138話 VSシャリュール・ネデット
16話目、本日2話目になります。
竜王国と皇国が戦闘状態に入った頃、本隊である直轄部隊の俺は第2ラウンドの開始となっていた。
この世界に君臨する最強の一角。
シャリュール・ネデット。
戦闘前に手早く鑑定を済ます。
神眼による【ステータス】の覗き見である。
……覗き魔みたいに思うなよ?これも必要なんだからな!
【名前】 シャリュール・ネデット
【種族】 人族
【年齢】 14歳
【Lv】 12868
【魔力】 6291
【筋力】 39267
【体力】 51859
【精神力】14728
【敏捷】 23917
(は? なんだ、このステータスは!? 普通に人外だろ!)
更にスキルも調べる。
その結果わかったことは、異常だと言うこと。
そして、それよりも重要なことがあった。
(武術大会で見た情報と違う? まさか偽造? 神眼を欺くほどの!?)
武術大会で見た年齢は16歳だった。
なのに今は14歳である。
隠蔽というスキルもあるが、そのスキルは見えなくするだけで、虚偽情報を出すことはない。
残る可能性は二つ。
呪いで肉体年齢が退行していくか、先程言った偽造。
冷静に考えると、前者は無くはないが、このステータスを持つ人間にかけれるのか?という疑問が残る。
普通に考えれば不可能。
では偽造か?と言われると、神眼を欺くほどの?って疑問が出る。
そして調べていくと……うん、やってくれたなメナトよ。
スキルに偽装(メナト仕様)ってあった。
ちきしょう!後で覚えてろよ、メナト!
ここでレベルやステータスについて少し言っておく。
俺も当初は勘違いしてたのだが、このステータスはゲームの様な仕様では無い。
前世のゲームとかだと、敵や魔物を倒して経験値が入る。
しかしこの世界のレベルには、裏の要素がある。
効率は悪いが、経験や習熟度によってもレベルが上がる。
魔物を1体も倒さずにレベルが上げれるのだ。
但し、上限はある。
万に届くことは無い。
では目の前の少女は?って話になると思う。
これが裏要素に関わってくる。
一定の経験と習熟度を収め、複数の条件を満たした場合、一定確率で上限を突破できるのだ。
誰だよ、こんなシステム作った奴……ゼロかジェネスしかいねぇわな。
とは言え、上限を突破しても、更なる上限はある。
その上限を突破していけば、神を弑逆できるレベルにまで至れる訳なのだが……この少女は、ウォルドと同じスキルを持っていた。
スキル・無限突破
上限を無条件で突破できる
更にはこんなスキルも持っていた。
スキル・止まぬ成長
成長速度向上、成長率に補正、必要経験・習熟度短縮
後者は劣化版をウォルドが持っているくらいだ。
そして極めつけは、偽装されていたスキル。
滅壊
全てを破壊し滅する力
自身をも破滅させる
鬼神
ステータス×レベル÷精神力分のステータスを上乗せ
精神力が低いと理性を失う
心頭滅却
精神力を魔力÷2分を最終ステータスに上乗せ
身体武装
身体強化の最上位
ステータスを100%活用可能
天使の福涙
滅壊で、自身に起こる破滅効果を減衰させる
減衰後、破滅は免れるが強烈な痛みを伴う
パンドラボックス
絶望の中に希望を見出す
自身の死を一度だけ回避する
使用は1日1度
可笑しすぎるスキルのオンパレード。
誰だよ、こんなバグスキル与えた奴は!
ステータスを100%活用だけでも十分バグってるからな!
ここで少し説明しとく。
ステータスに記載されている数値だが、これは最大値である。
普段から出せるわけでは無い。
脳は身体を守るため、10%の力しか出していない。
それ以上使うと、身体に負荷が掛かるからだ。
では、シャリュール・ネデットが持っていた、身体武装に書かれている内容は?って話になる。
スキルにもあったように、身体強化の最上位。
つまりは、身体がぶっ壊れずに100%の力が使える事を意味している。
そもそも、身体強化はステータスを上げる魔法ではない。
ステータスの最大値を使用するために、身体を強化・保護している魔法だ。
この事を魔法学会で報告しようか迷っているが、今はどうでも良いことだな。
他にも戦闘に特化したスキルがちらほら。
こうなってくると、加護レベルが気になる。
確認すると……こっちも偽装かよ!
加護は戦闘よりしかないが、レベルが可笑しい。
戦神の加護10
武神の加護10
破壊神の加護7
魔法神の加護3
生命神の加護5
死神の加護 5
である。
12神の半分で10が二つ。
厄介なのが破壊神が7もある。
そりゃ、滅壊なんてスキルが出るわけだわ。
人の身に余るスキル。
それが滅壊。
ここまで思考超加速で確認していたのだが……。
「確認は終わった?」
シャリュール・ネデットから問いかけられる。
なんでわかったんだ!?
その答えを聞くまでもなく、彼女は答えた。
「顔色。大体皆、同じ顔をする」
「あ、そういう。一つだけ質問良いか?」
「答えられるのなら」
「君の曽祖父も同じスキルを持っていたんだろ? どうやって中和していたか聞いてる?」
「…………どれの事?」
「有名な話のやつ」
「その話……皆、良く聞く」
「俺は違う観点で興味が出たな」
「納得。あのスキルは、一定以上になると制御が不可能になる。ひぃじぃは、皆を守るために限界点を突破したって聞いた」
「それが理由で亡くなったと?」
頷いて肯定するシャリュール。
そして、話は終わり、と無言で構えを取る。
やはり戦闘は避けられないか。
俺も双大剣を構える。
周りはただ見ているだけだった。
同時に動き、シャリュールは大斧を上段から一気に振り下ろす。
(ちっ! これは受け止められない!)
大剣を逆手に持ち、大斧の軌道を逸らしながら、もう片方の大剣で反撃する。
しかしシャリュールは、咄嗟に片手を大斧から離し、腰に付けていた片手直剣を逆手で引き抜く。
そしてそのまま、こちらの大剣を受け止めた。
(これを防ぐのか!? かなり重たい一撃なのに!)
そしてお互いに距離を一度とる。
一撃必殺は無理だと、俺は判断した。
シャリュールも同じ考えなのか?大斧と片手直剣の二刀流に切り替えた。
つうか、あの大斧を片手で扱うのかよ!
そこからは手数の勝負になる。
シャリュールは左手に握った片手直剣のみで攻防を繰り返す。
対する俺は双大剣でどうにか喰らい付く。
端から見れば拮抗しているように見えるだろう。
だが実際は違う。
(クソッ! 相手の技量が高い!)
俺は徐々に押されていた。
だが、ふとシャリュールの顔を確認する。
彼女は笑っていた。
(面白い。私と対等に殺り合える人は初めて)
そんな顔を見せていた。
実際には違うのかもしれない。
だが俺はそう感じた。
そしてまた、距離を取り合う。
その時、シャリュールが話しかけてきた。
「私と対等な人は初めて。だから、降伏してほしい」
それは彼女なりの優しさで、最後通告だった。
それに対する答えは決まっている。
「悪いな。残念だが引けない。使うんだろう? 《《あれ》》を」
無言で頷くシャリュール。
そう、彼女は使う気なのだ。
自身を破滅させるスキル。
滅壊を。
俺は考える。
本当に使わせても良いのか?と。
正直、彼女は嫌いな人種ではない。
どちらかと言えば好みな人種だ。
彼女は多分、優しすぎるんだ。
だから、慈悲を与える。
苦しみを与えずに、自身が苦しむ方を選択する。
そんな彼女に使わせて良いのか?
答えは否。
だが、止める術が無い。
いや、一つだけあるか。
失敗したら、確実にお陀仏だな。
だが、やるしかない!
俺は双大剣を持つ左手を上段後方に置き、右手は左腰に納めて抜刀の構えを取る。
対するシャリュールは、片手直剣をしまい、大斧を両手で持ち横薙ぎに構える。
(あの超重量級の斧で横薙ぎかよ)
彼女も一撃必殺で来る。
回避は無い。
俺は俺の為に必ず成功させる。
そして、お互いに一直線に距離を詰め。
「滅壊!」
「原初滅壊!」
二人が交差する。
バキンッ!
音が鳴る。
二人の武器は、両者共粉々に砕け散っていた。
そしてもう一つ。
シャリュールが使った滅壊の負荷がいつまで経っても襲っていかなかった。
不思議そうに自身の身体を見るシャリュール。
逆に俺は、強烈な痛みに襲われていた。
だが、それを顔には出さない。
俺が放ったスキル。
原初滅壊。
効果は同じだが、一つだけ違う部分がある。
任意破壊。
俺はシャリュールの滅壊にある、自身をも破滅させる効果を破壊した。
同時にシャリュールの武器も任意破壊している。
彼女の武器はまだある。
だが、あの大斧が最大の武器であることは間違いないだろう。
お互いに振り向き、俺はやせ我慢する。
こちらを見たシャリュールは質問をしてきた。
「何故、全部壊さなかったの?」
「曾お爺さんから継いだものだろう? 壊すのは忍びなくてね」
「制限無く使える」
「使うのも、使わないのも、本人次第だと思うけど?」
「そう……。ありがとう」
かなり無表情ではあるが、何処か嬉しそうである。
後の問題は、続けるかどうかなのだが……。
「負けた。傭兵団は降る」
「良いのか?」
「私が負けた以上、ここにいる者達じゃ無理」
「そうか。それは助かる」
その言葉の後、我に返った反乱軍がこちらを取り囲みにかかる。
そこへ本陣からの信号弾が上がった。
内容は増援か……。
流石に身体は軋んでるな。
ちょっとまずいか?
だが、そんな俺の心配をよそに、シャリュールが剣を構える。
「少し休んで。身体、大事」
「そうしたいんだけどな。流石に休ませてくれそうにない」
「大丈夫。お礼はする」
そう言った瞬間、傭兵団が陣を組んで反乱軍と対峙した。
当然、反乱軍指揮官は吠える。
「貴様らッ!? 契約を破棄するのか!」
「契約は果たした。私達は負けて降った。これは反乱軍が私たち諸共と考えたから自衛。そもそも、私たち諸共の時点で契約違反。従う義務も義理もない」
「抜かせ、小娘! 兵たちよ! 奴らは疲れ切っている! 取り囲んで殲滅しろ!」
「あなた達じゃ、無理」
その言葉の後、激突しそうになって、反乱軍兵が吹き飛ぶ。
「いったい何が……ッ! シャリュール!」
「え!?」
俺は徐にシャリュールを突き飛ばす。
クソッ!大ダメージは覚悟しないとダメか!
その直後、突っ込んで来る人影。
そう、神喰であった。
「はっはー! ようやくだな! さぁ、殺し合いの時間だぜ!」
「クソが! もう少し空気読めや!」
悪態をつくも、身体の動きは鈍い。
シャリュールが動く。
神喰は貫手の状態。
(ちぃ! 仕方ない、突っ込むしか……)
そう思って足を動かし始めようとして、誰かに突き飛ばされる。
そして放たれる神喰の貫手。
その貫手に貫かれたのは……。
「あ、ああ……」
「ごふ……」
あの時、予知で見えた、ヴェルグの姿だった……。
帝国内乱編も残すところ、後8話となりました。
そして……遂に神喰戦再びです!
ヴェルグはどうなるのか!?
神喰との決着は!?
帝国の行く末は如何に!?
気になる所は多いと思いますが、GW中楽しみにしていてください!
……ダメ出し来そうで怖いなぁ……




