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119話 ゼロの過去

ゼロが明かした最終目標




【自分を消滅させ、原初を継いでもらう】




その言葉に、頭の処理が追い付かなかった


重苦しい雰囲気が流れること数分、ゼロが過去を語りだした




「俺が何故、原初の世界からこの世界に来たか、わかるか?わからないだろう?俺も未だに、それが正しかったのか分からない。ただな、心が、思いが、俺と言う全てが、この世界に来るようにと動かした。だが、今でも正しかったのか、後悔しかなかったのか、わからない」




ゼロは初めて、己の心情をぶちまけた


俺は何も言えない


そんな俺を一目見てから、ゼロは話を続けた




「本当に、ただの偶然だった。偶々、世界を覗いたんだ。そして、そこに移った女に惚れた。これが、世界に降りた理由だ。なんとも微妙だろう?」




「そんなことは無い」




「ふっ、そうかよ」




好きな女が出来た


だから、干渉を始めた


神としては禁忌に近い


しかし、人としてなら、その気持ちはわかる




「俺はな、その女を俺の物にするためだけに、原初の力を更に分割したんだ。いや、違うな…徹底的に削ぎ落したが正解だな。元々、完全記憶媒体アカシックレコードを作るのに、原初の力を減衰させて作ったりはしてねぇ。じゃあ、何に力を注いだと思う?」




「神刀・ゼロか?」




「半分正解だな。あれは、俺が持つ力の半分を注いで作り上げている。じゃ、残り半分は?」




「わかるわけないだろ」




そう、わかるわけがないのだ


そもそも、原初の力がどれほど凄まじいのか、俺は知らないのだから


片鱗は使えても、全てを使えない俺に答えは出なかった




「そうか、わからねぇか。まぁ、そうだよなぁ。なら、答え合わせだ。正解は〝半分しか削げ落せなかった〟だ」




「それだと、世界に干渉するんじゃないのか?」




ここは茶化さない


そう言う雰囲気ではないからだ


唐突に、シリアスさんがやってきていた




「ああ。だから、己の内に封印してある。正確には、干渉率が一定を超えない力しか引き出せない様にした」




「そこまで、惚れたのか」




「良い女だったからな。これに関しては、悔いは無いな」




本人が良いと言ってるのだから、きっと最善の判断だったのだろう


あれ?でも、今は封印されてるようには見えないんだけど




「なぁ、今も封印しているのか?」




「していない。俺の原初としての力は、あれに詰め込んだ」




そう言って指したのは、あの戦艦だった


とんでもない物に力を注いだものだ




「勘違いしている様だから、一つ言っておく。あれに注いだ力は、精々1割ほどだ」




「ちょっと待て。なら、残りの4割は何処に行った!?」




俺の質問に少し黙り込んだ後、葉巻を取り出して吸うゼロ


何かを考えているのか?言うのが躊躇われる内容なのか?


葉巻を中ほどまで吸った後、衝撃の一言が出る




「残りの4割は、俺の子供に継がせた。今の俺は、原初の残り滓だ。人類最強格なのは変わらねぇが、原初としての能力は、ほぼ使えなくなった。当然、神界へも行けねぇ」




「ゼロ…お前……」




「悔いは無い。今、この場に、原初神格を継げる者が現れたんだからな」




俺は何も言えなかった


……ん?待て、今なんて言った?




「ちょっと待て。誰が何だって?」




「お前が、原初を継ぐ者だと言ったんだ」




「はぁ!?なんでそうなる!」




ゼロは再び葉巻を吸う


全て吸い終わり、二本目に火をつける


一息吸った後、遠い目をしながら、昔語りを始めた




「俺が好いた女は、ツクヨ=カシマって名前だった。長い黒髪で綺麗な顔立ちの、外見からして良い女だった」




「惚気か?」




「まぁ、聞け。ツクヨはな、傭兵だったんだ。大太刀の刀一本で相手を斬り伏せていく。その姿は圧巻でもあったが、同時に見惚れてしまう剣舞でもあった」




「やっぱ、惚気じゃねぇか」




人の惚気程、真面目に聞いてると『リア充、爆発しろ!』と言いたくなってしまう


これは、全非リアの総意だと思う


ゼロは苦笑しながら、話を続ける




「まぁ、そんな女に惚れたわけだが…当然、相手にされなくてな。振り向かせるために必死になったさ」




「フラれたのか…」




「初めはな…そこから、時には味方、時には敵として、戦った。何時からだったかは定かじゃねぇが、お互いに楽しむようになっていた。だが、終わりは唐突に訪れた」




「…………」




「彼女のいた傭兵団が裏切りにあってな。絶体絶命の所に、俺が切り込んで、どうにか助け出したんだ。だが、傭兵団は多大な被害を負った。結果として、傭兵団は解散となったんだ」




「そこで、惚れられたと?」




「まさか。あいつはな『何で助けた!?私は、最後まで戦い抜きたかった!』と言ってな。大分嫌われたさ」




「Oh…ご愁傷様、デス!」




「茶化すな!」




怒られてしまった


でもさ、話が見えないんだもの


はよ、確信話せ!




「はぁ、まぁとにかく、そこからは二人で行動をしていたんだ。俺はフリーの傭兵だったからな」




「ボッチだったのか」




「やかましいわ!…話を戻すぞ?そんな中、子供達だけで住む村を見つけてな。少しの間、その村に住んでいたんだが、俺達がいない間に、野盗に襲われてな。子供達は全滅、村は焼かれていた」




「気分の良い話じゃないな」




「その通りだな。彼女は子供好きだったんだ。その光景を見た彼女は、珍しく泣いていたよ。で、俺はそんな彼女に墓を作ることを任せたんだ」




「酷い男だな」




「うっせぇ!ちゃんと理由があんだよ!…ごほん、彼女に墓を任せて、俺は野盗共を探した。奴らは、直ぐに見つかったよ。そして、皆殺しにした。それを彼女に報告したらな」




『罪に罰は必要…でも、貴方がその業を背負う必要性は無い』




「とまぁ、説教半分、慰め半分って形になってな。そこから、二人で色々と話したり、各地を巡り始めたんだ」




ふむ、野盗は二人のキューピッドになったわけね


その代償は、ゼロから皆殺しの刑だったわけだが


何とも間の悪い野盗だな…南無南無




「そして、そこから2年が過ぎた頃、俺はツクヨに自分の気持ちを伝えた。彼女も、俺を受け入れてくれた」




「良かったじゃんか」




「ありがとうよ。でだ、俺達はとある街の郊外に家と店を構えたんだ。初めは苦労も多かったが、幸せに暮らしていた」




ゼロにしては意外だなと思ってしまう


俺のゼロへの印象は傍若無人・唯我独尊ってイメージだからな


本人も否定はしてないから、余計にだ


……もしかして、そうなった理由も過去にあるとか?




「店も軌道に乗った頃、俺達は夫婦になった。半年後、子供を授かった。ここまでは、順風満帆だった…」




ゼロの顔が暗くなり、歪む


一体、何があったと言うのか?




「子供を授かってから、更に半年後、彼女は…ツクヨは殺された。物取りに見せかけた暗殺者共に」




「え?」




思わず声を出す


ゼロにそんな過去が…と


しかし、ここから聞く話は、壮絶だった




「彼女は傭兵だった。当然だが、恨みも買っていたんだ。勿論、俺もだな。当時、俺達は大国に逆らう形で傭兵をしていた。引退した後も、快く思わない連中が多かったんだろう。ただな…あいつらが、彼女に何をしたかわかるか?」




「いや…」




「殺しただけでは飽き足らないのか、呪いをかけやがったんだ!それも、禁呪である魂に呪いをかけ、未来永劫に続く呪いをな!」




「それは…」




言葉が出てこない


もし、俺が、ミリア達にされたら…


……間違いなく、世界を壊しにかかるだろう


俺が出した答えに、ゼロは頷き




「お前と同じだよ。俺は世界を破壊しにかかった。怒りと絶望の果てに、大国はその存在をこの世界から消滅させた。今、見つかっている古代の遺物は、その頃に作られたものだ」




「だが、世界は続いている。ゼロは何をしたんだ?」




「彼女の亡骸を、産まれる筈だった子供と一緒に埋葬し、大国相手に一人で戦い、この世界の国を全て破壊した。今の世界に、古代王家の血筋を持つ者は一人もいない。ただな、人類全てを粛正したわけじゃねぇ。途中でジェネスたちとガチ戦争したからな」




まさかの神話大戦が勃発していた


これは完全に予想外でやらかし案件だろ


強いて言えば、闇落ち原初VS神達であろうか


それにしても……ジェネス様達は、良く止めれたな




「当時、俺の力は1割しかなかったからな。ギリギリ何とかなった形だ」




顔に出ていた様で、ゼロは補足説明をしてくれる


俺って、顔に出やすいのかね?




「全てを終わらせた後、俺は彼女と再び出会う為、彼女の魂を保管した。だが、想定外の事が起こった」




「想定外の事?」




「さっき、呪いをかけられたと言ったな。それには続きがある。俺と彼女が余程憎い奴がいたのか、複合でかけやがったんだ。結果、彼女の魂から呪いを取り除こうとしても、魂と結合し、複雑に絡み合って、俺を始め、神達でも手の施しようが無かった」




「ちょっと待て、それは神滅級以上と言う事か!?」




「正確に言えば、原初魔法に近いレベルだな。一つ一つはそうでもないが、複合させて複雑化したのが悪かった」




「それで、その魂は?」




「…………気付いた時には、既に手遅れだった。何度か転生をし、幸せの絶頂で必ず死に至る。そして、死ねば死ぬほど、呪いは強固になっていく」




「そんな……」




絶句…それ以外には出なかった


そして、それだけの呪いなら、魂の摩耗は激しいはず


最終的には消滅するレベルの筈だ


ゼロが何も手を打たないはずはない


そう考えた通り、ゼロは手を打っていた


但し、最低限の方法で




「彼女の魂を守る為、俺は自身の内に彼女の魂を封印した。とりあえず、呪いの進行は止めた。だが、そこまでだった」




「原初なら、どうにかできたはずじゃ…」




「全盛期ならな。原初の抜け殻程度じゃ、どうにもならなかった。だから俺は、最後の賭けに出た」




「それが…原初の継承……」




ゼロ自身を生贄に捧げて、ツクヨ=カシマの救済を行う


気持ちはわからなくもない


俺だって、同じような事になれば、そうする可能性があったから


しかし、自己犠牲は偽善と訴える俺もいる


だからこそ、この質問をせずにはいられない




「原初の継承は理解したけど、何故、ゼロの消滅が必要なんだ?」




「原初は常に一人。複数人居てはならない。それに……お前なら、きっと……」




ゼロは言葉を濁す


このパターンは、まだ何か隠しているな?


ここまで聞いたなら、全て聞かないと納得できない


俺はゼロに説明を求める


しかし、ゼロは語る気はない模様




このままでは埒が明かない


卑怯だとは思うが、最終手段を取る


……俺は、物凄く酷い人間だろうな


罪悪感が生まれるが、それを飲み込む




「語らないなら、原初は継がない。そのまま、何も無し得ずにくたばれ」




「…………そこまで言うか。てめぇ、覚悟は出来てるんだろうな?」




「覚悟?原初の使徒を押し付けて、覚悟も何もあるものか。ここまで聞いたんだ。やれることはやってやる!」




「そうか……なら、話してやるよ」




「おう!何でもこいや!」




この後、俺は物凄く後悔した


『聞かなければ良かった』と


ゼロよ……あんたの言葉は正しかったよ




「結論から言うぞ。お前は、俺とツクヨの間に産まれる筈だった子供の魂が転生を繰り返した存在だ。生まれながらにして、原初の継承者だったんだよ」




「はい?」




「可笑しいと思ってな。本来は禁忌なんだが、神界で魂の記録を辿った。腐っても原初だからな。辿るだけなら出来るのさ。逆に言えば、それだけしか出来ねぇけどな」




「え~と、それはつまり……」




「俺は、お前の父親も同義って事だ」




「…………」




いや、マジで聞かなきゃ良かった


ゼロが俺の父親?御免被りたい!


あれか!俺がこんな性格なのは、ゼロのせいか!?




「あのなぁ、全部俺のせいにすんじゃねぇ!」




「そうとしか考えられないだろうが!」




この後数分、お互いの罵り合い?が開催される


端から見れば、似た者親子と言われる、不毛な争い


お互い、言いたい事を言い終え、一息つく


そして、更なる衝撃が言い放たれる




「と・に・か・く!お前は原初を継げ!」




「断る!ゼロの敷いたレールに、これ以上は乗れるか!」




「お前が継がないと、世界が壊れるだろうが!」




「ちょっと待て!何サラッと重大発表してくれちゃってんの!?」




「あん?お前、神喰と生命神の板挟みだろうが」




忘れてた


ゼロの話が重すぎて、完全に頭から抜けてたわ


そうだよ……この先、神喰戦は避けて通れないんだった


しかしなぁ……ゼロを生贄にはなぁ




「ゼロが消滅しない方法は?」




「あるにはあるが、ツクヨの救済が出来ねぇ。だから、却下だ!」




「……つまり、ゼロの嫁さんが救済出来れば、消滅はしなくて良いと?」




「出来ねぇから、言ってんだけどな」




「諦めんのか?」




「……正直な、もう、疲れちまったんだよ。魂を保護して、1万年以上、出来る事は全てやった。他に手立てが残ってねぇ」




「さっき、ツクヨ=カシマと出会ったのは1万年以上前って言ってなかったか?」




「そこから前は、覚えてねぇからな。滅びた国なんざ、覚えていてもどうしようもねぇだろ?」




歴史学者が聞いたら、怒りそうな言葉であった


ただ、どちらかと言えば、ゼロの意見に賛成だったりする


俺は、過去を顧みない男なのさ!


……厨二病患者っぽいので封印しよう




「はぁ…話を戻そう。それで、ツクヨ=カシマの救済が、ゼロの消滅とどう関係するんだ?」




「簡単さ。俺とツクヨは消滅して救済される」




「……あほらし」




「なんだと?」




「あほらしい、と言ったんだ。消滅が救済?ふざけんなよ。俺は絶対に認めない」




「だったら、どうするんだってんだ?」




ゼロの声音が、物凄く冷たくなる


しかし、何故か怖くは無かった


代わりに湧き上がる感情は怒り


ゼロはこうであってはならないと言う、勝手な願望


だから俺は、ニヤリと笑って言い放つ












「救ってやるよ。ゼロもツクヨ=カシマも。俺の全てをかけてな」

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