11-7
・2021年8月24日付
細部調整
・2023年5月30日付
細部調整
激闘の末、勝利したのはあいね・シルフィードの方だった。これには周囲も驚くのだが――それ以上に、この結果に驚くのは別の勢力である。その勢力とは、言うまでもなくまとめサイト勢力だろう。自分達の想定とは違うシナリオへ向かいつつある今回の事件を、彼らは放置する訳がない。
【あのアルストロメリアとは違ったな】
【プロゲーマーの方か。どうやら、向こうはARバトルロイヤルをプレイしていないようだな】
【どういう事だ? ARゲームでいくつかの同ネームアカウントはあるはずだぞ】
【上手い具合に乗せられたのは、こちらの方だ。アルストロメリアと聞いて有名プロゲーマーを連想したこちらが策にはまったという事らしい】
【まさか――ガーディアンか?】
【このやり方はガーディアンとは違う。もしかすると、我々は別の新規勢力を敵に回したのかもしれない】
この動画を見ていたメンバーは、アルストロメリアのメッセージを聞いていた。あのメッセージは、明らかにプロゲーマーのアルストロメリアが言う様な物ではない。そちらのアルストロメリアと想定してまとめサイトで記事をアップ、そこから炎上させようとする人物に対しての警告だろう。
【ガーディアンの動きもそうだが――こちらも立て直しが必要だ】
【想定外の事は起こるものだ。炎上に関係する以上、あっけなく消火される事もありえる】
【我々の行う炎上は、転売ヤーや買い占めのような物理案件とは桁が違う】
【ああいう物と一緒にされたら、こちらの方が迷惑だ】
【今は現状を見定める必要性があるようだな】
【そうしよう。ああいったバズり目的の連中がいる限り、我々のような炎上も民度の低い連中の低レベル炎上とひとくくりにされる】
【それも、ガーディアンの目的だろうな。SNS上のありとあらゆる炎上を根絶させようとしている勢力だ】
そして、一部の炎上勢力――それも上位と言われるような勢力は静観する事になり、ガーディアンが摘発するのは低レベル炎上勢力ばかりとなった。これもガーディアンにとっては都合がいいのか? それとも――?
その夜、アルストロメリアの動画を見て驚いたのは自宅にいた舞風だった。自室ではなく広間で動画を視聴していたのだが、その内容は彼女も沈黙してしまう程の物である。
(あのアルストロメリア――何かおかしい)
外見こそは、アルストロメリアと見ていいだろう。まとめサイトではプロゲーマーの方とも言及しているが、明らかにそっちではない。実在のプロゲーマーだと、いわゆる実在人物なので一連の鍵の法則とは異なってしまう。それは以前にも考えていた事で、その部分が間違っている事はない。単純にまとめサイト勢力が鍵に興味がない事が分かる瞬間だ。
(仮にWEB小説の登場人物だとして、どの作品なのか? むしろ、同名人物が混ざって――)
舞風は微妙におかしいアルストロメリアを見て――複数人物が融合したアルストロメリアとも考えた。しかし、そのような人物を呼びだすことは可能なのか? 今までも単独作品の登場人物で完結しており、他の要素が絡んだ事はない。唯一の例外があるとすればガングートであり、こちらはプレイヤーではなくドールの方が召喚されたと言ってもいいだろう。
「こればかりはマルスに――?」
ふと周囲を見ると、マルスの姿がない。帰って来たのは確認しているが、まだ出かけたのか? 近場であれば何も言う事はないので、現状は放置するしかないだろう。
「そう言えば、マルスも――?」
マルスの装備を思い出し、舞風はふと違和感を持つ。アガートラームもそうだが、他に原作由来の武器を使っていたのか? 確かに刀やロングソード、短剣と言った部類は何度か使っているし、ビームセイバー等もコラボ装備であっただろう。
しかし、本当にアガートラームは使った記憶がない。パワードスーツに近いようなアーマーが出てきた記憶さえないのだ。もしかすると、あのマルスも別ゲームのマルスと融合したパターンなのか、それとも二次創作のような存在なのか?
「アルストロメリアも鍵の所有者とすると、八人――?」
全ては、七月二日に明らかに――なるかどうかも定かではない。SNS上のフェイクニュースに警戒しつつ、舞風は情報を整理し始めた。それでも、八人と言う計算になってしまう事には何かフラグがあるのではないか――そう疑う余地もある。
これはあくまでも八人が全員鍵を所有している場合の事であるのだが、七つの鍵と言われていたはずが八つだった事、あり得ない話でもない。ある人物に真相を話して『実は八つである』のようなフラグを立てるような作品もあるので、本当にフェイクだとしたら裏付けが必要になるだろう。




