第204話 結構、心にくるんです
いつもお読み下さりありがとうございます。
皆さん、台風は大丈夫だったでしょうか?
作者の方は、それなりには振りましたが、影響は少なかったです。
神々からの贈り物により、加護が増えたウォルドであったが、ステータスを確認したら間抜けな声を上げた。
その後、俺にステータスを見せたのだが、種族は人族のままであったが、その横に【覚醒者】と付け加えられていた。
下を向きながら、左手で顔を覆って溜息を吐くウォルド。
気持ちはとても良くわかる。
俺も似たような経験があるからな。
だからこそ、俺はゆっくりと三柱の方へ顔を向けようとして……横から声が聞こえて来た。
「へぇ。こりゃすげぇ」
「セブリー、勝手にだな――」
「そう言うなって、メナト。流石はラフィが見込んだ人間だぜ」
「おい、俺にも見せろ!」
セブリーが覗き見してきて、それに対してメナトが注意をするが、次の言葉でトラーシャもメナトも気になった様子だ。
俺を押しのけてみようとしてくるので、とりあえず暑苦しいとだけ言っといた。
「ラフィ、独り占めは良くないぞ!」
「うっさいわ。先にウォルドの許可取れよ。話はそれからだろうが!」
「むっ。なら、取ったら見せるんだな?」
「ウォルドが許可してるからな。あ、脅すのは無しだぞ? トラーシャ」
「そんなことしねぇわ! 俺を何だと思ってやがる!」
「傍若無人な理不尽と破壊の権化」
「……一度、本気で語り合わないと駄目くせぇな」
俺の言葉に頬をピクつかせるトラーシャ。
尚、メナトとセブリーは俺の言葉に同意して、うんうんと頷いている。
そして、その光景を黙って見ている婚約者達。
まぁ、話に入りづらいわな。
そんな中、ヴェルグがこちらに近寄って来て、ウォルドにステータスを見る許可を貰っていた。
ウォルドも気にすることも無く許可を出す。
その後、三柱も許可を貰い、残る婚約者達も許可を貰って、全員でウォルドのステータスを確認して行く。
勿論、三柱が適時説明を入れてくれてだ。
「能力値も上がっているのですか?」
「ヴィオレ嬢の言う通りだな。ざっと三倍以上になってる」
「魔力量も上がってる?」
「ああ。リュールは羨ましいだろうな」
「うん。あ、耐性も上がってる」
「スキルは変わりないよね?」
「いや、レベルが上がってる。その中でも、威力の高いのはかなり高いな。リアなら分かるんじゃねぇか?」
「……うわぁ。僕と同じスキルのレベルが異常だ。これ、即死級になってるね」
「それよりも――だ。俺は覚醒者の方が気になるんだが?」
「ラフィもか。多分、それになったから、軒並み上がったんだろうな」
「だろうな。と言う訳で……説明を求める!」
俺の言葉を聞いて、早速メナトが説明を始めてくれた。
まぁ、残る二柱は脳筋だし、無難だな。
分かりやすい説明だとありがたいが、どうなるかな?
「ラフィから言われたから説明するけど、余程の事が無い限り、他言無用だよ。ラフィも……出来る限り頼むよ」
「流石に、同盟関連は話さないと駄目かもしれないぞ?」
「匙加減は任せるよ。ウォルドは……家族くらいにしといて欲しい」
「わかりました」
メナトからの注意を受けてから、どうしてこうなったのかの説明が始まる。
「覚醒者に至るには、幾つかの条件が必要なんだ」
「条件?」
「あ、1つは知ってる。加護に関してだよね?」
「そうだ。ヴェルグの言う通り、加護が一つのカギとなっている」
「だけど、加護は早々増えないんだろう? 先天性に近いのが加護だろう?」
そもそも加護は洗礼の時に授けられる。
実際は、生まれた時に授けられていた加護を明確化するのが洗礼なのだが、今は話さなくて良いだろう。
「概ね間違って無いけど、実はそれだけじゃないんだよ」
「どういう事だ?」
「環境や行動によっても変わるのさ」
「初耳なんだが?」
メナトの話によると、そもそもが極小確率ではあるらしい。
但し、心に宿した想いと、その道を追い続け、壁を乗り越えた者に贈られる祝福らしい。
では、その全てが覚醒者に至るのかと言うと、それはまた別の条件があるとの事。
そして、その条件の一つが、加護の所有数とレベルになると言われた。
「あれ? そうなると、俺は生まれた時から覚醒者なのか?」
「ラフィの場合は特別だからね。区分としては覚醒者に入るのだけど、道を追い続けた訳ではないから、想いが足りない。だから、表面化しなかったのさ」
「もし、表面化してたら?」
「崇め奉られるだろうねぇ。過去に至った者は片手ほどはいるけど、全員が使徒だと言われて崇め奉られて、行動に制限とか、自由が無かったはずだよ」
「……表面化してなくてよかったぁ」
幼少期から行動の制限と自由無しは嫌だ。
マジで良かったと、今更ながら思うわ。
だが、ここで、メナトがミリアの幼少期に関する話を始めた。
「そう言えば、神子も同じだよ」
「何?」
「私達からの神託を降ろすんだ。当然、行動の制限といくつかの自由は無くなるさ」
「……あのなぁ」
「なんだい?」
「そう言う話は、もっと早くに言えぇぇぇぇぇ!!」
重要な話を後になって次から次へと……。
ああ、だからミリアは、いつも楽しそうにしてる訳か。
皆からは普通の事でも、ミリアにとっては新鮮だったんだろうな。
下手をしたら、王族よりも自由が無かったのかもしれない。
……帰ったら、二人でどっかに出かけるか。
一応、不公平さは無くさない様に……出来るかね? ……うん、頑張ろう、夫になるものとして。
新たな誓いを胸にして、とりあえず話を進めて行く。
「で? 覚醒者に必要な加護レベルと加護数は?」
「加護数は原初を含めた13の内、半分以上だね。レベルは、その中の一つが5以上と3以上が最低条件だ。ただ、最低条件だから、加護レベルで覚醒者の強さが変わったりもするけどね」
「あれ? でも、ウォルドの加護数は6しか無い筈……」
もう一度確認してみるが、加護はやはり6しかない。
ウォルドが持っている加護は、戦神、武神、破壊神、魔法神、生命神、死神の6つ。
加護ではないが、原初の庇護と言うのが一つだけだ。
そして、レベルに関してだが、戦神が6、武神が5、残りが3となっている。
庇護に関しては、レベルの記載なし。
別の条件があるのだろうか? その考えはメナトによって否定され、説明がなされた。
「簡単に言うと、庇護が足りない加護の代わりになってるんだよ。加護レベルを見ると、結構強い覚醒者だね」
「……メナト。後で聞きたいことがある。悪いが、用事が終わった後、一緒に来てもらえないか?」
「何かあるのかい?」
「気になる事がある」
「この場では?」
「本人達も交えて話したい。もしかすると、力を借りることになるかもしれない」
「わかった」
俺からの要請に、メナトは詳しい説明を求めずに、了承してくれた。
後で説明すると言ったからなのだろうかね?
真意は不明だが、メナト自身にも気になっていることがあるのかもしれない。
なんて考えていると、メナトに考えを読まれていた様で、素直に答え始めた。
「ラフィは色々と考えている様だけど、答えはシンプルだよ。原初様のお願いだから――だね。説明なしは困るけど、後で話すと言ってるなら、今は……って事さ」
「そういう。まぁ、感謝するよ」
「それは嬉しいね。最近じゃ、神に縋る奴ばっかりで、感謝される数がさ……」
「うっ」
「耳に痛い」
リアが無い胸――言ったら後が大変――を押さえ、リュールが珍しく、何とも言えない表情をした。
他にも見ると、ヴェルグと神を除く面々は、全員が後ろめたそうにしている。
「今度、教会で礼拝するか」
「頼むよ。上級神はともかく、中級神以下は信仰って大事だからさ」
この世界は信心深い人が多いが、感謝を告げる人は年々減少傾向にあるみたいだな。
特に酷いのは、何処の国か聞いておくべきだろうか?
……聞いてもどうしようもない気がするので、とりあえずは保留しておくか。
「しかし、ウォルドは人間止めたなぁ……」
「ぐはっ」
「ボクも何度か手合わせしたけど、人間止めてないのがおかしかったからねぇ」
「ぐふっ」
「ラナは……人間止めない程度に頑張るのです」
「もうやめてくれ……。結構、心にくるから……。ああ……ナリアになんて説明しよう……」
ウォルド、割と心にくるものがあるらしい。
ついでに、嫁のナリアへの説明も考えている模様だが、良い案は無いみたいだ。
夫婦喧嘩とかは無いと思うので、隠し事をしない様に心掛けているのだろうと思われる。
……ウォルドは完全に、ナリアの尻に敷かれている様だ。
「そろそろ作業に入らなくて良いのか?」
「あ、忘れてた」
セブリーの言葉で、本来の目的を思い出す。
神を除く全員が忘れていたのは、仕方ないと思う。
ウォルドの件が、インパクト大き過ぎだったのだから。
皆、自分に言い訳をして、消化してから、本来の目的へ戻る。
「で、まずは何をするんだ?」
「その前に――セブリー」
「前衛は任せろ!」
「本当に頼むよ? トラーシャ。マナ結界の一部に綻びを入れてくれ」
「おう」
「ラフィは、万が一に備えて、私とトラーシャの補佐を頼む」
「わかった。ウォルド! 後は任せるぞ!」
「おう!」
各自、それぞれの役目と持ち場につく。
全員が所定の位置に着くのを確認したメナトは、続いて空間収納から赤い宝石を六つ取り出した。
「それは?」
「空間魔法を応用した、君の友達の肉体を収容した物さ。当然だが、魂も収容されている」
そう言うとメナトは、六つの赤い宝石を宙に浮かせて固定する。
そして、空間魔法の一部を解除したのか、宝石は人一人を収容できる大きさまで戻った。
それを確認したトラーシャが、結界の一部に綻びを入れる。
マナ暴走の余波あったが、結界内にはそれよりも膨大なマナが蓄えられており、綻びから漏れ出し始める。
その漏れだしたマナを宝石に注入して行くメナト。
そこでふと気付いた。
(結構、繊細な操作が必要なんじゃね? これって、シルやジーラの方が適任な気がすると思うぞ)
そう思っていたら、案の定、操作が甘くなるメナト。
そもそもの話、戦闘系職に繊細な作業をさせる方が間違いなのだ。
メナトが悪いと言うよりも、これは完全な人選――いや、神選ミスだと思う。
何か理由があるのだろうか?
「くっ。やはり、想定以上に難しいな」
「どうする? 一度、閉じてしまうか?」
「それは駄目だ。チャンスは一度きりだと言われただろう。だからこそ、ラフィに助力を求めたのだから」
「おい、どういうことだ?」
メナトとトラーシャに説明を求めるが、メナトはそれどころではない模様。
となると、トラーシャになる訳だが……こちらの想定通りの答えが返って来た。
「細かい部分はメナトに任せてるからな。俺は知らん!」
「想定通りの回答、ありがとうよ!」
ちょっと投げやりに返したのだが、ありがとうって言葉に、何故か誇らしげな顔をするトラーシャ。
褒めてねぇからな!
しかし、詳しい話は聞きたい。
なので、メナトを手伝いながら、詳しい話を聞く事にする。
「すまない、ラフィ」
「礼は良い。こっちの事情でもあるしな。ただ、話は聞きたい」
「大分余裕が出来たしね。きちんと話すさ」
そこからは、作業をしながら話をする事に。
まず、どうしてメナトを筆頭として、今回の事に性質上合わない神達で構成されているのかについてだ。
「その話をするには、マナと魔力の関係性が必要になるね」
「大まかは知ってる。だからこそ疑問なんだ」
マナと魔力の関係性。
ぶっちゃけると、生命力にどちらも起因する事。
魔力を使い切る、若しくは著しく消費した場合、ほぼ意識を失う。
中には、死に至る者もいる。
だから、魔法を使い際には、無意識に近い領域で、少なからず外部マナを利用して発動している。
体内マナが燃料で、外部マナが火種と思えば良い。
そうすることで、火種分のマナを節約できるわけだ。
だから、意識を失う者の方が、圧倒的に多い。
となると、魔法神であるジーラの方が、今回は適任とも言えるわけだ。
その事を話すと、話が早いと言う様に、メナトが答を話し始めた。
「結論から言うと、ジーラでもマナの指向性操作については、私と変わらないだな」
「どういう事だ?」
「全てとは言わないが、マナと魔力の関係性はほぼ正解だ。だが、管轄はエステスになる」
「…………おい、まさか」
「考えてる通りだと思うよ」
メナトの言葉に対して、マジかよって顔になってしまう。
自分でもわかるほどに、表情が変わっていた。
その理由だが、マナの体内循環が関係している。
言ってしまえば、生命活動も同時に行っていると言う事だ。
だから、生命に関わる事として、エステスの管轄となる。
そして、全ての神の管轄を持つのがジェネスだ。
ジェネスが降りて来られない以上、誰が来ても同じと言う事になる。
ならば、その中でも操作が上手い神と、不測の事態に対処できる神で構成されてる訳か。
後は、万が一の抑止力に備えて、武闘派である龍神と獣神に、後衛が本領発揮であるジーラが、備えとして神界に残っていると、瞬時に理解した。
「だから、武闘派脳筋神で構成されてる訳か」
「私をそこに入れないで欲しいのだけどね」
「脳筋神の指揮官だからな。そりゃ無理だ」
「あの二柱の手綱を私がかい? 勘弁して欲しいね」
「ジェネスも同じ考えだと思うぞ」
「帰ったら、ジェネス様とOHANASHIが必要かもしれないな」
「逆にOHANASHIされない様にな」
最後は他愛もない雑談となり、話し終わると共に、第一工程は完了となった。
「ふむ。どうやら、安定領域に入ったようだね」
「次は?」
「宝石の色が変わるまで、防衛戦かな? ほら、おでましだよ」
「ちっ。面倒な」
「最終防衛は私がやろう。トラーシャ、君は最後の仕事があるから駄目だぞ」
「げっ。ちょっとくらい良いだろうよ」
「万全を期したい。悪いが、堪えてくれ」
「ラフィまでかよ。……わぁーったよ。但し、抜けて来たのはやるからな?」
「メナトを抜いたやつはな」
そう言って、防衛戦に加わる。
尚、メナトが聞いて来た予定では、最低でも1時間以上の防衛は必要との事。
未だマナ暴走中で、活性化の中、進化して行く魔物からの防衛戦。
数も膨大と言うオマケ付きである。
(戦闘職だけで来て、正解だったな)
そして、数分後に魔物たちが姿を現し、防衛戦が開始される。
「ふぅ……。行くぞ!」
掛け声と共に、全員が一瞬で数体の魔物を屠る。
「格刀術・一式、風撃ち! 魔刀流・一刃、千鳥!」
「レイピア剣術・プレッシング! スラッシュスター!」
「魔闘拳流・天壊! 流星拳!」
「簒奪の陣!」
「滅壊」
婚約者達は各々に、最善策のスキルで屠って行く。
対するウォルドだが、何かを確認するかのように、スキルを使わずに魔物を屠っていた。
少し気になったので、念話で話しかけてみる。
『ウォルド?』
『ん? ラフィか。どうした?』
『いや、何かあったのかってな』
『いや、特に何も……ああ。戦い方についてか』
『そうなんだけど、何かあったのかってな』
ウォルドが言うには、力が溢れてきてるらしい。
ただ、その力を十全に使うと、周りを巻き込みそうで怖いとの事。
だから、極力スキルは使わずに、相手をしているそうだ。
『ヤバいと感じたら使うさ。その時には声かけっから』
『わかった』
こうして念話を終わらせ、防衛を維持する事、二時間。
ようやく、第二工程が完了したと、メナトから念話が届いた。
それを聞いた俺は、各員に指示を出し、一度メナトの元まで後退し、次の作業を聞く事に。
「メナト、次は?」
「体内への適性注入は完了したが、安定に入っていない。動かすのは、もう少し先になるよ」
「どのくらいだ?」
「個人差があるんだよね。だから、1時間かもしれないし、1日かもしれない」
「流石に、1日は持たないぞ?」
「わかってるよ。だから、30分、持たせて欲しい」
「理由は?」
メナトの話では、マナ暴走は終わらせて良い状態になりつつあるらしい。
ただ、注入は終わったとは言え、誤差が出ている可能性はあるとの事。
その調整を終わらせるのに30分らしい。
「その後は、トラーシャがマナ溜まりの中心点を破壊して、一時的に消失状態にする」
「そんな事をして、影響は出ないのか?」
「器の破壊じゃないから、大丈夫だよ。時が来れば、通常の状態に戻る。ただ、数年は、この領域での狩りや採集はお勧めできないけど」
「流石にそれは、この領地に負担が掛かり過ぎる。改善案は?」
「破壊密度の調整なんだけど……」
「トラーシャが一番苦手な事じゃないか!」
「だから、どうしようもない」
実は、どうしようもない事は無い。
俺が破壊の力を使って、調整すれば良いだけなのだから。
ただ、メナトからは言えない。
最後の件に関しては、神の後始末を原初が行う形になるからだ。
強制はできないが、情報を渡すことは可能。
後は原初たる俺の判断次第。
そこが、メナトが取れるギリギリのラインなのだ。
だから、サクッと答えておく。
「俺が最終調整を行う。トラーシャ。俺の代わりに防衛戦に入れ。言っとくぞ? 防衛だからな? それ以外の事をしたら……」
「したら?」
「神喰すら、トラウマになった結界を行使する」
「全力で防衛するとも!」
どうやら、上から結界の情報を見ていたらしい破壊神は、素直に指示に従った。
メナトはドン引き中である。
「メナト?」
「ラフィ。言っておくけど、あの結界って本気でヤバいからね? 原初特注だから、神特効付きなんだよ」
「へぇー。ま、ちゃんとしてれば使わないから」
「私には、絶対に使わないでくれ。ぜったいに――だ!」
念押しで、使うなと言ってくる戦神メナト。
どうやら、神にとって本当にヤバい結界らしい。
ノリで作った結界なんだが、まさかここまでのものとは……。
人生、何があるかわからんな。
そんな話をしている間に、どうやら安定状態に入ったらしく、赤から紫に代わっていた宝石が、今度はエメラルドグリーンみたいな色に変わった。
「どうだ?」
「うん。これなら動かせるね。ただ、空間収納は使えないから、ラフィにお願いする事になるけど」
「それについては問題無い」
メナトからも問題無いと出たので、原初空間に6つの宝石を全て収納して行く。
全て収納し終えたので、最後の後始末に移る。
「ラフィ、一撃でだよ」
「その上で調整か。リエルを使うかな」
リエルに調整を任せ、一撃で、確実に、マナ溜まりの暴走状態を破壊する。
「滅壊!」
大きな音と共に、暴走マナ溜まりは消滅し、通常状態のマナ溜まりに戻った。
尚、結構な演算領域を使ったので、トラーシャじゃ絶対に不可能だったと思う。
大容量の演算領域を持ってるくせに、全く使おうとしないからな。
宝の持ち腐れとも言う。
「魔物の辺りが弱くなったな。一気に殲滅するぞ! ここからは、素材の価値を落とすなよ!」
今作戦最後の号令に、全員が応えて、魔物を掃討して行く。
小さな傷はあれど、重傷者を出さずに、掃討作戦も完了し、全ての作戦が完了した。
「ふぅ。どうにかなったな」
「流石だね。ラフィもだけど、ウォルドも、君の婚約者達も強いじゃないか」
「まぁ、な」
何か嫌な予感がしたので、少し言い淀む。
だが、次の言葉を聞いた瞬間、やっぱ脳筋と思ってしまった。
「君達は、私の加護を持っている様だし、レベルを上げようか」
「ヤメロ! マジでやめろ! やるにしても、帰ってからミリア達と話し合ってからにしろ!」
本気で止めに入る俺。
今回の件で、俺とウォルドの心労は盛大に加速した。
ホント、心にくるものがあってたまらん。
だが、俺はこの後、更に心にくる出来事があるのを、まだ知らない……。
再来週は連休が重なるみたいなので、23,24日で投稿します!




