90話 大規模ダンジョン攻略戦・準備編
この話数から、複数話分割となります
勇者(偽)(笑)一行と再会してから5日が過ぎた
冒険者ギルドの執務室で八木、姫崎、春宮の三人と話をし、情報収集した後、俺は婚約者達とフェリックでデートを楽しんでいた
勿論、ギルドで話した内容は、フェリックに伝えた内容と同じ事をリアフェル王妃にも伝えてある
翌日からは、毎日誰かと交代でデートし、本日は婚約者全員とデート中である
そして現在、俺はとっても不機嫌だった
デート中に勇者一行(笑)に出会ったためだ
ただ出会っただけなら不機嫌になどなりはしない
来栖と阿藤は俺の目の前で婚約者達を口説きにかかった
全員が美女・美少女なので口説きたい気持ちは分かる
特にミリアは、その・・な・・・
胸が凄くて他が細いと言う、男ならば誰もが見てしまうプロポーションに加え、美少女なのだ
「(口説きたくなるのは仕方ない・・・口説きたくなるのは仕方ない・・・)」
ここで少しイラッっとはしたが、気持ちがわかるので我慢する
色々と俺の事を貶してボロカスには言っているが耐えた
だが次の行動に、俺はブチっと何かが切れて、行動を起こした二人の胸倉を思いっきり掴み、持ち上げた後に手を放し、僅かな滞空時間の間に腹に蹴りを入れて吹っ飛ばす
あいつらが何をしたのかって?
あいつらはミリア達の手を取ってニギニギし始めたのだ
それも全員に対してな
来栖に至ってはミリアの胸をチラチラ見ながらなので、流石に我慢の限界が来たわけだ
姫崎、春宮の二人はそんな来栖と阿藤を汚物を見るような目で見ていた
八木に至っては
「あいつら・・・クロノアスさん、ホント馬鹿な二人ですんません」
代わりに謝罪するほどだった
悶絶した後、気を失った二人を放置して
「あの馬鹿達を二度と近づけさせないでくれ。次、同じ事されたら殺っちゃいそうだから」
そう言って、その場を去ろうとして、今後の予定を聞いておこうと考えなおした
あの二人とは極力出会いたくないからな
「そう言えば、ここ数日は何をしてたんだ?」
「ここ数日は、肩慣らしも兼ねて、近隣の魔物討伐に行ってました。今日からは、ダンジョンに潜るつもりです」
そう答えたのは姫崎だった
八木、春宮も同意
「でも、出発は遅れそうだね。暫くは苦しめば良いと思うな、あの二人」
サラッと毒を吐く春宮
そんな彼女の背後には、白い般若が幻視出来るほどだった
八木も幻視したらしく
「(クロノアスさんの彼女さんはお淑やかで羨ましいっす)」
小声で俺に語り掛けてきた
しかし!姫崎と春宮は地獄耳だったようで
「やぎく~ん・・わ・た・しがお淑やかじゃないのかなぁ?」
「八木・・・後で斬るから」
女子二人から責められ、死刑宣告されるのであった
その後、二人に土下座した八木は、来栖と阿藤を一人で担ぎ、三人そろってその場を後にした
尚、野次馬は沢山いたが、終わりを確認して散らばっていった
買い物に行く雰囲気ではなくなった俺達は、近くの喫茶店で一休みしていた
各自飲み物と甘い物を頼み、一段落ついて
「ラフィ様?もしかして、焼きもちを焼かれたのですか?」
ミリアがド直球で聞いてくる
そう言われ、初めて自分の気持ちに気付くが
「(恥ずかしくて言えるわけがない・・)」
そしてだんまりを決め込む俺
その態度を見たリーゼ以外は
「・・・やはりそうでしたか。私はとても嬉しいですよ」
「ラフィってこういう所は、素直に認めないですよね」
「そこもまた良いですけど」
「ラフィ様は、それが魅力だと思います!」
「僕はもう少し情熱的でも良いかな?」
「ラフィは小さい頃から変に頑固な所がありましたからね」
「でも、そんなラフィ様も素敵だと思うのです!」
各々に俺の行動に対して考えを述べる
聞いてるこっちが恥ずかしい位に
そんな中、リーゼは
「皆様、ラフィ様の事をとても良くご理解なさっているのですね。私にもご教授頂きたいです」
会って間もないのもあるので、少し寂しく、羨ましそうに発言しながらも前向きな事を言った
それに対するミリア達の答えは当然
「リーゼさんもこれからですよ。私は出会って1年程ですし」
「私とティアで7年程でしょうか」
「あの時のラフィ君・・かっこよかったよね」
「ラナも1年程です。完全に一目惚れしました!」
「僕は何年だろ?・・・え~と、学校で出会ってからだから、5年位かな?」
「私も7年位だけど、出会いはリリィ王女とティアさんの方が早いのかな?」
「シアはまだ1年経っていないです!」
リーゼを励ます声になる
リーゼも「私も頑張ります」と声を上げる
ただ、ミリア達の言葉に聞き逃せないことがあったようで
「ティアさん、リリィさん、ラフィ様との出会いをお聞きしても良いですか?」
ティアの言った「あの時のラフィ君・・かっこよかったよね」が凄く気になったらしい
言葉は丁寧だが、彼女の目は「そこ!もっとkwsk!」と言っており、目が爛々と輝いていた
そして始まる女子会
居づらかったのは言うまでもないし、やはり俺にとっては恥ずかしく、またもや羞恥プレイとなった
精神的ダメージを負いながらも、その後は買い物に従事した
今年の夏にエルーナ姉の結婚式があるので、珍しい物がないか、どうしても散策する必要があったからな
そんなことがあった3日後、ギルドからの訪問者が来た
ナリアが対応し、報告に来るが、訪問者が誰なのかを聞いた瞬間、珍しいと思うのと同時に厄介事だと確定した
ギルドからの訪問者
それはフェリック冒険者ギルドのギルマスだった
ナリアに応接室へ通すように指示を出し、俺は少し遅れてから向かう
今日はフェリックの騎士もリーゼに同伴して2名来ており、何故か手合わせをすることになってしまったからだ
手合わせ終了後、汗を流し(汗をかくほどではないけど)、部屋で着替え中だった時に来たから仕方ないよね
応接室に入ると、急いでいるのか?すぐさま話が開始されようとして、ナリアに止められる
「リアフェル王妃様とルテリーゼ王女様、婚約者の方々もお話をお聞きしたいとの事です。もう少しお待ち下さい」
淡々と告げて、出ていくナリア
10分後、応接室には全員が勢ぞろいし、ナリアを筆頭に数名のメイドがお茶とお茶請けを配膳し、話が始まる
「単刀直入に話す。ダンジョンで何か異変が起こっている。ギルドからSSSへの指名依頼を出したい」
ド直球で話すギルマス
建前も何もあったものではない
そして、何故異変だと言い切るのか理由も話してない
相当焦っているようだが
「少し落ち着きませんか?まず、何故異変だと言い切れるのか・・理由をお聞きしても?」
「・・・すまない。確かに焦っていたようだ。ただ、時間がない可能性もあるので簡潔に説明する」
そう言って説明されたのだが、いくつか疑問が残る
ギルマスが説明したのは
昨日、ダンジョンから帰還した冒険者が『ダンジョン内の魔物の数が段々増えてきている』と報告があった
今日、緊急連絡で『ダンジョンが鳴動し、転移陣が明滅している』と報告が入った
何かおかしい・・とダンジョンから避難した冒険者からの連絡で『魔物の数が倒しても追いつかない』『今までにない現象だ』などの報告が上がってきた
以上の事から、緊急を要すると判断したらしい
フェリックで連絡が着いた高ランク冒険者は、既にダンジョンに向かう準備に入っているらしい
最悪を想定して、皇城にも報告を上げに行ったそうだ
では、俺の疑問について説明しよう
1つ、ダンジョンの転移陣について
2つ、ダンジョン内の魔物の急激な増加について
3つ、何故ギルマスは皇城ではなく、こちらに来たか
4つ、避難してない冒険者はいるのか
5つ、どうやってそこまで早く連絡が出来たのか
6つ、国の対策はどうなっているか
以上の事を述べると
「皇城での情報は私が取り寄せます。そこのあなた、至急城に行き、情報を持ってきて頂戴」
リーゼが有無を言わさず、護衛の騎士に命令する
騎士も異常事態だと判断したためか、早急に城へと向かった
次に連絡方法だが、これはそう言った魔法を魔道具で強化しているらしい
但し、一方通行なので相手に返事をするのは無理らしいが
そして、避難については不明
ただ、避難してきた冒険者の数が潜っている数と合わないため、恐らくは出来ていないであろうとの事だった
ダンジョンの転移陣については、法則性は無いが安全地帯セーフティーゾーンがあり、そこには何故か転移陣があったそうだ
何故あるかは不明
後、伝え忘れてたらしく
「転移陣が明滅し始めてから、使えなくなったそうだ」
明滅した後に試したら使えなくなっていたと付け足すギルマス
それと、転移陣はその場所に到達した者しか使えないとも言われた
魔物の増加については完全にお手上げ
そして最後の疑問だが
「君に確実に動いて欲しかったからだ。それも守りではなく、原因究明の方に・・」
「俺にダンジョン内へ潜れと?」
「ランシェス所属なのは重々理解している。しかしこちらとしては、一人でも腕の立つ者を送り込みたい」
「そのためにわざわざギルマス本人が来たと?」
「・・・ルテリーゼ王女のいる前で、こんなことを言うのは失礼だとは思うが、ギルマスとしては皇城よりも君を優先した、と言う事だ」
そして黙り込むギルマス
確かにフェリックの皇族がいる前で発言する言葉ではないな
不敬罪に取られても文句は言えない
しかし、リーゼの返答は
「いえ。ギルドマスター様の仰る通りでしょう。この件で叱責があるようなら、フェリック第九王女ルテリーゼ・モンテロ・フィン・フェリックの名において不問にすることをお約束いたしましょう」
「・・ご慈悲に感謝を・・・」
リーゼはそう宣言し、ギルマスは謝辞を述べる
一方、事の成り行きを見守っていたリアフェル王妃が口を開く
「それで・・クロノアス卿はどうするのですか?」
・・・クロノアス卿か
ここは貴族らしく対応しろと言う事ね
とは言え、リーゼと婚約したのなら、皇族は親族になる
家族を見捨てるなど、俺は御免だ
だから、答えは決まっている
「動きますよ。リアフェル王妃は何か問題があるのでしょうか?」
リアフェル王妃に向き直り、視線を逸らさずに己の意思を告げる
リアフェル王妃も予想はしていたのだろう
動じず、しかし問題点を告げる
「卿の意思は分かりました。しかし、卿は王族の護衛任務の最中でしょう」
「なので、許可を頂きたく」
「我々の護衛については?」
「七天竜を護衛に回します。更に、ウォルドもそちらに。潜るのは自分一人です」
そう返すと、当然だが竜達もミリアも反発する
だが、リアフェル王妃も俺も予想の範疇だ
リアフェル王妃に視線を向けると『納得させなさい』と視線で返される
と言う訳で、今から説得に入る
「皆が言いたいことは分かる。だから今回は、初めから出し惜しみなく蹂躙する。皆を守りながらだと、全力が出せないんだ」
「それは、私達が足手まといと言う事ですか?」
「違う。俺が全力を出した場合、その余波が行く可能性がある。俺は皆を傷つけたくない」
「我ら竜族ならば、余波にも耐えられますが?」
「七竜達には、いざと言うときに皆を逃がしてもらいたい。それを許す気は無いが、最悪は想定しておかないといけない」
「僕とナユは付いて行っても良いよね?」
「今回は駄目だ。さっきも言ったけど最悪の想定が必要だ。万が一の場合には・・・」
「・・・・わかった。僕とナユとウォルドで殿になるんだね」
「危なくなったら逃げろよ?死ぬのは俺が許さない。・・・ウォルド、指揮を任せる」
「わかった。んで、期日はどうする?」
「・・・2週間。それで俺が戻らない場合には・・・・」
「・・・撤収を始める・・か。・・了解だ。最悪の事態じゃなくてもそれで良いんだな?」
「ああ。・・・リーゼもそれで良いか?」
「私はラフィ様の婚約者です。国の為にも、敢えて汚名を被ります。・・・ですが・・・・」
「わかっている。最悪にはならない様に頑張るさ」
ミリア、リリィ、ティア、ラナはまだ何か言いたそうだったが、先輩冒険者であるウォルド達が納得している上、リーゼも覚悟を決めている
更にはシアも、不安そうではあるが、何も言ってはいない
一番歳が下のシアが聞き分け良くしている以上、自分達がこれ以上何か言うのは示しがつかない
ミリア達も渋々納得し、話を進める
「・・・話は纏まった様だな。婚約者の皆には悪いと思うが」
「いえ・・・私達は、ラフィ様の無事を確信していますので」
ギルマスの謝罪に、ミリアが代表して答える
黙ったままのリアフェル王妃だったが
「クロノアス卿。竜達ですが二竜連れて行きなさい。取り残されている者達を守りながらでは大変でしょう」
「良いのですか?そちらの防衛力が落ちますが」
「構いません。ただ、残る竜達には・・・」
「・・わかりました。ただ、リアフェル王妃とウォルドの2名で良いですか?」
「それで構いません。防衛力の高い竜と殲滅率の高い竜を一竜ずつウォルド殿へ回しなさい」
「承知しました。・・・バフラム!アルバ!」
「「主よ、ここに」」
リアフェル王妃との話し合いにより、俺がウォルドの指揮下に入れたのは、防衛力一位のアルバと殲滅力に寄っているバフラム
更に言えば、この二竜は相性も悪くない
リアフェル王妃側には、コキュラト、シンティラ、ブラストの三竜を割り振る
コキュラトは癒しが使えるので、万が一の場合はウォルド側への救援へ出すように進言
ブラストとシンティラは、最悪の事態になった場合、直ぐに空へと離脱
残るディストとリュミナは俺に付いてくることになった
但し、ディストとリュミナの役目は、逃げ遅れた冒険者たちの救護と見張りがメイン
リュミナは竜達の中で最も癒しの力に優れているため、戦闘での魔力使用は控えるように厳命
代わりにディストがリュミナの分まで戦闘することにした
但し、俺の前に立つことは禁止
俺の本気は、天竜となった竜達でも余裕で傷つけてしまうからな
話も終わり、行動を起こしかけたところで、リーゼの兄で皇太子のディライズ殿下が訪問してくる
「皇城での情報を持ってきたのだが、どうやら遅かったようだね」
そう言って殿下は、用意された椅子に座る
情報は多い方が良いので
「いえ。情報があるに越した事はありません。ご足労頂き、感謝いたします」
お礼を述べる俺
そして、殿下はそれに対し
「君にはしてやられたからね。父から凄く怒られたとも。でもまぁ、これからは義兄あにになるのだし、水に流そう。・・・リーゼにも睨まれているしね」
嫌味と愚痴を言って、リーゼに睨まれる
リーゼは「お兄様の配慮が足らなかったせいだと思いますが?」と逆撃までして見せる
これに驚いた殿下は
「へぇ・・あのリーゼが、『結婚なんてしません!』と言い放ってたリーゼがねぇ・・・。変われば変わるものだ」
「お兄様?お戯れはその辺りで。皆さんお待ちですよ」
とっても良い笑顔が・・向けられたら怖い笑顔がディライズ殿下に向けられる
殿下は「・・ごほん!それでは・・・」と咳払いをしてから、本題を話し始めた
「まず、ランシェスからの親善訪問団だが、皇城へ避難をお願いしたい。それと、軍の一個大隊をダンジョンへ向かわせる。近衛と残る軍は皇都の防衛だ。それでそちらは?」
殿下から話を聞いた俺達は、先程話した内容を伝える
「・・・なるほど。しかし、クロノアス卿と二竜だけでは危険では?我が大隊と共に進軍した方が良いのではないか?」
「いえ。寧ろ大隊はダンジョンに入らず、外で待機して頂いた方が良いと思います。ダンジョン内の魔物は、外に出ないと言う事ですが、絶対に出ないと言う保証もないので」
「万が一の場合には、外に出た魔物の掃討か・・・勝算はあるんだろうね?」
「それは勿論。後、出来る事なら・・」
「避難してきた冒険者達の治療と情報収集か。そちらは任せて貰って良い。ただ、伝える手段がないのだが?」
「こちらにではなく、ギルドと皇城に。情報次第では、対応を変えなければなりませんし」
話を詰め合い、結果、大隊は外で警戒待機に
その他、こちらの言い分も受け入れられ、お付きが皇城へと知らせに走る
「大隊の準備はどれくらいかかりますか?」
「1時間以内には終わらせよう。問題は兵站だが・・・」
「用意できるだけして頂ければ、こちらで運びますが?」
「お願いするよ。そちらの準備が整い次第、皇城へ向かおう」
こうして、俺達も準備を始め・・・るまでもなく、ナリア指揮の下で既に終わっていた
使用人達は、既に準備万端で並んでおり
「直ぐにでも出発できます。馬車で向かわれますか?」
ナリアの一言に、俺は苦笑いであった
何台かの馬車は既に用意されており、各々乗り込む
皇城前までゲートを繋ぎ、馬車を潜らせていく
話が終わって僅か10分後には、全員が皇城前にいた
「ははは・・・これは凄いな」
ディライズ殿下の渇いた笑い
リーゼは何故か誇らしげだった
大隊の準備が整うまでの間に、俺も準備を終わらせ、全員が出発出来るようになったのでゲートを開く
さて、二つ名の如く【蹂躙】しようか
少し長く続きますが、連休中にある程度は投稿できると思います
連休の間は毎日投稿予定で4話投稿予定です




