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143話 一悶着、二悶着、三悶着!?

22話目です。

本日2話目です。

 戦後処理の会議は、一部可笑しな話も出たが、残りは滞りなく受理された。

 後は各国文官が更なる擦り合わせをしながら、正書して調印となる。


 かなり時間が経っていたのか、時刻は間もなく夕方になる。

 なので、このまま会食になろうとしていたのだが。


「いや、俺はミリア達と食べたいので」


 空気を読まずに発言してみた。

 陛下は頭を抱え、他の者は苦笑い。

 いや、シャリュールだけは少し噴き出していた。

 そんな中でナリアが近づいてくる。


「お館様、ミリア様方には、帝城の兵をお借りして、伝言を頼みました。今宵は、こちらでも大丈夫です」


「そうか。大儀だった、ナリア」


 余計な事を……とは、言わない。

 ナリアは俺の事を考えて、この提案をしたのだから。

 俺達本隊の幹部は迎賓館を宛がわれている。

 当然だが、出来る限りでの最高の食事を提供されているが、人数分だけだ。

 俺が戻らないと、料理が余る。

 ナリアは時間を見ながら、その指示を的確にこなし、俺の言葉に深みを持たせるように仕向けたわけだ。

 結果、各国首脳陣はナリアに目を向けることになった。


「これは失態だな。本来は、余がすべきことをさせてしまうとは。ナリアと言ったか? 大儀であった」


「お褒めに預かり、光栄にございます」


「クロノアス卿も申し訳なかったな。まさか、裏の意味があったとは」


「いえ、ナリアのお手柄です。称賛は彼女に」


 これでこの場の空気は穏やかになる。

 だが一名、俺の真意に気付いている者はいた。

 ランシェスの王である陛下。

 陛下は間違いなく、俺の言葉の意図に気付いている。


 本音で喋っていたのだろう?と。


 陛下の視線を躱しながら、この場をやり過ごす。

 陛下も追及はしてこない。

 但し、その視線はずっとジト目であったことは言うまでもない。


 その後は雑談をしながら、会食を楽しむ。

 各国首脳陣は、数日は帝国に残り、調印を終わらせてから帰路に着くとの事。

 勿論、俺のゲートで。

 最近、送迎業ばかりしていると感じてしまった。


 会食も終わり、迎賓館への帰路に着く。

 ナリアと弟子候補も一緒だ。

 女の子の名は、ミリャム。

 ミリャムはナリアに弟子入りを志願したが、帝国内にいる間、簡易試験を行うらしい。

 その簡易試験で、メイドとしての素質があるかを判断するそうだ。

 素質があれば、我が家に連れて帰り、ナリアの愛弟子として鍛えられる。

 素質が無ければ、教会に母親と共に行く。

 この条件を彼女は吞んだそうだ。


 迎賓館に着くと、ナリアは一礼してからミリャムを連れていく。

 試験は明日から行うみたいだ。

 そして俺は、皆が待つ部屋へと向かい、扉をノックして、返事を聞いてから中に入る。


「遅くなった。皆は、何をしていたんだ?」


「ラフィ様が教えて下さった、ジジ抜きをしていました。後、イーファ様がお話したいとのことです」


「そうか。ミリア達はまだ起きているのか?」


「はい。シアちゃんが眠くなるまでは、起きているつもりです」


「シアはまだ、寝ないのです!」


「それじゃ、先にイーファと話してくるか。彼女はどこに?」


「夜風に当たる……と、ファリジア様、スーノラト様を連れて庭へ行かれましたよ」


「わかった。ミナは城じゃなくても良いのか?」


「はい。皆さんとお話したり、遊んだりしたいので」


「話が終わって、起きてるようなら、後でまた来るよ」


 そう言って部屋を後にする。

 まさかこの後、第一の関門が待っていようとは、夢にも思わずに。


 庭に向かう。

 そこには、空を見上げる3人の亜人。

 イーファ、リジア、スノラの3名。

 何かを話すわけでもなく、3人とも空を見上げながら、風を肌で感じていた。

 そんな3人に声を掛ける。


「お月見か? まだ、月見って季節でもないだろう?」


「あ、グラフィエル様」


「こんばんわ」


「おお、来たのかえ。城での話し合いはどうなったのじゃ?」


「まだ確定してないからな。大筋は決定したが、今はまだ秘密だ」


 そして俺も、3人の横に腰を下ろして座る。

 俺にとっては珍しい、床に地べた座りだ。

 そして同時に空を見上げると、そこには満天の星空が広がっていた。


「へぇ……今日は一段と、輝いて見えるな」


「大勢死んだからかの。こういった日は、星が輝く」


 そう言ったイーファの瞳には、悲しみが滲んでいた。

 だがそれは、直ぐに消え失せる。

 と同時に、俺はイーファから迫られた。


「なぁ、お主は亜人をどう思う?」


「どう、とは?」


「例えばじゃ。愛でるのか、一定距離を置くのか、抱けるのか、子を成したいと思うのか、などじゃな」


「どうだろうな……。ただ、あの老人みたいに碌なことを考えないのであれば、って前置きは付きそうだな」


「言い方を変えよう。もし、お主と夫婦になりたいと言われたら、お主はどうする?」


「多少の打算なら受け入れるかもな。だが、努力しない女は要らん。それでもっ! と言って、何かを頑張れる女は好みだ」


「亜人でもか?」


「亜人と人間の違いは?」


「耳と尻尾くらいではないのか?」


「俺に聞くなよ。それは、亜人達も人間達も考えなきゃいけないことだと、俺は思うけどな。それが、相互理解に繋がると、俺は思っている」


「相互理解かえ。本当にできると思っておるのか?」


「出来るか出来ないかじゃない。やるかやらないかの問題だと、俺は思うぞ。出来ないからやらないは、ただ現実から目を背けて、諦めてるだけだろう」


「そうかえ。……お主に聞いて良かったの」


「それはどういたしまして」


 そしてそのまま、4人で空を見上げながら、風に当たる。

 暫くしてから、4人でミリア達の待つ部屋へと戻る。

 先程と同様に、返事が来てから部屋に入る。


 部屋に入ると、シアが舟を漕いでいた。

 そんなシアを抱えるリア。

 皆も遊びはお開きらしく、寝る準備をしていた。


 イーファ達も寝る準備に取り掛かる。

 部屋の奥に行こうとしたイーファがこちらに振り返り、騒動の種になる爆弾を投下した。

 そしてこれが、三悶着の一つ目となる。


「言い忘れておった。グラフィエルよ。我も汝の妻にしておくれ」


「……はい?」


「難聴かえ? もう一度言うぞ。我を妻にしておくれ」


「ラフィ様? これはどういう事でしょうか?」


「いや、俺にもさっぱり……」


 ミリアの怖~い声にビビる俺。

 つうか、寝る前になんて爆弾を投下してくれるんだ!

 ただ、リジアとスノラは、イーファの言葉に驚いていた。

 となると、二人も知らなかった?

 真意を確かめようにもシアはお眠で、皆も寝る準備中。

 ならば、秘儀の発動でこの場を乗り切ろう!


「とりあえず、話は明日だな。今日はもう遅いし」


「明日ですね? 皆さん、明日お二人を問い詰めますよ」


「「「「「「「「はーーーい」」」」」」」」


 俺とイーファの尋問が確定した瞬間だった。

 秘儀は半分不発に終わった。

 そして翌日、三悶着の二つ目と三つめが同時に起こる。


 翌日の朝、朝食を食べ終わり、思い思いに時間を過ごす中、俺はどう回避するか悩んでいた。

 ミリア達はやる気マンマンである。

 もう間もなく、尋問の時間だ。

 そこへナリアがやってくる。

 来客の様で、俺を呼びに来た様だ。

 来客の人、マジでありがとう!

 そう思っていたのに、俺は裏切られることになる。


「お初にお目にかかります。ネデット傭兵団団長でシャリュールの父です。この度は、敵対していたにも関わらず、我が団員と娘を助け、庇って頂き、感謝いたします」


「グラフィエル・フィン・クロノアスです。まずはお掛け下さい。今日はどうされたのですか?」


 来客はまさかの傭兵団団長。

 転移陣を駆使して俺に会いに来たと団長は言った。

 そして、感謝の言葉を述べられたのだが、本題は別にある模様。


「娘から提案があったと思いますが、我が傭兵団は亜人でも受け入れます。数名ですが、既に我が傭兵団にいますので、彼らも馴染みやすいかと」


「それは良い情報ですね。亜人側にも伝えておきましょう」


「それと、もう一つお話が……」


「なんでしょうか?」


 そして団長から提示されたお願い。

 そのお願いに俺は「またか……」と頭を抱える。

 団長のお願いとは、シャリュールと俺の婚約。

 そして、傭兵国の傭兵王との会談であった。


「我が娘はあの通りでして。父としては、成人させても良いとは考えているのですが、やはり対人関係は不安に思っている次第でして……」


「それで何故、俺との婚約に?」


「自分も娘も同じ考えなのですが、我々親子に勝てる相手を、と思っておりまして」


「俺はシャリュールには勝ちましたが、あなたとは戦っていないでしょう?」


「お恥ずかしい話なのですが、戦闘能力と言う点では、自分では娘に勝てません。娘に勝った卿に、自分が勝てるとは思っていないのですよ」


「だから婚約を?」


「もう一つは、娘が常々公言していたことですね。それを団員達は周知の事実として知っております。親バカが過ぎるかもしれませんが、娘は団の中でも紅一点ですから」


「確かに可愛くはあるな。否定出来る要素もないし」


「そんなわけでして、卿に断られると娘の行く末が……」


「あー、なんか悪かった」


「いえ。それに昨日、娘と夜遅くに会いましたが、娘も満更でもないようでして」


「……ソウデスカ」


 どうやら、包囲網は既に完成しているらしい。

 傭兵王の推薦に娘の意思。

 親も乗り気となれば、後の問題は……。

 あ、これは逃げられないやつだ。

 多分だが、ミリアは認めると思う。

 そして、正妻候補の決定に対抗できる人間は限られる。


 結論、嫁が増えるのは確定。


 とは言え、一縷の望みには賭けようと思う。

 そのことを団長に伝えると。


「実はですね、既に娘は正妻候補の方とお話に向かってまして。後は天に任せている所存でして」


「俺の意思は事後承諾じゃねぇか!」


「自分もそうですが、嫁に勝てると思いますか?」


「……ムリデスネ」


「デスヨネー」


 団長と俺は、何かが通じ合った。

 彼とも友になれそうな気がする。

 そしてお互いに握手を交わし合う。

 きっと団長も苦労をしてきたのだろう。

 何かあれば、団長を頼るのが最適解な気がしたのだった。


 その後は、軽く雑談をしながら皆が来るのを待つ。

 普通は家の内情を外に出す行為なのでダメなのだが、彼になら見せた方が良いと何故か感じてしまった。

 そしてほどなくして、扉がノックされる。

 許可を出すと、やはり全員勢ぞろいであった。


「ラフィ様。どうされるのですか?」


「どうする……とは?」


 突拍子もなく、ミリアが代表して聞いてくる。

 団長に、正妻は自分だ――と見せつけているのだ。

 この辺り、貴族って面倒だなと思ってしまう。


「お話はされたのでしょう? 私達の方は結論が出ています。ですが、家長はラフィ様ですから」


「そっちの結論は?」


「それは卑怯です。私達は、ラフィ様の気持ちが聞きたいのです」


 ミリアに怒られてしまった。

 それを見ていた団長は苦笑しているが、どこか温かい目でも見ていた。

 同時に、頑張れ!と目が訴えてもいる。

 彼にも似たような事があったんだな……と、何となくだがわかってしまった。

 仕方ない……本音で話すか。


「俺は受け入れても良いと思っている。嫌いな人柄ではないからな。ただ、ミリア達が受け入れられないのならば断わる。卑怯とか言うなよ? 俺は長く一緒にいたミリア達を優先したいだけなのだから。これは俺の我儘だ」


「そうですか。ラフィ様は優しすぎます。私達にもですが、彼女達にもです」


「そうか? 俺は色ボケ貴族だと思うぞ?」


 自分で色ボケ貴族と言って自虐してみた。

 ……ぐふっ――自分で言ったことなのに、地味に心にダメージが入る。

 うん、自虐は止めよう。

 そんな自虐にミリアが反論する。


「そうですか? ラフィ様の場合、女性は選んでいると思いますが。リリィの姉である、第三王女様とか無理でしょう?」


「無理だな。あれは腹黒すぎ」


「ラフィ、一応、私のお姉様なのだけど……」


「本音は?」


「あのお姉様と同じ妻は無理」


「だ、そうだ。……あれ? 確かに選んでるな。選り好みしているともいうが……」


「それで良いのでは? 私達も、ギスギスした関係は嫌ですし」


「シャリュールなら、それは無いと?」


「シャリュールさんは、何というか、普段は小動物みたいな可愛さがありまして」


「あ、わかる。お菓子食べてる時なんか、まんま小動物だよね」


「リア、それは褒めているのか?」


「ラフィも見たらわかるよ」


 と言うわけで、団長を含んだ全員でプチお茶会が開催される。

 シャリュールの前にお菓子を置いておく。

 暫くは手を付けようとしなかったが、我慢の限界だったのだろう。

 一つを手に取り、食べ始めるのを見るのだが。


「うん……確かに小動物みたいな食べ方だな。可愛いと言うのも納得できる」


「娘の意外な一面ですな。自分も知りませんでした」


「父親が知らないとか……」


「自分の前では、甘い物を食べてなかったので」


 団長の言葉に娘であるシャリュールが答える。

 その理由は、何となく納得してしまう内容だった。


「お父さんの前で食べると、怒られると思ってた。お母さんは知ってる」


「妻は知っている……。なんか疎外感が」


 娘の一言に落ち込む父親。

 俺も将来、娘からあんなことを言われたらと想像する。

 ………………ぐはっ!駄目だ……きっと立ち直れない!

 俺はそっと、団長の肩に手を置いた。


「? 二人とも、何?」


「なんでもない。卿、ありがとうございます」


「もし、相談事があったら乗ってくださいね」


「全力で承りましょう」


 二人がパパ友になった瞬間だった。

 いや、俺のパパはまだ先だけどさ。

 こうして、シャリュールも婚約者となった。

 そうなると当然、彼女が動き出すわけで。


「ぬぅ……。シャリュールは良くて、我がダメなのは納得いかんのじゃ」


「ダメとは言ってませんよ? ラフィ様が乗り気でないのだから、しょうがないではないですか」


「ラフィよ! 何故、我じゃダメなのじゃ!? あれか!  姿が幼げだからダメなのかえ!?」


「そういうわけじゃ……」


「我が幼い姿なのは、この方が楽だからじゃ! お主が望むなら、ほれ!」


 イーファは美少女から美女へと姿を変える。

 モデル体型の長身で、胸がでかい。

 正しく、ボン!キュッ!ボン!を体現していた。

 で、当然だが、ミリアの機嫌が悪くなる。


「イーファ様! 誘惑はダメだと言ったはずです!」


「誘惑なぞしとらんぞ? 我はこの様なことも出来る――と見せただけじゃ」


「それが誘惑なんです!」


「怒る事かえ? それは自身に自信が無いと言っておるのと同義じゃぞ?」


「私は自信ありです! 露骨すぎるのがダメだと言っているのです!」


 ミリアVSイーファ勃発。

 しかし、ミリアがここまで感情的になるのも珍しい。

 ミリアは基本、諭す側だ。

 二人に何かあったのか?

 それとなく皆を見る。

 誰もが答えづらそうにする中、しょうがないなぁと言う様に、ヴェルグが代表して答えた。


「あれは、半分は嫉妬だね。ミリアじゃ、ラフィと戦場で共に肩を並べられない。でも、イーファは並べられる実力者だよ。そして、スタイルでも同等で、理解力も半端ない。ミリアは危機感と少し焦ってもいるね」


「ミリアは、ナリアに次ぐ完璧超人だと思ってた」


「ラフィ様!?」


「あはは……。まぁ、ミリアだって悩んだり、困ったりはするよ。でも、正妻たるものって肩肘張っていたのかもね。因みに、ボクはイーファ容認派だよ」


「ん? ってことは、反対派もいるのか?」


「反対って言うより、独占禁止派かな? イーファって独占欲強そうじゃない?」


「俺にはわからん……」


「まぁ、ラフィはそうだよねぇ……」


「何気に貶された気がする」


「気にしたら負けじゃない? まぁ、ボクが容認派なのは、イーファが何気に、ミリアのストレス発散になりそうだからなんだよねぇ」


「ヴェルグ、お主酷くないかえ?」


「気にしたら負けだよ。それに、イーファだって理由があるから婚約したいんでしょ?」


「そうなのか?」


 ヴェルグの言葉を聞き、イーファに視線を移す。

 団長は見ざる聞かざるの空気化を発動中。

 そんな中、イーファは顔を赤らめながら話す。


「正直に言うとな、始めはリジアやスノラの為に我も――と思っておったのじゃが、あの戦いを見て、どうでも良くなってもうた」


「神喰とのか?」


「うむ。その、な……濡れてしもうた」


「…………は?」


「ヴェルグの為に怒り、敵を圧倒し、無事と分かれば喜び、そんなお主に惚れてしもうた。濡れてしもうた。我が癒してやりたいと思うてしもうた。それが理由じゃ。リジア、スノラ、すまんな。だが我は、もう後悔はしたくないのじゃ」


「イーファの気持ち、良く解ります。ミリア様、私ファリジアもグラフィエル様の妻になりたいです」


「私、スーノラトも同じです。でも、私はグラフィエル様だけでなく、皆さんも癒したいです」


「と言うわけじゃ。ラフィよ、我ら3人をもらってほしいのじゃ。もし、亜人が悪だくみしようものなら、我が天罰を下す。勿論、我ら3人は亜人族とは無関係になっても良い。これが我らの覚悟じゃ」


 イーファ、リジア、スノラは固い決意と覚悟を見せる。

 ミリアは何か思うところがあるみたいだ。

 ヴェルグは何も言わず。

 他の皆も反対の声は無い。


「ミリア、何かあるのか?」


「いえ……。私は決意でも負けているのかと、少し自己嫌悪に」


「……ぷっ! あははは」


「ら、ラフィ様!?」


「安心しろ。誰が何を言おうが、ミリアは正妻だ。不安なら言え。俺がどうにかしてやる。自信を持て。俺に告白した時の勢いはどうした? 俺の最初の婚約者はミリアンヌ・フィン・ジルドーラだ。そこは紛れもない事実だ」


「……はい」


 顔を赤らめて、返事をするミリア。

 そんなミリアの頬に手で触れ、再度言い放つ。


「もう一度言う。俺の正妻はミリアだ。俺はミリアに良く助けてもらっている。だから自信を持て」


「はい……はい!」


 ミリアは涙を流しながら、力強く返事した。

 少しの間、ミリアの頬に触れながら、落ち着くまで待つ。

 ミリアが落ち着きを取り戻し、最終的な結論を出す。


「お恥ずかしいところをお見せしてしまい、すみません」


「気にするな。俺が不甲斐ないせいだ。それで、答えは出たのか?」


「はい。イーファさんの事は嫌いではないですし、もう少し自信を持ってみます。ただ、条件が一つだけ……」


「なんじゃ?」


「たまにで良いですから……その、尻尾を……」


「なんじゃ、そんなことか。我らは家族になるのじゃ。遠慮なぞ、するでない。だが、程々にはして欲しいがのぅ」


「決まりだな」


 こうして、帝国内乱で一気に婚約者が5人も増えた。

 未来の俺、大変だが頑張ろうぜ!

 話も終わり、空気と化していた団長も戻ってくる。

 これで終わりかと思いきや、更なる訪問者が……。

 訪問者は、お忍びの皇帝でした。

 そして、三悶着の最後になるのだが。


「お主の爵位が決まったぞ。各国と協議したが、ランシェスは陞爵ではなく、勲章を授与することで決まった。他の国は全ての国が辺境伯とし、クロノアス家……お主の家の者は関所などを簡易通過出来るようにした」


「最後に面倒なのが来たーーーー!」


 皇帝の話に何度目になるかわからない頭を抱え、決定と言う言葉に反論は無駄だと決めつけ、渋々受け入れた。

 領地に関してはまだ話し合い中らしいが、それだけは何が何でも勘弁してほしい。





 多分、無理なんだろうけどさ……。

 人は慣れると、諦めにも慣れるのな……。

婚約者が一気に増えました(笑)

次話で現在の婚約者一覧が出ますので、情報整理の参考にしてください。

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