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能力ガチャを引いたら、武器ガチャが出ました(笑)  作者: 通りすがりの医師
第三章 異世界人と交流を深めろ
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#79 妹はしっかり者?

「―――――はっ、ここは!?」


「へう!?」


 目を開けたその一瞬、天国かと思った。だが映る景色はまんま木材でできた天井だ。こんな質素な天国あってたまるか。

 いやぁしかし背中に矢が刺さってるってのは生きた心地がしなかったぜ。今は、もう抜かれてるが。


「あ、起きたんだ。さすがに日は暮れてきたけど……回復早いね」


 ここはベッドの上だな。で、傍らには――天使みてぇに愛らしい顔したエルフ、ルールが椅子に座ってる。

 ってか「へう!?」とか言ってたがルール、お前も寝てたろ。


「私とお姉ちゃんの家へようこそ、人間のおじさん。私はルール」


「助けてくれたんだろ? マコトだ。よろしくな」


 そう言って握手を求めたがルールは俯いちまって、手を握ってくれることはなかった。


「やっぱり完全には助けられないよ、積み重ねてきた過去があるから。ドレイクだけじゃなくて、他の村の人達も、私も、お姉ちゃんでさえ」


「そりゃそうだよな、当たり前の話だ。じゃあ今は一時的に匿ってくれてる感じなのか……その割には傷が痛くねぇけど?」


 ルールによると、とりあえず矢を抜いた後に回復魔法かけてくれたらしい。姉のリールを助けてくれたから、って理由で。

 ほんと姉想いの良い妹だな。その上プラムにも負けず劣らずの美少女だし、魔法も使えちまうし最強か。


「リールが俺を助けてくれたから、その恩を返したに過ぎないんだけどな。そういやリールはどこだよ?」


「たぶん今……ドレイクのとこ」


「な……!?」


 嫌な予感が脳内を駆け巡る。この村に来た時……ドレイクが一度目にリールとルールを、二度目にはまたしてもリールを殺そうとしたこと。そればっかりが思い出されるんだ。

 そんなヤツと二人きりなんて、リールは無事なのかよ。


「お姉ちゃんはね? 怒りっぽいドレイクの感情を鎮めるために毎晩――彼の性欲を、満たしてるの」


「なっ!?」


 ドレイクの性欲を満たして怒りゲージを鎮める――そんな『日課』を今日は早めにということで、夕方にやり始めたってかヤリ始めた。ああ、聞きたくなかった。


「乱暴なリーダーから村を守るために、お姉ちゃんは犠牲になってる。ドレイクは行為の途中途中、人間を貶してお姉ちゃんを洗脳してるって――」


 うつろな目で淡々と語る少女を見てられなかった俺は、


「おい、おい! それ以上はいいよ、もうわかったから! それ、妹として放っといていいのかよ? ドレイクを倒したいなら俺も――」


「だって、それがお姉ちゃんの選んだ道なんだもん……助けてあげたいのに……『助けはいらない』って何度も言われたから……彼がリーダーである理由も色々とあるし、おじさんももうこれ以上はこの村に関わらないで」


「……………はぁぁ……………わかったよ。出口はどこだ?」


 関わらない方が、いいのか。このことについてはもう忘れるべきかな。それが正解、ってことにしとこう。


 ドレイクも、村人達に責められて少しは大人しくなったようだし、リールによって怒りも鎮められるだろうし、そもそも俺を殺すことが目的だったんだからどう転んでもサンライト王国との戦争なんて起きねぇだろう。

 だったらこれ以上この村にいる必要はねぇな。また俺が仲間割れの火種になるのがオチだ。


 たぶん外に出れば教えてもらった抜け道まで一人でもたどり着けるが――念のためリールに教えてもらったことを隠そうと、出口について質問しといた。


「家を出て右にまっすぐ。端っこに岩があるから、それをどかせば出れるよ――あっ!!」


 途中で急に叫ぶルール。どうした。


「お……教え……ちゃった……目を隠して案内しなきゃなのに!! おじさん、出入口のことは内緒にしてね!?」


 手をバタバタさせて必死そうだが、


「言わねぇよ。そもそも北の森の道順も覚えてねぇ俺がここまで戻ってこれるワケがねぇ。今回もドレイクに拉致されてなけりゃ、到着は無理だったな」


「そ、そう。誰にも言わないでよ……? それと」


 ベッドから起き上がって立ち上がりドアへ向かおうとする俺に、最後の質問が飛びそうな流れだ。


「忘れちゃったからもう一回名前教えて?」


「マコトだよ! 姉妹揃って、どっか抜けてんな!」


 うたた寝してたっぽいしやっぱ普通の十二歳の女の子か → 受け答えや説明が完璧にできすぎてるからこいつは年齢の割に達観してる女の子か → 失言からのド忘れとはさすがはドジっ娘リールの妹だ。


 評価コロッコロ変えさせるな! 俺はもう若くねぇから変化には耐性がねぇんだよ!


「マコト、ね。お姉ちゃんに伝えておかなきゃ――色々とありがとう」


「気にすんな。俺も、お前ら姉妹に相当助けてもらったと思うから」


 俺の最後の言葉にルールはちょっと困ったような顔をしたが、俺はそれを無視してドアから外へ出て、こっそりと抜け道から脱出した。

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