146話 神喰の処遇……の前に重大事実が発覚した!
いつも読んで頂きありがとうございます。
謁見の間での褒賞が終わり、会議室での話し合いと本音語りも終わった現在、城内で戦勝パーティーが行われていた。
今回の戦勝パーティーは、家族も参加出来るとあって、かなりの大人数となっている。
家族も合わせた貴族家の多さが凄いのか、それを余裕をもって受け入れられる王城の広間が凄いのか、その二つを更に余裕をもって行える王族が凄いのか。
とても判断に困るところではある。
父や兄も含めた我がクロノアス家でも、ここまで大掛かりなパーティーはかなりの負担になる。
出来なくはないのだが、開催した後は間違いなく節制しないといけなくなる規模だ。
王家の資産は化け物であった。
貴族派閥は、こんな化け物資産王家に対して反乱する可能性があると言うが、どう見ても無理ゲーだと思うがね。
我が国の軍権は王家がその全てを持っている。
では、軍務卿の仕事とは?
有事の際は指揮を執るが、主な仕事は書類仕事になっている。
人員管理に給料や警備人員の配置に訓練。
王都守備隊は下級近衛を指揮官とした分隊方式を採用している。
これにより、軍務卿への一極集中を避け、内乱を起こさせないようにしているのだ。
尤も、王家主流派しか最重要役職には就けないので、内乱などほぼ皆無ではある。
仮に起こしても、軍権が王にある以上、軍務卿の裁量一つでは軍など動かせないし、給料の総支給額は財務が管理している。
貴族派閥の者も軍にはいるし、役職もあるが、下級近衛が目を光らせ、兵は常時分散させているので、大軍を指揮下に置くことも不可能と言う状況。
貴族派閥はどうやって内乱を起こすつもりなのか、甚だ疑問であった。
そんなことを考えながらパーティーに参加しているのだが、これにも理由はある。
その理由は、毎度飽きもせずに妹や娘の自己紹介合戦になっているからだ。
(お前ら……。良く飽きないよな)
心の中でそう思いながら、いつも通りの対応をしていく。
下手な言質を取らさずに、素晴らしき日本語で「善処しましょう」「考えておきます」などで躱すのだ。
確約してないので、どうとでも逃げられるように躱していく。
(ありがとう。日本の政治家と官僚よ。君達が生み出した言葉は、今、大いに役立っているぞ!)
前世では『クソが!』とか『これがお前らの、やり方かぁぁぁ!』などと思っていたが、今は非常に役立っているので、心の中で感謝しておこう。
実に素晴らしきは、美しい日本語だな。
途中、殿下とルラーナ姉が挨拶に来たり、陛下や大臣達が来たりして、パーティーの半分は彼らに付き合った。
他の貴族が近づいて来ないので楽だしね。
後の半分の内、残りの半分はミリア達や父達と過ごしていたので、被害は最小限と言えるだろう。
……多分な。
こうして、数時間に及ぶ戦勝パーティーは幕を閉じ、帰宅の途に着いた。
そして現在、夜も更けたころ、俺は複数の人を伴って、ゲートを使い、王都郊外へ来ていた。
同行している者は、ゼロ、ツクヨ、ヴェルグの3名。
何故このような場所に、しかも夜更けに来たのか?
それは、神喰に対する処遇を決めるためである。
俺は始め、屋敷の地下室で行おうとしていた。
しかし、何かあっては拙い!と、ゼロとツクヨに言われ、わざわざ郊外にまで足を運んだわけだ。
この3名なのは、神喰に対して防衛行動を取りながら、俺の護衛も出来るためでもある。
そして、尋問と言うか査問と言うか、そう言ったのを《《とある方々》》に頼んでいた。
とある方々は直ぐに来れるので、先ずはこちらの準備に入る。
原初空間に隔離していた神喰を現実世界に戻す。
それと同時に、時空間魔法で空間結界と時間延長を展開。
結界に閉じ込めてあった神喰はぐで~っとしていた。
「こいつ……。ちょっとお仕置きした方が良いか?」
「ラフィが好きな様にしろよ。ただ、殺すなよ?」
俺とゼロのやり取りを聞いた神喰が、正座の体制になった!
神喰は「真面目にするから!」と目で訴えてきている!
俺はとりあえず、ペインプリズン(弱)を展開!
「イタイイタイイタイ。オレ、マジメ。ケッカイ、トク」
「なんで片言なんだよ」
とりあえず、ペインプリズンを解除する。
解除された神喰は安堵の顔をし、真面目に正座中。
こちらの準備が出来たので、《《とある方々》》、戦神メナトと死神シーエンを呼ぶことにする。
連絡するのはゼロ。
ゼロは神界に正規の方法で行けなくなったが、連絡手段や裏技を使って行けるらしい。
今度、方法を教えてもらおう。
「呼ぶのは二柱で良いんだな?」
「ああ」
「だがよ、なんで2柱だけなんだ?」
ゼロの疑問はごもっとも。
納得してくれるかは知らんが、一応説明はしておく。
「今までの情報と俺の直感で、この二柱だけは白であると判断したからだな」
「ふーん。で、黒は?」
「エステス、ジェネス、ジーラ、ジーマ、シルの5柱」
「理由は?」
「言わないとわからないか?」
「いや。なんとなく察しは付く」
「じゃ、そういうことだ。ただ、シルについては黒と言うよりは……」
「灰色ってか? 残りの奴らはどうなんだ?」
「判断がつきかねるから、今回は呼ばない」
「OKだ。まぁどうせ、シルには漏れるだろうがな」
「シーエンか?」
「あいつら、割と仲が良いからなぁ……」
「そこはしょうがないか……」
お互い溜息を吐く。
そこから僅か数秒して、結界内に光が収束し始める。
収束した光が収まると、三柱が姿を現した。
そう、三柱だ!
現れたのは、メナト、シル、シーエンであった。
全員が三柱を睨むと……。
「懸念はわかる。だが、シルは大丈夫だ。証拠も持ってきた」
メナトがこちらに対し発言する。
続いて、証拠となる物をこちらへと見せた。
それは今までのシルの動きと、エステスへの調査結果だった。
だが、その調査結果に対し、ゼロが難癖をつける。
そこからは、神喰そっちのけの話が展開された。
「この証拠だけで信じろと?」
「元原初様の言い分はごもっとも。ですが、シル一人で調べたわけではない」
「誰が付いてたんだ?」
「シーエンも同行している。隠密性で言えば、死神に勝るものは無い」
「改竄してる可能性もあるだろう?」
「もし、改竄してあるのなら、それはシーエンも裏切者と言う風になるな」
「そうだな。だが、はいそうですか……と、鵜吞みに出来ないのは理解してるな?」
「では、どうすれば信じてもらえると?」
「そこは俺じゃなく、ラフィに言いな。俺は俺の疑問をぶつけただけだが、ラフィが信じるなら異論はねぇさ」
そしてゼロとメナトは俺を見る。
ゼロから調査結果を受け取り、目を通していく。
紙媒体なのは、多分こちらに合わせたのだと思っておこう。
「一つ聞きたい。何故、ジーラとジェネスが黒幕ではないと断言した?」
俺の質問に三柱が順に答える。
「私も調査報告だけ見ての判断だから何とも言えないが、その報告通りなら、ジェネス様はエステスに対して相当嫌疑を向けていると思われる」
「ジーラに関しては?」
「そこはこの私、シルがお答えしましょう。ジーラの場合は、あくまでもジェネス様からの命令に従っただけでした。過去改変や未来改変などの形跡はなく、次元調律しかしていないことを我々が確認しました」
「シルだけでなく、メナトとシーエンもか?」
「私も確認した。ジーラは、今は中立で間違いない」
「我が名において誓おう。ジーラは無実だ。そして、ジェネス様については一つ分かったことがある」
「なんだ?」
「ジェネス様はラフィの事を好んでいる。これは間違いない事実だ。良く気にかけておられるし、神喰を捕らえた時は諸手を挙げて喜び『流石、儂の孫じゃぁ!』とか言っていたからね」
「周りを欺くためかもしれないぞ?」
「いや……あれは、ただのジジ馬鹿だ!」
「ぶっちゃけたな!」
メナト、ジェネスをジジ馬鹿発言事件が起こる。
その言葉に反応してだろうか?新たに光が収束して……。
「誰がジジ馬鹿じゃ」
ジェネス降臨。
かなり予想外の出来事に、俺を含めた4人は警戒度を最大限にまで引き上げる。
それを見たジェネスは……。
「悲しいのぅ…。いや、全ては儂らのせいか。……何を聞きたい?」
悲しそうな、寂しそうな顔を見せたジェネスは、唐突に質問を許可してきた。
警戒度は更に上がるが、この機会を逃す手は無い。
「一つ。何故、俺の記憶に細工をしたか」
「理由は多々あるが、一番の理由は記憶の混濁を防ぐためじゃな。成長するにつれて、前世の記憶はあやふやになっていくもんじゃが、お主の場合は事情が変わる。故に、そうあるように調整はした。この世界で不自由せぬようにな」
「二つ。想定外の事について」
「あれは完全に想定外じゃった。エステスも驚いていたからの。しかも、事は既に終わっていて、後処理の方が物凄く面倒じゃった。お主の家族に被害が出ぬ様にするのにも一苦労じゃったぞ」
「それは感謝します。で、最後です。召喚者、そして、不慮の転生者について」
「召喚者については、わかっていることだけ話すとするぞい。召喚については、神の力の行使と特定条件が設定されておった。しかし、神側での妨害があって、誰が成功させたのかを追えんかった。アカシックレコードにすら、妨害をかけておるとなると、一柱の力だけではないの。最低でも二柱以上関与しておるのじゃが……」
「……神喰の欠片を行使した者がいる可能性を否定できないと?」
「うむ。そして不慮の転生者についてじゃが、先にも言ったが、事は既に終わっていたのじゃよ。輪廻転生の輪にある魂の中から探し出し、洗浄された部分をアカシックレコードから探し出して補完し、気付けばこちらの時間で数年が経過しておった。その際、お主に所縁の無い魂も複数選んでしまってな。いくつかは元の場所に戻したが、二つほどはこの世界に適合してもうた。ラギリアとか言ったかの? あの者がその内の一人じゃ。もう一つの魂は転移転生でなく、普通に転生したが二つに分かれての。確か、双子の冒険者だったかの?」
「え? まさか、あの双子冒険者? 俺が試験官をした?」
「そうじゃ。ちょっとだけ他よりも強いが、誤差の範囲だの。お主の家臣である青年には勝てんよ」
衝撃の事実である。
あの時の双子冒険者(111話後幕間)が転生者だったとは。
ちゃんと見ていなかったけど、称号に転生者があったとか?
「転生者はないぞ。前世の記憶はほぼ消えとるしの。お主が雇ったコックにしてもそうじゃな」
「人の思考を読まないで頂きたい」
「これはすまんの。でじゃ。お主の友については、儂の独断で特例処置を施した。来年辺りには会えるじゃろ」
「サラッと爆弾発言が出た!?」
「お主、前世でもモテておった様じゃの。ただ、鈍感も大概にするのじゃな。そしてな……モゲロ」
「最高神の言葉じゃねぇ!!」
「ごほん、まぁ、ちょっとした嫉妬じゃよ。他意は無い」
「嫉妬ってだけで、問題大ありだよ! 神も一夫一妻制なのか!?」
「そこは置いておくのじゃ」
「嫉妬までされて置けるか!」
「まぁ、そんなわけで、お主に伝えんかったことは悪かったが、お主にも責任はあるからの」
「何の責任!?」
「お主、教会に足を運ばんかったじゃろ? 洗礼時に時間が無くて説明できんかったことを、お祈りに来た際に説明しようと思っておったのじゃが、全然来んでの。もう構わんか、なんて思ったのじゃよ」
「伝言! 報連相! これ、大事!」
「まぁ、そんなわけじゃ。他には何かあるかの?」
衝撃の事実オンパレード!
何?俺が悪いの?俺の責任?
いやいやいやいや、伝言位頼めるよね?伝言しなかったせいで疑われて、疑心暗鬼になったんだよ?
間違いなく、ジェネスが悪いよね!?
さっきも嫉妬とか言ってたしさ!
「おい、いつまで待たせんだよ!」
空気も読まず、神喰がなんか言ってきたので黙らせる。
とりあえず、ペインプリズン(中)。
「イダイイダイイダイ。オレ、マジメ。オレ、マチガッテナイ。ハナシ、ハヤク」
「ちょっと待ってろ!」
軽く八つ当たり気味にキレてから、ペインプリズンを解除。
神喰君、正座して再び『待て!』の体勢に。
ジェネスと俺以外、全員が苦笑いだ。
「……はぁ、疑って損した気分だ」
「悪かったの。それで、儂の疑いは晴れたのかの?」
「今のが真実ならば……と言いたいですが、真実ですよねぇ」
「そうじゃの。儂は原初様にだけは、嘘は吐けんからの。現状だと、元原初様には嘘を吐けるが、ラフィ君には無理だの」
「嘘は吐けないけど、意識誘導は出来る…と」
「警戒していたら無理だの。今ならできなくもないがの」
「それで、何を隠してるんですかね?」
「隠してはおらんぞ。聞かれてないだけじゃ」
「屁理屈ですね。ちゃっちゃと吐いて下さい」
そして吐かせた内容だが、割と面倒な話だった。
まず、加護についてだが、12神全部のレベルが5。
もうこれだけで厄介事確定。
だが、更に加えて戸籍関係に衣食住の問題。
言語理解は出来るようにはしてあるが、この世界の常識とかは全く無しの状態。
ステータスとかの能力も割とバグってるレベル。
はっはっは!泣いて良いですか?
ダチが転移転生してきた時点で心労マッハなんですけど。
「もう神喰とか、どうでも良くなってきた……」
「おい!」
「で、そっちが尋問するんですよね?」
「良いのかい?」
「俺の中で、メナト、シーエン、シル、ジーラ、ジェネスは、限りなく白になったので」
「こっちの話を……」
「それは重畳。消滅させるかもこっちで決めて良いかい?」
「勝手に決め「そこは相談で」」
「人のはな「わかった」」
「無視するんじゃねぇぇぇぇぇぇ!!」
「五月蠅い!!」
ペインプリズン(極大)を発動!
「ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ちょっと黙ってろ!」
「イダイイタイイダイイタイーーーー!オレ、マヂガッダゴド、イッデナイ」
「もうすぐ話を始めるから、大人しくしてろ!」
「バイ」
神喰の返事を聞いてから、ペインプリズンを解除。
おや?神達の様子が……。
「容赦ないのぅ……」
「もう、あの頃の蒼夜君は、いないんだね……」
「でも、今の方も良い……」
「シーエン。あなた、彼なら全てを肯定しそうですね」
「四柱も食らいますか?」
額に青筋立てて、ペインプリズンを発動する振りをする。
四柱は揃って「ごめんなさい!」と言って逃げようとする。
でも、逃げれない!だって、神喰をこのままにしては置けないから!
「ラフィって、魔王の気質もあるのな」
「ゼロにもあるわよ」
「まて、それは可笑しい」
「あははは……。でも、魔王なラフィか。……夜が魔王なラフィ……うん、ありだね」
「そこの3人も、ペインプリズンを欲しいのかな?」
3人も揃って「ごめんなさい!」をして、逃げようとする。
でも、逃げられない!だって護衛なんだもの!
ちょっとしたカオスが広がりかけて、どうにか軌道修正をする。
その間も神喰は放置プレイだ。
「オレ、モウ、ショウメツデイイデス」
神喰は人知れず泣いた。




