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15話 人助けと王族一行

あれから2年の月日が経ち、俺は7歳になった

兄と姉は全員が王都の学校に通っている

家には俺と両親とメイドと執事に後はゼロだけだ

ヴァルケノズさんは俺にきっちり1年で光属性の全てを教えていった

元々神界でも教わっていたので、修練速度が尋常では無かったのもあるが、普通なら1日1教える所を20位で教わっていたのだ

そこにゼロの指導が加わるのだ

地獄なんて生ぬるい位の1年だった

下手すりゃ神界での修練よりきついんじゃねぇか?


そんな俺は今日からお披露目会の為、王都に向かう

いつもなら父と実母と護衛だけなのだが今回は義母とゼロも一緒だ

ゼロも一緒なのは王都でも修練をする予定だからである

流石に移動中は大掛かりな修練は出来ないので、魔力操作を重点的にする段取りだ

で、今日が出発の日だ。今日から1週間は馬車の旅だ


道中何事もなく進んでいたのだが後1日で王都という所で1台の馬車が魔物に襲われていた

距離があるため俺とゼロ以外は気付いていない

何故俺達二人は気付いたのかって?

ゼロは勿論の事だが俺も五感が強化されて鋭くなっているから血の匂いや気配などに敏感なのだ

俺はゼロに目線を送り父に進言する


「父上、この先で馬車が襲われています。助けに向かわないと全滅します」


「それは本当か!?ならば護衛を向かわせ「それでは間に合わない可能性がありますので自分が先行して魔物を殲滅します」た方が良いな」


父が言い終わるより早く自分の意思を告げ、俺は走る馬車から飛び降り、一気に襲われている馬車へと走り出す

護衛達も慌てて俺を追いかけるがゼロとの修練は伊達ではない

追い付くどころかどんどん引き離されていく


身体強化して走る事十数秒、襲われている馬車が見えた

護衛は10人ほどだろか

既に半数以上が地に伏しており残りの者もそう時間もかからずに殺られるだろう

俺は空間収納から片手直剣の神剣を取り出し魔物の首を刎ねる

そのまま護衛達と魔物の間に入り、護衛達に向け


「助太刀します!皆さんは馬車の護衛と負傷者を!!」


そう告げて俺は魔物たちに向け剣を振るう


魔物たちはオークとその上位種だが1匹、他の個体とは明らかに違うのが混じっている

上位種の上に最上位種がおり、その上に統一種と言うのがいる

だがその個体は明らかに先に述べた両方と全く違う

恐らく変異種だろうか?

全て合わせた魔物の数は30体だ

ほとんど下位種なので俺は広域雷魔法〘サンダーライト〙で下位種を纏めて殺す

残りは上位種が6体に変異種が1体だ

片手神剣を握り直し、上位種へ斬りかかる

二匹の戦士系上位オークが迎え撃つも、攻撃を難なくかわして、1体は胴を薙ぎ払い、もう1体は首チョンパである

魔法使い系のオーク2体が呪文を詠唱し、それを残り2体の戦士系オークが守る

だが呪文は完成することなく4体とも俺によって薙ぎ払われ、真っ二つにされ、首を刎ねられる

残すは変異種のみだ


変異種はどうも最上位種と統一種、両方の力を持っているようだ

何故そんなことが分かるのかって?鑑定使いましたので

俺は変異種に斬りかかるが相手も受けようとする

そのままでも斬れるのだが普通は鍔迫り合いか吹っ飛ばされる

なるべく自重して過ごしたいと今でも思ってる身としてはそれはマズい

なので鍔迫り合いにならないようにフェイントに変えて、外した所にウインドボールを複数個作りぶつける

ウインドボールは簡単に言えば風の塊だ

一気に複数個ぶつければ衝撃はかなりあるだろう

狙い通り変異種は吹っ飛びその隙を逃がさず背後から首を刎ねて終わりである

オークを全て倒し、俺は護衛達の元に戻るがかなり警戒されてるようだ

辺りを見回すと4人ほど護衛は息絶え、1名が致命傷で残り半数は重症ではないが軽症とは言えない傷を負っていた


「傷を治しますので動かないでください。〘フルヒーリングフィールド〙」


魔法を発動させると致命傷の者も含めて完全治癒に至った

死んでいたと思われた2名は、仮死状態に近かったようで魔法で一命を取り留めた

残りの2名については残念であった

怪我の治癒まで行うと護衛達は流石に俺に対する警戒を解いた


「君のおかげで助かったありがとう」


護衛隊長らしき人にお礼を言われ、魔物と亡くなった護衛をどうするのかと聞くと、魔物も遺体もここで焼いていくしかないと言われた

流石に不憫と思い、アイテムボックス(本当は空間収納)を持っていることを伝え、凍らせて運べばと提案すると頼むと言われたので、全部纏めて凍らせて空間収納に突っ込んだ

全てが終わった頃、クロノアス家の護衛が到着し、それから数分程で家の馬車も現場に到着した


「楽勝だっただろ?1匹珍しいのも混じってみたいだがな」


ゼロは馬車から降りて楽勝で当たり前的な感じで話しかけてくる


「確かに楽勝だけど変異種については考察すべきだろ」


俺はため息混じりにに答える

そうしていると父達が馬車から降り、助けた馬車を見て父が首を傾げて呟く


「この馬車の紋章は公爵家の・・だが何故このような所に・・・」


その呟きに応えるかのように馬車の扉が開き、一人の老人が降りる

年齢は65歳位だろうか

穏やかで優しそうな雰囲気をしているが、目の奥は鋭く、値踏みでもするかの如く俺を見ていた

老人は父へと向き直り


「クロノアス辺境伯か・・この度は助かった。礼を言う」


「いえ、大事なくて何よりです。しかし何故このような所に?」


と、質問をすると馬車から二人の少女が降りてきた


二人とも金髪でとても高価な服を身に纏うとても可愛い少女だ

姉妹かな?と思っていると二人は自己紹介を始めた


「ランシェス公爵家長女のティアンネ・フィン・ランシェスです」


公爵家とはランシェス王国では王族の一員だ

王位につかなかった(継げなかった)王族の兄弟などが多い

後は国にもよるが生前退位した元王とかもいる

国によっては凖王族なんて場合もあり、血筋は王族だが一員では無いとされることもある

続いてもう一人の少女が挨拶をする


「ランシェス王国第5王女リリアーヌ・ラグリグ・フィン・ランシェスです」


ここにあり得ないはずの人物の名を聞き、クロノアス家側は数秒固まり、慌てて片膝をつき頭を下げて臣下の礼を取る

1名を除いてだが・・・

その1名とは当然ゼロである


「クロノアス辺境伯家の方々、助けられたのは私達なのです。お顔を上げてください。出来ればそちらの方の様に気楽にして頂けると・・」


第5王女様は綺麗な可愛い声でクロノアス家を立たせるがそれって建前ですよね

全員立ち上がってるけど・・

そして何気にゼロに対して毒吐いたのかな?

そんな風に思うなんて心が荒んでいるのかな・・・

なんて考えているとゼロのやつが相変わらず心臓に悪い事を言う


「気ぃ使わせてわりぃなお姫様。こちとら冒険者なんでね。貴族の儀礼や挨拶なんてもんは知らねぇのさ」


「貴様!その言い方は何だ!!不敬であろう!!」


まぁこうなるよねぇ・・・

んでゼロもサラッと嘘吐くし・・・ただ単に面倒くさいだけだろう・・

心の中でゼロに悪態をつきつつ、俺は公爵家の護衛達を宥めた

ただ、ゼロが悪いと思ってないのが彼等の怒りを膨張させた

結果、どうも言ってはならない一言だったらしく、彼等の言葉は滅多に怒らないゼロの怒りに火をつけてしまったようだ

護衛達とゼロのやり取りは次の通りだ


「貴様!野蛮な冒険者のくせに、どうせ大したランクでもないのだろう!!クロノアス家の雇われだからといい気になるなよ!冒険者など碌な仕事も出来んくせに!貴様らは根無し草の底辺だろう!!」


「ア゛ァ゛!?てめぇ今なんて言った?俺の事は別にどうとでもいやぁいいが、冒険者全てを愚弄するのかてめぇ?ならその冒険者に殺される覚悟ってのは出来てるんだろうなぁ!?」


珍しくキレてるなぁゼロ・・・

冒険者を悪く言われるのはキレるスイッチの一つか

俺は冒険者を悪く言うつもりは無いので心配ないが覚えておこう

そう考えている俺だが内心焦っていた

ゼロが本気の濃密な殺気を出していたからだ

慌てて止めに入る俺だがゼロを止められるかと言えばノーだ

これはマズい!と思った直後王女様の声が響き渡る


「おやめなさい!!あなた方は護衛として恥ずかしくないのですか!?冒険者様方は我々では追い付かない魔物の駆除をしているのですよ!その方々がいなければ国民は恐怖し国の発展も遅れていたのです!今も商人たちの護衛をしているのは冒険者様ではないですか!これ以上冒険者様を愚弄するのなら貴方が冒険者になって活動なさい!!」


王女様こえー・・・

いや、上に立つものとしては当然なのか?

王女様の叱責が護衛達に発せられると「申し訳ございません!!」と王女に向かい頭を下げた

ゼロは「ほぅ・・」と言った感じで王女に興味を持ったようだ

王女はゼロに向き直り


「護衛達が失礼な発言をし申し訳ございませんでした」


と頭を下げた

一国の王女が冒険者に頭を下げるなど前代未聞である

その姿を見た護衛達は自分達が王女の品格を落としたと思ったのか?凄く後悔した顔をしていた

ゼロは既に殺気を出してはいない

むしろ好意的に王女を見ている

そんなゼロと王女に公爵が声をかける


「リリアーヌ王女様。この護衛は我が公爵家の護衛です。この馬鹿どもは王女様を護衛できる任務で浮かれておったのでしょう。罰を受けるなら儂です。ゼロ殿も大変申し訳ない」


そう告げ、護衛達を守ろうとする公爵に自分達のしでかした事の重大さにようやく理解したのか、先程ゼロを怒らせた護衛達の隊長が代表して謝罪を述べる


「言い過ぎた、申し訳ない。怒りが収まらぬならこの首一つで手打ちにしてもらえないだろうか?我らは護衛。隊長である自分が護衛側の罪を引き起こしたのであれば主が受けるのは筋が通らぬ。どうか頼む」


この申し出にゼロは


「あー、本気で悪いと思って頭下げてるみたいだしな。これから冒険者を愚弄しなけりゃそれでいいわ」


なんともあっけらかんとしている

こうしてこの騒動は終わり最初の疑問に戻る

どうしてこのような所にいるかだ

理由は単純明快で簡単であった

頼んでいたドレスが出来上がったので取りに行った帰り、魔物に襲われたのだ

普通は受注先が届けるのだが王都までの護衛が見付からず、予定されてるパーティーまでに届くかわからないそうなので取りに行ったそうだ

どこの街まで取りに行ったのか聞いたゼロは


「そんなにいねぇもんか?普通は結構引き受けるぞ?付け加えりゃあ王都までなら楽な仕事だ。余程報酬が低くねぇ限りは受けるもんだぜ」


と言うが実際に引き受け手がいないのが事実である


「ならゼロ殿、王都迄そう遠くないし護衛の依頼を受けてはくれまいかな?」


公爵様はゼロに護衛依頼を頼むが


「引き受ける義理も義務もねぇ。理由は3つだ。1つ、俺は今長期契約中だ。今の依頼主が別で頼むなら引き受けるが違うなら引き受けねぇ。不義理はしねぇ主義なんでな。2つ、お前らを助けたのは俺じゃねぇ。今は俺の生徒で弟子のラフィだ。頼む人間が違う。3つ、てめぇの護衛が命張って守ってんだろうが。力不足なのかも知れねぇがそいつらに義理ぐらい果たしてから依頼しろや。それすらしねぇから気に入らねぇ」


そう告げるゼロに公爵様の護衛は一つだけ反論した

3つ目だが戦力低下に伴う冒険者への依頼は公爵家の護衛は訓練教義で理解している事だ

彼らの仕事は目的地まで無事に送り届けることが最優先事項である

それが仕事であり誇りでもあるのだから

仕事を全う出来ない位なら公爵様の提案など不義理ですらない

そう告げる彼らにゼロは


「そうかい。俺の勘違いかよ。3つ目は取り消すわ」


とあっさり自分の言葉を取り下げた


「すまねぇなジィさん。詫び代わりと言ったらあれだがラフィをそっちの馬車に乗せてやってくんねぇか?まだ甘い所もあるが強さは保証するぜ」


と提案し、それに父が抗議するも、ゼロは真面目な顔で説明する


「経験は必要だ。護衛も多い。何かあれば俺がやる。実戦は済ませたが護衛が多い中で更に経験を積ませられるんだ。こんな好条件はねぇぜ」


と言われ、引き下がるしか無くなった様だ

実際その通りなので文句をつけるなら年齢位しかないのだが、ゼロの地獄の修練を見て相当に強くなっているので何も言えないのだ

ゼロは現在最高峰のSSSランクの冒険者でもある

そんな彼にお墨付きを言われた手前もある

まだ子供なので心配だから抗議したのだろう


「そうか。では、えーと・・・」


「グラフィエル・フィン・クロノアスです。道中よろしくお願いします」


公爵様に名乗って無かったのを思い出し俺は一礼して挨拶を済ませる

俺はどうして断らなかったのかって?

言っても無駄だからだ

ゼロと出会って2年・・・彼は間違ってない限り自分の意見は曲げない

神の傲慢さか本人の信念なのかは知らないが

そして公爵家と辺境伯家の一行は再び王都へと向かう



道中は魔物の襲来も無く一行は王都に着いた

終始、王女様と公爵令嬢の顔は赤かったが


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