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幕間 輿入れ準備・リーゼ編

そろそろストックがヤバい(´;ω;`)

 輿入れの為に自国へと一時帰国をしたはずなのですが、何故こんな事になったのでしょうか?


 お父様の言う通り、確かにラフィ様の為にはなりましたが、正直解せません。


 その解せないお話ですが、一時期帰国した頃に戻ります。





「お父様。ルテリーゼ、輿入れの為に一時帰国しました」




「おお! 良い所に帰って来たな」




「その物言い……嫌な予感しかしないのですが」




 皇王であるお父様は、私に対して良い所にと言いました。


 これは……絶対に厄介事が確定していますね。


 そこへお兄様もやってきましたが……お兄様、少しやつれているのは気のせいでしょうか?




「お兄様?」




「ん? やぁ、リーゼ。今日はどうしたんだい?」




「お手紙でお話していた、輿入れの準備で一時帰国したのですが」




「そうか……もう、その時期なのか……」




「あの、お兄様? 少し、お痩せになったのでは?」




「そうかな? 最近忙しくてね」




 そう言うとお兄様は、お父様に書類を渡して、直ぐに退出して行きました。


 これは相当に厄介な事があるのでは?


 その考えは間違っていませんでした……が、お父様に話を聞いたら、私が考えていた内容よりも相当斜め上でした。


 もし狙ってやったのなら、私は相手を絶対に許しません!


 そして、その内容なのですが――。




「まさか……叔父様が反乱を?」




「思ったより、証拠集めに手間取っていてな。お前の力を借りたい」




「叔父様の子は、皇王になる事を望んでいるのですか?」




「どうだろうな。あのバカの所も子が多い。誰かが望んだ可能性はある」




「……叔父様が欲しているだけならば、どうされるのですか?」




「禍根の目は摘まねばならん。それが答えだ」




 私の問いに、お父様は王として冷徹に答えました。


 ですが、私は知っています。


 お父様がわざわざ私に話を振ったと言う事は、どうにか覆せないかと言っているのでしょう。


 私も幼少期は叔父様に良く遊んで頂きましたし、従兄弟姉妹との仲も決しえ悪くありません。


 まぁ、その中の一人とは恋愛関係を噂されたこともあるのは、痛恨の痛みではありましたが……。


 別に嫌いではないのですが、私自身がスキルを獲得できないので、やはり強い方に憧れたり、恋に落ちたりは妄想したものです。


 ……ごほん、少々取り乱しました。


 とにかく、お父様の願い通りに動くとしましょう。




 翌日から、私は輿入れ準備をしながら情報の精査に入ります。




「ルテリーゼ様、こちらを着ましょう」




「王妃殿下、こちらはどうされるのですか?」




「ルテリーゼ、少しは休憩を入れたらどうですか?」




 侍女達が忙しなく動きながら、私を着せ替え人形にするのも忘れずに、お母様に指示を仰ぎながらテキパキと動く中、私はお父様から渡された資料に目を通していきます。


 お父様から事情を聞いているお母様は、集中し始めたら時間を忘れて没頭する私を心配しています。


 過去に食事も休憩も取らずに、本を読み漁っていた事が何度もあったので、お母様は気が気でないのでしょう。


 私は大丈夫なので、そんなに心配しなくても良いのに。




 私は膨大な量の資料に、ひたすら目を通していきます。


 とりあえず、精査は後回しにして、私のスキル【大図書館】に全ての情報を保存していきます。


 その間も、着せ替え人形状態ではありますが、気にせず仕事を続けます。


 周りから見たら、感情が見えない今の私を気味悪がっているでしょうね。


 まぁ、私のスキルの影響なので、気にしてはいないのですけどね。


 ただ流石に、数か月分の資料に目を通すのは時間が掛かりますね。


 全ての資料に目を通し終えたのは、1週間経った頃でした。




 着せ替え人形状態も1週間もすれば終わりました。


 後の事は、暫くはお母様がやってくれるそうです。


 そして、全ての資料に目を通し終わった夜、私は深い溜息を吐きます。




「お父様、恨みますよ……」




【大図書館】に保存させながら、少しずつ精査も進めていたのですが、今の所はこれといった情報は皆無です。


 部屋のテーブルに置かれた紅茶を口に運び、一息入れた後、スキルの発動を一度止めます。




「ふぅ……」




 部屋で息を吐いた後、ふと、ラフィ様と【大図書館】について調べていた事を思い出します。




『にしても、このスキルって破格だよなぁ』




『そうなのですか?』




『うん。確かにデメリットも凄いけど、内包スキルもえげつないから』




『どれくらいあるのでしょうか?』




『うーん……本格的に調べないとなぁ。いくつかはわかるけど」




 それから二人で色々と調べて分かった事ですが、スキル【大図書館】は知識系スキルの中でも2番目に強いスキルなのが判明しました。


 ラフィ様も忙しいので少しずつ調べて行ったのですが、現在わかっているスキルは【思考加速】【演算領域】【大司書】の3つです。


 ラフィ様はこの3つだけでも破格と言われたのですが、普段は絶対に起きない副作用スキルもあると言われました。




『普通は【思考加速】と【演算領域】を同時に使っても副作用が起こる事は無いんだけど、【大図書館】経由で使うとなんで副作用が起こるんだろうな』




 ラフィ様でもわからない、謎の副作用でした。


 ラフィ様曰く『元々スキルとして内包されているかもしれない』と言われた後、なるべく早く調べると仰っていました。


 その副作用スキルが【感情抑制】です。


 情報の読み取り保管と精査を早く正確に行う代わりに、感情の吐露を抑制するスキルです。


 ですが、それは表層意識――良くわかっていませんが――だけらしく、深層意識――こちらも良くわかっていません――の感情はあまり抑制されないとの事でした。


 周りから感情が見えない理由は、このスキルにあるのですが、誰にも話していないのでわかる訳がありません。


 私自身も気にしていないので、どうでも良い事ですね。




 ですが、叔父様の件に関しては、やはりそれなりの感情はあるのです。


 叔父様はお父様やお母様と同じく、私が幼少期に気味悪がられているのを『それは神様からの贈り物だから』と言って、良く慰めて下さいました。


 周りはスキルを覚えられない私を馬鹿にしているようでしたが、家族と従妹だけは、過去に例のないスキルを持つ私に『特別なんだよ』と言ってくれて、いつも励ましてくれていたのです。


 そんな従妹たちや叔父様が反乱を起こすとは、到底思えません。


 先入観は禁物ですが、もし叔父様達を嵌めた相手がいるのなら、私は決して許しません。


 そして私は、再度スキルを行使します。


 時間はあまり残されていないのですから……。





「やはり、おかしい点が見つかりません」




 更に数日経ちましたが、状況は芳しくありません。


 今の資料だけでは、不審な点が無いのです。


 ただ【演算領域】では、一部の資料に懐疑的な答えを出していました。


 ですが、絶対的な答えを出すまでには至っていません。


 あくまでも、引っ掛かる程度なのです。


 そんな中、私の元に新しい資料が届きます。


 直ぐに受け取り、スキル【大図書館】に早速取り込みます。


 資料を読んで取り込み、新たに精査すると、【演算領域】がやはり同じ個所で懐疑的な答えを出します。


【思考加速】で考えを纏めて行きますが、やはり答えは一つしか出ませんでした。




(やはり要調査……いえ、重点調査が必要ですね。ですがお父様が、これに気付かないとは思わないのですが)




 お父様に多少の疑問点が生まれましたが、これ以上は情報が足りないと結論付けて報告へ向かう事にします。


 今の時間であれば、執務室で仕事中ですし、場所としても最適でしょう。




「お父様に取次ぎを」




「畏まりました」




 侍女に命じて、お父様への謁見許可を取り次ぎます。


 幼少の頃ならまだしも、成人した今は、きちんとした手順を踏まないとお父様は怒りますからね。


 侍女がお父様へ報告しに行った後、私は念のために再度精査をします。


 間違いは決して許されませんから。




 侍女がお父様への謁見許可を取り付けたと報告に来たので、私は執務室へ向かい、お父様へ報告を行います。




「お父様、リーゼです」




「入れ」




 お父様からの許可を得て、執務室へと入ります。


 執務室に居たのは、お父様の他に宰相がいました。


 私はお父様へ話ても良いのかと視線で訴えます。




「構わん。どうせこいつも巻き込むからな」




「陛下、言葉遣いをですね……」




「問題あるのか?」




「問題無いと思いますが?」




「この親にして、この娘ありですか」




 宰相が私達に対して毒づきますが、いつもの事なので無視します。


 この宰相も数少ない私の理解者ですし、付き合いも長いですからね。




「で、リーゼ。答えは出たのか?」




「情報が足りませんが、気になる部分は見つけました」




「どこだ?」




「資金周りと商人の出入りです」




 お父様から回された資料を基に、気になる部分を指摘していきます。


 宰相は首を傾げていましたが、お父様は笑っていました。


 お父様も人が悪いですね。


 やはり気付いていたのですから。


 しかし、何故調べなかったのでしょうか?




「お父様?」




「言いたい事はわかっている。【何故調べなかったのか?】だろう?」




「はい。理由があるのはわかりますが」




「宰相も首を傾げていただろう? つまり、これだけではわかる者が非常に少ない訳だ」




「そう言う事ですか。つまり、私に説明しろ――と」




 そこまで言うと、お父様はニヤリと笑います。


 本当に、人が悪いです。


 ですが、納得させるという点では良い手です。


 王だけが気付き、説明しても強硬策と取られる可能性がありますが、皇女とは言え、二人が気付いたとなれば、感情面は和らぐでしょうし、説明して理解する者が増えれば更に賛同者を増やせるのですから。


 なので、宰相に説明をすることにします。




「良いですか? まず、出入りの商人ですが、頻繁に出入りしています」




「それこそ、反乱の準備の為なのでは?」




「御用商人になりたい為かもしれませんよ? まずはその先入観を消しましょう」




「ですが、それならば何もおかしい点はないのでは?」




「これだけではそうでしょうね。ですが、資金の流れを見ればとある疑問点に気付くはずです」




 そう言ってから私は、いくつかの資料を宰相に渡します。


 宰相も目を通してはいる資料のはずですが、ここで気付けるでしょうか?


 有能な宰相ではありますが、若干頭が固いですからね。


 そう思っていましたが、宰相は「あっ」と言って、資料を食い気味に見ています。


 どうやら宰相も気付いたようです。


 そして、どうして叔父様達が反乱しようとしていると噂になったのかも……。




「わかりましたか?」




「ええ。確かに、御用商人を目指すのであれば、この流れは確かにおかしい」




「お前も、ようやく気付いたか」




 お父様の言葉に宰相は頷きます。


 そもそも、御用商人を目指す場合、いくつかの慣習的な部分があります。


 珍しい物や有名な芸術品の紹介以外にも付届けがほぼ必須だからです。


 新興貴族であるラフィ様でさえ、何名もの商人から政商で無いにも関わらず付届けされているのに、公爵家である叔父様に何も無いのはおかしいのです。


 では、ただ売りに来ていただけなのでは?と言う話になると思いますが、それはあり得ません。


 先程も言いましたが、叔父様は公爵です。


 上手く行けば、皇家からも政商認定される可能性を持っているのが公爵家でもあります。


 従って、上を目指すのなら絶対にありえないのです。




 次に資金周りですが、叔父様は支払いばかりしている点です。


 貴族足る者、借金はして当たり前な部分が合ったりもするのですが、叔父様は借金など持っての他だ!と言う人です。


 それに、公爵家の年金は他の貴族に比べてとても高額です。


 加えて、税金徴収の為に収支報告が我が国では言い渡されています。


 虚偽報告は罰金対象に加えて、市井に貼り出されます。


 貴族は何よりもプライドが高いので、自ら権威を失墜させるような真似はしません。


 故に、資金面での報告書に虚偽は無いはずです。




 では、叔父様が支払った資金はどこへ?と言う話になるのですが、報告書にはとある貴族家の羽振りが少し良くなっているとの報告が上がっています。


 その貴族家は、詐欺にあって借金をしている貴族家でした。


 ですが、1年ほど前から借金をしている立場とは思えないほどの


 散財をしています。


 新たに借金をしたとも考えられるのですが、それならば収支報告書への記載がある筈です。


 しかし、その記載は全くありません。


 そして、その貴族家には叔父様の家に頻繁に来ている商人の名前が挙がっているのです。




 叔父様に謀反の疑いが掛かっている以上、叔父様の派閥も要監視対象になります。


 故に、網に引っ掛かったとも言えますが。


 そして、その貴族家は叔父様の家に出入りしている商人からは何も買っていません。


 以上の事から、この貴族家に疑惑の目が向けられるわけです。


 ですが、確たる証拠があるわけではありません。


 ですから、この先はお父様のお仕事です。




「理由はわかりました。早急に再調査を行いますが、証拠が出るかどうか……」




「最悪の場合、処分されているでしょうね。ですから、別の手を打ちます」




「どんな手を打つのだ?」




「叔父様の派閥である皆様を、私主催の茶会に呼ぼうかと」




「茶会の理由は?」




「夜会ですと、お金も掛かりますし、小さい子が参加できないでしょう?」




「悪辣すぎるな」




「私もラフィ様に感化された様です。私の大切と思う人達に手を出すのなら、容赦しません」




「全く……嫁に出して正解だったのか、間違いだったのか」




「正解ですわ。お父様」




 私の言葉を聞いたお父様は、ため息を吐きました。


 何か間違った事を言ったでしょうか?




「後の事は任せろ。お前はお前のやりたいようにやれ」




「ありがとうございます、お父様」




 そこからは怒涛の早さでした。


 丁度、輿入れ準備の為に来ていた商人に「茶会をするので、そちらも頼みたいのですが」と相談すると、二つ返事で了承して頂けました。


 後でお母様から「あなた、御用商人に何をしたの?」と聞かれてしましたが、特に何もしていないと伝えたのですが、お母様からの返答は驚くべき内容でした。




「商人がね『ルテリーゼ様からどす黒い何かが……。あれには逆らえませんよ』と言っていたわよ」




「私、そんな感じだったのでしょうか?」




「私は何も見てないから知りませんよ。ただ商人は、人の機敏に聡いですから、政商でもある商人がそう言うのならそうなのでしょう」




「私もまだまだですね」




 その後、お茶会を開き、様々な方と話をしました。


 当然ですが、【大図書館】は使っています。


【思考加速】と【演算領域】を同時に使わなければ、【感情抑制】は発動しませんからね。


 後は、茶会で聞いた話とお父様たちが調べた情報を元に、噂の出所を特定する事に成功します。


 やはり、件の貴族家が噂の発信元でした。


 任意での動向と事情聴取は可能な範囲になりましたが、1つだけ疑問が残っています。




 それは、叔父様は何故、噂に対して何も反応しなかったのでしょうか?


 流石に、謀反の疑いありと言う噂は、放置するにはあまりにもリスクが高いと思うのですが?


 それは後日、叔父様からの手紙で分かる事なのですが、話すことがあれば語ろうと思います。




 それと、謀反を起こそうとしていたのは、噂の発信元であった貴族でしたが、その背後には想定通りの国が関わっていたことも言っておきます。


 と言うか、彼の国の間者に篭絡され、謀反を起こそうとして家を潰す借金貴族。


 救いがありませんね。


 一連の事件に終止符が打たれる頃、私も輿入れの準備が終わり、ラフィ様へ連絡を入れます。




 (叔父様とは、また時間を作ってお話しに行きましょう。今度は、新しい家族の皆でね。)



前書きにも書いた通り、そろそろストックが切れそうな作者です。

マジでカクヨム掲載の方に追い付きそうで、どうにかしてスランプを脱出したい(´;ω;`)

誰かスランプ脱出方法とか知りませんかねぇ……。(割と切実)


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