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158話 クロノアス家の真の支配者?

いつもお読みいただきありがとうございます。

連休なので明日も投稿いたします。

後書きでちょっとしたご報告もあります。

 父上からの頼み事である兄上達の結婚式への送迎業をするべく、招待予定の貴族家とその領地へと出向くことになった。


 父上と交流のある零細貴族から大貴族まで幅広くあちこちを駆け回っているのだが、ここで一つ驚くべき事実が判明した。


 それは、大貴族の領地と言えど発展の度合いに格差があったことだ。




 とある伯爵領の領都は、クロノアス領の領都と変わらない発展をしている一方で、別の伯爵領の領都は男爵領の領都に毛の生えたくらいの発展しかしていなかったことだ。


 領地の広さは同じくらいなので、爵位も同じになったのであろうが、発展度に差異が出た理由が気になった。


 なので、最後の訪問先となるエルーナ姉上が嫁いだツェイラ伯爵家に、事情を話すがてら、その理由を聞いてみよう。




「お久しぶりです、バルボルデ殿」




「久しぶりですね。2年ぶりでしょうか」




「そうですね。今日は父上からの手紙を預かって参りました」




「拝見しましょう」




 話をする前に、兄達の結婚式の招待状を渡し、目を通してもらう。


 返事は後日でも構わないが、何時までに届くようにと書かれていたようで、直ぐに返事を書くから待っていて欲しいと言われる。


 その間の雑談で先程の話に戻るのだが――。




「同爵位で各貴族家の発展度の違いの理由ですか?」




「ええ。どうしてあからさまな差が出ているのかと……」




 この世界には魔法がある。


 適性や魔力量などの問題はあるが、前世の現代社会に比べれば、開拓や開墾などに苦労はしないはず。


 そうなれば、発展速度も上がるはずなのにと考えたのだ。


 そしてその解答なのだが――。




「理由は色々あるでしょうが、その理由の一つを占めるのに計画性がありますね」




「無計画だったのですか?」




「いえ。先の見据え方が甘かったのが大きな理由でしょう。それと、魔物の領域も関係していますね」




「解放したのですか?」




「解放は悪いことではないですよ。問題は将来性を考えずに解放したことでしょうか」




 バルボルデ殿は、自身が治めるツェイラ伯爵領を例として説明をしてくれた。


 その説明によると、先の見据え方について考えるのはいくつかあるが、その最も足る内容は大きく分けて三つ。


 人口の増加に伴う拡張に加え、生産性と税率。


 そして、魔物の領域をどう活用するかであった。




 その上で一番大事なのは、領都たる中心地を何処に決めるかで大きく変わるらしく、初代ツェイラ伯爵は拡張する際に魔物の領域を解放しなくても良い場所を選定したそうだ。




「初代様も魔物の領域解放は行ったらしいが、なるべく小さい場所を選んでいたようなのだ」




「解放した跡地には、村落を造ったのですか?」




「領地は領都だけでは成り立たないからね。我が領地でも村落で農業や特産品を作っているよ」




「ツェイラ領の特産品と言うと……蜂蜜ですよね?」




「うむ。我が領の魔物の領域には、ベアキラーと言う魔物がいるからね。蜂蜜を取る熊を餌にしている魔物がいるから、養蜂場所が荒らされないのだよ」




 話に出て来たベアキラーだが、実は高ランク認定されている魔物だったりする。


 体長五メートル前後の蜂型魔物で、蜂の王とも呼ばれている魔物である。


 そのベアキラー最大の特徴なのだが、数が一定数に達しない限り熊しか襲わない魔物なのだ。


 そして、同胞認識をしているのかわからないが、蜜蜂は絶対に襲わないという習性も持っている。


 ちょっと変わった魔物なのだが、その性格は獰猛で毒針に刺されたら1分前後で死に至ってしまう。


 一定数に保つために間引きが必要な魔物なのだが、Bランク冒険者でさえ、ちょっとしたミスで命を落としかねない魔物なので高ランク認定されているのだ。


 だが、間引き依頼の報酬は破格なので、結構人気のある依頼だったりする。


 ハイリスク・ハイリターンと言うやつである。




「まぁ、そんなわけで。我が領みたいに先を色々と考えないと拡張しにくい小さな領都が出来上がり、碌な特産品も作れず、魔物の領域依頼も少なくなり、税収も下がって悪循環になるのだよ」




「ついでに人口増加による税収も少なくなるですか。……やはり自分には、領地経営は無理ですね」




「私はそうは思わないがね……。さて、返事は書き終わったので後は頼みますね」




「急な来訪に対応して頂き、ありがとうございます」




 礼を言ってから、バルボルデ殿から手紙を受け取り、屋敷を後にしようとすると、旦那さんと出かけていたエルーナ姉上が帰って来た。




「あら? 今日はどうしたの?」




「2年ぶりですね、グラフィエル殿。今日はどうしたのですか?」




「お久しぶりです、グルグランデ殿、エルーナ姉上」




 二人に挨拶をしてから、今日来た要件を話し、丁度帰る所だったと話す。


 すると、エルーナ姉上は扇で口元を隠し、少しため息を吐いてから労ってくれた。


 父上への悪態と共に……。




「ラフィも大変ねぇ。それにしてもお父様はラフィに頼り過ぎではないかしら? ラフィも嫌ならきちんと断りなさい」




「あはは……。まぁ、自分も色々と迷惑をかけているので。ちょっとした親孝行と思えば」




「グラフィエル殿は若いのにしっかりしてるなぁ。私も見習わないといけないな」




 グルグランデ殿の言葉に笑って返す俺。


 前世の記憶持ちで、一時期精神年齢が退行していたとは言え、中身は35歳のおっさんとは言えんな。


 玄関先で軽く会話した後、俺は帰路に着き、父上の屋敷へと向かった。





 ゲートを使ってツェイラ伯爵領から父上の屋敷へ行く。


 クロノアス家に長年使えている執事に案内され、応接室へと通される。


 応接室で待っていると、父上に加えて母上達とルナエラ姉様もやってきた。


 家族総出で話する内容では無いと思うのだが、父上の顏を見て察してしまった。




「父上……。両頬に立派なモミジが……」




「……何も言うな」




 サッと視線を背ける父上。


 対するクロノアス家女性陣は父上をジト目で見ている。


 そんな中、アリエール母様が俺を労った。




「グラフィエル、旦那様の不手際の後始末、ご苦労様でした」




「いえ。それに不手際と言う程では……」




「不手際ですよ。どこの貴族家でも、子供に結婚式の重要な部分を任せたりはしませんから」




 そう言って、メイドが配膳した紅茶に口を付けるアリエール母上。


 父上の頬に刻まれたモミジを見るからに、相当ご立腹らしい。


 そんなアリエール母上に続いて、ルルエナ母上も父上を責めた。




「全く! 慣習がいかに面倒か、旦那様自身も知っているでしょうに。グラフィエルがいなければどうするおつもりだったのやら」




「うう……。面目ない」




 ルルエナ母様もご立腹らしい。


 両頬に出来たモミジの犯人は母様達で間違いない様だ。


 そして最後に、ルナエラ姉様がトドメを刺した。




「お母様から聞いたお父様の話が信じられなくなりましたわ」




「ぐふっ」




「ち、父上ーーー!」




 父上、ルナエラ姉様の一言に撃沈する。


 その後も女性陣三人は、父上に追い打ちをかけ続けた。


 もうやめてあげて!父上のライフは既にマイナスよ!


 だが、俺に止める勇気はない。


 過去にも一度だけ、クロノアス家女性陣による父上撃沈事件があったのだが、その時に止めたら俺に飛び火した過去があるのだ。


 父上、ふがいない息子で申し訳ありません……。


 尚、兄達も飛び火を喰らったことがあるので、父上に対する不満爆発時は貝の様に口を閉ざすのがクロノアス家で暗黙の了解となっている。


 メイドや家臣?見ざる聞かざる言わざるです。




 父上ディスり大会はまだ続いているが、時間は有限なので話を進めに入る。


 真面目な話なので、父上は元に戻っているが、精神的ダメージは逐一入りながらの真面目な話になった。




「父上、こちらが返事を頂けた貴族家の書簡になります」




「ああ、助かった。量から見て全てではないようだが?」




「直ぐに返事を頂けなかった貴族家は、後日に転送魔法によって返事を出すとの事です」




「わかった。すまなかったな、グラフィエル」




「いえ、父上もその、頑張って下さい」




 そう言って席を立つ俺。


 しかしアリエール母上に呼び止められてしまう。




「グラフィエル。せっかくですし、久しぶりに我が家で食事をして行きなさい」




「せっかくの申し出ですが、ヴェルグもいますので」




 やんわりと断ったのだが、ルルエナ母様は引かなかった。




「でしたら、ヴェルグさんも呼べば良いのです」




「直ぐには無理ですよ」




 ヴェルグは日帰りできる依頼を冒険者ギルドで受注中である。


 まだ帰ってくる時間ではないので、呼びに行くのは不可能であった。


 だが、俺の考えは甘かったらしい。


 母様達の話を聞いたルナエラ姉様が家臣に伝えて、冒険者ギルドへ使いを走らせた模様。


 更には、俺の屋敷へも使いを出し、今晩の食事について伝えに行ったようだ。


 完全に断る理由を潰されたので、頷くしか無くなってしまった。


 アリエール母様が笑顔で再度問う。




「今晩は、我が家で食事をして行きなさい」




「はい……」




 素直に頷くしかなかった。


 多分、何か聞きたい事があるのだろうな。


 そう考えていたが、晩飯は普通に雑談で済んだ。


 あっれぇ?深読みし過ぎたのか?


 食事が終った後、ルナエラ姉様がその理由をこっそり教えてくれたのだが――。




「母様達はお詫びのつもりなのよ」




「なんで? 家族だし、関係ないんじゃないの?」




「ラフィが爵位を持っていなければね。血の繋がりは確かに強いけど、それを理由にしちゃうと」




「ああ。他貴族への内政干渉になる訳か」




「でも、母様達はラフィには感謝もしてるし、今回は家族として動いたとラフィ自身が公言してるから」




「表立った礼は出来ない。その代わりに食事なわけね。別に気を使わなくても良いのに」




「貴族社会は、本当に面倒なのよ。ちょっとしたことで上げ足を取る人ばかりなのだから」




「そこは痛感してる」




「後は単に、久しぶりにラフィと食事をしたかったのも理由よ。ラフィは一番早く独立しちゃったから、お兄様達よりも一緒に居た時間は短いもの」




「ルナエラ姉も、だろ?」




「そうよ。可愛い弟と一緒に食事する機会なんて、どんどん減っていくもの。お姉様達には悪いけど、機会チャンスは逃さないわ!」




「そろそろ弟立ちしましょうよ……」




「無理ね。結婚して子供が出来たら見に行くわ。逆の場合は見に来てね」




「わかりました」




 とまぁ、この様な理由を聞かされて、少し雑談した。


 ついでに実家に泊った訳なのだが、ヴェルグはやけに静かだった。


 寝る前に理由を聞くと、ヴェルグらしからぬ答えが返ってくる。




「いやだって、ラフィのご両親だよ? 緊張するに決まってるでしょ!」




「ヴェルグでも緊張する事があるのな」




「それはあるよ。その……お義父さんとお義母さんになる人だし」




「今からそれじゃ、気が持たないぞ」




「わかってるよ。でもね、良く考えて。正式な婚約者になった後にお義母様に会うのは、ボク初めてなんだよね」




「あれ? そうだっけか?」




「ラフィ……。どうして、わかってないのさ!」




「いや、以前には会っているし、正式な婚約者になったからと言って何か変わるのか?」




「超変わるよ! はぁ……ミリアやリーゼの言った通りになったなぁ」




「……二人は何て言ってたんだ?」




「二人じゃなく、全員ね。『ラフィ様は貴族社会と慣習について、無頓着で抜けていますから、しっかり皆さんで助け支えましょう』だってさ」




「ぐふっ」




「ラフィって、お義父様と良く似てるって言われない?」




「……ノーコメントで」




 なんて雑談があった訳なのだが、別に聞かれて不味い話でもないので、遮音結界をしていなかったのがまずかった。


 翌朝、メイド数名から生暖かい視線と両親やルナエラ姉様からも生暖かい視線を向けられたのだ。


 何故こんな視線を向けられるのかわからない俺とヴェルグが、朝食が終った後に軽く雑談してる中で言われたことで発覚した。




「ちょっ! この家のメイドは口が軽すぎやしませんか!?」




「婚約者とは言え、婚前前の男女が二人で部屋に篭っているのですよ? 孫の顏は早く見たいですが、婚前交渉はさせられません。ましてや、実家で逢引きみたいな事は特に」




「百歩譲って監視と両親への報告は認めたとしても、何故ルナエラ姉様とメイド複数人が知る必要性があるのですか!」




「監視していたメイドは複数人ですよ? 誰も他の侍女には話していませんが?」




 最後の話を聞いた瞬間「はい?」と間抜けな声が出てしまった。


 ヴェルグに関しては、顔を赤らめた状態で俯いていらっしゃる。


 かなりカワイイ……って、そうじゃない!


 盗み聞きされた挙句、ある意味羞恥プレイである。


 抗議するところはしなくてはいけないのだ!


 だが、母上達は強かった。


 父上?既に空気になっておられます。




「誤解されるような行動したあなたが悪いのです。そもそも、そういう話は帰ってからしなさい」




「だとしても、姉上に聞かせる理由にはなりません」




「メイドが報告しに来た時に、偶々居たので聞いていただけですよ。他意はありません」




「普通は退出させるでしょう!」




「聞かれて困る内容でもないですからね。ああ、そう言えば『私の弟がどんどん女慣れして行ってるぅ!』と嘆いていましたね」




「お母様!?」




「サラッと姉上の言葉まで暴露とか……。はぁ、もう良いですよ」




 疲れた……。


 その一言に尽きる。


 そして、クロノアス家における真の支配者は母上達なのかもしれない。


 他貴族はどうなのだろうか?


 やはり、妻が強いのであろうか?




 その後は母上達の独壇場で子供達の色々な話が暴露されると言う展開になった。


 勘弁してほしい……。


 母上達を見て、どこぞの王妃を連想してしまったのは墓場まで持って行こうと思う。




 疲れて屋敷に戻ると、何故かリュミナが頬を膨らませてご立腹で待っていらっしゃった。


 これ以上の面倒事は勘弁してほしいのだが……。

この度、総PV数が100万を突破しました!

1年半投稿を頑張って良かったです。

まぁ、感想はあまり着ませんが(笑)(来ても返す余裕が無いですけど)

レビューもようやくいただけました。

完結迄頑張って行きますので今後ともよろしくお願いします!

次の目標は200万だな……(笑)

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