第166話 久しぶりの学院
お待たせしました。
更新再開します。
後書きに、個人的なご報告と年末年始の投稿についてお知らせします。
同盟会議も無事に終わった翌日、飛行船の発着場まで各国首脳陣の見送りに向かい、握手をして別れるクロノアス家の面々。
挨拶を交わした後、各国首脳陣は飛行船で帰路へと着き、ようやく、肩の荷が下りた感じだ。
尚、陛下は発着場へは来ておらず、王城にて挨拶を済ませたと皇王から聞いた。
……この後、王城に行かないといかんのかね?
結論から言うと、王城へは行かなくても良かった。
陛下も多忙らしく、暫く用事も無いとは、リリィの考えだったりする。
なので、少しの間は休息期間とすることにした。
但し、明日からだが……。
午後からは、いつも通りの仕事をこなし、明日から1週間は執事と侍女は交代で休み、警護任務に就いていた武官とブラガスは1週間の休みを与えた。
「休みの他に、全員に特別ボーナスも支給だ!」
「「「ヒャッハー!!」」」
特別ボーナスに喜ぶ、使用人一同。
但し、掛け声はどこぞの世紀末モヒカンなのは何故だろうな?
「後、休みだが、ブラガスは1週間。武官は1週間だが、警備と門番の仕事もあるから、皆で話し合って決めてくれ。メイドと執事も同じ様にしてくれ」
「料理長はどうしますか?」
「1週間の休暇をやってくれ。料理長に関しては連休で構わない」
「その間のお食事は、どうされるのですか?」
「使用人達は各々に済ませてくれ。こっちは外食だったり、調理したり、適当にするさ」
「わかりました」
全員が集まり話を聞いているが、侍女と執事の休暇配分はナリアとノーバスに一任して決める事になった。
武官はウォルドが一任して決める。
そして、イレギュラー組の神喰、ゼロ、ツクヨに関してもある程度は同じ様にした。
「ゼロとツクヨも1週間は好きなようにしてくれ。但し、その後は少しの間、屋敷に詰めて貰うぞ」
「了解だ。だけどよ、なんでだ?」
「言わなきゃわからんか?」
「わからないわね」
この二人、遊んでいるわけでは無いのだが、クロノアス家の仕事に関しては、最近、全く仕事をしていない。
勿論、神喰もしていない。
なので、この三人にはとある仕事をさせようと思っている。
だが、その前に、一応は叱っておく。
「あのなぁ……、冒険者家業だけじゃなく、我が家の仕事もしろー!」
「うっ!」
「あははは……」
「怒られてら」
「神喰、お前もだぁー!」
「げっ! 藪蛇だった……」
こうして、三人は1週間後から暫くの間、屋敷の警護と訓練を任せられることになった。
暫くしたらゼロは逃亡したので、ツクヨにお仕置きされていたのは、言うまでも無い事だろう。
そう考えると、逃亡せずに仕事をしていた神喰は、意外と真面目なのだろうか?
神喰の意外な一面を見た瞬間でもあった。
翌日、各自の休暇が始まった日、俺はミリア達と一緒に学院へ足を運ぶことにした。
ほとんど通っていないが、一応は学院の生徒であるし、久しぶりに級友達に会いに行こうと考えたのだ。
授業?あるなら、適当に受ける予定だな。
あくまでも予定だから、どうなるかはわからんが……。
「ラフィ様、他の皆さんはどう過ごされると仰っていましたか?」
「あ、それ、僕も聞いてない」
「休みなのに、冒険者ギルドに行くらしい。イーファ達が登録するってさ」
現在、約半数の婚約者達は別行動である。
今、一緒に登校しているのは、ミリア、リリィ、ティア、リア、ラナ、リーゼの六人だけ。
学院に籍を置く者達だである。
残りの婚約者達は、全員が別行動だ。
シアは学校があるので、一人で登校している。
勿論、我が家の馬車で登校だぞ。
何かあったら大変だからな。
そして、残る婚約者達は冒険者ギルドへと赴いている。
念の為、紹介状を書いて持たせてあるので、そこまでトラブルにはならないはず……。
……ならないよな?ちょっとだけ不安だった。
後で話を聞かないといかんな。
「付き添いは、Sランクのナユさん、リュールさん、SSランクのヴェルグさんですか」
「豪華ね」
「何事も無ければ良いのですが……」
あ、やっぱりリリィも心配はしてるな。
まぁ、トラブルホイホイ――自他共に――の俺が居ないし、大丈夫だとは思うが……。
「ミナさんも、登録されるのですか?」
「するらしいよ。何かあった時に別行動になるのは嫌らしい」
「それを私の前で言うのですか?」
「ん? リーゼは、別行動になると思っているのか?」
「戦闘能力が皆無ですから」
「んー、リーゼには対局を見る目があるからなぁ。別行動と言うよりは、指揮官的な立ち位置になると思うぞ?」
「……別行動になりそうな感じもありますよね?」
「それは……、その時になってみないと何ともなぁ……」
ちょっと物騒な話になっているが、ダグレストと言う不安材料がある為、仕方ないのかもしれない。
とは言え、その時になってみないと、誰がどの様な形に配置されるかはわからんしなぁ……。
戦闘能力的な話になると、それなりに安心できるだけの能力は必要だし。
「ラフィ様、今は深く考えなくても良いのでは?」
「そうだな。ミリアの言う通り、有事になったら考えるか」
ミリアの言葉の後は、他愛無い雑談へと切り替えることにした。
まぁ、休みの間は何をするかの話だな。
「久しぶりにゆっくりできるのですし、デートをしたいですね」
「それも良いけど、ラフィの考える料理も教わりたいよね」
「確かに……。リアさんの言う通り、色々と習いたいですね」
「あれ? リリィもリア派なんだ。私はミリアさんの意見に賛成」
「私は、家デートでも良いですね。ラフィ様と色々な本の意見交換とかしたいです」
「私は、暇のあるうちに手合わせをお願いしたいです。忙しくなると、時間が合いませんし……」
「了解。なるべく、ご期待に副えるように頑張るよ」
皆の要望を聞きながら登校し、学園前に到着する。
(後で、別行動組の要望も聞かないとな)
何て考えをしていたのだが、周りがざわついている様子を感じて、現実へと引き戻された。
一体何だと言うのか?
「見て、クロノアス様よ」
「あのお方が。なんて聡明なお顔立ちなのかしら」
「きゃあ! 今、私の方を見ましてよ!」
女子達がやけに騒がしい。
今の俺達は最上級生で、見た事が無い顔なので、多分後輩たちだろうと推察する。
だが、騒がしいのは女子だけでは無かった。
「おい、あれ……」
「本当に学院の生徒だったんだ……」
「あれが、英雄クロノアス……」
ん?
「スゲー……、マジで婚約者が多いのな」
「ばっか、あの人たちは婚約者の一角だぞ」
「マジで? 一体、何人いるんだよ」
んん?
「私も、あの輪の中に入りたいものですわね」
「いや、君じゃ無理だろ」
「何ですって!?」
「あの二人は放っておきましょう。それよりも、お声を掛けに行った方が……」
「あ! 抜け駆けはズルくてよ!」
んんん!?
いや、ちょっとまて。
一体、学院で何が起こっているんだ?
いや違う、そうじゃない!
学園で……いや、世間ではどんな話になっているんだ!?
「あー……、そう言えばラフィって、学院にあまり来てなかったね」
「これは失念でした」
「先に話しておくべきでした」
「今からでも遅くないんじゃない?」
リア、リリィ、リーゼ、ティアは、今の状況に心当たりがある様だ。
ミリアは……笑顔を絶やさず、ニコニコ顔であった。
怒っている時の顏ではないので一安心である。
「これ、どういう状況?」
こちらの質問に答えるのは、やはりミリアであった。
他の皆は……あ、任せたって顔してるな。
「ラフィ様は功績が大きい貴族ですから。最近だとやはり、帝国内乱の話でもちきりですね」
「どんなふうに伝わっているんだか……」
「聞きたいですか?」
ミリアの言葉に、何となく嫌ぁな予感がしたので、聞かない方向で話を進めた。
……のだが、すれ違う後輩たち毎に色々聞こえてくるわけで、必然的に聞きたくない話も聞こえるわけで……。
「ほら、あの方がそうですわよ」
「あの方がクロノアス卿……。お一人で帝国内乱の大部分を治めた方なのですね」
は?
「君、それは間違いだぞ。自分が聞いた話では、一人で大部隊を壊滅させたと聞いてるぞ」
「は? お前も間違ってるじゃねーか。俺が聞いた話だと、首謀者を残して、残る兵は消滅させたって聞いたぞ」
はぁ!?
「男子達! その辺の話はどうでも良いでしょう! 一番は、捕まった婚約者を助けた話でしょう」
「ちょっと違うと思うよ。確か、婚約者の一人を殺されかけて、身を挺してかばったんじゃなかったっけ?」
「あら? 私は、大怪我を負った婚約者を助ける為に、単身で敵軍の中に突撃して、見事に婚約者を助け出した話と聞きましたわ」
「違う違う。婚約者の一人が、クロノアス卿を庇って大怪我を負って、その事に怒ったクロノアス卿が、首謀者をタコ殴りにした話だって」
「どれも違うような気がしますが……、愛する婚約者の為に怒れるクロノアス卿って、素敵ですわよねぇ」
「それには同感ですわね。私も、そこまで愛されたいものですわね」
もう、やめてくれぇーーーーーー!!
何処のどいつだ!根も葉もない噂を流した奴は!
「聞きまして? 今度、クロノアス卿の愛の美談が、劇になるそうですわよ」
何ですと!?
「素敵なお話になりそうですわよね。是非、席を抑えなければなりません」
「行きたいけど……、平民の私にはお金が……」
「あら? あなたも興味がありまして? でしたら、私に付き合いなさいな。付き人と言う形にして、当日は私に付き合いなさい」
「良いのですか?」
「良いですよ。ただ、貴族として建前が必要なのは理解して下さいませ」
「ありがとうございます!」
うむ、俺が恥ずかしい思いをするだけで、貴族と平民の級友が親交を深められるなら……、やっぱ無理!
絶対に劇になるのは潰す!
「そう言えば、本にもなるそうですね」
「作家は誰ですか?」
「王宮作家らしいですわよ? もう少し、詳細な話が分かるかもしれませんね」
「あなた、私が買って見せてあげますから、私と意見交換なさい」
「はい! 楽しみですね!」
本だと!?
こっちも全力で潰さないと!
久しぶりに学院に来たら、後輩から羞恥プレイ同然の話を聞くとは思わなかった。
もう帰りたい……。
「まぁまぁ、幾つかは本当の事なんだし」
「リア、慰めになってない」
「あははは……。でも、問題はそこじゃないんだよねぇ」
どういう事だ?と思う暇も無く、取り巻きを連れた、如何にも上級貴族らしいご令嬢がこちらへとやって来た。
何やら面倒な予感がする。
そう思ったのは間違いではなかった。
「お初にお目にかかります。私はトーリア・フィン・バージャックと申します」
「初めまして。グラフィエル・フィン・クロノアスです」
お互いに貴族的な挨拶を終わらせ、トーリアと名乗った女生徒が本題に移った。
「クロノアス様に、是非、我が家の園遊会に参加して頂きたく。10日後になるのですが、如何でしょうか?」
またこれですか。
もう、いい加減に勘弁して欲しい。
と言うのも、帝国内乱終了後、王城で褒章が行われた翌日から、実は引っ切り無しにこういったお誘いが来ていた。
それも山の様に……。
当然、俺は書類の山に埋もれながら作業をしていたので、ブラガスが徹底的に精査をして、ほとんどをお断りしていた。
尤も、断れない物もあったので、完全に断っていたわけではない。
だが、それが原因で、書類仕事の他に、手紙を書いたりする作業も増えていたので、本当に勘弁して欲しいと言うのが本音だったりする。
そして、お休みは1週間だけである。
「10日後ですか。申し訳ない。自分の休暇は1週間だけでして」
素直に、嘘もつかずにお断りを入れる。
だが、この令嬢はあの手この手で参加して貰おうと必死であった。
うーん、そろそろ教室へ向かいたいのだが……。
どうやったら諦めるかな?と考えていると、リリィが代わりに話始めた。
「お久しぶりですね、トーリアさん」
「お久しぶりでございます、リリアーヌ王女殿下様」
「申し訳ありませんが、ラフィ様も多忙の中、暫しの休息なのです。それに、この様なやり方は、慣習破りなのでは?」
「も、申し訳ございません! ですが、その……父から言われておりまして」
「では、バージャック卿へ注意をしておくことにしましょう」
「いえ、あの……」
「何か問題でも?」
「いえ……」
おお!流石リリィ!一発で黙らせちゃったよ。
リリィに正論で負けたご令嬢は、何も言い返せずにお辞儀だけして立ち去って行った。
「リリィ、助かった」
「いえ。ですが、バージャック家ですか……」
「何かあんの?」
「はぁ……。ラフィはいい加減、貴族の名前を憶えて下さい」
「いや、多過ぎなんだって」
「せめて、大物貴族の名前だけでも憶えて下さい。……この際、リエルさんに覚えて貰った方が早いかもしれませんね」
「覚えるかねぇ?」
「ラフィ様の為になるなら、リエルさんは覚えますよ」
「うーん、善処はする――とだけ」
リリィとの話を終え、教室へと向かう。
久しぶりの教室の扉へ手をかけ、開けて入ると同時に、いきなり指を指されて宣戦布告されてしまった。
「やっときましたわね。私、ヴィオレッタ・フィン・ファーグレットは、グラフィエル・フィン・クロノアスに勝負を申し込みますわ!」
「はい?」
どうやら、久しぶりの学院は波乱しかないようである。
入院から無事生還しました(''◇'')ゞビシッ!
細胞検査も終わり、結果も分かったのでご報告します。
結果は……良性でした!
いやー、作者の家系は癌家系なのでドキドキでしたが、何事も無くて一安心です。
そんな作者の年末年始の投稿予定ですが、予定では12月29日から1月4日迄、毎日投稿を予定しております。
予定なので、出来るかはまだわかりませんが……。
現在のストックだと、年末の毎日投稿は可能なので、年始分を頑張って制作していきます!
(修正については、暇が出来次第、順次していきます)




