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幕間 迷・嫁会議

200万PVまで、後4万ちょっと……。

年内に行けるのか?


「さぁ! ワタクシに恋バナを―!」


 真面目な話をしていたはずなのですが、神々の参加によって、場が混沌と化しました。

 普段は、私達の話し合いの邪魔にならない様にと、ラフィ様も気を使って下さってるのですが、そのラフィ様ですら、登場せざるを得ない事態に発展してしまいましたからね。

 そして、その中心となっているお方なのですが、恋バナに飢えているみたいです。


「ふんふん。リリィとティアの出会いは物語のようですわね。素晴らしいですわ!」


「「いえ、それほどでも」」


「その後は、どうなったのですか!?」


「ち、近い! エステス様、落ち着いて下さい」


「そうだ。このバカ。もう少し離れるんだ」


「あん。メナト、髪を引っ張らないでくださいまし」


 何でしょう? エステス様とメナト様を見ていると、以前、ラフィ様の仰ってた、漫才――なる物が分かる気がします。

 さて、こんな考えをしていますが、実は私、先程から全力全開の笑顔をしています。

 もうニッコニコです。

 新規組の女性陣は、引きまくっています。

 ですが、止めるつもりはありません。

 これも、エステス様対策なのですから。


「次! 次ですわー!」


「エステス様、落ち着いて――」


「ミリアさんも、笑顔で壁を作ってないで、助けて下さいよー」


 ナユさんが助けを求めてきますが、断固拒否させて頂きます!

 何故、私がここまでしてるのか?

 それにはちゃんとした理由があります。

 だって皆さん……それなりにロマンチックな出会いなんですもん!

 私はお見合いと変わらないですし、羨ましいんです。

 もし、私の気持ちを辛うじて分かってくれるとしたら、リーゼさんしか――。


「その時のラフィ様は、勇ましかったです。皇国の危機を救ってくれた、英雄です。それも、二度ですよ、二度!」


「素晴らしいですわ。ですが、黒龍の件は違う気もしますの」


「エステス様は分かってらっしゃいません。誰も解決する事の出来なかった事を解決したのですよ? それも、他国の貴族がです。同盟国とは言え、普通は無い事です」


「そう言われますと、納得できますわね」


「そうでしょうそうでしょう。ラフィ様は素晴らしき、愛する殿方なんです」


 リーゼさん……結構美化して言ってますね。

 間違ってはいないんですが、話術でかなり美化されている感じです。

 まるで、グラフィエル教の教祖――ごほん、この考えは止めておきましょう。

 嫌な予感しかしませんので。

 その後もエステス様は、次々と恋バナを漁っていき――いえ、聞いて行きます。

 そして残るは、私、蛍さん、詩音さんだけとなりましたが、お二人の場合、恋バナになるのでしょうか?


「私ですか? そうですね……意識し始めたきっかけはありますね」


「んっふっふー。さぁ、ワタクシに聞かせるのですわ!」


 エステス様の興奮度が、天元突破しているようにも見えますが、詩音さんのお話は、皆さんも気になる所みたいです。

 私も、とても気になります。

 この場にいる全員が、エステス様に感謝するとしたら、蛍さんと詩音さんの恋バナを聞けることでしょうか?

 ただ、話したい本筋からは、相当外れているのですが、仕方ない事に今はしましょう。

 だって私、気になります!


「えーとですね……とってもありきたりなんですけど、大学入試の時に、緊張のせいで過呼吸になってしまってですね……」


「ふんふん」


 エステス様、鼻息が荒いです。

 ですが、誰も注意せずに、話を進める方向で行くようです。

 私も便乗しておきましょう。


「試験時間も迫っていたから、誰も助けてくれなかったんですが、彼だけが、声をかけて助けてくれて」


「素晴らしい出会いですわ!」


「そ、そうですか? えーと、それで、試験に遅れるかもしれない中、教員の方に話して付き添ってくれて……二人共、試験時間には間に合いませんでしたけど、教員の方の計らいで、受けれなかった科目だけ、翌日に受けさせてもらったんです」


「その時に、好きになったのですわね」


「好きと言うか、意識しただけで……」


「意識すると言う事は、異性として好意を持っていると言う事ですわ。恥じる事は無いのですわ」


 エステス様の言う通りだと思います。

 何事も、きっかけと意識するところから始まるのですから。

 まぁ、憧れか恋愛かは、分かりませんけど。


「良いですか? ツンデレは可愛いとも思いますが、一つ間違えば、相手に不快感しか与えないと、ワタクシは考えていますわ。それなら、クーデレの方がマシです」


「え、えーと……?」


「ヤンデレとメンヘラは愛が重いですが、縛るのが良くありませんわね。程々が良いのですわ」


「あ、はい」


 ツンデレ、クーデレ、ヤンデレ、メンヘラ、知らない単語ですね。

 後でラフィ様にお聞きしましょう。

 あれ? 頭の中のラフィ様が、ちょっと嫌そうな顔をしてらっしゃいます。

 聞かない方が良いのでしょうか?


「良いですか? 蛍くらいのツンデレが可愛いラインですわよ。覚えておくと良いですわ」


「あ、ありがとうございます?」


「どういたしましてですわ」


「あたしをツンデレ扱いするなぁ!」


 ……何故でしょう? 今のエステス様の言葉で、ツンデレなる物が何か、分かったような気がします。

 蛍さんはツンデレ……覚えておきましょう。


「だぁかぁらぁ……あたしはツンデレじゃなぁぁい!」


「はいはい。でも、次は蛍の番でしてよ」


「うっ!」


 蛍さん、一気に狼狽えましたね。

 そんなに話したくないのでしょうか?


「あまり話したくない事なのでしょうか?」


「……別に話しても良いんだけど、あいつに許可なく話すのは、筋が違うじゃない」


「ああ。そういうことですか」


 勝手に人の事を話すのは良くないと言う事ですね。

 自分の事を話すには、ラフィ様の過去にも触れると。

 ……ラフィ様の過去、私、凄く気になります!


「私、凄く気になります!」


「え、ええ……」


「皆さんも気になりますよね?」


 私が問いかけると、全員が二つ返事で頷きました。

 想いは一つ……あれ? ちょっと違和感が。

 ……あ、ラフィ様の過去を知っているであろう方々の返事もあったからですね。

 知らないのでしょうか?


「こう言っちゃなんだけど、一人の人間を神が視てるって事の方が異常なのさ。だからこそ、ラフィは特別なんだけどね」


「つまり、ラフィ様とお会いになってからしか知らないから、過去も知らないと?」


「一応は、情報として知っているよ。でも、実際に見て来た者の話とは、また別なのさ。それに、細かい所までは知らないからね」


「大雑把に、大まかな部分を知っている程度の認識で良いと思います。もし、私達より知っている神がいるとするならば、ジェネス様くらいでしょう」


「シルの言う通りですわね。ワタクシも、どのように過ごしてきたとかは知りませんわ。だからこその恋バナなのですわ」


 神であるお三方も、知らない事はあるのですね。

 我々人から見れば、全知全能に見えますが、そうでもないみたいです。

 ですが、この様な事を話しても良いのでしょうか?


「特に問題は無いかな? ラフィの妻になるならば、いずれ知るだろうしね」


「そうなのですか?」


「そう思っていた方が楽だと思うよ。今はね」


「はぁ」


「そんなことよりも、蛍の話でしてよ!」


「勝手に話して怒られたら、助けて下さいね」


 蛍さんの言葉に、メナト様とシル様はとても複雑な顔をしていました。

 そんなにラフィ様が怖いのでしょうか?

 今まで見て来た私からすれば、怒らないと思うのですが。


「そこまで怒りますか?」


「一個だけ、怒りそうな話があるのよ。以前、潤が詩音さんに勝手に話した時、蒼の雰囲気が変わったからね」


「あの時は、別に寒くも無かったですけど、寒気が止まりませんでしたよね」


「だよねぇ。その後、半月近く、潤とは話もしなかったしね」


「あの話だけは、許可が必要ですよね」


 二人だけで分かった感が出ていますが、私達には分かりません。

 ただ、ラフィ様が触れて欲しくないのであれば、私達も聞こうとは――。


「気になりますわね。そこkwsk(詳しく)!」


「「ええ……」」


 エステス様、空気を読まないにも限度が……。

 メナト様に止めて貰おうと振り向きますが、耳を塞いでいらっしゃいます。

 ではシル様は……葛藤なさっていました。


「私は何も聞いていない。ラフィには、そう伝えるんだよ」


「かしこまりました。私も、何も聞いていません事にしましょう」


「聞きたい……でも、勝手に聞いたらお仕置き待ったなしになる可能性が……。ですが……」


 女神にお仕置き……ちょっと、いけない妄想をしてしまいましたが、違いますね。

 きっと、神喰さんにしていたお仕置きでしょう。

 神喰さん曰く、神でもトラウマ待ったなし――と、言っていましたし。

 しかし、私達にとっても、非常に気になる話ではあります。

 聞きたいですが、お仕置きされるのは……。


「お仕置き、されますかね?」


「大丈夫なんじゃない? ボクはお仕置き大歓迎だけど。勿論、エッチな方で」


「ヴェルグさん!」


「あはは。まぁ、ボクの勘じゃ、多分だけど大丈夫。但し、婚約者は――って、条件付きだけど」


「私達は?」


「メナトの場合だと、聞き出したりはしないだろうって思うんじゃない? 神の中では、最も信頼がある訳だし。シルとエステスは……ご愁傷様?」


「ううっ。知りたいので、お仕置き覚悟で聞きます。いえ、お仕置き確定なら、根掘り葉掘り、1から10まで全て聞きます」


「拳骨程度で済ましたいなら、根掘り葉掘りは止めた方が良いと、ボクは思うけどなぁ。シルなら、お仕置きでもそれくらいで済みそうだし」


「ワタクシは?」


「クソ親父仕様のお仕置きじゃない? 発端だし」


「根掘り葉掘り聞きますわよー!」


「私を巻き込まないでください!」


 エステス様とシル様がじゃれ合っていますが、見なかった事にしておきましょう。

 そう言えば、ナリアさんは聞くのですかね?

 視線を移すと、耳を塞いでいました。

 聞かなかった事にするようです。


「それで? 聞くの? 聞かないの?」


「あ、聞きます」


 蛍さんの質問に答えてから、全員が座り直したり、佇まいを正して、聞く体制を整えます。

 エステス様だけは、恋バナ恋バナ♪げへへ――と言っておりましたが。


「何処から話しましょうか?」


「恋バナー!」


「はいはい、わかりました。まず、あたしと蒼が幼馴染なのは知ってますよね?」


 蛍さん、エステス様の扱いが雑になってきましたね。

 疲れた感じがしながら話し始めましたが、知っている内容には頷いていきます。


「蒼のお母さんは料理上手で、あたしも何度もご馳走になったんですよ。その時の、蒼が美味しそうに食べてる顔が好きでね」


「なんとなく、わかります」


 ラフィ様、美味しい物を食べてる時って、本当に幸せそうな顔をしますからね。

 そして、私達が作れるようになりたいって言うと、子供みたいな笑顔になるんですよね。

 凄く嬉しそうにもされるので、頑張ろうって気にもなります。


「あたしもね、そんな蒼が好きだったから、料理を覚えたの。必死でね」


「もの凄くわかります!」


「そ、そう? でね、偶には失敗作も出来上がるんだけど、あいつ、何も言わずに食べるのよね」


「文句は言わないんですよね?」


「知ってるって事は、失敗作を食べて貰ったのね」


「ええ。考え事をしてたら、失敗してしまった事がありまして」


 蛍さんと二人、微笑みながら、分かり合った感を出します。


「だからかなぁ。小学生の時、美味しいって言われ時の顏が忘れられなくてね。その頃からかなぁ、あいつの笑顔をもっと見ていたいって思ったのは」


「それもわかります。上手にできたお料理を、とても嬉しそうに召し上がるんですよね」


「そうね。でも、そんなあいつだったから、高校生の時は見ていられなかったわ」


「何かあったんですか?」


 事情を知る、蛍さんと詩音さんの表情が一気に曇りました。

 それほどの事があったと言う事なのでしょうか?


「ある日ね、彼女が出来た! って、報告してきたの。あのバカって鈍感だから、あたしの気持ちには気付かないまま報告してきて、すっごくムカついたわ」


「ええと……」


「でもね、それと同時に思ったわ。何で思いを伝えなかったんだろうって」


「それは……」


「わかってる。あたしも臆病だったって話。今の関係が壊れるのを怖がっただけ」


「…………」


 少し、分かる気がします。

 もし、政略結婚はあるにしても、今までの関係が壊れる事を恐れたなら、私達も何も言えないかもしれません。

 そう考えると、我を通してる、美姫だけを集めていると裏で言われているラフィ様ですが、私達の事を気遣っているのかもしれません。

 ラフィ様ならば、利益供与をちらつかせるだけで、いくらでも婚姻関係に持ち込めるのですから。

 考えなかったわけではありませんが、改めて考えると、ラフィ様の優しさに甘えている感じにもなります。

 ですが、蛍さんの次の言葉に、私達は信じられないと思う事になりました。


「でもね、全部間違えた。彼女が出来た蒼だったけど、別のグループのオモチャにされたのよ」


「え?」


 蛍さんが、当時の悔しさを思い出すかのように、手を握りしめます。

 一体何が……。


「私達の前世……で、良いのかしら? まぁ、高校生にもなるとね、目に見えない階級みたいなのがあるのよ」


「爵位の話ですか?」


「こっちで言うと、慣習の方があってるかもね。別に、蒼が底辺だったってわけじゃない。下には下がいたわ。でも、狙われたのは蒼だった。陽キャの奴らにね」


「えっと……」


「こっちにも、学校があるわよね? その中に、やたら陽気な人間がいたりしない?」


「……いましたね」


「そう言う奴らが、私達の前世だとぜんっぜん偉くないのに、自分達が一番だと勘違いしてる奴らなのよ」


「その方達に、罠に嵌められたと?」


「平たく言えば、そうね」


 なんでしょう? 凄く怒りがこみ上げてきます。

 ですが、このお話には、まだ続きがあるみたいです。


「で、その中の一人が、罰ゲームで蒼に告った訳。まぁそれでも、罰ゲームだとわかって、普通に振られたのなら、マシだったんだけど……」


「話を聞いて、詳細は知ってるけど、流石に酷かったわね」


「そんなにですか?」


「そうね。ミリア達に分かりやすく言うと、婚約を交わした相手が、実は別の男と前から婚約していて、酷い方法でそれを暴露したにも関わらず、面白可笑しく吹聴した挙句に、ある事ない事言いふらして、その人物を陥れた――かしら」


「なんて酷い……」


「付け加えるなら、その人物の交友関係も破壊し尽くした――てのも付くわね。尤も、昔から交友関係のあるあたし達には効かなかったけど」


 蛍さんの話を聞いた私達ですが、皆、想いは一つだと思います。


 ――徹底的に、社会的に抹殺したい――と。


 ヴェルグさんなんて、先程から殺気が漏れています。

 もし、ラフィ様の前世の世界に行けたなら、物理的に抹殺する事間違いなしです。

 ですが、シアちゃんだけは怒りながらも、悲しそうな顔もしていました。


「悲しいのです。どうして、そんな事をしたのですか?」


「理由? 簡単よ。誰かを貶めて、有利に立ちたいから。後は、面白いから」


「たったそれだけの理由なのですか?」


「そうよ。テストで負けた。だからあいつが目障りだ。陥れよう。面白いからやろう。そんな、しょうもない理由よ。だから、腹が立つ。未然に防げなかった、あたしにも……」


「蛍おねえちゃん……」


 シアちゃんが今にも泣きそうです。

 私はシアちゃんの傍に移り、優しく抱きしめます。

 ですが、次の一言で場の空気が変わります。

 いえ、神だからこその発言だったのかもしれませんが。


「メナト、その人物、直ぐに天罰を下しましょう」


「ええ。生きてる価値はありませんわ」


 シル様とエステス様が怒ってらっしゃいました。

 更に、とんでもない発言まで飛び出します。


「地獄の業火で、1億年位焼きましょう」


「生温いですわ。二度と転生出来ないように、虚無へ落とすべきですわ」


「お前ら落ち着け」


 メナト様が窘めますが、お二方の怒りは収まらない様子。

 流石に、蛍さんも詩音さんも引き気味です。


「お前らの気持ちはわからなくもないが、どうにもならないだろうに」


「働きかければ良いのですわ!」


「ラフィの前世の世界に、基本、我々は不介入だ。伝えはするが、どうするかは向こうの神次第だろう」


「甘い! 甘いですわよメナト!」


「うん。砂糖を煮詰めた物よりも甘い」


「「ジェネス様に言えば、どうにでも出来る!!」」


「その前に、ラフィに報告が先だね」


「「深く、静かに、ジェネス様に報告するべき(ですわ)!」」


「どうせ、ラフィが止めると思うけどね」


「メナト様は冷静ですね」


 正直に言えば、エステス様やシル様の意見を支持したいと思っています。

 出来る事なら、この世界に呼んで頂き、徹底的にやりたいとも思っているのですから。

 私の中に、こんな感情があるとは思いませんでした。

 初めて、誰かを憎いと思うなんて……。

 ですが、メナト様はそれも見抜いておられた様子で、私の言葉に対して、丁寧に返してくださいました。


「正直に言おうか? 出来る事なら、この手で捻り潰したいとは思ってるよ。でもね、無理なものは無理なんだ。なら、どうするか? いつも通りに接してやるだけなのさ」


「いつも通りですか?」


「変に同情する事は無いんだよ。だって、ラフィにとってはもう終わったことだからね。乗り越えてるからこそ、今があるんじゃないのかな?」


「そう……ですね」


 メナト様のご指摘に、思考が冷静になって行くのが分かります。

 怒りはまだありますが、冷静にメナト様に言われた事の意味を考え、答えを出しました。

 過去より今、そして、未来なのだと言われたのです。

 なら、私達がすることは……。


「蛍さん」


「何?」


「その後は、どうなったんですか?」


「……学校での孤立だけは防げたけど、授業中や小休憩時間は孤立する事になったわ。当然、精神病も発症した。暫くは、食事も喉を通らなくなったし、食べれるようになっても、余り笑わなくなったわ。そして、味が分からなくなってる時期も……」


「そう……ですか」


「まぁ、これが高校二年の頃の話ね。で、どうにか半年して吹っ切れて、卒業する頃には精神的要因で起きてた味覚障害もどうにか……って感じかしら。ただ、恋愛恐怖症にはなっていたけど」


「だから、ですか」


「ええ。だから、よ」


 なるほど。

 だから蛍さんは、告白しなかったんですね。

 深く傷ついた部分は、まだ完治しきれてないと踏んだのでしょう。

 幼馴染故の鋭さなのかもしれません。

 ああ、だからですか。

 自分に言い聞かせる様な告白をされたのは。

 好き、愛している――と言うのは、嘘偽り無い言葉なのでしょう。

 ただ、過去の出来事から、自信が持てなかった。

 本当に、自分を好きなのか、愛してくれているのか、分からなかった。

 また裏切られるのではないかと言う不安。

 だからラフィ様は今も……。

 なら、私のすることは、今は一つでしょう。


「蛍さん、詩音さん、優華さん、桜花さん」


「「「「なに?」」」」


「率直にお聞きします。ラフィ様の子を、産んであげたいと思いますか?」


「「「「ちょっ!?」」」」


 あら? 4人共、赤面してしまいました。

 ですが、これは必要な事なので聞かなければなりません。

 多分、ラフィ様にとって、これが最も最良で最療なのですから。

 そして、この答え次第で、私は己の役目を全うしようと思います。

 そう、正妻としての役目を――。

 恥ずかしそうにしていましたが、私が視線を外さずにいると、姿勢を正してから、4人が真面目に答えました。

 全員で頷いて、答えは決まっていると言わんばかりに。


「「「「産みたい」」」」


 その答えに、私は笑顔になります。

 壁を作る笑顔ではなく、優しい雰囲気の笑顔です。

 使い分けてこそ、貴族の娘であり、貴族の正妻なのですから。

 そして、真剣に答えてくれたのならば、こちらも真剣に答えます。

 尤も、悪い話では無いですけどね。


「わかりました。では、私達がサポートしますね」


「ミリア、良いの?」


「あら? ヴェルグさんはご不満ですか?」


「不満は無いけど、珍しいかなって」


「普段なら、ラフィ様が――って言いますが、今回ばかりは違うかなと」


「あの話を聞いた後だからねぇ。同情?」


「違いますよ。多分、ラフィ様には必要と思った迄です」


「ミリアも、ラフィ至上主義だよね」


「間違っていたら(たしな)めますよ。私は、私も含めて、皆で幸せならそれで良いのです」


 そうヴェルグさんに告げると、違いない――と言った感じで頷きました。

 分かって頂けて何よりです。

 こうして話も一段落した所で、本来伝えるべき事を伝えていないのを思い出しました。

 重要な事なので、伝えようとしたのですが――。


「そう言えば、言い忘れていましたわ。プライベートでは好きに呼べば良いですけど、外や公の場ではラフィと呼びなさいな」


「…………」


「エステス……。あのバカ……」


 エステス様に、重要な部分を言われてしまいました。

 私、正妻予定なのに……。


「意味は分かりますわよね? わからないお馬鹿さんは、いないと思うのですけど」


「お馬鹿はお前だ! エステス!」


 何でしょう? 目から雫が落ちそうです……。


「ミリア、ドンマイ」


「大丈夫よミリア。神に譲ってあげたと思えば」


「ミリアおねちゃん。今回は、神様が悪いのです」


 皆さん、慰めてくれてありがとうございます。

 ですが、これは正妻の沽券に関わる事なのです。

 奪われた状態ではいけません。

 ですが、そんな思いを無視するかのように。エステス様の次の一言で、私は撃沈しました。


「さぁ! オオトリは正妻のミリアさんですわよ!」


「…………」


「ミリア?」


 ナユさんが私の肩を揺すると、そのままバタンッ!と良い音が。

 意識はあるのですが、身体は硬直していた様で、そのまま床に倒れてしまう音がしました。


「み……ミリアが倒れた!?」


「か、回復、回復魔法を!」


「ナリアさん、早くラフィ様を!」


「ミリアおねぇちゃーん!」


 そこからは小さな混乱が起こり、ナリアさんがラフィ様を呼びに行って、ものすごい勢いで駆けつけてくるラフィ様の姿がありました。

 違うんです皆さん、身体は何処も悪くないんです。

 ただ、皆さんより出会いが普通で、どう話して良いかわからないんです。

 そんな小さな混乱が静まってから、話し合いは終了しました。

 後でメナト様経由で聞いたのですが、私が倒れて部屋に運ばれた後、エステス様がお仕置きをされたそうです。

 その時に、蛍さんがエクソシストと言っていたそうです。

 どんな意味なのでしょうか?

年末年始の投稿日程ですが、24日投稿で発表します。

尚、この嫁会議幕間、とある部分だけ仕掛けがあったりします。

どの嫁会議のタイトルか、分かった人はいますかね?

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