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幕間 陛下と王妃の内緒話

収穫祭が始まり、数日が経った頃、余とリアフェルも少しの休暇を満喫していた


とは言え、書類仕事や謁見が無いだけで、王族としての話し合いはあったりする


そして今は、フェリックでの報告と話をしているところだった




帰国して約2か月


何故今になってなのか?


それは、貴族派閥と王族派閥の中でも過激派の槍玉が激しかったせいだ


事後処理もあり、二人揃って忙しく、ようやく落ち着いて話が出来たのが今であった




夜もあっただろうと言われるが、夜は夜で色々とある


王太子である息子の結婚式の準備に、各妃達や貴族家との話し合いに、大臣たちからの報告書


王になって何度となく思った事は




「(王になぞ、なるもんではないな・・・どこかに余を分裂や分身させる魔法はないものか)」と




当然、そんな魔法も魔法薬も無いので、どうしようもないが


結果、余とリアフェルの時間が合わず、収穫祭中になってしまったわけだ




久しぶりに二人きりで落ち着いて話す余とリアフェル


だがその話も仕事からは抜け出せないでいた




「友好国とは言え、良くあの皇王が認めたものだな」




「だから言ったでしょう?あの皇王なら話に乗ると」




リアフェルが誇らしげに答えるが、余としては意外だったという気持ちが今も拭えない


彼かの皇王との付き合いは長い


幼少期には遊んでもらった相手だ


故に、その考え方も気性も理解している


そんな皇王が、良く我らの賭けに乗ったものだ





フェリックにリアフェルが交渉へ行く前に余と話を・・・いや、言い合いをしていたことを思い出す





フェリックに行く半月前、余とリアフェルは意見の相違から珍しく対立していた


どちらも国を思っての事ではあるが、リアフェルはグラフィエルに入れ込み過ぎなところがあった


その為に話は平行線上になった




「ですから、ルテリーゼ王女をクロノアス卿の婚約者にすべきです」




「彼は独立した貴族家の当主だ。王家からの婚姻相手が我が国の貴族家ならまだ良いが、他国となっては離反の理由になる」




「彼なら離反しませんよ。それに・・彼にとっても悪い話ではありません」




「その根拠はどこからくる?百歩譲って離反しなくても、他国からのスパイが入り放題ではないか。泳がせている者もいるが、これ以上は消さねばならんぞ?」




尤もらしい意見を述べてはいるが、実情は少し違う


現在泳がせているスパイは、神聖国、竜王国、神樹国を除く国


ダグレストに至っては、大部分を消している状況だ


しかし、だからと言ってこれ以上のスパイは対応するのが難しくなる


特に友好国フェリックと同盟国ガズディアについては、要警戒を解けない状況だ




「お主は、クロノアス卿に全てを押し付ける気か?」




余の言葉に反応したリアフェルは「その質問を待っていました!」とでも言う様に、反論を開始する




「あなたがそれを言うのですか?同盟に関しては彼が中心でしょうに。それに・・帝国がこのまま大人しくしているわけがありません。牽制と序列確保は必須です」




「他家の妻の序列に口を出す王家が何処におる!」




思わずテーブルの上に拳を叩きつけ、声を荒げる


他家の家庭内に介入など、傲岸無恥も良いところだ


だが、余の反応を見てもリアフェルは引かず反論




「普通の他家ならそうでしょう・・ですが、クロノアス家は少し事情が異なるのでは?それがわからぬ王ではないでしょう?」




「それでもだ。本人の意思を無視して他国の者と政略結婚など認められん」




「今、手を打たなければ、近い将来に痛い目を見るのが分かってたとしてもですか?」




「・・・・・」




流石は我が正妃


情報は正確に入手済みか


しかし!その先が茨の道でも引けぬこともある




「そうであっても、それをどうにかするのが王族だ」




意思を曲げることなく、決意を述べる


この話は今に始まった事ではない


もう何か月も同じやり取りをしている


お互いに一歩も退かず、論議していた




「仮にその情報が欺瞞工作だった場合、こちらが痛い目を見るぞ?」




リアフェルにそれとなく探りを入れてみる


正直、余とリアフェルではリアフェルの方が先を見通す事に長けている


そう言えば、フェリックのルテリーゼ王女もリアフェル並の切れ者だという話だったな


とここで、リアフェルが爆弾を落とす




「あなたは何処まで知っているのですか?」




「何の話だ?」




どの話だ?情報の事か?グラフィエルの事か?


どちらにしても、最新の情報は入手しているが


リアフェルを見つめ返し、問いただす


その様子にリアフェルはこう返してきた




「帝国の動乱は、避けられません。これは確定情報です。それと、ダグレストも水面下で何やら画策していますね。それによって、フェリックも面倒な事態になっていますよ」




「何だと!?・・・いや、帝国とダグレストは理解できるがフェリックもか?」




「フェリックの情報は届いていないのですか?」




「聞いてはいる。だが、あの皇王なら取り込むであろう」




「対処にあたっているのは、皇太子殿下だそうですよ」




「・・・その情報は信用できるのか?」




「ええ。かなりの精度ですよ。尤も、私のお小遣いが大分減りましたが」




ランシェス王国は年金制で、王の年金は大白金貨5枚に及ぶ


それだけの高額年金でも国が回るのだから、王族が如何に金食い虫の一族かがわかる


パーティーを開けば、最低でも白金貨2枚は確実に消えるのだから


妻達の年金は大白金貨2枚


それをどの程度使ったかは知らぬが、妻の顔から察すると相当に消費したことが伺える


となれば、状況は変わる・・変わるのだが




「しかしな、王家から他国の王女を娶れとは言えんよ。それこそ、内乱の火種になりかねん」




「では、内乱の火種にならなければ良いのですね?」




「・・・今度はどんな悪だくみだ?」




思わず溜息を吐きながら言葉を返す


対するリアフェルの顔は、悪巧みの成功が確信したかのような笑顔であった




「簡単ですよ。こちらからではなく、向こうから是非に・・と、言って貰えば良いのですよ」




「あの皇王が言うとは思えんな」




「ですから、私達は賭けをします」




「・・・そう言う事か。あの皇王が好みそうではあるな。個人での評価など、どうでも良い事ではあるし、あの皇王がどちらの方に着くかは見ものではあるな」




「もう一つありますよ。皇王がグラフィエルをどう判断するか?と言うのもわかりますし、同盟参加への打診もしやすいでしょう」




「グラフィエルを騙している気分になるな」




「それは・・・何かで報いましょう。それに、避けては通れません」




「同盟の中心人物がグラフィエルだからか?」




「ええ。どちらにしても、皇王が指を咥えてみているとは思えません。彼を守るためにも、汚名は被るしかないでしょう」




「入れ込み過ぎだ。で、その後も予測しているのだろう?」




余の言葉にリアフェルは頷き、その後の予測も話始める




「帝国は内乱状態になります。それも、奇襲・・・と言う形で。首謀者は前皇太子ジルニオラ・ザズ・フィン・ガズディアで間違いないでしょう」




「余もそう見ている。しかし、皇帝が見過ごすとも思えんが」




「皇帝も読んではいるでしょう。ただ、こちらもそうですが所在が掴めていませんから」




「後手に回るしかないか。早ければ冬に事を起こすか?」




「私は冬が空けて直ぐだと予想していますが、こればかりは読めませんね」




お互いに溜息を吐き、思案を始める





そして、現在


余とリアフェルはお互いの情報のすり合わせを行っていた




「皇国は同盟に参加。ルテリーゼ王女はグラフィエルの妻か」




「まだ婚約者ですよ。まぁ、想像通り汚名は被る事になりそうですけど」




「皇王には余は反対、リアフェルは賛成と伝えたのか?」




「ええ。それもある程度は開示して」




「・・・どこまで話した?」




余はリアフェルを威圧して問いただす


グラフィエルの情報は出来る限り秘匿しなければならない


もし、不必要な部分まで語ったのなら、正妃であれ処分を言い渡せねば、他の貴族にも示しがつかぬからな


だが、リアフェルの返答は気の抜けたもので




「私とあなたの内緒話を所々ぼかしてですよ。あの子の情報は自分で見せて良い部分しか見せてないと思いますが・・・ただ、想定外な事もありましたから」




「ダンジョンの異変か・・・そこに関してはどうだったのだ?」




「かなり危なかったようですね。隠したい部分もあったのでしょうが、話させました。但し、誤魔化すところは誤魔化していたようですけど」




「そうか・・・俺は罪深いな」




「王とは強欲で罪深く、民と国を栄えさせてでしょう?」




「・・・そうだな・・・・もし、俺が私利私欲に走ったら止めろよ?」




「ふふふ・・・あなたに限ってそれは無いわよ」




今の二人は、王と正妃から夫と妻の会話へと変わっていた


しかし、それもつかの間


二人は王と正妃に戻り会話を続ける




「それで、皇王は何と言っていた?」




「あの皇王が負けを認めたわね。『俺の目も耄碌したものだ。彼にならルテリーゼを嫁がせても悔いはない』ですって。あの狸皇王にここまで言わせるとは思わなかったわ」




「余も驚きだな。化かし合いは此方の勝ちか」




「同盟参加も問題無し。それと、帝国の情報とダグレストの事も話しておきましたよ」




「それは重畳」




近い将来、帝国での内乱は必須


それが意図する事とは?・・・同盟国への救援要請だ


そしてもう一つの懸念


帝国内乱に応じて、ダグレストが動く事


そうなれば、傭兵国とリュンヌも動く可能性が高い


そして、世界は一気に戦争状態に移る




余とリアフェルはお互いに思案し、一つの答えを出す




「ダグレストには王国軍と辺境伯軍にフェリックからの牽制でやるしかないか」




「傭兵国には神聖国と竜王国が動くとして、問題はリュンヌね」




「どう動くか、まるで読めん」




「軍備増強はしているみたいだけど、帝国への備えの可能性もあるわね」




「若しくは、内乱に乗じて侵略するかだな」




「神樹国が牽制してくれれば良いのだけど・・・無理ね」




「あの国は、防備は優秀だが牽制には不慣れだ。軍も無いしな」




「そうね。そして、一番の懸念は・・・・」




「旧獣王国の者達が混乱に乗じて、動き出す事か。武装などは反乱軍が流すか」




「最良なのは、ダグレストが動かない事ですが・・・」




「淡い期待だな・・・動かない理由もないしな」




揃って溜息を吐き、その後も情報のすり合わせをしながら時間が過ぎていく




翌日、王城にグラキオスからの緊急用件が届き、余らは更に苦労する羽目になる


今度クロノアス卿に分身や分裂できる魔法や魔法薬が無いか、本気で聞こうと思う

この幕間は本来作成予定の無かった話です


読者様から指摘を受け、急遽執筆したものになりますので、どこかおかしい部分があるかもしれません


良ければご意見・ご感想下さい

もしかしたら、修正するかもしれないので

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