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能力ガチャを引いたら、武器ガチャが出ました(笑)  作者: 通りすがりの医師
第三章 異世界人と交流を深めろ
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#89 忘れてた話と闇の魔導書

 あの後――エバーグリーンが眠りこけた三時間の間はマスターと適当に話をしてた。


 彼が見たところによればエバーグリーンって男は、実は随分と心配性らしい。

 まぁ俺も多少は感じてたが。例えば『魔王復活』が本当に本当か確かめるために、仕事の時間を割いてまで俺やエルフに協力を求めたりとかな。


 飛び起きた『騎士王』はだいぶと金貨を支払ってたな。俺は俺で払ったが、それは銅貨だからそもそも単位が違う。自業自得だぜ。


 何時だかもうわかんねぇ深夜に魔術師団の寮に戻り、いつもの部屋へ。

 前日は部屋に帰ってない(エバーグリーンとエルフ村へ行く約束をした後なんとなくで宿に泊まった)から、プラムに説教でもされんのかと思ったが……あいつはなぜか俺のベッドでぐっすり寝ていやがったんでソファーで寝た。


 で、今起きた。目の前には呆れた顔をしたプラム。


「やっと起きたの!? もう朝食、食べ終わったよ!?」


「クソ……まさかこの世界でこんなに夜更かしする機会が来るとは思わなかったぜ。起きるの、辛ぇよ」


 しかも酒を飲むのも久々……いや元の世界でいつ飲んだかにもよるか? とにかく朝から頭が痛ぇぞ、最悪だ。



「あ! そういえば食堂でルークが探してたよ、マコトのこと。なんか大事な話があるって」



 ん? ああ、そういえば同じく食堂で、俺自身がルークとそんなような話をした記憶がある。

 確か、ブラッドに金を渡すって理由でまた別の機会にって流れになったっけ。じゃあちょっとルークに悪いことしたな。


「わかった、ありがとう。てかさ、お前俺のベッドで寝てたよな? おい。俺の寝場所をとるんじゃねぇ」


「え……見たの!?」


「そりゃお前、どうしても見るだろぉ」


 プラムが先に寝ちまってんだから、俺が後から来たら遭遇するよ。万が一見逃しても、ベッドに飛び込んだ時にどうせ気づく。


「……う、うるさいなぁ! あそこ安心するの! 次から帰りが遅くなる時は言ってね!? リリーと遊んでくる!!」


 怒ってるけどどこか楽しそうに、プラムは高速で情報量の多い言葉の数々を吐き出して早々に出ていっちまった。この寂しがり屋さんめ。


 今回の件は、王様とかマゼンタとかエバーグリーンとか、色々ありすぎてプラムに報告する暇なんて無かったしな。

 あ、そもそも言っちゃダメなことばっかだった。俺、何やってんだろう。シークレットエージェントみたいな生活させられてる。



▽▼▼▽



 食堂を探してみたが、ルークはいなかった。そりゃそうだ。朝メシからたぶん二時間は過ぎてる。

 廊下を歩き、街の警備や訓練に出る魔術師達と挨拶しつつ青髪のあいつの姿を探す。が、やっぱりいない。


「なぁミーナ、ルーク知らねぇか? 大好きなんだろお前」


 だからとりあえず、すれ違ったメイドに声をかけてみた。声をかけられた彼女は困ったような顔。


「だ、大好きとかあんまり公の場で言わないでくださいよぉ〜……う〜ん今の時間ならルーク様はお花に水やり……かと」


「やっぱ知ってんだな。さすがだ」


「さすがとか言わないでくださいよぉ〜……私がただの危ない人みたいじゃないですか」


 けっこうルークの動向知ってるし、これ本当に危ない人の可能性もあるぞ。ストーカー的な危なさだ。ま、まぁ可愛いから許されるだろ? そうだよな?



▽▼▼▽



 庭園に出てすぐの場所にある花壇。ミーナの言ったことは正しく、ルークは水やりとかしてやがる。前にも見たがよく続いてんなぁ。


「よぉルーク。ちょっと話せば長くなるしそもそも話せないんだが、最近ゴタゴタが多くてよ。長いこと放置しちまってたよな、すまん」


「おはようございます、ようやく落ち着いたんですね。良かったです。では、仕事場のバルコニーでお話しましょう。一緒に来てください」


 俺なら嫌味とか言っちまう場面だってのに、ルークは嫌な素振り一つ見せずの対応だ。

 たぶんこいつ、ただ素直なだけなんだよな。根が優しいから優しい言葉がポンポン出てくるってだけで。ジャイロに対しての口調だけは『じゃれ合い』の一種だと思うが。


 にしても、わざわざバルコニーか。そんなに大事な――他人には聞かせられねぇ話なのか。なんか怖いな。

 二人でお屋敷みたいな仕事場に入って歩いているとルークが振り返り、


「あ、そういえば『闇の魔導書』の調査結果、お伝えしましたっけ?」


「闇の……そうかブラッドの持ってた本か。それなら誰からも何も聞いてねぇぞ」


 質問してきた。ブラッドが俺を殺そうとした時に使ってた本だな。あの後ジャイロが回収して、わからねぇからってルークの手に渡ったヤツ。


「あれは、()()()()()()()()()()となっていました。詳しくは定かではないのですが、何者かの強力な闇の魔法によって作り出された本です。持っているだけで持ち主は闇属性の魔法が使えるようになります」


「ページをめくって、文字を読んだら闇が使えるんじゃなくて?」


「でもそれに近いと思います。無理やり作り出した適性ではやはり使いこなすのは難しいですから。詠唱を読み、声に出さないと扱えないでしょう。人によっては血液を捧げないとダメかもしれません。それくらい難しい存在なんですね。元から闇の適性があれば話は別となりますけど」


 なるほど。闇で作られた本か……だとしたら誰がこの本作ったんだ。ルークやマゼンタすら使えない闇属性だ、なんとなくサンライト王国内に犯人はいなさそうだが。

 ブラッドはほとんど訳もわからずに闇魔法を操ってた感じになるんだろうけど、一つ疑問がある。前から思ってたこと。


「ところで『魔物を召喚する』って芸当もその本を読めばできるらしいが……ブラッドがそれをやった時、出てきたバカでけぇスケルトンがブラッドを殺そうとした。どういうワケなんだ?」


 召喚魔法とかってなんとなく、というか普通に考えて召喚した主人に召喚されたモンスターが従うだろ。おかしいよな。


 質問の最中に扉を開けてバルコニーに出てたから、日の光を浴びながらルークが振り向いて口を開いた。


「その時ブラッドさんは命令をしていましたか?」


「命令? やってなかったと思うが」


「あっ……魔導書を軽く読んだのでわかりましたが、『自分に従え』と最初に言わなければ主従関係は結ばれないと」


「軽く読んだだけでわかったのか!?」


「はい。割と見やすい所に書いてありましたからね……ブラッドさんは……その、お気の毒に」


 ブラッドのヤツ、残念だな。頭が。



「さて、お話を……しましょうか、マコトさん」



 まっすぐに視線を飛ばしてくるルークの瞳の奥には、なんだか大きな、覚悟のようなものが見えた気がした。

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