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133話 出陣と再会と騙し合い

11話目です

なろう累計PV70万達成しました!

ありがとうございます!

 会議室で話をしながら朝食を頂き、報告と雑談を終えて帰路に着く。

 ゲートで直接会議室まで来たので、帰りも同じように帰ろうとしたのだが、陛下に止められた。


「どうせ商会に寄るのだろう? だったら馬車を使えば良い。手配はしておく」


「いえ、ゲートで寄れますよ?」


「呼んでおいてなんだがな、お主はもう少し、上級貴族としての立ち振る舞いを覚えても良いと思うぞ。意味はわかるな?」


「それは陛下としてですか? 友としてですか? 義父としてですか?」


「全部だな。更に言えば、嫁達の恥になる事はするな」


「わかりました。ご忠告、感謝致します」


 そう言って、会議室を後にした。

 陛下は俺に対して、まだまだと言いたいらしい。

 裏の言葉はきっとこうだな。


『学びたいなら言え。いくらでも協力してやる』と。


 まぁ、保留と言ってお断りするがな!

 今更だし、最悪は皆に教えてもらうから良いのだ。

 人これを問題の先送り、又は、諦めと言う。

 どうせ身につかないのだから、気にしても仕方が無い。


 てなわけで、陛下が用意してくれた馬車に乗り、シャミット商会とスペランザ商会に立ち寄る事にした。

 最悪の場合を伝えるためにだ。


 先にシャミット商会へと立ち寄る。

 王家の馬車で。

 当然、店員は慌てるわな。

 ただな、前に何回もあったし、いい加減慣れてくれ。

 ただ、シャミット商会会長であるベガドリオの父とベガドリオ本人は「またか…」って顔をされた。

 ちょっと酷くね?


 で、二人に話をする。

 するとスペランザ商会も交えようと言う話になり、迎えに行くことに。

 王家の御者よ、すまん…。


 スペランザ商会会長であるブラガス父を拾い、王家の馬車は4人を乗せて我が家に到着。

 御者殿に陛下へのお礼を渡し、帰ってもらった。

 お礼の中身?俺特製のお菓子詰め合わせです。

 作ったのは俺じゃないけど、前世の知識を利用したお菓子なので、俺特性でも問題無いだろ。

 そして、応接室ではなく、執務室で話をすることに。

 話の内容的にブラガスも交えて行う事にした。


「でだ、陛下から早くしろって言われた」


「どこから突っ込んで良いのやら……。お館様は、何時の間に陛下と友になられたのですか?」


「ブラガスを雇う前だな。ナリア辺りなら知ってるから、聞いといて」


「わかりますか父上? これが頭痛の原因です」


「失礼だぞ、ブラガス。気持ちはわかるが……」


「君ら、何気に失礼。でも、そういう所は親子って感じがするな」


「それで、具体的にはどうするんですか?」


「裏技を使う予定なんだが、そうなるとシャミット商会が一番損をするから相談だな」


「我が商会の利益を考慮して頂き、ありがとうございます。それで、裏技と言うのは?」


 と言う事で、裏技を暴露!

 と言っても、そんな難しい話じゃない。

 空間収納内に入れっぱなしの食材を開放するだけ。

 但し、市場相場が可笑しくなるので、慎重になってたんだよな。

 その事を話すと、予想外の答えが返ってきた。


「なんでもっと早くに言って下さらないのか……。我々の苦労は一体……」


「その話が聞けてれば、物資調達はかなり楽だったのに」


「お館様、報連相はしっかりと行って下さいませんと」


「え? なんで俺が悪いみたいになってんの?」


 全員から思いっきり呆れられた。

 その理由を聞くと、納得した。

 うん、俺も自分が馬鹿だと思ったわ。


「お館様から買い取り、それを物資調達に混ぜれば良いわけでして。書類上の金銭やり取りだけで良かったのですよ」


「戦費は帝国持ちでしたか? 向こうも精査はするでしょうから、可笑しな部分は突っ込んでくるでしょうが、この件は流石に支払うかと」


「食料関係を気にしなくて良いのは楽ですからなぁ。そうなれば、他の物資調達に時間が割けましたし」


「うん、俺も馬鹿だとは思うから、そんなにイジメるな」


 てなわけで、物資調達は今日中に終わると言われた。

 食料に関しては相場などもあるので、空間収納から一度取り出し、どちらがどの程度買って、どれくらい掛かるかを試算。

 それをブラガスが書類に纏め、戦費として計上する。

 何か物凄く遠回りをした気分だ。


 昼前にはその作業も終わり、各国からの参加者資料を目に通そうとしたところで、スマホもどきが鳴る。

 お相手は皇王。

 何かトラブルが?と思い出てみると……。


「盟主殿か? こちらは準備が出来たぞ。送ってくれ」


「は? マジですか?」


「大真面目だ! まさか、出来てないなんてことは……」


「早過ぎです! ちょっと待っていてください。30分以内に行きますから!」


「早く頼むぞ」


 皇国、まさかの一番乗りである。

 俺のプランが台無しなんですが。

 アルバを迎えに地竜族の集落へと向かう。

 地竜の里へ行ったことは無いが、RE・コードを使えば無茶も可能となる。

 詳しくは省くが、座標位置は特定可能なのだ。


 地竜族の集落へ行くと、先に念話をしていたのでアルバが出迎えてくれた。

 一定年齢以下の竜は参加を見送るが、それ以外の竜はあらかた参加する。

 特に地竜では珍しい空戦タイプの参加があったのは僥倖だった。


 話もアルバが纏めてくれていたので、参加する地竜をゲートで皇国へと送る。

 皇国にも予め話はしていたので、混乱は少なく済んだ。

 混乱が無いわけでは無いがな。

 そして現在、皇国の城内にある会議室にいるのだが……。


「ですから! こちらにも段取りがですね!」


「どうせ進軍には時間が掛かるのだ! 先に出ても問題無いだろうが!」


「物資はどうするんですか! 兵に飢え死にしろと!?」


「幸いにも、空戦竜がおるではないか! 補給は空戦竜に任せ、陸戦竜は兵と共に先に出るべきだ!」


 会議室に怒号が飛び交う。

 この会議室には、俺と皇王だけでなく、大臣や将兵などもいる。

 そんな彼らは、冷や汗を流しながらこちらを見る。

 その視線は畏怖と尊敬。

 彼らの目はこう物語っていた。


(あの皇王陛下とタイマンを張れるだと!?)


(クロノアス卿は恐れを知らぬのか!?)


(クロノアス卿、何とか譲歩を引き出して下され!)


 等々。

 皇王は恐怖政治ではないが、効率と正論に加え、その怒号によって誰も何も言えないのだ。

 高圧的ではあるが、きちんと話せば分かる相手なのが皇王。

 だがこの世界では、身分があるので、それが中々出来ない弊害があった。

 そんな訳で、皆さんの見る目が縋るようになっていても仕方が無いのだ。


「はぁ、わかりました。但し、帝国領内へは明日に侵攻してください。目的地は……」


「白竜族の里だろう? 言われなくても分かっておる。接敵したら勝手にやるぞ?」


「それで良いですが、降伏した者を勝手に処刑しないでくださいね。処罰を降すのはあくまでも帝国皇帝です。それと……」


「略奪行為の禁止だろ? 徹底させるわ! お前らもわかってるな!? 部下の失態はお前らの失態だぞ!」


「はっ!!」


「それと、降伏してからの騙し討ちについてはこちらで処分する。そこは譲れんぞ?」


「わかりました。そこは飲みましょう。皇帝にも取り成します。但し……」


「被害は最小限で切り抜けろ。連絡は密に。独自行動は控えろだろう? 白竜族の里を守った後は、ある程度西に進める。威圧は大切だからな」


「物資との相談。強行はしないでください。侵略戦争ではないのですから」


「くどい! 言われずともわかっておる! お前らも分かったな!? あくまでも第一目標と最終目標は同じだ! 白竜族の里を敵から救う事が目的だ! わかったら返事をしろ!!」


「はっ! 仰せのままに!!」


 と言った感じで会議は終了し、ゲートで帝国故郷付近まで送る。

 かなりの大軍なので、30分以上掛ったがな!

 そういや、会議終了時に、将兵さんたちからお礼を言われた。


「ありがとう。あそこまで明確に言ってくれて。皇王陛下は民思いの素晴らしい方だが、野心は持っているお方なのでな。明確にしてくれたおかげで助かった」


「物資に関しても、何とお礼を言って良いのやら。明日に進軍は、なるべく物資を届けさせるためだろう? 本当にありがたい!」


 等々。

 皇王よ、もう少し将兵さん達の苦労を分かってあげて。

 その願いが届いたのかわからないが、物資に酒が含まれていたと後で聞いた。

 兵達は大層喜んだそうだ。



 皇国での仕事を終え、竜王国へと向かう俺。

 オーディール王へ事の顛末を説明しに行くと……。


「あの王は……。それで、こちらの予定も繰り上げか」


「ええ。こうなっては全て今日中に終わらせる必要があります。なので、食料に関しては俺のを解放しようかと」


「それでしたら、軍2万は直ぐに動かせる。竜様方も既に搬送の準備は出来たようですし」


「火竜族はゲートで連れてきますよ。先に風竜族と事を進めておいてください」


「わかった。でだ、グラフィエル殿は納得しているのか?」


 納得……婚約者達の参戦か。

 半分納得はしていない。

 だけど、彼女らが望むのであれば。


「納得はしてません。ですが、彼女たちの想いを踏みにじるような事は、極力したくありません。未知数な敵はいますが、その分、俺が頑張れば良いだけですから」


「そうか…ラナは良い男に嫁ぐのだな。娘をよろしく頼む」


「頼まれました」


 こうして竜王国でやることやって、後にした。

 神聖国も似たような話なので割愛させてもらおう。

 強いて言えば、会議に入る前に祈られたことだろうか?

 勘弁して欲しい。


 ランシェスに戻ると、屋敷の前に複数の人間がいた。

 いや、人間と妖精族と亜人。

 時間は夕刻前。

 一体何の用なのだろうか?


「どうしましたか?」


「クロノアス卿、待っていたぞ。陛下からの用事でな。お客人を交えて話さねばならぬことがな」


「将軍がわざわざですか? かなり一大事です?」


「とりあえずは、中で話したい」


 そう言われたので屋敷内へ案内する。

 今回は応接間での話し合い。

 全員が座り、ナリアがこの場を取り仕切る様だ。

 ナリアが取り仕切るか……少しきな臭い話か?

 ナリアはこう言った事には鼻が利く。

 多分、間違いないと思う。


「それで、どういったお話で?」


「クロノアス卿が言われた、亜人軍の話なのだが、想定よりもかなり少ない」


「どの程度で?」


「その件でこの方達を連れて来たのだ」


「はぁ~い。久しぶりね、ラフィ」


「ヤナ? え? どうしてここに?」


 突然の登場に戸惑う俺。

 と言うか何年ぶりだ?

 今までどこで?何をしていたのか?

 だがそれよりも今は……。


「その話は後ね。いえ、一部だけは話さないと駄目かしら。私達はね、皇女殿下様方を護衛してきた、と言えばわかるかしら?」


「……メンバーに転移陣を使える奴がいるな?」


「流石ね。ついでに言えば、皇帝直々の依頼と言えば分かるかしら?」


「なるほど……。あの人も食えないな。わざわざ俺と繋がりのある人物に依頼か。どうせ、今のメンバーに転移陣が使える情報も拾っていたんだろうよ」


「あら? 大正解だけど、少しは貴族らしくなったのかしら?」


「うっさいわ! んで、今回は転移陣で誰を連れて来たんだ? その依頼も俺と関わり合いのある人物なんだろ?」


 俺の言葉に驚く様子もなく、頷くヤナ。

 そして、フードを取った人物について、逆に驚く。

 そこにいたのは、レラフォード代表だったからだ。


「申し訳ありません。しかし、事は急を要すると判断したので」


「となると、もうお一方は亜人の方。それも相当な権力をお持ちの方だとお見受けしますが?」


「バレとるのか。なるほどのぅ……レラフォードの言う事も存外、外れてはおらぬか」


 その言葉にイラっとするが、我慢。

 俺も我慢強くなったものだ。

 初めて会う相手に上から目線とか、舐めてんのかって話だが、キレていては話が進まないからな。


「で、そこのジジィは?」


「クロノアス卿!?」


「ほう、言ってくれるな小僧」


「初対面の相手に、上から目線かましたのはそちらでしょう。俺は相手を選んでやってるに過ぎません」


 その言葉の後、沈黙が辺りを支配する。

 睨み合う事数十秒。

 老人の亜人が先に折れた。


「すまなかった。そう言う意図が無かったにせよ、そう思わせてしまったのはこちらの落ち度だ。許して欲しい」


「わかりました。しかし、ジジィ呼びしたことは謝りませんよ? 正直、亜人の力が無くても作戦に支障はないのですから」


「わかった。それで良い。しかしレラフォードよ、お主の話とはやけに違うようだが?」


「彼の中では警戒されたようです。だから、あれほど言ったのに……」


「儂の落ち度か。甘んじて受け入れよう。それで話をしても良いかな?」


「どうぞ」


 老亜人の話はこうだ。

 戦闘型の亜人は調べた結果、かなり数が減っていたらしい。

 戦闘に参加出来る者はおよそ300人。

 その中から有志を募ったのだが、100人ほどしかいないそうだ。

 この老人の話は真実なのか?

 甚だ疑問が残る。


「それを素直に信じろと?」


「信じられんのも無理はない。だから話を聞いて欲しい」


「話とは?」


「そもそも、亜人の国があった頃の軍は獣人が幅を利かせておった。それだけ言えば分かってもらえるかの?」


「…………国があった頃から、戦闘型の亜人は数が少なかったと?」


「儂も見てきたわけでは無い。だが資料によれば、当時の軍は戦闘型亜人が最低でも5千人はいたと記録にはある。そこから時が流れて、数を大分減らしたのだと思う」


「そうですか。それで、暗部は何人いるのですか?」


 俺の言葉に、老亜人もレラフォード代表も驚く。

 少し考えれば分かる事だ。

 国としてあったのなら、当然だが暗殺部隊や諜報部隊はいると仮定しても可笑しい事ではない。

 カマをかけたが、どうやら当たりの様だ。


「見縊っておったわ。だが、暗部も精々20人ほどだ。そ奴らには別の任務がある」


「クロノアス卿、彼らは人質救出に戦力を割きました。獣人軍の戦力は微々たるものですが減るでしょう」


「それを信じろと? レラフォード代表には申し訳ないが、俺にはこの亜人がどうにも信じられない」


「何故ですか?」


「勘だが、この老人は何かを隠している。隠さなければならないほど重要な事なのか? それとも、こちらに含むところがあるのか? どちらにしても、信用が置けない」


 俺の言葉にレラフォード代表は顔を暗くする。

 対する老亜人は焦っていた。


(この小僧、獣じみた勘を持つと言うのか? レラフォードにはああ言ったが、儂は再建を諦めてはおらぬことを勘づかれた? いや、それはあるまい)


 老亜人は何かを考えている様だが、リエルの演算能力を舐めるなよ?

 RE・コードから数日の世界の記憶を読み込み、情報を精査。

 更にはこの老人の人生も精査。

 リエルが出した結論は……。


「この期に及んでまだ、国の再建を諦めていないか。最早、妄執に近いな」


「な!」


「何故それを! か? あまり俺を舐めるなよ? 精霊王の名は伊達や酔狂で得たものじゃない。レラフォード代表、悪いが亜人族の参戦は無しで行く」


「待ってください! 私が言い含めますから!」


「無理だ。この老人は一度、あなたと約束を交わしたのに裏切った。どうでも良い約束ならば、怒って終わりでも良いが、俺の大切な者達へ僅かでも害を及ぼすのなら、俺は遠慮しない。これだけは、何があっても譲れない」


 俺から拒絶されるとは思っていなかったのだろう。

 老亜人は相当焦っていた。

 だから俺は、未だにローブを深くかぶった人物へと話す。


「そう言う事で良いですね? ナイーファ様」


「バレておったのか。だから言ったじゃろう、余計な事は考えるなと」


「やはり、猫を被っていましたか」


「なんじゃ? それもバレておったのか? お主も存外、食えぬ男よのぅ」


「お互い様でしょう。まぁ、俺も言った手前、ナイーファ様、ファリジア様、従者2名の安全だけは確保しますよ」


「他の者達はどうなるのじゃ?」


「知りません。悪役っぽく言うならば、そこのジジィを恨んで死んで行け、ですかね」


「確かに、碌でもない言いかたじゃの」


 ナイーファ様と俺のやり取りに顔を青くする老亜人。

 彼は欲をかき過ぎた。

 亜人保護だけで手を打てば良かったのだ。

 だが、ナイーファ様は落ち着いているな。

 何かを隠しているのか?

 カマをかけてみるか……。


「それで、ナイーファ様も何をお隠しで?」


「我か? 何も隠しておらんよ。ただ、諦めておるだけじゃ」


「諦める?」


「お主、神獣様の主なのじゃろ? それも神狐様の。だったら抗うだけ無駄じゃ」


「何故、知っているのです?」


「この前の会議の後、ジョシカイなる物に参加したのだが、その話の中でな、神獣様方も参加したのじゃよ。我、普通に驚いたからな」


 おーーーい!何してくれてんの!?

 4神獣は後でお仕置きしなければ!

 だが、あいつらが出向くと言う事は何かある?

 じーーーっと、ナイーファ様を見つめる。

 ナイーファ様は顔を少し赤らめて視線を逸らした。

 更に見続ける。


「やめぃ! 話すから、無言の圧はやめてくれ!」


「わかりました。それで?」


「隠し事と言うか、嘘じゃの。我は王族の血縁ではない」


「その話ですか。知ってますよ、亜人の守護者さん」


 俺の一言に、初めて驚いた顔を見せるナイーファ様。

 何で知ってる?いつ知ったって顔だな。

 では、答え合わせと行きましょう!


「まず魔力。ファリジア様は普通でしたが、ナイーファ様は高過ぎます。隠してはいたんでしょうけど、隠しきれていませんね。次に神獣。何故、一目見て分かるのか? 普通は無理です。となれば、答えはいくつか出ます。そして、その答えに辿り着いたら、前の話は嘘だと分かりますよ」


「……喋り過ぎたか。致し方ないの。我は妖狐じゃ。起原は神狐様に属するが、長い年月なのでな。既に別の種として確立しておる」


「ファリジア様もご存じで?」


「あの子は知らぬ。周りが隠しておるからの。我は最後の王族の守護者じゃ」


 ナイーファ様が語り終えた後、先程の老亜人が驚き慌てる。

 何、この慌てよう?

 今の話に慌てる部分があったか?

 ナイーファ様が何やら聞いている。

 あ、こっち見た。

 何やら言いづらそうだな。


「あー、何と言って良いのか分からんが、このボケジジィ、我にも隠し事をしておった」


「ナイーファ様もジジィ呼びとか……」


「それで十分じゃ! この戯けが! ……結論から言おう。王家の血筋が他におった。兎じゃ。戦闘能力は皆無じゃが、危機察知能力はずば抜けておる種族じゃ」


「その一族に生き残りの子孫が?」


「うむ。我からの頼み事だが、その生き残りも庇護下に入れてやってもらえぬだろうか? 我の庇護下分をやっても良い」


「どうしてそこまで?」


 何故ここまで必死になるのか?

 そのことを聞くと言いたくなさそうにした。

 だが、話せねば無理と思ったのか?

 ナイーファ様は話始めた。


「我がまだ子供の頃、人間達の罠に掛かってな。その時、我を助けたのが王家の亜人じゃった。彼らは我を城まで連れて行き、手厚く看護してくれたのじゃ。元気になった我は、野に帰った。その時に約束をしたのじゃ。亜人国の王家の血は必ず絶やさずに受け継がせると。教育も我がすると。勿論、そのような日が来ぬと思っておった。じゃが、結果は……」


「だからそこまで。……良いでしょう。その者の庇護は約束します。ナイーファ様も。しかし……」


 それ以上は無理と言おうとした。

 それを言う前に、老亜人がソファから立ち上がり、土下座をした。

 その後に彼は懇願する。


「先程の非礼、お詫び申し上げます。私が気に入らぬと言うのなら、この命、喜んで差し出しましょう。ですから何卒! 同胞たちの庇護を! 全ては私の責任! 同胞は関係ありませぬ! 何卒ご再考を!」


 呆気に取られる全員。

 一体何があったら、手の平を180度返せるんだ?

 訝しむ俺を見た老亜人は言葉を続ける。


「正直、レラフォード殿から話を聞いた時、半信半疑でした。そして、盟主はまだ若いと聞きました。なれば政略結婚させてしまえば再建は可能だと。しかし、ナイーファ様のお話を聞き、貴方様の事を見縊っていたと。全て私の浅はかさが招いたことです。奴隷になれと言われるのならばなりましょう。死ねと言われるのであれば、この命、喜んで差し出しましょう。ですからどうか、同胞達には寛大なご処置を!」


「あー、わかったから。とりあえず、座ってくれ。つうか、座れ。んで、包み隠さず話せ」


「はい!」


 で、再度話を聞く。

 まず、戦闘亜人の数。

 これは嘘をついていた。

 実際には1000人ほど。

 但し、全種族合わせてらしい。

 つまりは暗部も含む。

 暗部の数も嘘だった。

 実際は100人。

 但し、戦闘亜人の数には入れているそうだ。


 で、こっちに参加する亜人の数。

 これについては本当。

 戦闘亜人全員が参加は不可能らしい。

 場所の問題。

 警備の問題。

 食料調達の狩り。

 心の問題。

 等々。


 どうやっても100人ほどしか無理らしい。

 では何故嘘を吐いたのか?

 答えは簡単で見栄だ。

 何ともアホ臭い話だ。


 だが、当初の予定とはやはり狂ってしまう。

 ランシェス軍は亜人を多少は当てにしていた。

 それが蓋を開ければ、少数である。

 こうなると、見直しが必要。

 そこで将軍に話を聞くのだが……。


「黒竜族を一体でも良いから動かせませんか? 陛下もそれならばと申しております」


「俺の仕事が増えるんですね?」


「申し訳ない……」


「ちょっと待っていてください」


 屋敷に客人を残し、聖域へとゲートを開く。

 話の結果、黒竜族は10体参加してくれた。

 いや、本当はもっと行けたんだが、流石にな。

 屋敷に戻って将軍に伝えると、彼は頭を下げ、小躍りして帰って行った。

 ただ、彼には一点だけ要求を呑んでもらった。


「黒竜族とは現地集合で。それだけは陛下に伝えて下さい」


「その程度でしたら、陛下は了承されるでしょう。ありがとうございます!」


 その後、客人たちは我が家に一泊していった。

 辺りも暗くなったしね。



 尚、ヤナたちも泊まっていった。

 夜には色々と積もる話もしたが、それはまた別の機会にでも……。

 ただ一つだけ。

 その夜は、貞操の危機を感じたとだけ言っておく。

 ヤナは変わっていなかったのだ……。

とりあえず、29日の祝日にも投稿します。

何話投稿するかは未定です。

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