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能力ガチャを引いたら、武器ガチャが出ました(笑)  作者: 通りすがりの医師
第三章 異世界人と交流を深めろ
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#72 非番の女騎士

 俺にしかわからないくっだらねぇナンセンス異世界ジョークをブチかました後、プラムは疑問が半ば解決して満足したのか、リリーを見つけて速攻おしゃべりに行った。

 俺みたいなオッサンより、同年代の友達を大切にするべきだもんな。


「さて俺はブラッド探しに集中だ」


 そんな風に呟いて街をゆるーく探索していると、少し離れた通りに人だかりができてる。騒がしいな。

 ちょっと近づいてみるか。


「――貴様ら、盗みを働いたそうだな」


 ドスの利いた声じゃあるが、どうやら女が喋ってるみたいだ。もう少しで姿が見えるぞ。


「だから何だよ。この金はもう俺んだ」


「いいや、持ち主に返せ」


「やだね! 女が粋がって……俺らに勝てんのか!?」


 おいおい、女一人対男ニ人かよ。それにしても威勢がいい女だな……って、


「ウェンディじゃねぇか」


 人垣で見えなかった三人の顔をようやく見ると、女の方は知った顔、騎士ウェンディだ。


 んで二人の内、右にいてさっきから喋ってるチンピラも見たことあるような……あ、この前メイドのミーナに絡んでたヤツと同じだ。

 飛び蹴りをくらわせたはずだが、懲りねぇ男だな。


 褐色の肌、紫髪のポニーテールは相変わらずなウェンディだが、服がなんとなくいつもの鎧とか騎士の制服? と違って私服っぽい気が。


「うおぉ!」


 左の男が右ストレートを繰り出すが、ウェンディはそれを流水の如く躱して男の腹に拳を打ち込む。続けてうなじの辺りに手刀を入れ、男はあっさり倒れた。


「こ、この女!」


 懲りねぇ方のチンピラはナイフを抜く。なんでいつも最後のチンピラがナイフ持ってんだ? ウェンディ自身に臆してるような素振りは見当たらねぇが、援護しよ。

 俺は右手に泥団子を生み出す。水分多めでベチャベチャしてる。それをチンピラの顔めがけて投げつけた。


「だぁっ!? なんだこりゃ――」


 泥まみれになった顔を擦ってる間に、ウェンディの静かで強烈な回し蹴りが側頭部に命中。チンピラは気絶した。

 野次馬が彼女に拍手を送る。それを聞きながら小さく息をつくウェンディの元へ、フルプレートの騎士が走ってくる。


「ウェンディさん! 失礼しました、私が追いかけていたのに……」


「フン、気にするな。だが一応非番なのでな。金を持ち主に返すのと、こやつらの連行を頼む」


「もちろんです!」


 非番ね……非番なのに金ばっか欲しがるチンピラと戦うハメになるとは、運の悪いことで。


「ん? そこにいるのはマコトか!? 久しいな!」


「よう、ほんとに久々だよな」


 迷子捜索が終わってからの一週間はこいつと一度も会わなかったからな。



▽▼▼▽



 近くの建物の壁に二人並んで背をもたれる。


「あの時は悪かった。お前の言いつけを守らず"ジョーイ"の巣に侵入しちまって」


「ああ、そんなこともあったな。私は忘れていたが貴様はまだ覚えていたんだな」


「そりゃそうだろ、一歩間違えたら大惨事になってた」


 "ジョーイ"なんてのも今では懐かしい名だ。

 しかしウェンディの反応を見てると、その件は本当に忘れていたようだ。まぁ結果全員無事だったからって割り切ったのかな? 俺はそういうのあんまりできねぇんだよ。


「それより退院直後ジャイロと戦ったという話だ。実際見てないから半信半疑なんだが、あれは作り話ではないのか?」


「バリバリ大マジだよ! あの野郎俺を何発殴ったと思う!?」


「本当に戦ったのか! はははっ、やはりな! ほら、あの時言っただろう『ジャイロがマコトのことを知ったら戦いたくなる』と、見事に的中したな」


 確かになんか、ゴブリン討伐終わった頃にそんなこと言ってたような。ジャイロのことをよく知ってるからこその的中だな。

 いつも鋭い目をしてるウェンディがこんなに楽しそうに笑ってると、こっちまで和んでくるぜ。


「それで、最近の調子はどうだ。この国にも慣れてきたか?」


「まぁ割とな。プラムから徐々に文字も教わってるし」


「うむ。それは良かった……って、まだ字を覚えてないのか。それにその服装も相変わらずだな」


 英語とかならまだしも、見たこともない文字を一から覚えるって相当キツいもんだぞ。


 服装についてはスーツにネクタイにサングラス。ミーナに洗ってもらったりしつつ、俺はこの格好を一度も崩さずにここまで異世界生活を送ってきちまったな。


「ん? 文字を知らない……とは、よく考えるとマコトはどこで生まれたのだ?」


「遠〜くのへんぴな村さ。誰も存在を知らないくらいずっと遠くのな」


「言語が違う村……か?」


 今更はぐらかしても疑われたりしないだろうと、出身を問われた時はいつもこう言って切り抜けることに決めてる。

 決めたのは最近だが、ルーク、プラム、ミーナなんかにはこう説明したな。


「てかお前こそ、俺のこと友達っつっといて『貴様』って呼ぶの変えねぇんだな」


「あぁ、はは。それは私の悪い癖だ。誰でもそう呼ぶのさ」


「クセ強いな」


「何を言う。マコトには負けるさ」


「なははは! 一理あるな」


 一理あるとは勢いで言ったが、俺そんなにクセ強いか? 初対面のヤツに敬語を使わないことぐらい――と言っても周りがみんな俺より年下だしな。


「ま、質問する前から貴様が慣れてきているのは察しがついていたがな」


「え? なんでだ?」


 そう聞くとウェンディは片目を瞑って、



「表情が朗らかだ。前より笑顔が増えている、自分でも気づかないか?」



 首を横に振って答える……ん〜気づかなかったぜ。言われてみればそうかもな、ってレベルだ。


「あ、そうだ。お前ブラッドがどこに住んでるか知ってるか?」


「ブラッド……そうか、今や貴様の子分だったな。彼らはとある路地裏に住んでいるらしいぞ。ここをまっすぐ行って――」


 なんとか聞けたが主目的を忘れるとこだった。ウェンディは親切に道順を教えてくれて、想像以上に早くブラッドに会えそうだな。

 にしてもあいつら路地裏で暮らしてるのかよ、ホームレスなのか。


「じゃ、俺急ぐから。大事な休みを満喫しとけよ、騎士様!」


「ではな」


 女騎士と別れ、教わった道を駆け出した。

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