7-2
・2021年8月21日付
細部調整
・2023年5月24日付
細部調整
舞風が自室を出て、一階に下りてきたのはハヤト・ナグモがやって来てから二〇分以上は経過した辺りだろうか。丁度、コーヒーが切れたので一階で淹れてこようと考えていたのだが、そこでハヤトを目撃した。
(このゲームって確か――)
舞風もハヤトとマルスがプレイしているゲームを見て、足を止めている。ゲーム自体は対戦格闘なのだが、画面に出ているプレイヤーキャラは――明らかに見覚えがあった。
(もしかして、蒼流の騎士はこのゲーム存在を知らなかった?)
最初にマルスを呼びだしたとされる蒼流の騎士、彼はマルスが原作だけに登場するキャラクターと認識していたのだろう。実際、この作品はメディアミックスが行われており、様々な媒体に進出していると言ってもいい。もしかすると、あの蒼流の騎士はメディアミックス等を考慮しないで彼を呼びだした可能性もありえる。
「ハヤト、もしかしなくても、そのゲームは――」
「瀬川さんから拝借してきた物です。まだ開発中ですけどね」
「開発中? これってゲーセンにあった作品じゃないの?」
「確かにそうですよ。アーケードと同時リリースってわけではないですけど」
舞風の質問に小他のはハヤトである。ゲーセンで見かけたはずの作品を、どうして瀬川プロデューサーが持っていたのか? その疑問はあっさりと解決する事になった。そして、この作品にはマルス以外にもマイアの姿も確認出来る。
(彼女が、マイア――)
マイアとはマルスがゲーム世界の方で遭遇した人物で、よく見ると舞風と似ている個所もあるだろう。しかし、この世界にやってきたのはマルスの方だった。主人公ばかりが呼ばれているのであれば、マルスだけで他の誰かが一緒に同行する事はない。
レッドカイザーも、あいね・シルフィードも黒のシュヴァリエも、そして――ガングートも。例外があるとすれば、ハヤトの操る巨大ロボットのヌァザだろうか。それを踏まえると必ずと言っていいほどに、自分一人だけでなく使用するガジェットも一緒に飛ばされたのだろう。マイアはガジェット的な要素がないので、そう言う事になる。
一方で、レッドカイザーの方は独自に情報を集めている。ハヤトの方が巨大ロボットを使って探せない事を踏まえての事だろう。
『瀬川の言う事も一理あるだろう。あの情報を見れば――』
レッドカイザーがチェックしていたまとめサイトには、特定作品のSNSにおける炎上商法が暴露されている記事――に見えるだろうか。その内容は明らかに更に別の作品を示すものであり、要するに作品Aの記事を作品Bに差し替えた物である。それが無数にコピー&ペーストされている現実があった。
ここまでくると、もはや二次創作レベルであるかのような雑な内容であり、明らかにアフィリエイトやバズを狙った物なのは明白と断言出来る。黒のシュヴァリエの一件は自分が目撃しておらず、後に舞風に聞かされた範囲でしか情報がない。それを踏まえ、色々と調べていたのだが――。
『それ以上に気になるのは、異世界転移物に集中していた法則から外れた事。ネタ切れと言うよりは、マイナー作品を狙いすぎたのだろうか』
レッドカイザーも法則に関しては異世界転移物に集中していると言う有力説を信じていた。しかし、それを覆してしまったのはガングートの出現である。彼女の登場ジャンルは異世界転移物ではない。
それを踏まえると、異世界からは切り離す必要性さえ感じてしまうだろう。異世界以外で共通点を探すには――。
『この記事は――』
レッドカイザーが発見した記事、それはあいねの登場する魔法少女物の路線変更に関する考察記事だった。あいねの性格等が、とある特撮作品に登場する六代という主人公に法則が似ている事で六代系少女と言われたのは、路線変更直前だったのである。
この一件がSNSでバズった結果として、作者は路線変更をせざるを得なかった――と記事には書かれているのだが、彼には疑問に思う部分もあった。
『本当に、これは読者が予言した物なのか、それとも承認欲求に――』
炎上商法と言うには、作品が書籍化もしていない若干マイナーだった作品と言う事もあって理由には弱い。その一方で、承認欲求的にフォロワー増やしやバズを狙って作者が仕掛けた自作自演も考えたのだが、作風的にそれもないだろう。
あいねの登場する魔法少女物は魔法少女同士のデスゲームがベースになっており、意図的にSNS炎上を狙えるような題材とは思えない。それに、あいねを含めて登場する魔法少女の意匠は、セクシー路線やアダルトゲームにありがちなサービスシーンを狙った要素がない。
どちらかと言うと、幼児向けの日曜朝に放送されている様な路線のキャラでデスゲーム物をやっているとさえ――。




