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能力ガチャを引いたら、武器ガチャが出ました(笑)  作者: 通りすがりの医師
第四章 転移者と接触せよ
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#95 風の正体

「俺達以外の誰かって、どういうことだジャイロ!?」


「だから詳しくはわかんねぇって! でももしかすると、レオンを襲った奴と同じ奴かもしれない」


 かなりマズい状況。レオンはかなりの重傷だ、ここで立ち往生してたら大量出血で死ぬぞ。

 だが殺人鬼みてぇなのがこの辺をウロウロしてるだなんて、生きた心地がしねぇ。


「――ッ、伏せろ!」


 またジャイロの号令が飛ぶ。俺もレオンも屈んだジャイロに合わせて膝と腰を曲げた。

 すると次の瞬間、やっぱり俺らの上を風が通り過ぎたような感覚がする。


「クソ、レオンはそよ風にでも斬られたってのか!?」


「……う……? わからん……あの男、には……気づけば斬られてた……見え……ながった……」


「おい冗談だろ――」


「マコト! 話してる場合じゃねぇだろ急ぐぞ!」


 いかん、無駄話してる場合じゃねぇ。今ジャイロが立ち上がってなかったら、俺はずっとしゃがんだまま独り言してたかもしれねぇ。


 ――やべぇ、怖い。すごく怖い。


 レオンの血が俺のスーツを濡らしてる。体温をモロに感じる、最悪だ。敵も見えないなんて今までじゃあり得ない。怖い、なんだよこの状況。怖すぎる。


 平静を失いつつある俺に追い討ちをかけるように、


「きる」


 何かが……いや誰かが俺の右の耳元で囁いた、レオンがいない側だ。次の瞬間、右耳に風を感じた。

 間違いなく、犯人に囁かれた。今どうして俺が斬られなかったのかわからないくらいの距離だぞ。


「――ッ! だぁクソっ!!」


 するとまたジャイロが叫び、レオンと俺を突き飛ばして距離を取った。ジャイロとレオンの間を何かが通り過ぎたのを見て、納得。

 さらに絶望的な状況になった。今、あの風を感じ取れるのは並々ならぬ反射神経を持つジャイロだけ。なのにだいぶ離れちまった。


 そんなことを考えてる俺の後ろからそよ風が吹く。そして風は、俺の正面で姿を現した。


「……え? お前……は……?」


 俺はただ動揺した。


 どう見ても十代の少年だ。彼は黒髪で、パーカーを着てフードを被り、ジーパンを履いてる。見た目としてはまるで、休日の高校生……


「お前、日本人……か……?」


 少年はただその場に立ってて、地面に倒れてる俺を見下ろす。表情は何も無いただの真顔。だから、いったい何を考えてるのか想像もつかない。

 しかし彼はついに沈黙を破り、口を開く。


「おっさんも、そのスーツにサングラス……そうか。俺だけじゃ、なかったんだ」


 やばい、怖い。今までなんとか見ないようにしてたが、日本人の少年の手にはどう見ても大きめのナイフがある。こいつ正気なのか? どうしたらいい。


「……ああそうさ、俺もお前と同じ状況だ! たぶんなんか混乱してんだろ? 気持ちはわかるぜ、俺も最初は焦ったよ〜。ちょっと話をしようぜ。お互い話したいこといっぱい」


「邪魔だ、きる」


 ダメだ、やっぱりだ。話が通じねぇ。

 少年はだらりとした体勢でナイフを揺らしながら、俺とレオンの方へ近づいてくる。どうしよう殺される。


「てめぇ! そいつらに近づくなっ!!」


 飛び込んで来たのはジャイロ。少年に向かって思いっきり大剣を振るうが、もうそこに少年の姿は無い。

 いったい、どこに――


「あ」


 次の瞬間には、ジャイロの右肩から血が噴き出していた。

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