#93 不穏な流れ
『オーガ討伐』の場所は、おなじみ北の森。ここは本当に魔物が多いな……木こりとか作業できてんのか?
とりあえず門に到着。そこにはなんか行ったり来たり歩いてる、一人の騎士がいた。
「あ、マコトさん! ご苦労様です!」
「あ、アーノルドかお前。いや声しか判断材料がねぇからわからん。ってかご苦労って俺は上司じゃねぇんだから……」
それより気になるのはアーノルドが下を向いて同じ所をぐるぐる回ってたことだ。何か考え事してるようにしか見えなかった。「どうかしたのか?」と聞いてみると、
「それが、レオン先輩が戻ってこないんすよ。いつものようにドラゴンを確認しに行ったんですが、全然……」
いつもなら三十分程度で戻ってくるレオンが、一時間経っても戻ってこないとのこと。そりゃなんか怖いな。
「探しに行きたいですが、それだと門番がいなくなるじゃないすか。交代は二時間後だし、どうしようかと思って」
「なるほど事情はわかった。ちょうど外に出るし、俺が探してやるよ」
トラブルに遭ってたりしたら大変だからな。
問題は、そのドラゴンが眠ってる洞窟ってのがどこにあるのか俺が知らないってことなんだが……
「本当ですか! んじゃお願いします!」
突然、兜の下の声が明るくなった。でもって一発お辞儀して、アーノルドはいつもの立ち位置に戻って背筋を正した。いやちょっと待て。
「……おい、場所は?」
「あ、知らなかったでしたっけ?」
「知るワケねぇだろ!」
「え〜とまず北の森を抜けて……あっ!!!」
「なんだ。今度はどうした?」
何かを思い出したような驚き方をしたアーノルド。この流れ、ちょっと嫌な予感が……
「そういやジャイロ先輩が捜索に出てるんでした! だったらマコトさんいらないっすね!!」
「せっかく協力するっつってんのに『いらない』とか言うんじゃねぇよ!!」
おいおい、この野郎。俺より無礼なヤツここにいるじゃねぇか。それとも俺だから無礼な態度にするのか?
いや、この野郎はマゼンタに挨拶する時も適当だった。これだから最近の若ぇのは。
「……はぁ、まぁいいや。ジャイロが捜索に出てるって、ジャイロ一人か?」
「そうです、ジャイロ先輩は洞窟の場所知ってるらしくて」
なるほどな。だったら確かに俺はいらないかもしれねぇ、オーガ討伐に向かうか。どうせ目的地は北の森なんだが。
「マコトさん依頼受けたんすか?」
「おう。オーガを討伐してくるんだ」
「マジですか! やっぱかっこいいっす!」
「……うるせぇよ。お前さ、無理すんなよ?」
「え? あ、わかりました」
たぶん俺の真意に気づいてないクセに、アーノルドは適当に返事してきた。
え? アーノルドに限らず誰も俺の真意がわからねぇって? すいません。




