 だが、国が無くなっては本末転倒である。

 最早、牽制や探り合いをするべき時ではない。

 如何に早く、決を採るかが重要だろう。


「陛下、そして皆様も、今やるべきことをやりましょう。時は待ってくれません。ここで話し合いをする時間だけ、被害が増えるかもしれないのです」


「そんなことはっ――」


「分かっていないから言っています。腹の探り合いは、するだけ無駄です」


「ぐっ」


「主流派も強硬派も、同じ王族派です。今の現状を維持したいからこそ、今の政策に異論がないからこそでは無いですか? ならば、国の存亡期において、牽制など無意味」


「それは……」


「今やるべきは、団結して一つの岩となる事です。そうですよね? お義父さん」


「まぁ、そうだな」


「なので陛下、再度お聞きします。固有戦力ですか? 同盟戦力ですか?」


 ちょっとした演説みたいにはなってしまったが、言いたい事は言った。

 俺は大切な人達を、好きな人達を守る為なら、神だって殺すし、悪魔にだってなる。

 道化師(ピエロ)? いくらでもなるさ。

 だからさ、はっきり言えやっ!


「いや、本当にお主は……」


「問答するだけ無駄でしょう。やる事は決まっているんですから」


「そうだの。ただ、同盟戦力は難しいと考えているのだが?」


「え? めっちゃ簡単ですけど?」


 陛下と俺、真っ向から意見が食い違う。

 と言うか、軍務卿が言ってたと思うんだがなぁ。


「ダグレストと隣接している二国にも、魔物は向かっているんですよ? 防衛案件になると思いますが?」


「帝国と皇国はそうだろう。だが、こちらが蹴散らせば侵略戦争に早変わりだ。同盟理念に反するだろう」


「いえ全く。私が提唱した同盟理念は、《《こちらから侵略戦争を仕掛けてはならない》》――です。先に殴ってはならいないだけで、殴り返すのはアリですよ?」


「ん? 侵略戦争自体が駄目では無いのか?」


「ええ。ちょっとカッコ良く言うならば〝撃って良いのは、撃たれる覚悟のある奴だけ〟です。向こうが先に撃ってきたのですから、撃たれる覚悟もあるでしょう」


「な、なるほど?」


「後はですね、私怨もありますから」


「カッコ良く言ったのが台無しではないかっ!」


「陛下、私は先に撃たれていますので。仕返しはしますよ?」


「あれか……」


「あれです。職権乱用? 大いに結構! ダグレストとリュンヌには、絶対に撃ち返します!」


「お主、割と根に持つ方なのだな」


「先に手を出してきた向こうが悪いので」


「お主が我が国の貴族で良かったと、今更ながらに思うの」


「お褒めに預かり光栄です」


「褒めとらんわっ!」


 最後はいつものやり取りで締め括る。

 周りは置いてけぼりだが、場の雰囲気を変える事には成功した。

 まぁ、後で色々言われるんだろうが、それは後回しだ。

 今は回答を聞かないといけない。

 それによって、こちらの対応も変わってくるのだから。


「それで? どちらでしょうか?」


「……お主はどちらが良いのだ?」


「陛下、それは卑怯です。きちんとお答え頂きたい」


「では、両方――と、答えようかの」


「本気、ですか?」


「無論」


 あー……やられた。

 これ、どっちの対応でも良い奴だ。

 ランシェスの貴族として対応しても良いし、同盟盟主として対応しても良い。

 但し、対応次第では今後が変わるやーつ。

 面倒……超面倒っ!!

 ぜぇぇったいに、何か企んでるよ。

 さて、どれが正解かなぁ……いや、多分、どれも手詰まりくせぇ。

 ランシェスの貴族として対応したならば、王命とか言われそうだし、同盟盟主として対応したならば、指導者なんだから! とか言われるに違いない。

 ……なら、俺らしくで行くか。

 もし、あれを振ってきたら、断固として拒否るし、仮に無理だったら自重止めよう。

 それで多方面から苦情が出たら、全部陛下のせいにして逃げよう。

 多分、それが正解だと思う……正解であって欲しいなぁ。


「はぁ。わかりました。両方用意しますよ」


「……本気か?」


「冗談で提案はしませんよ。但し、幾つか条件はありますが」


「飲める物は全て飲もう」


「言いましたね? めっちゃラッキーッ」


「……早まったかもしれんな」


 周りは未だに置いてけぼりだが、気にせずに軍務卿へ質問。

 これを聞かないと、作戦も何もないからな。


「軍務卿」


「っ!? な、なんだ?」


「現状で動かせる軍の人数は?」


「常設軍10万、近隣領主からの援軍が2万~4万、義勇兵と志願兵は不明、冒険者は介入せずだ」


「では、早速、伝手を使いましょう。あ、ちょっとスマホもどき使います」


 何か言いたそうな人たちを放置して、とある人物に電話を掛ける。

 お相手は勿論、傭兵王である。


『あ、傭兵王っすか? こちら同盟盟主でっす』


『……なぁ、いつもこんな感じなのか?』


『まっさかぁ。親愛の意味も込めて、傭兵王だけっすよ』


『お前っ、ぜっっっったいに俺の事舐めてるだろっ!?』


『そんなことないっすよぉ。独身王殿』


『今度会ったら、絶対に泣かすっ! で、用件は?』


 世間話をする為にかけて来たんじゃねぇんだろ? と言った感じで訪ねて来た傭兵王。

 そのやり取りを聞く周りの人達。

 実は初めから、スピーカー状態で話していたりする。

 勿論、相手もスピーカー状態なのは百も承知で話していたりする。

 前世のスマホと違いこのスマホもどき、相手がスピーカー状態なのを知らせる機能が付いていたりする。

 まぁ、ランプで知らせるだけではあるが。

 だから先程のやり取りもわざとだったりする。

 良好な関係の相手だと、周知の事実としたわけだ。

 当然、陛下にはバレているので、少し苦笑いで返された。

 そしてそんな中、用件を伝える。


『傭兵の雇用を申し出る』


『毎度。で、期限と人数は?』


『一応、戦争終結までかな? 人数は未定』


『了解だ。人数は決まったら連絡をくれ。あいつらにも話を通しておくぞ?』


『よろー。あ、請求はランシェス王家ね。後、値引きも欲しいな』


『抜け目ねぇなぁ……。何かやる時、一枚嚙ませてくれんなら了承すんぞ?』


『貸し、あったよね? それと、ダグレストが相手なんだけど?』


『……タダは無理だからな?』


『全部込々で、半額が良いな』


『……マジでいっぺん泣かすっ!』


 最後に捨て台詞を吐いて、ガチャ切りする傭兵王。

 最後、ちょっと涙声だったのは言うまでもない。

 不幸の星に生まれた男、それが傭兵王ジャバなのかもしれない。


「その不幸の元凶が言っても、説得力が無いな」


「陛下も、不幸になります?」


「御免被る。とは言え、良くやったと言おうか」


「ありがとうございます。で、ここからは同盟盟主としての対応で良いでしょうか?」


「ふっ。好きにせよ」


「では、好きにさせて頂きましょうか」


 どうやら陛下、細かい事には触れない方向らしい。

 優先順位を決めているのだろう。

 ただ、周りが少々五月蠅い。

 主流派と強硬派の2人が筆頭で五月蠅いが、軍務卿と財務卿を除く大臣達も何か言いたそうな顔をしている。

 お義父さん(ドバイクス卿)? さっきから喋って無いな。

 空気に徹するつもりなのだろうか?


「陛下、一つよろしいでしょうか?」


 あ、普通に喋った。

 どうやら機を伺っていただけみたいだ。

 なんでそう思うのかって? 話す前に、ニヤッってしたからな。


「聞こうか」


「ありがとうございます。クロノアス卿の立場ですが、同盟盟主として確立させた方が良いかと具申します」


 ん?


「理由は?」


「傭兵国は武力を商売にしている国ですから、今回は渡りに船でしょう。ですが、神聖国と竜王国は違います」


「漁夫の利を狙うと?」


「神聖国はその可能性があります。尤も、信徒――と言う意味合いですが」


「竜王国は?」


「日和見する可能性が高いかと」


「……なるほど。確かに、それは面白くないな」


 んん!?


「はい。ですが――」


「同盟盟主としての行動を許すならば、神聖国も竜王国も、喜んで参戦する可能性大か」


 おい、ちょっと待て!


「どちらも、クロノアス卿にご執心ですからな。未だに、ラブコールを送っているとか」


 そんな事実は無い!


「それは困った事だ。クロノアス卿は、我が国でも需要人物だと言うのに」


「そうですな。いやはや、そんな重要人物に些細な事で文句を言うなど」


 あれ? なんか話の流れが……。


「確かにの。もし、他国に移ってしまった場合、責任追及は免れんだろうな」


「最悪、改易もあり得るかもしれませんよなぁ」


 お義父さんの最後の言葉で、勢いのあった二家は委縮してしまった。

 何か言いたそうだった大臣達は、視線を合わそうとしない。

 なるほど、援護射撃なわけか。

 めっちゃ、裏がありそな気はするけど。

 だが、五月蠅く言う者は誰もいなくなり、話は本筋へと戻る……はずだった。


「さて、話の続きを――「失礼します! 緊急伝令です!」」


 一人の兵士が、大慌てで会議室へと入って来た。

 息切れしていて、相当慌てて報告に来たようだ。


「何事かっ!」


「伝令っ! 貴族の大多数が離反! 反乱を起こしましたっ!」


「なんだとぉっ!」


「貴族派閥筆頭が主犯! 子爵領内で挙兵しましたっ!」


「数はっ!?」


「推定でも10万っ! 古代遺跡の魔道具を使用したとの報告もっ!」


「陛下っ!」


「うむ、軍務卿。軍を以て、討伐隊を編成せよ」


「問題があります!」


「数――か……」


 まぁ、そうだよな。

 ダグレストに対する軍編成中なのに、新たに再編しなきゃならんし、軍人も無尽蔵じゃない。

 確か、ランシェス軍を総出で35万だっけか?

 しかも、反乱軍は推定だから、余剰戦力も必要だろう。

 あれ? 普通なら無理ゲーじゃね?


「さて、どう対応するか」


 陛下が思案に入る中、新たな情報が舞い込む。


「反乱軍はダグレストと繋がっていた模様! 魔物を使役しておりますっ!」


「数はっ!?」


「推定でも15万! ただ、兵士の姿が見当たりません!」


「兵士の姿が無い?」


「全て、古代魔道具の軍と魔物のみです! 後、確定情報では無いのですが、主犯である貴族派閥筆頭が死亡したとの情報が上がってきております!」


「「「は?」」」


 俺、財務卿、軍務卿から、こいつ何言ってんだ? って声が出る。

 しかし陛下は、何故か全てを……あ、そういう事か。

 一番良いタイミングで消えたのか、あの親子。

 シナリオ的には、魔道具が暴走して止めに入って制御を取り戻させたが、相打って死亡――だろうか?

 そして何食わぬ顔で、戦争に参加して手柄を上げて返り咲くんだろうな。

 となると、予想外はあの魔道具かな?

 ただ、兵士が一人もいないのが気になるが。

 いや、今はそれよりも、どう対処するかだな。


「反乱軍の王都到達予想時期は?」


「5日だと思われますっ!」


「早いな。……ダグレストとの国境に向かわせながら迎撃するしかないか」


「その、それも無理かと思われます」


「……場所が悪いか」


「はっ! 南西にて挙兵を確認しました! 迎撃しながら向かうとなると、遠回りせざるを得ません!」


「死亡の件は置いておくとして、兵站、士気、時間、どれも足りないな。どうされますか、陛下」


「軍務卿の言う通りだの。さて、どうするのが正解か」


 時間的な理由で、籠城作戦も不可能だしなぁ。

 あれ? そういやあの親子、内でも起こすって言ってたよな? そして、陛下は全て知っているわけで……。


(茶番?)


 そう脳裏を過ぎって、違うと考え直した。


(反乱は想定通りだけど、数と内容が予想の斜め上過ぎた可能性があるか。それと、ダグレストの魔物か)


 そこまで考えたら、おのずと陛下の考えが少し見えて来た。

 内に関しては、初めから軍を当てるつもりは無かったのだろうと。

 憲兵と常備兵、それと近衛騎士団で対処可能と、判断していると思われる。

 しかし、色々と隠し玉が出てきたことによって、内にも何かあるのではないか? と考え始めたのだろう。

 こうなると、思考の沼にハマる。

 答えがある様で無いのだから。

 もうここまで来たら、あの親子の事だけ隠して、全てぶちまけたは方が解決しやすいんだが、国の機密だから難しいよなぁ。

 仕方ない……これも俺の安寧の為だ。

 相手は、撃たれる覚悟もあるのだろうから、盛大に散って貰おう。

 それと、陛下にも動いて貰おうか。


「陛下」


「ん? なんだ?」


「条件付きで、今の状況をひっくり返せるとしたら、乗ります「乗ろう」即答ですか……」


 どうやら、想像以上に切羽詰まってたらしい陛下。

 まさか即答されるとは思わなかった。

 だが言質は取った。

 聞いてから、無理っ! とは言わせない。

 聞いた以上はやってもらう。

 なぁに……少々国庫が目減りして、財務卿の顏が青くなって、玉体を動かしてもらうだけの簡単なお仕事ですよ。

 安全? 勿論、配慮していますとも。


「――とまぁ、こんな感じです。戦力増強、時間短縮、同盟強化、民の安全にも配慮していますとも」


「余は、数日後に死ぬかもしれん……」


「へ、へいかーーーーっ」


「死にませんよ。つうか、死なせません。その為に最高戦力を守りにつかせるんですから。あ、終わったら返してくださいよ?」


「息子も出すのか?」


「勿論。その為に、わざわざ動かすんですから。大義名分もありますしね」


「お主が敵でなくて、ほんっっっっっとに良かったと思えるの」


「自分も、ランシェスの貴族で良かったと思いますよ。柔軟な君主ですので」


「褒めとるのかわからんな」


「最大の賛辞ですが? 真に恐れるべきは有能な敵ではなく無能な味方である――ですから。あ、この場合は無能な王ですかね」


「そう言われると、賛辞に聞こえるの」


 最後は笑いながら終了……にはならなかった。


『クロノアス卿か!? 俺だ! 悪いが、戦力を貸してくれ!』


『いや、いきなりですね』


 スマホもどきが鳴って出てみたら、まさかの皇王だった。

 そして、話が終わると次は皇帝。


『内乱の痛手がまだの……。同盟として、どうにかならんもんかと……』


『マジですか……』


 どっちにしても、同盟盟主として動かなきゃならなかったんだと、今更ながらに思ったわ。

 そして結局、神聖国と竜王国も盛大に巻き込むことになった。

 これ、両国には借りの様な気がするんだが……。


























(あれ? 何か悪寒が……。すっげぇ嫌な予感がする)

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