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ヴァーチャルレインボーファンタジー【小説家になろう版】  作者: 桜崎あかり


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第6話:加速していく企画

・2021年8月21日付

細部調整


・2023年5月23日付

細部調整

 その日は晴天であり、いつの間にか草加市上空の七つの大陸は薄くなりつつあった。一体、何が起こっているのだろうか?



五月一〇日の午後、瀬川せがわプロデューサーが蒼流そうりゅうの騎士から衝撃の事実を聞き、ビルの窓から大陸を見ようとしていた時のことである。彼のいる場所は社長室と言う看板が入口にあるのだが、どう考えてもお堅い部屋には見えない。


 ノートパソコンの置かれているのは他のスタッフと同じようなビジネス用のデスクであり、椅子も高級感を感じないだろう。それに、デスク以外には別のテーブルもあるのだが、どう考えてもパイプ机とパイプ椅子で、この会社の過去がどうだったのか分かりそうだ。


『あれは企業が出そうとしていた企画書案、それをベースに同人サークルが作りだした――二次創作だ』


 動画上の彼は、間違いなく企画書案とも言及し、その上で二次創作と言う単語を使った。瀬川にとって、二次創作なんて夏と冬に行われるお台場のイベント辺りでしか、まず聞かないようなワードだろう。


 一連の考察動画をチェックしていく内に、若干だが引っかかるような考察もあった。そのワードで企画書案という事に言及されている。


 元々のヴァーチャルレインボーファンタジーがどういう物だったのかは不明だが、ユーザー主導型のコンテンツを様々なサイトで散見するようになっていた。これは草加市で開催するARゲームのシステムを使った物には限らない。小説サイトやイラストサイトでもユーザー主導のテーマ企画はあるだろう。


 それをARゲームに転用しようと考えたのが、ヴァーチャルレインボーファンタジーの元ネタ――原案と言うべき物かもしれない。


 WEB小説にしても、人気作品が出れば書籍化をしようと出版社が動きだす。ランキング上位の作品を青田買いするようなパターンは終わりを迎え、それこそ新たな方法を模索しているだろう。


 そう言ったコマの奪い合いは様々なコンテンツで展開されている。アニメやゲームのコンテンツに限った話ではないのだ。ネット発の歌い手、動画投稿者、実況者、小説家――そうしたクリエイターを生み出すフィールドを作る計画だったのかもしれない。


「あれが、七つの大陸ですか」


 数分ほど形式を眺めていた瀬川だったが、途中でハヤト・ナグモが声をかけてきた。瀬川にとっては、あまり説明するのも面倒だとは思いつつも――簡略的には説明する。


「マルスは確か、七つの鍵を集めればあの大陸への扉が開かれると言ったか」


 改めて要点を整理すると、マルスは大陸の入口を開く為に七つの鍵を集めていた。しかし、ハヤトやレッドカイザーは『七つの鍵を集めれば願いがかなう』というざっくりした事しか説明されていないと言う。


 それに加えて、蒼流の騎士は七つの大陸よりも『SNS炎上勢力が妨害しようとしている』や『コンテンツ流通を正しいものへ』と言った事に重点を置いていた。マルスの遭遇した蒼流の騎士とそれ以降に現れた方では、別人と言う可能性も否定できなくなったのである。


(まさか、何処かの段階で入れ替わったのか?)


 瀬川は改めて、七つの鍵の法則を洗い出す事になった。もしかしなくても、蒼流の騎士の目的は基本をそのままに――変わっている可能性があるからである。



 同日、舞風まいかぜの家では、メールで届いた蒼流の騎士の動画を舞風自身が視聴していた。一階の居間で少し大きめのテーブルにノートパソコンを置き、そこでマルスと共に視聴しているのだが――。


『手短に用件だけ話しておこう。草加市に浮かぶ七つの浮遊大陸、あれはARで表示されている物だ』


 やはりというか、蒼流の騎士の外見は――見覚えのあったあの外見で間違いはない。そうなると、あの人物の正体が蒼流の騎士なのか? そこまでの確信は持てなかった。


 あの作品の原作者の顔を舞風が知るはずもなく、出版はされていたような気配はするが――サイン会等が行われた記憶もない。つまり、蒼流の騎士の正体があの小説の作者なのかどうかを決めるには、手掛かりが乏しいのである。


『そして、おおよそは予想できているだろうが――あれはヴァーチャルレインボーファンタジーに登場する大陸と言える』


『しかし、ヴァーチャルレインボーファンタジーは君たちが考えるような作品とは全く違う』


『企業主導型のタイプではなく、どちらかと言うとユーザー主導型。草加市で行われている一部ARゲームともシステムが類似する』


 ユーザー主導型というワードが出た段階で、彼女はテーブルにある小型マウスを使ってカーソルを動かし、動画を止めた。このメッセージが仮に本物だとしても、その先の内容を聞くのは彼女にとって覚悟が足りないのである。


「あの大陸にそんな事が――」


 マルスの方は、改めて蒼流の騎士の発言を聞いて驚く。しかし、これらの話は以前に舞風が瀬川に話していた事と似ている事に加え、それをざっくりと説明した物に過ぎない。


(こうなってくると、蒼流の騎士の目的は――どう考えても、二次創作が一次創作に勝つ事は出来ない事を証明させる為に――)


 ガングートの件もあり、舞風は若干焦っているようにも見える。マルスは焦る舞風に声をかけようとしたが、止めておく事にした。下手に焦らせて何かトラブルが起こっては、どうしようもないと思ったのだろう。マルスにも心当たりがある。


(あの時の二の舞は――)


 この世界に飛ばされる前、別の世界でマイアと離れ離れになってしまった事もあるが――それ以上に、別の問題もある。本当に英雄だけが呼ばれているのか? ヴァーチャルレインボーファンタジーとは何なのか? この世界に自分達を呼んだ本当の理由とは?


 課題が山積みなのは変わらない。自分も思いつめ過ぎて、暴走してしまったら――。マルスはテーブルに置かれた五〇〇ミリリットルのペットボトルに入った紅茶を片手に、居間に置かれた椅子に座った。

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