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214話 大人数の試験・転生組

「お? どうやら無事に終わったようだね」


 領域から出てくるウォルド達を確認したメナト。

 転生組も安堵した表情を浮かべていた。

 だがその顔は、直ぐに緊張と不安に変わった。


「さて。それじゃ、私達の番だね」


 メナトが告げると同時に、身体が強張る転生者組。

 まぁ無理もない。

 前世では生き物を殺す必要のない生活を送っていたからな。

 いや、違うな。

 正確には、直接、生き物を殺す生活――だな。

 生き物は、何かの命を奪って生きている。

 肉食獣だけでなく、草食獣ですら、命を奪って生きているのだから。

 そして、その中でも、多種多様な生き物の命を奪って生きているのが人間だ。

 だが、大半の人間は、自身が当事者にはならない。

 食しやすいように加工した物を購入して、食べるからだ。

 それは、この世界でも同じと言える。

 もし違う所があるのなら、当事者になる人間の方が多い事であろう。

 この世界には、魔物がいるからな。

 まぁ、煮ても焼いても食えない魔物もいるが……。

 そんな立場に、いきなり立たされたのだから、強張るなと言う方が無理なのかもしれない。


「……はぁ。気持ちはわかるけど、ラフィの事も考えてやってくれ」


「それは、どういう……」


「説明しよう!」


 背後から掛けられた俺の声に、飛びのいて驚く男性二人。

 女性陣は……ちょっと驚いてはいるけど、通常運転だな。

 蛍だけは、またか……って顔をしていたが、スルーしておこう。

 藪蛇になりそうだし……。


「総大将のお出ましだね」


「メナト、それはなんか違う」


「間違ってないと思うけど?」


 周りも頷いているので、ちょっとだけため息が出てしまった。

 まぁ、それはそれとして、説明だけはしておかないとな。


「それで? 説明って何?」


「焦るな蛍。順番に説明するから」


 まず、前に話していた根回しの件について。

 八木達にも話してあるのだが、八木はヴァルケノズさんに預けられていた子供――って事になっている。

 養子縁組などはしていないが、実質、神聖国教皇の子供って設定だ。

 春宮と姫埼は、ランシェスとセフィッド共同経営孤児院――実際は施設――の出身って事にしてある。

 才能があったので、両国が積極的に教育して、八木のサポート役として同道していた――と言う設定だ。


「そんなことになってたんだ」


「それじゃ、私達の設定はどうなってるの?」


 箒がなるほどと納得し、澄沢が自分達は? と聞いて来た。

 全員がかなり気になっているようなので、順番に説明していく。


「まず、男性陣。君ら、ファスクラ軍務卿の隠し玉になったから」


「「え?」」


「才ある子どもを、密かに教育するなんて珍しくも無いからな。二人は一応、孤児院出身設定。但し、ファスクラ軍務卿が絡んでるから、下手な事は出来ないぞ」


「マジかよ……」


「もうちょっと、マシな設定にして欲しかった……」


「うっさい。お前らの設定だって、軍務卿に借りたんだからな。……娘を娶れとか言われたら、断れねぇんだぞ」


「「なんか、すまん」」


「まぁ、軍務卿も貴族だからな。陛下に睨まれたくはないだろうし、その辺りは無いと思うが……多分」


「「マジですまん!」」


 二人は謝って来たが、多分、娘を! 案件は無いと思っている。

 代わりにだが、子供の婚約者案件は非常に危ういと考えている。

 ファスクラ家も、子供が多いから、十分あり得る話なのだ。

 ……陛下の介入に期待しよう。

 そして、女性陣についてなのだが、これが非常に面倒だった。

 特に、蛍と詩音が……。


「次に箒な。まず最初に言っとくけど、女性陣は各国に分散って話もあったんだが、嫌がる国が多くてな。全部、ランシェスで構わない事になった」


「それだと、私もランシェスなんだ」


「それで間違ってない。それでだな、箒に関してなんだけど、スペランザ商会で引き取った子供って設定にした」


「なんで?」


「消去法だな。文句は言うなよ? そもそもの話、こういった問題は、女性の方が厄介なんだ。姫埼と春宮だって、ギリギリを攻めたんだから」


「まぁ、良いけど……」


 箒は素直に納得してくれたが、実はこの話、納得させるための嘘である。

 いや、スペランザ商会で引き取った子供ってのは本当だけど、消去法でそうなった訳ではない。

 選択肢が非常に少ない中での決定だったりする。

 次に芹沢だが、こっちは父上に泣きついた。

 勿論、母上達にも泣きついた。

 結果、クロノアス家の使用人の子供って設定になった。


「なんか、俺達の扱いと差が……」


「それは仕方ないな。男の方が、設定が楽なんだから」


「ひでぇ……」


「文句があるなら、今すぐ社会に放り出すけど?」


「「食客って、素晴らしい!」」


 潤と輝明の言葉に、女性陣はジト目になり、俺はため息を吐いた。

 そんな俺の肩に、手を置くメナト。


「時間が無いから、サクサク行こうか」


「……慰めてくれるんじゃないのかよ」


「それは、あの娘達の仕事だから」


 そう言って、メナトは視線を流す。

 そう、婚約者達の方に。

 至極真っ当な意見で、何も言えなかった。

 なので、残る二人の話をしていく。

 ぶっちゃけ、この二人がマジで大変だったわ。


「それで、私と詩音の設定は?」


「陛下に泣きついた」


「「はい?」」


「ぶっちゃけよう。設定も何もない!」


「「どういう事よ!」」


 まぁ、こういう反応になるわな。

 因みにだが、この二人だけに関しては、各国に協力を要請した。

 先程、各国が嫌がったと言ったが、あくまでも養子縁組や隠し子、出身国で揉めるのが嫌だった――と言う訳だ。

 だから、出身国だけをランシェス設定にするならば、多少の協力はしてくれたのだ。

 尤も、陛下には説教されたが……。


『お主の行動の突飛さは、今に始まった事ではないが……』


『すみません』


『だがな……そう言った話は、もっと早くせんか! 根回しにも時間が掛かるのだぞ!』


『いや、本当にすみません!』


 珍しく何も言い返せずに怒られた後、どうするか話し合って、同盟にある各国を巻き込んだのだ。

 結果、どうにもならないなら、要らないんじゃないかと言う結論に落ち着いた。

 但し、何も無しは周りが五月蠅いとの事で、何処からともなく現れた美少女二人が、各国のお墨付きを貰って冒険者家業をしている――と言う設定にしたのだ。

 当然、クッキーさんも巻き込んだ。


『あのねぇ……巻き込むのは良いんだけどぉ、実力が無いとAは難しいわよぉ』


『そこを何とか……』


『EXであるぅ、貴方のお願いだから善処はするけどぉ、いくつか条件が必要よぉ』


『結婚してくれ以外なら!』


 前もって牽制して、言われそうな条件を潰したのだが、これは流石に怒られた。

 確かに失礼極まりない発言だったので、素直に謝罪した。

 で、出された条件との一つが、今回、試験に選んだ領域で、パーティーを組んでも良いから、それなりの結果を残す事だった。


「あ、頭痛いわ……」


「私達には不可能な気が……」


「凶悪な装備をして、どの口が言ってる」


 実は転生者組の装備、メナト監修で制作されている。

 何か付与が掛かっているわけではないが、とにかく頑丈で、切れ味が良く、手入れ不要の一品だ。

 尚、男性陣より女性陣の方が凶悪な装備だったりする。


『デスサイズ、かっけー!』


『扱えるのか?』


『俺に不可能はなぁい!』


 何て言ってた潤だが、案の定、扱えなかった。

 そしてデスサイズは、何故か箒との相性が良く、彼女が扱う事に。

 そして潤は、平均的な装備となった。

 普通に泣いて悔しがってたな。

 尚、各員の装備であるが、以下の通りだ。


 潤――片手直剣・大盾

 輝明――両手剣

 箒――デスサイズ

 澄沢――ハルバード

 蛍――大太刀(デカい包丁風)

 雪代――金棒(自身の身長と変わらない大きさ)


 な? 女性陣の装備が凶悪だろ?

 流石にちょっと引いたわ。

 因みにメナト曰く、相性で選んだらそうなった――だそう。

 女性陣の武器の相性がおかしいと思ったのは、俺だけじゃない筈だ。


「俺、蛍に解体されないよな? 金棒でプチッとされないよな?」


「「するか!」」


「はいそこじゃれあわない。説明も終わったし、そろそろ行くよ」


 メナトの号令によって、ドナドナされていく親友達。

 頑張って欲しい所である。

 そう思っていたのだが、結果は想定の遥か斜め上の結果に。

 うん……どうしてこうなった!?


『木が凄いな』


『樹齢何年だろうな』


『きゃっ!』


『足元に気を付けるんだ。今までとは勝手が違うよ』


『デスサイズとか不利そう……』


『大太刀も不利そうね』


『金棒、大き過ぎたかも……』


 各々に話しているが、端から視てると、メナトが引率の先生に見えるな。

 さしずめ、課外授業だな。

 なんて考えていると、帰ってきた八木達も映像を視て、同じことを思って言葉にしていた。


「なんか、課外授業みたいっすね」


「メナト様は、引率の先生かな」


「転生者組は、メナト様の生徒? この場合、神徒かしら?」


「姫埼、それ、上手くねぇからな」


 最後に姫埼にツッコんで、モニターに意識を移す。

 ただ、モニターに意識を移す直前、姫埼が微妙に嬉しそうにしていたのを、俺は見逃さなかった。

 何処が嬉しかったのか、正直わからん。

 とまぁ、そんな事を考えていると、どうやら接敵しそうな場面になっていた。

 ただ、先程の魔物とは毛色が違う。


(あれは……ゴブリン?)


 八木達は、この領域特有の魔物と戦っていたが、転生者組はゴブリン。

 これはどういう事だ?

 徐にエステスを見るが、首を横にフルフル。

 特に何かしたわけではないらしい。

 俺も力の発動は感じなかったし、神達もエステスを疑ってない。

 となると……群れか集落がある?


(接敵する、ゴブリンの種類にもよるか。群れならまだ良いが、集落だった場合は……)


 雰囲気が変わったのを感じたのだろうか? 皆が戦闘準備をし始めた。

 俺、何も言ってないんだがなぁ……。

 そうこうしてるうちに、ゴブリンと接敵した様だ。

 委縮しながらも、メナトの指示に従って陣形を取っている。

 その映像の中で、ゴブリンを確認していく。

 そして、集落があるのが確定した。

 何故かって? 接敵したゴブリン共の中に、ゴブリン聖騎士(パラディン)がいたからだ。

 どういう訳か、ゴブリン聖騎士(パラディン)は集落クラスまで群れが大きくならないと発生しない。

 少なくとも集落以上、下手をすれば軍団クラスもあり得る。

 因みに、ゴブリンの群れに対してはいくつかの状態に分かれる。

 群れの場合は、小、中、大。

 集落の場合は上記に加えて、村、町、街、軍、都市、大都市となっている。

 但し、都市、大都市クラスの集落は、基本的に集団暴走(スタンビード)になる。

 今現在、そう言った報告は受けていないので、最大規模が軍クラスとなる訳だ。

 まぁ、軍クラスでも集団暴走(スタンビード)になったりもするがな。

 ただ、今の問題として、このまま続行するのかと言う問題がある。

 メナトに念話で確認するか……と、考え終わった瞬間、事態が動いた。


『うふ、うふふ』


「え?」


『美羽?』


『あはははは!』


 雄たけびを上げて、箒が突貫した。

 何してくれちゃってんの!?


『しねぇ! ゴミムシ共がぁ!』


『美羽さん!?』


 潤が声をかけるも、止まらずに突貫していく箒。

 そして、デスサイズを横薙ぎで一閃、数体のゴブリンの首が胴体とお別れした。

 ただ、ゴブリン共も直ぐに攻撃に転じる……も、箒の華麗なデスサイズ捌きによって、次々と首が胴体とオサラバしていく。

 しかし、接敵したゴブリン共は、フォレストウルフを配下にしていた。

 奴らは素早いので、攻撃を当てるのは、初心者には至難……グチャ!


(うわぁ……雪代さんもえぐいなぁ)


 箒の背後を守る様に後ろに立ち、金棒を一振り。

 それだけで、一匹のフォレストウルフの頭がぐちゃぐちゃに。

 お茶の間にはお届け出来ない映像だ。

 だが、二人だけでは数が多過ぎる。

 ゴブリンは接敵しただけでも70匹、フォレストウルフが30匹、加えて、ゴブリン聖騎士(パラディン)が3体。

 戦力差と経験点でも、圧倒的開きが……ザシュ! ズバッ!

 続いて、蛍が大太刀でフォレストウルフの首を断ち、澄沢がハルバードでもう一体のフォレストウルフを真っ二つに。

 前世だったら、完全にアウトな映像だな。

 うん……女性陣、こえぇ……。

 尚、メナトも男性陣二人も、口を開けてポカーンとなっていた。

 男共はしっかりしろと言いたい。

 そしてメナト、指示出し忘れてるぞ。


『箒に触発されちゃったわね』


『人が変わった様に見えるけど、なんか吹っ切れたわ』


『美羽様様ね。でも、あんな感じにはなりたくないけど……』


『あはは! しねぇ! 全部、ぶっ殺してやるっ!』


 女性陣は連携して、中々の成果を上げている。

 ただ、やはり多勢に無勢。

 少しずつ、生傷が増えて来ていた。

 箒に至っては、返り血を浴び捲って、全身血みどろだ。

 そんな中、遂にゴブリン聖騎士(パラディン)が動いた。


『4人共、距離を取るんだ』


 どうにか原状復帰したメナトが、素早く指示を出す。

 と同時に、4人共距離を取った。

 誰もいなくなった場所に、岩棘が生える。


『あ、あっぶなぁ~』


『危うく、蛍さんの串刺しが出来る所だったわね』


『なんで私だけなのよ!』


『あ、私も思った。なんでか、蛍で連想しちゃったんだよね』


『あんたらぁ……』


 軽口を叩き合ってはいるが――箒だけは敵を睨んだまま――転生者組には荷が重いだろう。

 ゴブリン聖騎士(パラディン)の討伐ランクは、ソロでA以上だ。

 バーティーで倒すとしても、苦戦前提でC、普通ならBが相手をするレベルだ。

 中止もやむなしか……と考え始めるが、メナトは映像を視てる俺に対して首を振った。

 どうやら、続行するらしい。

 一応、念の為に、出る準備はしておく。


『さて、想定外の事態になったけど、こんなことは普通にあるよ。続けるかい? それとも――』


『当然、続行よ』


『ここで逃げたら、不知火――ゴホン、ラフィ君に合わせる顔が無いわ』


『女は度胸!』


『全員、ぶっころ!』


『良く言った!』


 潤と輝明、ドン引きである。

 そんな二人を放置して、指示を出していくメナト。

 おい、ちょっとは気にしてやれよ、お前ら。


『良いかい? ゴブリン聖騎士(パラディン)の相手は、天音、蛍、詩音、それぞれに当たって貰うよ。美羽は雑魚共を一掃』


『『『『了解』』』』


『それと、あれの解禁を許可するよ。全力で殺っておいで。危なくなったら、助けに入るから』


『『『『はい!』』』』


 あれとは? 一体、何の話だ?

 何かと考えるよりも早く、答えが出て来た。

 まず、澄沢が、アームガントレットを装備。

 続けて、雪代さんがレッグガントレットを、蛍が小太刀を装備。

 そして箒なのだが……。


「なんで鞭!?」


 思わず叫んでしまった。

 そして、今までの先頭を見ていた八木達から、同じ言葉が出る。


「「「女王様……」」」


 気持ちは同じだった。

 そして、潤からも同じ言葉が飛び出ていて……なんか、ハァハァしていた。


「「「「この、ドМ野郎!」」」」


 またも八木達と同じ気持ちに。

 なんか、カオスって来たなぁ……。

 そんな中、第二ラウンドが開始された。


『さぁて……解体作業ね』


「蛍、解体作業って……」


『殴って耐性崩したら、真っ二つが早いよね』


「澄沢……」


『さっさと頭潰して終わらせましょう』


「雪代こっわ!」


『ああ……うふふ』


「箒、トリップしてねぇか?」


 そうして再会っされた戦闘だったが、半分は蹂躙劇だな。

 まず箒の戦闘だが、かなり印象的だった。

 右手でデスサイズを操り、ゴブリン共を切っていく。

 と同時に、左手に持った鞭がヒュンっとなれば、あら不思議……敵が真っ二つに。

 更にその戦闘模様が、踊っているかのようだった。

 名付けるなら、舞踏殺とでも言うのかね?

 尚、八木達はガクブルしておりました。

 続けて澄沢だが、岩棘を警戒してか瞬時に肉薄。

 ゴブリン聖騎士(パラディン)の鳩尾に一撃入れて、膝を突かせる。

 その隙を見逃さず、ハルバードで真っ二つ。

 一瞬で決着がついた。


「澄沢さんもヤバいっすね……」


 そんな八木の言葉を聞きながら、雪代さんの戦闘を視ると、うん……こっちもやべぇわ。

 金棒を右手に持って、引きずりながら近づく雪代さんに、岩棘を発動さえるゴブリン聖騎士(パラディン)

 正に岩棘が発動して、雪代さんを貫こうとした瞬間、レッグガントレットを身に着けた足で、地面を踏みつける。

 すると、地面に亀裂が走り、陥没して岩棘は不発。

 と同時に、踏み込んだ足を軸に跳躍し、頭上から金棒を両手で持って振り下ろす。

 一撃で顔面が飛び散り、こちらは一撃で絶命。


「あの重量攻撃と跳躍は凄いですよねー。一撃必殺ですよ」


 春宮の感想を聞きながら、最後は蛍の戦いを視る。

 こちらもゴブリン聖騎士(パラディン)が岩棘を発動。

 蛍は避ける素振りすら見せない。

 やばい! と思ったのも束の間、当たる直前で全ての岩棘が斬り落とされた。

 春宮は何事!? と思っていたようだが、俺、八木、姫埼は何が起こったのかを理解していた。

 左手に持った小太刀で、全ての岩棘を、文字通り目にも止まらぬ速さで斬り落としたのだ。

 当然、ゴブリン聖騎士(パラディン)は何が起こったのか分かっていない。

 ひたすらに岩棘を連発するも、全て同じ結果に。

 焦ったゴブリン聖騎士(パラディン)は、魔法での攻撃を止め、剣での攻撃に切り替えて近寄ってくる。

 しかし、蛍の間合いに入った瞬間、細切れにされる。


「速いですね。しかも大太刀であの速さ……打ち合いになったら負けますね」


 桜花の感想が終わると同時に、ゴブリン戦は全てが終了した。

 気付けば何一つ危うい所は無かった。

 と言うか、途中から脅えも無かった気がする。


『うん、良いね。合格だよ。美羽だけは、後でお話があるけどね』


『え!? なんで私だけ!』


『プッツンして、暴走気味だったからかな。今回は良い方向に傾いたけど、諸刃の剣だからね。精神面だけ再修練』


『そんなぁ……』


 箒が落ち込んでいるが、仕方ないと思うよ。

 しねぇ! とか言ってたし。

 映像魔法の映像は、リエルが作った映像魔道具に複製してあるから、後で視せて上げるとするかな。

 ただ、問題が一点……。

 どうやら、メナトも同じ事を考えていた様で、男二人に目線を合わせた。


『二人は再修練どころじゃないね。どうしよっか』


『『げっ!』』


 メナトも悩んでいる様だし、ゴブリンに関する調査と報告も必要だし、八木とウォルドと神喰も巻き込むか。

 いや……暴れたそうだし、スパルタで行くなら、脳筋二柱もありだな。

 ささっと目線を合わせる。

 ウォルドは溜息、脳筋共は不敵な笑み、神喰は面倒そうに、そして八木は……。


「なんでっすか!? 試験はクリアしたっすよね!?」


「クリアしたから?」


「答えになって無いっすよ!」


「まぁまぁ。ここで活躍したならば、ご褒美考えようじゃないか」


「………本当っすか?」


「勿論」


 俺は意味のない嘘はつかないよ。

 意味のある嘘はもの凄く吐くけど。


「あの」


「ん?」


「「私達も行きます!」」


「まぁ良いけど……」


「ラフィ様一人はダメ。私も行く」


「あ、じゃあ僕も行こうっと」


「私も付いて行きますよ」


「妾も行くぞ」


「私も」


「もういっそ全員で行って、集落を潰すか。あ、セブリーとトラーシャには頼みがあるんだが?」


 結局、メナトと合流して全員で集落を探索、そして壊滅させた。

 集落の大きさだが、予想より大きくて街クラス。

 想定ゴブリン数は万越え。

 それを全員で潰して、帰宅しました。

 潰してる最中に、潤にはトラーシャ、輝明にはセブリーをマンツーマンで付けて、強制修練もさせた。

 動き自体は悪くなかったので、監査役のメナトからは、一応だが合格を貰っていたな。

 それと、ゴブリンはもの凄く臭いので、匂いだけは洗浄魔法で落として帰ったのだが、大半の同伴者が血まみれだったので驚かれたな。

 これは失敗だったわ。

 後日、報告書を上げて、試験に選んだ領域が再調査となったのは、言うまでも無い事だろう。

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