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161話 役割と歴史

 銀竜の試練を終え、いざ説明!となった所で、リエルと時の大精霊の乱入により少々の混乱はあったが、どうにか話を開始する事が出来るようになった。


 ただ、リエルが頑なに反対していた理由が気になる所ではあるが、とりあえず横に置いといて、銀竜と時の大精霊の話を聞こう。




「それで、どの部分から話すんだ?」




「歴史を知るには、我の役割を知らねば話にならぬ。故に、我の役割から話そう」




 そうして語られる銀竜の役割。


 その話を全て聞いた後、俺は頭を抱えそうになった。


 もし、銀竜に何かあれば、それは文明レベルが衰退するのが確定する事柄だったからだ。


 その語られた内容は――。




「まず確認だが、我が他の竜達と誕生の経緯が違うのは知っているな?」




「ああ」




「では、誰が誕生させたかは知っているか?」




「時の大精霊……そして、直属の上役である創世神ジェネスだよな?」




「ふむ。少し認識に誤差があるようだな。時の大精霊を生み出したのは、確かに創世神様であるが上役は別である」




「なるほど。時空神ジーラか」




「直ぐに答えへと至るか」




「消去法だな。時空間関連なのだから、次に出てくるだろう?」




「普通は出てこんよ。意図的に連想できぬようにしてあるからな」




「どういうことだ?」




「その理由は知らぬか。では、答えよう」




 銀竜は、何故連想できないかを語る。


 銀竜の役割にも関係する話なのだが、この世界の時空間魔法は時空神ジーラの力によるものだと認識されている。


 だが実際は違って、時空間魔法が認識されているのは銀竜が誕生しているとの話だった。


 この先は銀竜が難しく話すので、理解するのに手間取ったが、簡潔に相関図を作るとかなり面倒な事をしていると思ってしまう。




 まず、全ての者の誕生には、神も含めてジェネスが絡んでいる。


 原初が頂点で次点が創世神になり、その下に11神が続く形だ。


 そこから色々と枝分かれしてるのだが、時空神の枝分かれの中に


 時の大精霊が含まれ、時の大精霊から更に枝分かれして銀竜と各属性の大精霊が続いている形だ。


 尚、精霊王は創世神の方に枝分かれしているので「組織的に大丈夫なのか?」と思うのだが、地上への干渉権限みたいなので縛っているらしいので深くは聞かないことにした。


 どうしても必要になったら、リエル経由でどうにかしよう。




 次に時空間魔法に関してだが、何故時空神と認識され、銀竜との連想の質問に対して連想できないかについてだが、これは人類への試練と罰らしい。


 試練は何となく理解できるのだが、罰とは一体?


 その理由も銀竜は淡々と話した。




「先にも言ったが、我は自身が何時誕生したのか記憶にない。それを知るのは時の大精霊よりも上の者だけだ」




「つまり、この先は時の大精霊に聞けと?」




「いや、試練と罰の意味は知っている。だからこそ、我は1万年は生きていないと断言できるのだ」




「どういうことだ?」




「その先は、私がお話しましょう」




 銀竜に変わって時の大精霊が話した内容に「あー……」としか言えなくなってしまう。


 その内容は、ゼロ暴走事件のせいだったからだ。




 実は、古代文明期に時空間魔法は存在していなかった。


 古代文明期には、飛空船などが発達し、流通はアイテム袋系統が無くても成立していたそうだ。


 だが、ゼロがブチ切れて古代文明を根こそぎ破壊した為に、流通関係や食文化が衰退する事態に陥った。


 更には人口の減少に加え、天変地異で作物の凶作なども併発させたらしい。


 それだけ、ゼロ……と言うか、原初のマジギレは世界滅亡待った無しだったみたいだ。




 その後は、人類に罰の意味を込めて静観をしていたそうだが、流石に静観出来るラインを超えたらしい。


 よって、時空間魔法がこの世界で新たに生まれた訳だが、その生まれ方に銀竜の役割があった。




 神は基本、地上に干渉しないのが大原則である。


 但し、邪神以外の神の手によって世界に異常があった場合には、その限りではない。


 だが、それでも大手を振って干渉できるかと言えば否である。


 故に創世神は、時空神を経由させて時の大精霊に銀竜を誕生させ、時空神が司る時と空間を時空間魔法としてこの世に定着させた。


 銀竜とは、時空間魔法の理を世界に定着させる役割を持った竜であったのだ。




 では、時の大精霊でも良いのでは?と言う話になる。


 時の大精霊でも同じ役割を出来そうではあるのだが、何故出来なかったのかを本人時の大精霊が話す。




「精霊の役割は、世界の概念です。水を水と認識できなければ、何かわからないでしょう? それと同時に、精霊がいるからこそ世界は保たれているのです」




「つまり、精霊は世界の概念を司る存在……いや、世界の生命そのもので良いのか」




「その認識で問題ありません。精霊が世界から消えれば、緩やかに滅びへと向かうでしょう」




「でもそれだと、時の大精霊が時空間魔法の理を担っても良いだろう?」




「言い忘れていましたね。私は時は司っていますが、空間は司っていません」




「……ああ。そういう事ね。つまり銀竜はあくまでも時空間魔法の理だけを役割にしているのか」




「はい。銀竜は時の概念を司っていませんから、仮に銀竜が消滅しても時間の概念が消えるわけではないのです」




 何とも面倒な形を取ったものである。


 要は二重三重に保険をかけているわけだ。


 あれ?でも銀竜族って、無属性の属性竜だよな?


 なんで種族は時空間魔法じゃないんだ?


 その疑問には銀竜が答えた。




「銀竜族は、同族での繁殖は行わん。他竜族を伴侶に迎え入れる故、無属性に落ちるのだ」




「まさか……時空間魔法の一部が無属性になっているのは……」




「それが理由であろうな。但し、我の直系で三世代目までは該当せん」




「何故だ?」




「魔法的要因と血の為だ。故に我は滅多に子を成さぬ」




「銀竜族の長が特別だと思わせたいからか?」




「然り。だがそれが、試練であり罰でもある」




「意味が分からん」




「それも歴史の中で明らかになる話だ。全てを聞けば納得できるであろう」




「そうか。それじゃ、話を進め……あ、大事な事を聞き忘れていた」




「む? なんだ?」




 銀竜と時の大精霊に万が一についての話を聞く。


 一応聞いておかないと、大変な事になりそうだからな。


 そして聞いた話によると、先にも聞いた通りの話で、銀竜の消滅は魂を消滅させて初めてなるとの事。


 例え肉体が滅んでいても、時空間魔法に影響は出ないらしい。


 そして万が一滅んだ場合、以下の事が確実に起こると言われた。




 1、時空間魔法の消滅


 2、無属性に分類されている時空間魔法の消滅


 3、空間収納内及び時間停止型アイテムバッグ内の全てが消滅


 4、時間停止していないアイテム袋やアイテムボックス内の荷物が溢れる


 5、拡張した際の魔力が衝撃波となって襲う




 確実に起こる内容を要約すると【流通関係の衰退】が確実に起こると見込まれる。


 後は怪我人が大量に出たり、溢れた荷物で家屋が壊れたりもありそうである。


 銀竜の消滅は断固阻止しないといけない。




 とまぁ、役割に関しては簡潔に纏めるとこんな感じなのだが、銀竜と大精霊が難しく話すせいで理解に大分時間が掛かった。


 話を始めたのが午前中だったのに、現在は昼過ぎである。




(ここからクロノアス家王国誕生秘話になるんだよな? 今日中に終わるのかね?)




 そして話は、クロノアス家の歴史に移る。




「歴史の話だが、成り立ちから話そうと考えているが異議がある者はいるであろうか?」




「俺は特にないな」




「私もありません」




「ボクも無いよ」




 全員が異議無しと答えたので、銀竜はクロノアス王国の成り立ちから話を始めた。


 だが、その話の中で時の大精霊がブチキレそうになる話に繋がるとは、この時の俺達は知る由もなかった。




「では話すぞ。現在のクロノアス領になっている場所がクロノアス王国だった場所だ。そして、初代国王は平民で冒険者であった」




「平民上がりだったのか。初耳だな」




「この辺りは聞いておらんのだな。話を続けるが、我が力を貸した初代国王は革命者である」




「圧政を敷いていた国を革命で勝ち取ったと?」




「うむ。その後はまぁ、革命軍が役職に就いたが、割とやりたい放題でな。我と初代国王は苦労したものだ」




「ちょっと待ちなさい。銀竜、あなたは深く関わっていたのですか?」




 おや?時の大精霊の声がちょっと怒りで震えている気が。


 しかも初期の頃の話は、時の大精霊も知らなかったと見える。


 これはヤバいのではなかろうか?


 だが銀竜は、時の大精霊を放置して淡々と話を進める。


 そして、次々と時の大精霊が知らない事実が浮上し、ついに大精霊様がプッツンしてしまった。


 その事実だが、聞かされた俺も「マジで!?」と思えるような内容もあった。




「あなたは……干渉し過ぎです!」




「時のよ。我に深く干渉しないと決めたのは汝であろう? ならば、我の行動に難癖をつけるのは可笑しいのではないか?」




「限度と言う物があるでしょう!」




「だが、時も割と乗り気であっただろうに」




「まさかそこまでしてるとは、思いませんでしたからね! 知っていれば賛同などしませんでした」




「すまん。ちょっと話が見えない」




 俺の言葉によって一時中断する銀竜と時の大精霊の言い合い。


 そもそもの話、どこが駄目なのかが全くわからない。


 なので、もう少し詳しく聞くと、時の大精霊がキレてる理由に納得はした。


 単純に、報連相しろ!って事なんだよなぁ。


 二人の言い合いになった元を要約すると次の通りだ。




 クロノアス王国初代国王は平民の冒険者で、圧政を敷く国に対して革命を起こし、新しい国を成した。


 新しく国を成したが、革命軍の幹部が前国家と同じ重税をしようとしたので粛清したが、当然人は足りなくなる。


 そこで銀竜が提案した内容は、銀竜族が人型になって、国を回すと言う物であった。


 そして人化した銀竜達が暫くの間、足りない政の部分を回していた。




 そしてここで、衝撃の事実が語られる。


 銀竜族は竜と人の遺伝子を両方兼ね備えており、懐妊した姿によって生まれてくる子供が決定するそうだ。


 竜の姿で子を成せば竜の姿となり、逆に人化状態で子を成せば人族になると言う物だった。


 そして当時、人員の穴埋めをしていた銀竜族の雌が人型でめでたく懐妊し、時空間属性を持つ人族が生まれる事になった。


 更に、初代国王は銀竜の直系である娘と恋仲に落ちており、そちらもめでたく懐妊し、出産。


 これがクロノアス家が時空間魔法を持つ始まりとなった訳だ。




 尚、この時点で、時の大精霊はこめかみをピクピクさせていたが、問題はこの先にあった。


 直系でないにも関わらず、時空間魔法が次代に継承されてしまったらしい。


 勿論、親である銀竜の時空間魔法よりは使用効率が落ちてはいるが、問題はそこでは無かった。


 直系の子供には親と寸分違わぬ時空間魔法が継承されてしまったのだ。


 時の大精霊はこの時点で、何故報告しなかったのかを問題の一つとして上げたのだが、これは序章にしか過ぎなかった。




 銀竜の話によれば、直系でない子孫は、次第に時空間魔法を使えなくなっていき、仮に使えても微々たる魔法しか使えない。


 これが後に無属性内の時空間魔法と通常の時空間魔法を分ける要因となってしまった。


 だから現在では、アイテム袋が作れる魔道具職人は先祖返りに近いのだと思われる。


 この仮説を伝えた所、銀竜と大精霊も同意し、何故時空間魔法が使えないのに作れると言う謎が解けた訳だ。


 ついでに、時空間魔法の適性がある者は割といるらしい。


 先祖返りした者だけが、時空間魔法がステータスに現れているそうだ。




 では、直系に関してはどうなのか?


 直系――つまりクロノアス家に関してだ。


 ここで、大精霊がブチ切れた理由に繋がる。


 直系と言えど、代を重ねるごとに使える魔法は少しずつ減少していくのだが、それでも緩やかに減少して行くとの事。


 現在だと、全盛期の半分の魔法が使えれば最大継承とされるわけだが、何故かクロノアス家は全盛期に近い継承を続かせている。




 それは何故か?




 実はこのクロノアスの継承こそが、大精霊への報連相を怠り、何も知らない大精霊が祝福を行使した結果なのであった。


 その大精霊の祝福は主に二つ。




 一つは、クロノアス領全体への祝福。


 クロノアス領内で妊娠と出産した場合、大精霊が張った特殊な魔法結界により、継承が行われやすくなっていた。


 とは言え、直系でない者にはそこまで影響が出ない魔法結界らしい。


 侵入を拒む結界でもないので、誰も気に留めないでいたのも謎を呼んだ大きな理由だろう。




 二つ目はクロノアス家への祝福。


 こちらは時の祝福と言って、劣化防止の祝福と言われた。


 劣化防止がクロノアス家全体に作用しているから、現在も過去に劣らない時空間魔法の継承がなされているのだが、時の大精霊からしたら直系の子孫なんて聞いていない。


 何も知らない所に銀竜からの要請で祝福をかけてみたら、あら不思議。


 強力な時空間魔法が継承され続けているではないか。


 正に寝耳に水である。




 そりゃ、時の大精霊もブチ切れますって。


 後の話は、時の大精霊から以前に聞いた話と変わらなかった。


 途中、銀竜の思い出話があったくらいであろうか。


 クロノアス王国末期の友ご先祖様と別れの話だな。


 そして話は冒頭に戻る訳なのだが――。




「銀竜、あなたはもう少し考えて行動をですね!」




「仕方なかろう。当時は、あれが最善手だったのだ」




「最善手かどうかはわかりませんが、世界に与える影響をですね……」




「我としても想定外ではあったのだよ。だが、それも世界の理と見れば問題ないであろうが」




「どの口が……。そもそも、あなたは昔から肝心な事は何一つ言いませんでしたよね!?」




「そう怒るな。精霊でもしわぐらい増えるであろう?」




「余計なお世話ですよ!」




 銀竜と大精霊のプチ喧嘩が続いているが、そちらは一旦放置して、リエルの様子を確認する。


 リエルは俺の肩に乗りながら、心配そうな目でこちらを見ているのだが、何を心配しているのであろうか?


 確かに重大な事実や衝撃的な内容があったが、リエルが断固として拒否し続けた理由が思いつかない。


 そんな風に考えていると、リエルの方から話しかけて来た。




「マスター、大丈夫ですか?」




「驚きはしたけど、特に問題はないな。リエルは、一体何を懸念して、拒否していたんだ?」




 リエルは俺の言葉に黙り込んだ。


 だが、少し時間が経った後、リエルが意を決して話した内容に俺はポカーンと口を開ける事になる。




「マスターは、今の話を聞いてどう感じましたか?」




「さっきも言ったけど、色々な重大な事実が出てきて驚いたな」




「他には何かありませんでしたか?」




「いや、特には。ただ、リエルが頑なに拒否していた理由がわからずにはいるんだよなぁ」




「ボクも同じだね。リエルは何を気にしていたのかな?」




 俺とヴェルグの言葉に対してリエルが答える。


 その顔はまるで忌々しいと言うような感じであった。




「だって……マスターの先祖の片割れが、あのクソ雑魚銀竜ですよ? 考えの足りないアホ銀竜なんですよ? 話を聞いたマスターが悲しむと思いまして……」




「はい?」




「え? そんな理由なの?」




「え? 結構重要な事だと思うんですが」




 リエルさん、俺の中に入ってる銀竜の遺伝子について懸念していた。


 いや、流石にその程度では悲しまないんですけど……。


 リエルの考えが全くわからん。




「え? だってあの銀竜ですよ? マスターは何も感じないのですか?」




「いや、驚きだけだな」




「ボク思うんだけど、リエルって何処かぶっ飛んだ考え方してない?」




 見つめ合う俺、ヴェルグ、リエル。


 傍では銀竜と大精霊の言い合いがまだ続いているが、こちらは誰も何も話さず無言。


 最早、話とかそう言うレベルでは無い感じになっていた。


 そして始まる、リエルとヴェルグの言い合い。




「あのさぁ、リエルはもう少しラフィの事を知った方が良いよ」




「何を言いますか! 私ほど、マスターの事をわかっている者はいません!」




「でもさぁ、実際には見当違いなわけだし」




「マスターはお優しいから、クソ銀竜に配慮しているだけです。内心では泣いていますよ」




「ちょっと周りを見下し過ぎじゃない?」




「マスターは至高! マスターは最強! マスターこそが全て」




「そんな考え方だと、いずれ嫌われるかも」




「ありえません! 絶対にありえません!」




 右では銀竜と大精霊が言い合い。


 左ではヴェルグとリエルが言い合い。


 ぽつんと残される俺。


 完全に収拾するタイミングを逃してしまった。


 そこから数十分、未だに収まる気配が見えないので、強硬手段を取る事にする。




 この場にいる全員を威圧して、黙らせてから一言。




「話しは終わりで良いんだよな? だったら一度終わりたいのだが?」




 威圧で全員が黙るまで放置されてボッチだった俺の低い声に、誰もが高速で首を縦に振って了承する。


 かくして、銀竜からの話は終わったのだが、どうにも締まらない終わり方であったのだった。

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