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幕間 三神密談

総PV200万突破しました!

応援して下さってる読者様、いつもありがとうございます!

後書きに年末年始の投稿日程日を書いておりますので、ご確認いただければ幸いです。

 試験を終え、仲の良い悪友のカップルがSMカップルだと判明した日の夜、俺達は密談を予定していた。

 密談の参加者は、俺、メナト、神喰である。

 議題は、エステスが黒なのかについて。

 後、サプライズもあるのだが、それは伏せている。

 驚いてくれるかね?


「すまない。少し、手間取った」


「大丈夫だ。仕事してたから」


「くそ。なんで俺まで……」


 メナトが予定の時間より少し遅れて、執務室へと姿を見せる。

 そのメナトが来るまでの間、俺は明日の仕事を少しでも減らそうと、書類を片付けていた。

 神喰も、メナトが来るまで手持ち無沙汰だったので、重要書類以外を手伝わせていた。

 当然、文句を言いながらだ。

 まぁ、文句を言いながらも手際よく仕事をしているので、話しながら酒でも出してやろうとは思っている。


「だけどさ、本当にこの場所で良いのかい?」


「執務室は、機密性が高いからな。後、仕事しながら話せる」


「え? 俺もまだすんのか?」


 神喰、地味に絶望な顔をしている。

 面白いから、続けて貰おうかと思ったが、話しながら仕事をして、ミスされても敵わない。

 一旦は休憩と言う事にしておく。

 但し、明日も手伝わせるけど。


「死んでもごめんだ!」


「よし。ならシね」


「冗談ですごめんなさい。だからその結界は勘弁して下さい」


 めっちゃ早口で、手慣れた感じで土下座する神喰。

 未だにあの結界のトラウマは払拭できていないらしい。

 そんな一連の流れを見て、ため息を吐くメナト。

 失礼だと言いたいが、誰が見ても漫才風にしか見えないので、敢えて不問にして、話を進めようか。


「とりあえず、話を進めるか。こっちに座ってくれ」


 指示した場所に座るメナトと神喰。

 丁度、三角形になる様にして、最後に俺が席に着く。


「さて、本題だけどな」


「エステスが黒かどうかだね」


「黒だろ。さっさと殺らせろ」


 神喰だけ殺意マシマシではあるが、話は聞くつもりらしい。

 こちらに配慮すると、行動では示してる訳か。


「神喰の気持ちも分かるけどな、冤罪は駄目だろう」


「……ラフィは、エステスが黒でないと思ってるのかい?」


「半々、かな? 少しだけ疑問があるんだよ」


 俺が感じた疑問……いや、違和感と言っても良い。

 初めに会った神達は、まだ威厳があった。

 だが最近では、残念臭が凄い。

 良く言えば実直なのだが、悪く言えば欲望に忠実。

 それが今の気持ちだ。

 そうなると、威厳を持った状態で元食神である現神喰いに接触するのだろうか?

 その事を、メナトと神喰に言うと、少し考え始めた。


「確かに、ラフィの言う通りな部分はあるかもね。ただ、最上級神が下級神に依頼するわけだしね」


「ある程度の威厳はいると思うぞ」


「その辺りは、神歴の浅い俺には分からんからな。で、次なんだが――」


 疑問その2。

 神喰が渡されたという果実だが、すり替える時間は無かったのか? 

 これに関しては、無いと断言される。


「貰ってすぐ、目の前で食ったからな。すげ替えは不可能だぞ」


「なるほど。じゃ、次」


 疑問その3。

 その果実は、何処で手に入れたのか?

 これに関しては、謎で終わる。


「未だ、入手経路の判明には至って無いね。その辺りも、今回の時間稼ぎで調べてるはずなんだけど」


「おけ。じゃ、次」


 疑問その4。

 仮にエステスが行ったとして、メリットは何なのか?

 これには全員が唸った。


「メリットか。そう言われると、ますますわからないね」


「生命神だからってのも、理由としちゃ弱ぇな」


「神喰誕生の解明……確かに弱いな」


「それで言ったら、創世神や全知神の方がメリットがあるだろうしね」


「結局、答えは出ずか」


 疑問その5。

 なりすましは可能なのか?


「何故、そんな疑問を?」


 メナトが不思議そうに聞いて来たので、この疑問に至った理由を答えて行く。

 そもそも、この疑問に至ったのは、八木のスキルを見た後だ。

 スキルの確認をしていく中で、気になる物を見つけた。

 それが、気配隠蔽、気配同調、変装、そして……認識変換。

 この全てを組み合わせたら、全くの別人が出来上がった。

 但し、このスキルは死神の権能内に含まれている。

 だから思ったのは、この4スキルを魔法で再現できるかだ。

 ついでに、同時行使可能かも疑問として上げる。

 そして、この疑問に肯定の意を示したのはメナトだった。


「なるほど。着眼点が素晴らしいね。ただ、なんで魔法に至ったのかは知りたいところだけど」


「死神は死を司る訳だが、実際には安らかなる眠りだろ? それと、転生における洗浄。役割に反しないか?」


「死神も神喰化させる理由が弱いのか。ん? ちょっとまてよ? それってつまりは……」


「神喰の考え通り。欲求と言う部分でも、容疑神としては成り立つだろう?」


「……ジーマか」


 メナトが放った言葉に、肯定の意思を込めて頷く。

 そう、ジーマなら容疑神足りえるのだ。

 魔法への知識欲に加え、力の流れを解析、鑑定して、己の糧とするとすれば、辻褄は合う。

 だからこそ、魔法で再現が可能なのか――と言う疑問に辿り着いたわけだ。

 まぁ、辿り着いたのはリエルさんですが……。

 因みに、リエルさんでも変装は魔法で再現するのに苦労していた。

 RE・コードに前例がないからな。

 一応出来はしたけど、完璧には遠い。

 だから、さっきの質問にもなった訳だが。


「これは難しいね。でも、ラフィは試してるよね?」


「試したんだが、かなり不安定で精度も悪いな。神々の騙し合いに使えるとは思えないんだが……」


「使って見せたら早いんじゃねぇか?」


 それもそうかと、神喰の案を採用して使って見る。

 ジェネスの姿になってみるのだが、反応は今一つだった。


「いや、これは無理だろ」


「神喰の言う通りだね。騙し合いにすらならないよ」


「だよなぁ。使った俺もそう思う」


 一瞬で見破られるほどの精度だったので、絶対に無理だと判定。

 結果が出たので話を進めようとしたのだが、何故かメナトが唸っている。

 どうしたのだろうか?


「メナト?」


「ん? ああ、すまない。どうにも引っ掛かってね」


「何がだよ」


「神喰も気付いていないのか。まぁ私も、今気付いたんだけどね」


 メナトの言葉に首を傾げる神喰だが、次の一言で言われて気付いた! って顔になる。

 まぁ、爆弾落とすために、わざと穴だらけの説明をしたからな。

 気付いて貰えて良かったよ。


「ラフィの話だとさ、他にも出来る神はいるよね?」


「筆頭は、ジェネスか? 後はジーラも出来そうだな。精度はともかくとしてな」


「シルも含まれるよ。後はシーエンとエステスかな」


 二人の言葉にニヤッと笑う。

 そして二人を褒め称えるのだが、お気に召さない様子。

 早よ話せって顔をしてるので、ネタばらしと行こうか。


「二人の答えは正解なんだけど、これにはとある理由があってな。でだ、信用して話すから、他言無用で」


「ヤバい話なのかい?」

「ヤバい話なのか?」


 二人同時に聞き返してきたので、案外息は合うのかね?

 そんな考えを頭の片隅でしながら、爆弾を落とす。

 因みにこの爆弾だが、俺もリエルから聞いた時には素っ頓狂な声を上げていたりする。

 それくらい、重大な秘密だった。


「ジェネスに関してなんだけど、創世神って実は、原初のスペアなんだ」


「「はぁっ!?」」


「まぁ、そうなるわな」


 やっぱり過剰な反応だったか。

 RE・コードの深奥に、防護までされて隠されていた情報だからな。

 リエルがいなければ、俺も分からなかった情報だし。


「ごめん。理解が追い付かない」


「あのジジィが、原初の使徒と同義だってのは知ってたがよぉ」


「そうだよなぁ。まぁ簡単に言うと、原初の影でもある訳なんだが、そうなってる理由に見当がついてたりするか?」


 俺の質問に、二人は揃って首を振る。

 当然の反応だったので、もう少し詳しく説明をしていく。

 そもそも原初だが、絶対の存在でありながら、人に対しては弱いと言う矛盾が存在する。

 実はこの矛盾こそが、原初の影の理由だったりもするのだ。


「元々は、本当に保険的な意味合いが強かったんだけど、ゼロのとある行動で均衡が崩れたんだ」


「元原初様の行動で? ……どれなのか、さっぱりわからない」


「まぁ、元原初も色々やらかしてっからなぁ……」


「ほんとそれな。因みに、神喰は当たりを付けているんだろう?」


「まぁな」


 二人で分かり合った感を出した事に気付いて、ちょっと気持ち悪くなってしまった。

 なので、わざとおえっ! て吐く真似をしておく。

 当然ツッコミがあったが、敢えてスルーして話を進める。

 神喰の扱いに関しては、この方が今は良いからな。

 メナトと腹を割って話しているとはいえ、要注意神に変わりは無いので、ぞんざいな扱いにしておくことで、警戒はしてますよアピールをしておくわけだ。

 本当に、一応だからな。

 大事な事だし、もう一回、言っておく方が良いか?


「それで、二人の答えなんだけど?」


「簡単な話だ。元原初は、何をされて世界滅亡待ったなしにした?」


「……そういうことかい。でもそうなると、もし神を娶ったならば……」


「流石にその辺りには、注意を払ってるぞ」


 神喰がヒントを与え、直ぐに答えに辿り着いたメナトであったが、別の疑問を思いついた様で、俺に投げかけて来た。

 因みに、メナトの疑問に関する答えだが、弱点にはならない――だ。

 但し、特効性は失われるので、純粋な力比べにはなる。

 まぁ、引き出せる力の総量が圧倒的に違うので、原初に部はあるがな。


「あくまでも、万が一なんだね」


「そうだな。ああ、一つ言い忘れてた。仮に原初が人に倒されても、条件を満たしてなければ原初にはならないぞ」


「その条件は?」


「うーん……ぶっちゃけ項目が多過ぎて、覚えきれんかった。ただ、神殺しは必須だったな」


「ほぼ不可能じゃないか。ああ、だから影なのか」


「そゆこと」


 メナトは理解力が早くて助かる。

 因みに神喰は、首を捻っていた。

 なのでここからは、攻守交替でメナトがサポートに回って話を続ける。

 仮に原初が人に破れ、勝った相手が条件を満たしていないとする。

 そうなると、原初と言う枠に空きが出るのだが、空席にしておくわけにはいかない。

 神は鎮座して、初めて効力を発揮すると言うのがあるからだ。

 もし、空席が続けば、世界にどんな悪影響が出るかわからない。

 それを防ぐのが、影の役目だ。

 寿命を全うして死ねば、魂は原初の海に鎮座して、居座る事も新たな世界で生まれる事も出来る。

 前世であった事故系などは、直接原初を殺していないのでノーカウントだったりもする。

 あくまでも戦って敗れた時、相手が条件を満たしていない時に発動する緊急処置なのが、創世神ジェネスに与えられ、隠された権能なのだ。

 故に、最上級の原初の使徒でもある訳だ。


「な? 爆弾だったろう?」


「確かに爆弾だね。でも、私達にそれを話したって事は……」


「少なくとも、メナトは容疑神から外れていて、俺に納得させる為って事か」


「神喰、正解」


 そう言ってから、魔力でカードに似せたものを作る。

 魔力だから、消すのも簡単だしな。

 そして、作ったカードの数は12枚。

 内2枚を、直ぐに消す。

 残るは10枚だが、それが何を意味するのか、二人は直ぐに気付いた。


「容疑に上がった、最上級神の数か」


「消えた二枚は、私とジェネス様だね?」


「そうだ。で、こっからなんだが、残るカードは5枚だ」


 そう言って、さらに半分を消す。

 残った5枚には、魔力で文字を足していく。

 カードに書かれた文字は以下の通りだ。


 ――死神・生命神・魔法神・時空神・破壊神――


 そのカードを見て、メナトが質問を投げかけて来た。

 この質問だが、再確認の意味もあると見たので答えて行く。


「消した5枚と残した5枚だけどな、明確な理由があるんだわ」


「使える権能や魔法の有無かい?」


「いや。使える使えないではなく、その必要性があるのか――だな」


 この先の話は、俺も確認を取りながら進めて行く。

 もし間違っていたら、かなり取り返しのつかない事になるからな。


「それで確認していきたいんだけど、メナトには幾つか質問するぞ」


「答えられるのなら、答えるよ」


 メナトからの了承も得たので、3神で確認を取っていく。

 確認事項に関してだが、各神達の性格、考え方、趣味趣向の3点が主体。

 話次第では、容疑神に逆戻りとも告げておく。

 因みに、この二人に確認を取った理由だが、とても簡単な理由だったりする。


 ――付き合いが長いから――


 ただそれだけである。

 苦笑されたが、間違ってはいないので、誰も何も言わず話を進めた。

 そして、まずは尤もあり得ないと思われてる二柱からだ。

 龍神と獣神――この二柱だが、性格は素直で、考え方は獣に近い。

 趣味趣向は知らないと告げて、メナトと神喰の考えを待つ。

 そんな中、メナトが少し、申し訳なさそうに謝って来た。

 なんかしたっけ?


「あーいや、そういう事じゃないんだ。付き合いは長いんだけど、私も知らない事が多々あってね。今回のエステス恋バナ暴走事件で分かると思うんだけど……」


「……あれは悲しい事件だったな」


「最後のお仕置きが――だろ? 当事者が非当事者になるんじゃねぇよ」


「そんなわけでさ、本当に知らない事も多々あるからねって話さ」


「じゃ、分かる範囲で」


 メナトからの説明を受けた後、本題に戻って話していく。

 龍神と獣神に関してだが、俺が知っている事と大差なかった。

 強いて言えば趣味趣向なんだが、両神共ぬいぐるみが好きらしい。

 あのいかつさで!? とは思ったが、中身は割と乙女らしい。

 そして、神喰化の関与だが、まず無いと断言したメナト。

 俺も神喰いも同じ見解だが、その理由を全員で言っていくが、言い方が違うだけで、内容は一緒だ。


 ――獣の思考寄りだから、そんな搦手はしない――


 これが共通認識だった。

 因みにメナト曰く「そんな搦手を使う位なら、自分で食って力にしてる」だそう。

 激しく同意だわ。

 なので、この2柱は完全に白だろう。

 する必要性が無いからな。


「しかし、考え方が面白いね。必要性で考えるとは」


「意味も無くしたのなら、ただの愉快犯だからな。そうなると相当性質が悪い。だから、必要性で考えた訳さ」


「そうなると、セブリーも外れるね。あれも考え方は、先の神よりだからね」


「バカでは無いんだけどなぁ……」


「考える前に身体が動く神だからね。もうお守りは勘弁して欲しいよ」


 ちょっと愚痴になってしまったが、セブリーも完全除外。

 次に全智神と商業神の話になるのだが、これも見解は満場一致。


「どっちも欲望に忠実だけど、世界云々は嫌ってるよな?」


「発展は望ましいけど、衰退と喪失は相当嫌ってるね。そう考えると、衰退と喪失の可能性が飛躍的に高まる神喰の誕生は、彼女らにはあり得ないわけか」


「商業神はそうだろうけどよ、全智神の方は可能性があるはずだ」


「シルの性格から考えて、隠そうとするかね?」


「ないね。むしろ、怒られるの覚悟でジーラに泣きつくと思うよ」


「そこはジェネスじゃないんだな」


「先に怒られて、それをジーラ経由した方が、お仕置きが軽減されるからさ……」


「計算高い女神なわけね。腹黒とも言うべきか?」


「後、シルの為に言っておくけど、ジーラが内々で処理しようとして失敗したら、ジェネス様に泣きつきに行くから、シルの線も薄いと思うよ」


「……何回か、やらかしてる?」


「私が知ってるだけでも、3回はあるね。一番酷かったのは、下手に知識を広め過ぎたせいで、世界崩壊に拍車をかけたとかあるかな」


「……それで泣きつくんかい。シルの線も消えるなぁ」


 こうして、やっぱりと言うか、最初の5枚が残った。

 なので次は、一番あり得なさそうな神から潰していく。


「トラーシャは? 力の渇望はありそうだけど」


「ないね。ただ、暇そうにしてるから、自分と殺り合える者を探してる形跡はあるね」


「可能性はあると?」


「うーん……微妙なんだよねぇ。破壊を司ってはいるけれど、破壊を好んでるわけでは無からねぇ。考え方的には、セブリーよりかな?」


「可能性は薄いけど、無きにしも非ずか」


「いや、無いと思うよ」


「その理由は?」


 トラーシャも頭は良いが、搦手は大っ嫌いだそう。

 それなら、セブリーにでも食わせて、殺り合ってるだろうとの事。

 但し、知らない内に利用されてる可能性は否定できないらしい。


「おだてられたら、ほいほい動くからね。褒められ慣れしてないのがトラーシャなんだよ」


「またも残念女神かよ」


「そう言わないで欲しいな。神なんて、褒められないのが普通なんだから」


「トラーシャって、地味に子供なのな」


「否定は出来ない……」


 破壊神は、限りなくシロに近いっと。

 次に時空神だが、こちらは完全にシロだった。

 ジーラが神喰化をする必要性が全く無いのだ。

 寧ろ、仕事が増えるからデメリットしかない。

 シル辺りが泣きついて来てたら、間違いなくお説教コース確定で、ジェネスに報告した後に、お仕置きが待っていること間違いないらしい。

 ジーラを知るメナトと神喰は、絶対にありえないと答えた。

 だが、もしメリットがあったなら……思いつかねぇ。

 リエルにも聞いてみるが、デメリットだらけらしい。

 唯一、メリットがあるとしたら、お仕事からの解放を望んでしたって理由くらいだそう。

 うん……ジーラ、疑ってすまん!

 そして、残りは3神。


「死神、生命神、魔法神か」


「ぶっちゃけどうなんだ?」


「シーエンは無いよ。だって、神喰化させて死者が増えたら、ブラック企業戦士化待ったなしだよ? 基本引き籠りだし、あり得ないんだけど?」


「え? シーエンって引き籠りなん!?」


「部下に任せられてる状況なら、ずっと引き籠ってるよ。……そういや偶に、エステスが様子を見に行ってたか?」


「いや、知らんがな」


「いや、行ってたな。心配半分、遊び半分だったと思うぞ」


「まさか、恋バナ?」


「可能性はあるかもね……」


「何処で仕入れてんだよ……あの恋バナ狂い」


「後はそうだな……ラフィ風に言えば、メンヘラとかヤンデレになるのかな?」


「え?」


「偶にだけどね、何も無いのに笑うんだよ。それも小声で」


「こっわっ! シーエンこっわっ!」


「ラフィに会ってからは、そこにウットリ顔も……」


「やめてぇぇぇぇぇ! 聞きたくねぇぇぇぇ!」


「まぁそんなわけで、引き蝙蝠のシーエンには無理じゃないかな?」


「メナト、さりげなくディスったな」


 と言う訳で、最終的に元の容疑神に戻る。

 で、残りに関してだが、生命神の行動には不可解な点はあるが、あの恋バナ狂いが演技でないなら、恋バナが無くなる可能性がある行動はしないのでは? と言う結論に至った。

 なので、ここでサプライズを敢行します。

 サプライズ――ジェネスからの報告書である。

 まだ調査は継続するとの事だが、こっちで起こった事と、ジェネスが知ってることに加え、調査した結果を報告する。

 それを聞いたメナトと神喰は、ちょっと怒り出した。


「そういうものはもっと早くに出すべきだよ! はぁ……ラフィに弄ばれた」


「時間は有限なんだろうが! そういうものは、もっと早く出しやがれ!」


「情報収集は複数人から。これ、基本ね」


「「もっと早くに出せと言っている!」」


「わぁお! 息ぴったり」


「「はぁぁぁぁ……」」


「後は先入観を持って欲しくなかったってのもあるな。先に聞いてたら、今の話が変わったりしてないか?」


「「うっ……」」


「怯むって事は、そうなんだろ? なら、タイミングは間違ってないと思うけど?」


「「……」」


 二人は黙ってしまった。

 論破してやったぜ!

 ……違う、そうじゃない。

 1つ咳払いをしてから、ジェネスからの調査報告書を渡す。

 一通り目を通した後、メナトからすっごいため息が漏れた。

 まぁ、気持ちはわかる。

 だって、ジェネスがしていた事は正に――敵を欺くには、まず味方から――だったからな。

 初めはエステスを疑っていたジェネスであったが、割と直ぐに別犯人説に切り替えていたって話だし。

 そりゃ、メナトも泣きたくなるわ。


「ほんっと、君とジェネス様って似た者同士だよね」


「そうかね?」


「そういうところ! 直ぐに惚けようとする!」


「まぁまぁ。で? どうすんの?」


「……」


 こちらの質問に、メナトは黙った。

 対する神喰は、逆に俺に質問をしてきた。


「ラフィ、確定情報は出てないけどよ、お前はどうなんだ?」


「さっきの魔法の問題をクリアしているなら、ジーマがクロ。してないなら、さらに調査かな」


「オーケーだ。これから先、軽挙な行動は止める。犯人確定後も、決戦になるまでは控える。だから、1つだけ頼みを聞いて欲しい」


「内容によるな」


 神喰のお願いを一蹴せずに、一考はすると応える。

 それを聞いた神喰いは、驚きながらも、何処か嬉しそうにはにかんで、お願いを口にした。

 そして俺は、そのお願いを聞き届けた。

 しっかしまぁ、あの神喰がねぇ。

 ある意味、目的の為には手段を選んでいないとも言えるが、こちらに不利益がある訳でもないからな。

 それと、エステスには今まで通り、悪態をついていろと言っておく。

 目は何処にあるか分かんねぇからな。

 ……耳もか。

 とにかく、相手に疑心を持たれる事だけは避けたい。

 こちらは何も分かってないフリをしておくのが一番なのだ。

 但し、確定後は一気呵成に神殺し待ったなしだがな。

 問題は時間。

 相手が焦れるのが先か、証拠を掴んで確定させるのが先か。


(こればっかりは、ジェネスに任せるしか無いな)


 考えを纏め終わると、メナトが話しかけて来た。

 どうやら、答えが出たらしい。


「さっきの話、受けようと思う。ただ、相手にバレないかい?」


「偽装すっから。それと、俺は仲介するだけで、上役はジェネスな」


「わかったよ」


 メナトと会話を終わらせ、魔方陣を生成、構築する。

 そして、今回は触媒を用いて、原初の使徒化を行う。

 但し、俺の使徒ではない。

 影の使徒として、だ。

 ジェネスからの手紙、その中の一文に合った内容。


 ――一人では限界がある――


 その結果、俺が選んだ信頼できる神を、ジェネスの影の役割に置いての使徒化をする事にした。

 裏切りの代償は、消滅と言う重い物である。

 神にも魂はあるのだが、その魂すら消滅させ、完全なる無へと変わると言う物。

 それをメナトは受け入れたのだ。

 葛藤はあったみたいだが、多分、別の事に関してだろう。

 それと、表向きは今までと変わらず戦神である。

 用途において、入れ替わる仕様だ。

 デメリットは、使徒になった際、膨大な力を受け入れなければならない。

 その後は、結構な激痛に苛まれる。

 まぁ、人間で言う所の酷い筋肉痛みたいなものだな。

 程度は全然違うけど。

 斯くして、メナトは使徒化を受け入れた。






 そして数日後、転生組と召喚者組に第二の試験が訪れたのだった。

 例年の年末年始投稿日程ですが、12月29日から1月9日まで毎日投稿します。

 その後の日程ですが、1月14日は遅ればせながらのお正月休みを頂きたいと思います。

 その翌週の1月21日からは、通常通りに投稿予定です。

 まだ続きますが、今後も宜しくお願い致します。

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