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能力ガチャを引いたら、武器ガチャが出ました(笑)  作者: 通りすがりの医師
第三章 異世界人と交流を深めろ
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#75 王様からのお呼び 後編

 俺と一緒にエルフの村に拉致された、相棒のジャイロ。最後に炎でバリケードを作ったけどそれ以外彼は何もしていない。彼の名前を言うわけにはいかない。


「実は書状は同じような方法でもう一通届いていてね……それが、問題なのだよ」


 目を閉じて眉間に皺を寄せる王様は、どうやら二通目の書状にかなり参ってるようだ。

 エバーグリーンは命令無しだけど懐からそれを取り出し、また読み始める。


「『我々の意志としては、礼儀のなってない"人間"というクソ人種と同じ世界に暮らしたくない。近々そちらへ攻め込むつもりである』……という内容です」


 こ、こんなの宣戦布告じゃないか。ドレイクってエルフは……ドレイクって野郎はどこまでイカれてやがるんだクソが。


「わかるかね。このままでは百年前と同じく醜き戦争が起こってしまう。勢力の弱まったエルフ達に負けることは無かろうが……人間にもエルフにも、無駄に血を流させたくはないだろう? しかし君ともう一人のせいでこうなったのだ。何か処罰を施さなくてはならん」


「だから言えと? ……もう一人が誰か」


「その通りだよエイロネイアーくん」


「……悪いが、それだけは絶対に言わねぇ!」


 サングラスを掛けつつ怒鳴る。

 バルガ王の顔は険しくなって、聞いていたエバーグリーンは顔に殺意まで宿してるように見えるな。


 俺に言わせようとしてるヤツ、あんたの息子なんだけどな。


「貴様の首を……今ここで飛ばすとしても言わんか?」


「死んでも言わねぇ!!」


 本当に死んでもいい。戦争が起こるにしろ、とにかく今だ。ジャイロだけは守り通してやる。エバーグリーンと戦ってもだ。

 『騎士王』が剣を構えてる……なんて覇気、なんて威圧感。いつしかウェンディに言われたな、あいつは俺より強いって。抵抗はしてみるけどさすがに俺も終わりか――


 と、その時ノックの音が響き、大広間の扉がバタンと開く。現れた一人のモブ騎士にその場の全員の視線が集まる。


「陛下! エルフの村から、三通目の書状です!」


「なんだと!」


 王様は玉座から飛ぶように立ち上がった。その顔には冷や汗が流れてる。

 手紙を手に報告した騎士は王に向かって走り出すも、


「ほい」


「をっ!?」


 俺が足をかけて転ばしてやった。

 そのまま宙にヒラヒラ舞う手紙をキャッチし、俺は誰より先に読み始め、


「読めん。マゼンタ頼む」


「まったく、強引な人ね。嫌いじゃないけど」


 俺の斜め後ろから静観してた魔術師団長を利用しちまったのは、誠にごめんなさい。

 内容としては、


「『戦争を起こしたくないのなら、明日の朝にマコト・エイロネイアーを北の森に来させてほしい。話し合いがしたい。もちろん一人でだ』……ということよ」


 俺に、一人で北の森へ来いってのか。今までの威勢はどこへやらって感じだが、たぶんドレイクの目的が戦争ってのはブラフだな。俺を呼びつけたかっただけかもしれん。その証拠に、


「そうか、それで解決するということか。ならば簡単な話だな。そうだろエイロネイアーくん?」


 戦争にビビってた王様が安心しきってる。これは俺をエルフの村へ寄越す流れだろう。


「陛下、もう一人は如何様に?」


「そんな事は後でいいだろう。ドレイク氏の要求はエイロネイアーくんのみだ。きっと、もう一人はそこまで事件に関与していないんだ」


「し、しかし肝心のマコト・エイロネイアーへの処罰の方も――」


「あ〜ん、もういいじゃないのよ♡」


 やけに俺ともう一人に罰を与えたがるエバーグリーン。それをなだめるのはマゼンタ。


「色々あったエルフの村へまた戻ることは、マコトさんにとってかなりの罰じゃないかしら? 殺されてしまうかもしれないけれど、彼一人の犠牲で国は助かるわ♡ それに……」


 俺に流し目を向けたマゼンタは、直後に近づいてきて俺の腕を抱き、豊満な胸を押しつけてきた。


「私の一番の弟子ルークに、あなたの息子さんも、この人を気に入ってるのよ。ちょっと抜けてるところもあるけど……私も気に入ってきたわ♡ この場で罰するなんて可哀想よ」


 恐ろしく柔らかくて温かくて、悪い気分じゃないんだが、


「おいコラ! 何押しつけてんだお前は! まさかこの方法で団長まで登りつめたってか!?」


 と、立場の違いを感じ、この場の雰囲気を壊してるような気もして、マゼンタの体を押し戻した。


「つれないわねぇ〜仲良しってことを表現してるのよ〜」


「できてんのかこれで!?」


 まさか魔術師団長と漫才することになるとは。誰が予想したよ。


「……はぁ〜ぁ、もういい。もうどうでもいい」


 エバーグリーンは顔を片手で覆ってクソ長いため息ついて、もはや呆れた様子だな。このやり取りじゃ無理もねぇよ。


「よしわかった。王様に騎士団長に魔術師団長。俺は明日の朝、北の森へ行ってエルフ達と話してくる。戦争なんて起こさせねぇから、任せろ」


「まぁ戦争が起きなければ君などどうなってもいい……と言いたいところだが、君も一人の国民なのだ。本当に大丈夫かね?」


「黙って信じてろよ、王陛下。俺ともう一人の首が飛ぶのと引き換えってんだ。もし話し合いが上手くいかなくても、エルフを黙らせてきてやるぜ」


「……はぁ……あまりエルフを刺激はしないでほしいものだが……では……不本意だが信じてみるとしようか」


 俺がただの民間人より遥かに強いとか、そういう噂は街でも流れてるし、聞いてなくてもきっとマゼンタとかが王様やエバーグリーンにも世間話的に話してると思うんだ。

 まぁなんであろうと、戦争を避けるって話なら俺が行くだけで解決する話だし。


「どこまでも無礼な奴め……」


 俺を睨む強面のエバーグリーンだが、こりゃあ怒る気力を折られたんだろうな。俺のノリに。


「エバーグリーンにマゼンタよ。彼に国民証を返して、城の外まで送ってやってくれ」


「「は」」



▽▼▼▽



 王様の命令通りに国民証を返してもらい、マゼンタが城の門の外まで誘導してくれた。


「さっきは助かったよマゼンタ」


「気にしないで……それよりマコトさん。私と初めて会った時、あなたは自分の立場に迷いを感じてたでしょう」


「かもな」


「でも今はあの時より、だいぶ迷いが無くなってきたようね。いい傾向よ」



 そうだろうか。割といつも迷いっぱなしな気もするが。



「そうそう。今日は私の部屋で寝てちょうだい」


「……は?」


「あなたが逃げてしまってはいけないけど、エルフとのいざこざの話が広まってもいけないわ。つまりルークやプラムにあなたの監視を頼めない……だったら私が監視するしかないじゃない?」


「俺、逃げねぇけど……」


「言葉ではどうとでも言えるわ。あなたを信じたいのは山々だけど、これも王様の命令だから♡」


 十二歳のプラムとの同居も最初は抵抗あったのに……三十歳くらいの大人の女とまで同居するハメになるとは。人生わからねぇもんだ。

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