144話 帰って来たどー!!
新章・束の間の平穏?編突入です!
暫くの間、シリアスさんはお休みします。(笑)
帝国内乱に参加し、神喰と一応の決着をつけ、半月近く帝国で過ごすことになったが、ようやく我が家に帰って来た。
「帰って来たどー!!」
屋敷の前で盛大に声を出す。
ご近所さん?そんなものは知らん。
戦っているよりも、話し合いとかの方がストレスマッハだったので、どうしても声が出てしまったのだ。
と言うわけで、その辺りの説明をしようと思う。
元皇太子ジルニオラの処刑後、帝国迎賓館で過ごしていたが、話し合いに呼ばれたり、陞爵の話を潰しに行ったり、領地の話を潰したりしていたのだが、当然の如く、あの話も舞い込んでくる。
そう、娘や妹の紹介話と園遊会やお茶会に加え、アポ無し突撃貴族達だ。
勿論狙いは、俺の妻にさせる事。
帝国は半数近くの貴族家が、この度お取り潰しになった。
上は公爵家から下は騎士爵家まで、幅広くである。
当然だが、領地に影響は出るし、国力の低下は甚大。
帝国貴族の爵位余剰枠も大量に出来てしまう。
なので、皇帝側に付いた貴族家は軒並み陞爵となった。
それでも余剰枠が大量に余っている。
特に、子爵家から下はかなり多いと言っていた。
何故知っているのかと言うと……。
『クロノアス卿……いや、義息子として愚痴を聞いてくれんか?』
そう言われて、皇帝から昼食に誘われて愚痴を聞いたり、仕事を手伝わされたりしていたのだ。
『俺、ランシェスの貴族なんですけど。こんな資料とか見て良いんですか?』
『ランシェスの貴族だが、余の義息子でもあるし、本当にヤバいのは、別にしてあるからの。見よ、あのガザライズの姿を……』
『お義兄さん、死にかけてません?』
『そう思うのなら、手伝ってくれ……』
ここまで言われては、イヤです!とは、流石に言えなかった。
俺は婚約者達の家族も、手の届く限りは護ると決めている。
だが、貴族としての手前もあるので、陛下にお伺いを立てた後、きちんと許可を貰ってから手伝った。
俺が主に担当したのは、陞爵者と爵位授与者の選別。
後は戦死者の家族に渡す見舞金額の話などになる。
この作業で、3日程を潰した。
その間ミリア達も『自分達も出来る範囲で手伝います』と、色々と手伝いに行っていた。
ミリア、ナユ、シアは、治療院で兵士たちの治療を。
リリィ、リーゼ、ティア、ミナ、ラナは、俺の補佐を。
イーファ、リジア、スノラは、亜人側の意識改革を。
リア、ヴェルグ、リュールは、兵士たちの訓練と治安維持を。
婚約者ではないが、ゼロ、ツクヨ、ウォルドは、冒険者ギルド側の仕事を、それぞれ手伝っていた。
作業終了後、1日はのんびりと過ご……せるはずもなく、何故か帝城へと呼び出される。
そして行われる、陞爵の儀と爵位授与。
皇帝に付いた帝国貴族は、侯爵と辺境伯を除き、全ての貴族家が一つ上の階位へと陞爵した。
領地持ちの貴族は領地も広がるそうだ。
そして、侯爵と辺境伯には年金付きの勲章が贈られる。
俺?俺は一応、陞爵扱いである。
但し、帝国貴族とは立場が違うので、臣下の礼などは取っていない。
そしてそれに、文句を言う貴族もいない。
一斉陞爵は俺の発案だったりもするので、感謝はあっても文句はないのが現状であったからだ。
今ここで文句を言えば、取り消しになると恐れているとも言えるが、そんなことはしない。
また考えるのが面倒だしな。
次に爵位の授与だが、これには俺も頭を悩めた案件だったりする。
だって人柄とか、どこの貴族家の子供とか、知らんし。
なので、大部分はミナが主導で行い、俺が補佐をして、皇帝が最終決定をした。
今回授与される人数は100名。
今回の内乱では、それ以上に取り潰しになってはいるが、いきなり増やすのも良くないし、貴族として足りない人間も多いので、大部分を見送った形だ。
余剰枠がまだあるので、帝国では武勲よりも開墾した方が貴族になりやすくなってしまった。
まぁ、国力が増すので良いんじゃね?
尚、この場に俺がいるのは、陞爵、発案人、見届け人と、3つ役割がある為。
同時に貴族達には、俺とミナの婚約を知らせるためもあった。
そんなこともあり、4日目は潰れる。
その後は先程話した通り、妹や娘の紹介を兼ねた園遊会やお茶会のお誘いに、アポ無し貴族の突撃などがあったわけだ。
当然だが、アポ無し突撃した貴族については、皇帝に報告して、厳重注意をしてもらった。
次やったら降爵にするらしい。
そんな感じで、アポ無し突撃貴族は消えていったが、俺はミリア達とお茶をしながら、とんでもないことを言われる。
その話を聞いた後、獅子身中の虫を連想してしまう。
『ラフィ様は、帝国貴族の方には感謝されてるでしょうね』
『一斉陞爵の話か? 皇帝は苦笑いだったけど』
『ですが、問題は解決されたんでしょう? ただ、面白くないと思う方はいるでしょうね』
『帝国内にか?』
『いえ、ランシェス内に』
『……面倒なことになりそうだな』
『私達も支えますから、頑張りましょうね』
俺の政敵は、自国内にいるのが確定した瞬間だった。
だが、帰りたくないとは思わなかった。
俺の家はランシェスだからな。
そして更に数日が過ぎ、園遊会とお茶会を連日消化し、帰国の日となる。
帰国の日だが、同日に各国の軍も帝国を去る。
故に、俺の仕事が増えた。
各国にゲートを繋げ、時間を掛けずに帰国させなければいけなくなったのだ。
『戦費が……』
皇帝のこの一言により、各国王も同情したらしい。
内乱の戦費は、全額帝国負担である。
それは当然、自国に帰りつくまでかかる。
遠足は帰るまでが遠足、と同じ理屈であった。
『クロノアス卿、頼まれてやってはくれんか?』
これが陛下以下、各国からの陳情となった。
『報酬は上乗せさてもらうから。頼む!』
皇帝にまで言われる始末。
皇帝曰く『各国に自国へ帰りつくまでの戦費を払うより、クロノアス卿に払う方が断然安上がり』らしい。
一体どれだけの金額になるのか……。
想像できないが、そこまで言われては断れない。
承諾し、ゲートを開く旨を伝える。
各国軍と直属部隊が帝都郊外へと整列する。
改めて見ると、その数は多い。
一回一回ゲートを開いては時間が掛かる。
そこで、もう自重せずにやっちゃったいました。
ゲートの並列起動を。
各国軍と各王たちの前にゲートを開き、ゲートの先は指定の場所へと繋がるようにした。
各王たちは、城の中へと。
各軍は、都の郊外へと繋がるようにした。
何故、そのような場所にしたのかは、各王たちからの指定であったからだ
『凱旋させなければ、今後の事にも関わる。広場でも良いのだが、今回の事は民も知っておるし、凱旋が好ましいの』
『英雄ってのは、華々しく帰還してなんぼだしな』
『神聖国は神聖騎士様の力になったと見聞せねばいけませんし』
『竜王国も同じですな。なのでここは……』
と言われたのである。
まぁ、別に問題は無いので了承した。
で、並列起動したら驚かれた。
なんか言ってたけど、急かした。
『これ、かなりしんどいんで、早く済む人は済ませてください』
嘘である。
制御はリエルがやってるし、魔力消費は微々たるもの。
お小言が嫌だったので、急かしたのだ。
俺に急かされては、文句も言えないのか、とりあえず各国王たちは従って潜る。
その間に、各軍も隊列を守りながら潜っていく。
各国全てが潜り終え、ゲートを閉じる。
直轄部隊はこの場で解散となっているので、貸し出された者達は一緒に戻っているぞ。
で、最後に亜人なのだが、これについてはいくつかの国に分散させることに決まっていた。
亜人奴隷およそ8万人。
これを各国に分散させるのだが、帝国を除いての分散なので、各国辺り1万6千人の受け入れ。
これだけの流入は、各国も混乱を招く。
なので、各国での受け入れは現状で3分の1の5千人。
それを一部の領地で受け入れる。
他国がどういった割り振りをしたのかは、軽くしか聞いていないが、了承した領主については1年間の減税をするらしい。
そして、千人単位で割り振るそうだ。
ランシェスだけは少し違っていて、ティアの両親が治める公爵領に千人、二つのクロノアス領に千人ずつ、黒竜族が住まう聖域に2千人となっている。
これで2万人の受け入れとなり、残りの人数については、亜人の集落へと分散となる。
神樹国にも集落が多数あり、2万人を受け入れる。
これで半分となり、残りの約4万人については、今暫くは帝国内にある隠れ集落へ分散となる。
帝国法も改正となり、妖精族、亜人族については、借金奴隷と犯罪奴隷以外の奴隷化を廃止。
法を犯した者には、厳しい処罰が下される事になった。
また隠れ集落には、いきなりの人口増加に対応出来る様に、食糧支援なども盛り込まれ、帝国兵で亜人と仲良くなった者が仲介役として派遣される事にもなった。
亜人側も同様に、仲良くなった者が仲介役となり、集落入り口での受け渡しとなることで合意。
尚、爵位授与された大半の者は、亜人と関係改善に尽力した者達で構成されている。
新たな貴族となった彼らの役目は、亜人達への支援と言う任務を帯びた者達なわけである。
ゆくゆくは、彼らの中から数名に領地を与え、関係改善と食糧支援に加え、領民になってくれることを願っているらしい。
と言うわけで、先程よりも多く、ゲートを並列起動させる。
各国の領主へは既に話は行き届いているので、迎えが来ているとのことであった。
『クロノアス様には、なんとお礼とお詫びをすれば良いか』
最後に老亜人が頭を下げ、礼と詫びを告げる。
ゲートを潜る亜人達も頭を下げて、礼をしてから潜って行く。
そんな中、一人の男の子亜人が近寄って来て……。
『お兄ちゃん! 助けてくれて、ありがとう! お兄ちゃんにこれをあげる!』
そう言って受け取った物は、木で作ったお守りであった。
それをイーファ、リジア、スノラに見せると……。
『ほう。まだ、現存しておったのだな』
『ラフィ様。これは、無き亜人国の紋章なのですよ』
『同時に、厄災除けのお守りでもあります』
イーファが懐かしそうに言い、リジアが今は無き国を想いながら告げ、スノラはこれからの未来を浮かべて話す。
ただ一つ疑問。
今は無き国とは言え、国家の紋章をおいそれと使っても良いのであろうか?
これには、イーファが答えてくれた。
『紋章自体は使っても構わぬのだよ。国と王家の紋章は別であったし、紋章を使用する際にも制約はあったのでな』
詳しく聞くと、紋章を使用する際には素材で分ける必要があったらしい。
木に彫るのは平民のお守りとして。
銅に彫るのは商人用。
銀に彫るのが貴族用。
金が王族用で、国旗としては布系。
親善大使や国を代表しての場合は、ミスリルに彫ることで差別化していたらしい。
悪用した場合は、国家反逆罪で斬胴の刑との事。
当時あった周辺国には伝わっていたようで、きちんと機能していたそうだ。
今回貰ったのは木で出来たものなので、平民のお守りなわけだ。
きっと、あの子なりの最大限の感謝なのだろう。
ならば、屋敷の何処かに飾るのも良いかもな。
ゲートを潜り終えるまで、男の子が手を振っていたので、俺も振替してあげる。
その後も、頭を下げてから亜人達はゲートを潜り、最後に老亜人がゲートを潜り終える。
並列起動していたゲートを全て閉じ、見送りに来ていた皇帝へと向き直り、挨拶を済ます。
ミナは家族と抱き合い、最後に『幸せになってきます』と告げて、俺達の元に戻ってくる。
こうして、帝国を後にして、我が家へと帰還した。
屋敷の扉を開け、出迎えてくれたのは……。
「遅かったな。そして……屋敷の敷地内とは言え、大声出すんじゃない!」
何故か父がそこにいた。
ノーバスは?他のメイドは?
辺りを見廻すと……あ、父の後ろに並んでたわ。
だが、なんで父上がここに?
「陛下がお待ちだ。それと……私と兄達にちゃんと話を通さんか! この馬鹿者が!」
父の怒声再び。
どうも父がここに来た理由は、亜人達に関する事らしい。
そう言えば、その辺りは陛下にお任せしていたんだよな。
あれ?これって、怒られるパターンじゃね?
ミリア達の方を見る。
皆笑顔でニコニコである。
その笑顔がある中で、ミリアが一言。
「後の事は私達がしておきますので、ラフィ様はお義父様と王城へ向かってください」
「いや、俺もミリア達の方を……」
「王城へ、お向かい下さい」
「……はい」
こうして俺は、父に王城へとドナドナされていきました。
帰ってきて……早速、王城。
俺の平穏は、まだ訪れないようである。
ネタ不足なので、暫くは週1投稿になります。
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(残りの修正はボチボチやります)(小声)




