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217話 八木、魅せる

年末年始投稿3日目

 ウォルドの試験が終わり、次の試験者は召喚者組なのだが、誰が行くかで揉めていた。


「私は後が良い! 次は絶対に嫌!」


「私も優華に賛成。だから、分かってるわよね?」


「俺だって絶対嫌だ! あんなん見てから次に行けるか!」


 ギャースギャース喚き立て、一向に決まらない。

 強制的に名指しで出すかな? なんて考えていると、リュールが立ち上がった。

 もしかして、また受けるつもりなのだろうか?

 その考えは当たっていたが、クッキーさんから却下の声が。


「リュールちゃんはぁ、まだ駄目よぉん。強くはなっているけどぉ、結果は前と変わらなさそうだしぃ」


「やってみないとわからない」


「わかるわよぉん。だってぇ、劇的に変わってるぅ感じが無いんだものぉ」


 クッキーさんの指摘は間違ってはいない。

 強さで見れば、メナト達と修練はしていたから上がっているだろう。

 だが、前回の戦いと比べた場合、そこまで変わらないだろうと俺も思っている。


「ん。ラフィ様、言い返して」


「いやムリ。間違ったこと言ってないから」


「ん。婚約者に対してそれは酷い」


「婚約者ではあるけど、EXでもあるんだなぁ、これが。最高ランク冒険者としては、クッキーさんの言葉を否定できない」


 その後、リュールにはきちんと説明した。

 戦闘に関してストイックなリュールは、納得すれば素直に引き下がる娘である。

 なので今回も、納得のいく説明をしたら素直に諦めた。

 そして、その間も言い合いしている召喚者組。

 俺としては、八木がどこまでやれるのかを早く見たい。

 転生組と召喚者組の中では、一番の実力者だろうと思っているから。

 搦手を駆使すればリュールでも勝てないかも? と思っている程だ。

 相性はあるから、試合ってみないとわからない部分もあるけどな。

 そんな俺の考えを知らないであろう八木は、頑なに次戦は嫌だと主張していた。


「絶対に嫌だ!」


「あんた男でしょう? 良い所見せなさいよ」


「桜花ちゃん、八木君ならきっとこう言うよ? 男だが漢じゃない! って」


「良くわかってるな。そして、その通り――」


「良いから早よ行けや」


 俺も含め、周りも若干ウザいと感じて来たのを察知した俺は、八木の背中を蹴って、無理矢理訓練場へと落とした。

 観覧席から訓練場へ落ちた八木は「あーーー!」とは言ってはいるも、一回転して見事に着地を決める。

 流石、未来の暗部候補である。


「ラフィさん、酷いっすよ!」


「うだうだ言ってるからだ。周りを見てみろ? 視線が痛いだろう?」


 俺の言葉に周りを見渡した八木は、ちょっとだけ後退りした。

 観覧しに来ていた全員の目が、男なら当たって砕けろよ――的な視線になっていたからだ。

 漢ではなく男なら――である。

 八木、もはや引けない状況に追い込まれる。


「……あーー! わかったっすよ! やれば良いんでしょう!? 殺れば!」


 ちょっと大股気味になって、ずんずん歩いて行く八木。

 ただ、八木の言葉に引っ掛かるものが……最後のイントネーション、おかしくなかったか?


「気にすんな。殺る気になったんなら、良いじゃねぇか」


「ゼロ、お前もなんかおかしく言ってないか?」


 なんか周りも納得してるので、深く追求はしないが、本当に大丈夫なのだろうか?

 間違えて殺っちゃわないよな?

 暗殺系特化の八木だけに、非常に不安である。


「待ちくたびれたわぁん。さっさと始ましょうぉ」


「……うぼぁ」


 一対一で対峙した八木は、速攻でSAN値を直葬されてしまった様だ。

 気持ちは痛い程良くわかる。

 この(訓練場)にいる全員が、うんうんと頷いていたから。

 自国の王である傭兵王まで頷いていたからな。

 だが、八木は踏み止まった。

 とある人物の声によって。


「ソウちゃーん。良い所魅せたら、おねぇさんが膝枕してあげるぅっ」


 そう、ほんの数時間前に出来た彼女である。

 ネデット傭兵団で雇用契約を結んでいる間の出来事なのだが、八木は獅子族の亜人おねぇさんに一目惚れをして、速攻告ってOKを貰っていたのだ!

 それはもう、実力を示してまで。

 亜人族の中でもいくつかの部族は、婚姻の一つとして強さを示すのが条件だったりする。

 そして、八木が射止めたおねぇさんは、ネデット傭兵団の中でも部隊を率いれる程の実力がある女性傭兵だった。

 歳は八木の3つ上で、現在22歳。

 既に年増の入り口に入ってしまっていて、結婚に焦っていたのだろう。

 一応は告白を受け入れ、一族の条件を話し、同じ傭兵団の中で狙っていた男共を一蹴して、彼女とも一戦交えた上で降した――と、契約が終わった後に聞いた。

 シャイアス殿が頭を悩ませたのは、言うまでも無い事だろう。

 そして、その彼女だが、今回の護衛任務を終えた後、めでたく寿退職する事が決定していたりする。

 正確には……。


『この護衛任務満了と共に、寿退職します!』


 と、傭兵団の中で宣言しちゃったのだ。

 祝福と嫉妬の中、シャイアス殿が気絶しそうになったのは仕方ない事だろう。

 実力者が抜けてしまうのだから。

 そんなわけで、実は八木君、幸せの絶頂だったりする。

 なんせ、初めての彼女でもあるから。

 そんな八木に届く彼女の声。

 八木の精神が持ち直すどころか、絶好調になるのは当たり前だった。


「今の俺に怖いものはなぁぁぁあい!」


「げんきんねぇ……」


「オカマになんぞ、負けるかぁぁぁぁぁ!」


「あん? なんて言った今? ぶっ殺すぞクソガキャあぁぁぁぁ!」


 お互い殺意マシマシの中、試験が開始される。

 さて、ここで一つだけ補足説明を入れておこう。

 先程揉めていた、誰が継ぎに行くか事件だが、何故八木の彼女は何も言わなかったのか?

 簡単に言うと、気持ちが痛いほどわかるから――である。

 志願して格好よく言って欲しい気持ちと、行きたいくない気持ちが分かってしまう。

 そんな葛藤があったので、何も言わなかったのだ。

 だが、強制的にとはいえ次戦に挑むことになったので、結果がどうであれ、甘やかす気は満々らしい。

 何故それが分かるのかって? ミリア達が俺を甘やかす雰囲気にそっくりだからな。

 後、彼氏《旦那》の格好良い所を見れると知って、お目目がキラッキラしてらっしゃるから。


「始め!」


 審判の合図と共に、速攻で距離を詰めるクッキーさん。

 武器は抜いておらず、どうやらガチでボコる気らしい。

 さっきの八木の言葉が、相当頭に来ているみたいだ。

 尚、クッキーさんに対して、面と向かってオカマと発言した八木に対して、見学に来ていた冒険者からは二つの反応があった。


「あいつ、勇者だな……」


「マジで勇気あるよな」


 等々、勇者認定する冒険者。

 対してもう一つの反応だが……。


「あいつ、死んだな」


「迷わずに成仏してくれよぉ……南無南無」


 等々、人生完全終了認定をしている冒険者。

 さて、どっちが正しいのかを見て行くか。


「死にくされ、クソガキャぁぁぁ!」


「うぉっ! は、早ぇ……」


「てめぇは生かしてかえさねぇぇ!」


 クッキーさん、マジで殺る気らしい。

 対する八木は、回避に専念せざるを得なくなっている。

 ただ、殺意マシマシ中のクッキーパンチを回避しまくってるので、周りからは感嘆の声が上がっていたりする。

 俺からしても、あれだけの速さの攻撃を、全く防御の姿勢すら取らずに回避するのは凄いとは思う。

 だけど、そこまで感嘆するほどの事だろうか?


「クロノアス様は、何か勘違いなさってないでしょうか?」


「勘違い?」


 声をかけて来たのは、八木の彼女だ。

 そして彼女は、俺が勘違いしていると言う。

 意味が分からんのだが?


「クロノアス様は、ギルマス自らが認めたEXなので、実力も折り紙付きなのでしょう。だから一般の冒険者とは目線が違い過ぎるのかと」


「それは俺が異常だと言いたいのかね?」


「クロノアス様に限った話ではないですよ。例えば、ゼロ殿やツクヨ殿も」


 八木の彼女に言われて、何となく納得した。

 その彼女に追随するように、傭兵王が追加補足をしてきた。


「俺でも、クッキーの攻撃をあんな感じでは避けられねぇぞ。クロノアス卿は、どんな鍛え方をさせているんだって話だ」


「まぁ、八木は元々のスペックは高い方だから……」


 神の手ほどきを受けている……いや、地獄をみせられているとは言えんしな。

 スペックで誤魔化しきろう。

 まぁ、八木の彼女だけには、誓約を吞ませた上で話すかは、迷う所ではあるが。

 その間にも、クッキーパンチの猛攻は続いているのだが、少しずつ八木に掠り始めていた。

 クッキーさんの進化は止まらないらしい。


「さっき言った言葉を後悔させてやるぜぇぇぇ!」


「キャラ変わり過ぎっしょ! こっちが素とかやってらんねぇ!」


 八木、かなり劣勢に見える。

 周りには――って事だけど。

 何人が……少なくとも、俺を含めた十数名程は、全く劣勢とは思っていない。

 さっきから掠っているのも、わざとだし。

 それがわかったのは、数分後だった。


「うっ……一体何をした?」


「ようやくっすか。この麻痺毒、Aランクの大型魔物すら数十秒も掛からずに麻痺する猛毒なんっすけどねぇ……」


「この、まさか、わざ、と……」


「チェックっすよ」


 八木、掠らせた内側に毒を仕込んでいたようだが、相当えげつない物みたいだ。

 だって、リエルさんが補足説明入れてきたくらいだから。


『八木が使った毒ですが、普通の冒険者なら即座に麻痺します。神経毒になりますので、直ぐに神経麻痺から起こる呼吸困難で死に至るような代物です』


 リエルからの説明で、八木はわざとクッキーさんを怒らせたのではないかと予測する。

 攻撃こそ、今までの経験から雑に放っていないだろうが、頭に血が上っているからこそ、少し躍起になった可能性は否定出来ないからな。

 結果、毒に気付けなかった可能性も……なんて考えた瞬間、訓練場から大きな音が鳴り、壁に打ち付けられた八木の姿があった。

 一体何が……?


「ごはっ!」


「んふふぅ……油断したわねぇん?」


「…………え?」


 なんでクッキーさんが動けてんの? 麻痺は?


「やっぱバケモンだな。いや、耐性か?」


「どういう事だ? ゼロ」


 ゼロから話を聞くと、麻痺で動けなくなったクッキーさんに対して、背後に回った八木が意識を断とうとした。

 そこへ、何故か動けたクッキーさんの裏拳が、八木の腹部へ見事に決まり、八木が吹っ飛んだそうだ。

 もっとも、八木自身も反応して後方へは飛んだそうで、多少の威力は殺しているそうだが、完全には殺しきれていないらしい。

 常人なら、この時点で試合終了とも、ゼロは言った――が。


「あれで終わるほど、柔じゃねぇだろ。普通に次の一手を打ってやがるしな」


 ゼロが言い切った瞬間、クッキーさんの周辺で爆発が起こる。

 周りは驚いていたが、気付く奴は気付いていた。

 クッキーさんの周辺に、超小型爆発魔道具(手榴弾)がばら撒かれていたことに。

 ただ、クッキーさんが気付いてない筈が無いと思うんだが……。


「八木の手数の多さは流石だな。魔道具自体に認識阻害を施してやがる」


「いや、あの一瞬でそこまで見分けるゼロも、十分にバケモンだからな?」


 因みに、今の仕掛けに気付いた奴はと言うと……神喰とリエルだけだったりする。

 腐っても元神達と現神もどきの頭脳と言うべきか。

 しかし、何事も想定外は起こる様で、この後の出来事に俺達は顔を引くつかせることになった。


「んもぅ! お洋服がズタズタになったじゃないの」


「……嘘だろおい」


「なんで無傷なんだよ……」


「神喰の俺ですら、多少は傷つくんだけど?」


 三神三様に、驚きの声と疑問が出た。

 攻防速揃った、人型最終決戦兵器と言われても誰も驚かないだろう。

 わかるか? あれで人間なんだぜ?


「なんで無傷なんすか……」


 八木は驚きと言うよりは、疑問と呆れって感じだった。

 そして、やっぱり俺と同じ感想が出てもいた。


「本当に人間っすか? 人型最終決戦兵器にしか見えねぇ……」


 思わず素が出る八木。

 気持ちは痛い程にわかる。

 前回の俺も似たような気持ちだったから。


「暴言にぃ、お洋服をダメにぃ、更なる暴言ねぇ。処刑で良いかしらぁ?」


「断固として断る!」


 八木、素で返事しちゃう。

 どうやら余裕が無い様子。

 まぁ、ダメージはあるからなぁ。

 直撃は避けてはいるも、腹部にダメージを負って、足が若干ふらついてるし、これ以上は厳しいかも? なんて考えは間違っていた。

 小太刀を抜いた八木は、二刀流で構え、足には魔法を準備。

 クッキーさんが戦闘態勢を取る前に仕掛けた。

 彼女が見てる前だから、無理してるのかな?


「殺っちゃえソウちゃん!」


 彼女さんも、殺意マシマシ中らしい。

 この世界、マシマシ人間多くないか?

 あ、俺もか。


「先手必殺!」


 掛け声と共に、土魔法でクッキーさんの足元を隆起させる――も、直ぐにクッキーさんによって踏みつけられて不発。

 しかし、一瞬の隙を作る為だったようで、スキルを併用して相手の認識から完全に隠れる八木。

 この辺りは流石としか言いようがない。

 こと暗殺においては、右に出る者はいないだろう。

 左は? いるかもしれんが、知らんとだけ言っておく。


「これは中々厄介ねぇん」


 全く厄介そうに見えないのがクッキーさんである。

 ただ、動かないのか、動けないのかは知らないが、その場で戦闘態勢を維持した状態であった。

 そして、武器を抜くつもりは無いらしい。

 そう考えた時、ウォルドから違うと注意された。


「ラフィの場合は強いから分かんねぇと思うけどよ、クッキーさんの武器(獲物)だと、小回りが利かないから不利なんだよ」


「普通に扱っていた様な気が……」


「八木相手なら悪手だな。だから抜かないんじゃなくて、抜けないが正解。攻防速揃った冒険者だから、今の戦闘スタイルで行けるってのもあるけどよ」


「ウォルドの場合は?」


「槍は厳しいかもなぁ。小剣防御で同じスタイルかな」


 八木の戦闘スタイルは、暗殺、搦手、仕込みの三つだと言われたが、それくらいは分かってると言い返しておく。

 そして、搦手と仕込みで大体の敵は倒せるのも、八木の強みだと言われた。


「この二つが機能するから、相手に顔を見せても問題無いわけだ。見せた瞬間、人生終了だからな」


「毒が効いてるから、何も出来ないと?」


「備えをしていても、完全無効化なんて魔道具はほぼ手に入らないからな。そう言う類ってのは、大体が国宝だし」


「耐性なら、上回る物を用意すれば……クッキーさんの場合は?」


「あのギルマスは可笑しいだけだから。普通は無理だからな」


 クッキーさんの伝説が、また一つ追加された瞬間だった。

 ついでに二つ名も追加された様だ。

 周りから【毒ッキー】とか【人類最終決戦人間】とか聞こえてくるからな。

 ただ一つ、失礼な二つ名があったことを、俺は聞き逃していない。

 勿論そいつは締めとくとして、流石に【クロノアス卿への抑止力】は酷いと思う。

 人を同じバケモノみたいに言うなし。


「いや、ラフィも十分バケモノの枠だからな」


「人の事を言えた義理か! ウォルドもその枠内だからな!」


 ちょっとした言い合いに発展しそうになった時、事態は動いた。

 クッキーさんが何もない場所に向かって、いきなりクッキーパンチを繰り出したのだ。

 そう、周りの人間から見て――だ。

 実際は、クッキーさんの左下、腕と筋肉で死角になった場所から、八木が一撃を加えようとしていたのだ。

 これはウォルドにも見えていた。

 他には当然、ゼロ、ツクヨ、神喰、ヴェルグにも見えていたな。

 いや、正確には、常人には分からないほんの僅かな、本当に捉えられるかわからない殺気を感じたに過ぎない。

 八木の気配遮断と認識遮断は、それは洗練されて完璧だった。

 こう言っちゃ自分でバケモノ認定してるようだけど、気付く方がおかしい部類なのだ。

 だから当然、八木も驚いているわけで、驚きながらも回避していた。

 そして、スキルが解けて一言。


「おかしい! クッキーおかしい!」


「゛あ゛あん? 誰がおかしい人種だ!」


「そっちじゃない! いやそっちもだけど、なんで気付けるんだよ!」


「気合い!」


「ぜってぇ嘘だ!」


 八木、地味にテンパる。

 まぁ、必殺の一撃だと思っていたら、まさかの気付かれるだからな。

 テンパるのも無理はない。

 そして、暗殺は諦めた模様。

 真っ向勝負に移行して、良い勝負を見せるも地力が足りず、敢え無く敗北して、ヤ◯チャがサ◯バ◯マンに自爆された後みたいな形で倒れ込んでいた。

 クッキーさんのお仕置きは、これにて完了――と思った瞬間、八木が何かを呟いた。

 そして、クッキーさんの地面が大爆発する――八木諸共。

 八木は爆風で吹き飛ばされ、ごろごろ転がって仰向けに。

 大爆発で粉塵が巻き起こり、土煙が舞い上がる。

 流石にこれはやばくね? とか思っていたのだが、そこは要塞クッキーであった。

 土煙の中で仁王立ちしてらっしゃる。


「ごほっごほっ。これは効いたわぁん」


「「「「「嘘つけ!!」」」」」


 この場にいる全員が一斉に言葉にしてハモる。

 そして、クッキーさんは無傷である。

自動治癒(オートリカバリー)】が発動した感じも無いので、ガチでスキルだけで耐えきってたみたいだ。

 因みにだ――あの最後の爆発、魔法の威力で換算すれば最低でも超級、上は王宮クラスの破壊力を持っていたりする。

 その最も足る内容は、爆発力などではなく、単純に熱量換算してである。

 詳しい数値などは省くが、爆発力と範囲にしては高温であったことがあげられるためだ。

 Aランク冒険者で、継戦寄りの防御スキルを複数持っていて、且つ身体強化をしていてどうにか耐えきれるか微妙なラインだ。

 それだけの魔道具を作って仕込んだ八木が凄いのか? はたまた耐えきったクッキーさんが凄いのか? こればっかりは冒険者の間でも賛否両論であったことは伝えておく。


「し、試験終了」


 半ば呆気に取られていた試験官から、終了の合図が上がる――が、八木は既に満身創痍で、言ってしまえばボロ雑巾状態である。

 クッキーさんのお仕置きは、かなり酷かった。

 やり方も、状態もなのは、言わずもがなである。

 だって、普通に泣いてからな、八木。


「反則だよぉ……あんなん勝てるわけないよぅ……」


 シクシク、シクシクと、すすり泣く声が……。

 どうやら地味に、心を折られてもいる模様。

 ケアは彼女さんに任せて、次行ってみよう。

 だが、次の試験は急遽予定変更となって、後衛の……それも回復系統の試験者の番となったのだった。

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