#71 くだらねぇジョーク
ルークに話した通り、今日の目的はブラッド達を探すこと。金貨二十枚を渡さねぇとだからな。
一応俺の子分ってなってるのに、住んでる所がわからねぇとは不便だ。
あともう一つ心配なのは、あいつらがその場しのぎで『子分にしてください』と言った可能性があるって話。
だったらブラッドの俺への忠誠は嘘ってことになるから、もう一度会えばまたケンカになるかもしれん。
まぁ腹に風穴開けてまで俺のこと助けてくれたヤツだ、疑いたくはないんだが――
「マ〜コトっ!」
「うわああああああああ!」
「えぇ……そんなに驚かなくても……」
ものすごく声出た。
背後から迫ってくるプラムに全然気付かなかったわ。無駄な思考に没頭してるってのは危ない状態だな。
「プラム……貴様なぜここがわかった?」
「何その聞き方……食堂の窓からがっつり見えてたけど」
あれ、ここまだ魔術師団の寮から見える所なのか。もっと歩いてる気がしてたが、無駄な思考に没頭してるってのは危な――これ以上はクドいか。
とりあえずプラムには今日俺が何をしたいかってこと、全部話した。
ブラッドと、特にゼインにはそこまで好印象を持ってないだろうこの子だが、何も文句は言ってこない。
「じゃあ私もマコトを追いかけてきた理由を言うと……そろそろ真実を聞きたいの」
「真実?」
「そう、あの『変な魔法』の真実をね!」
プラムは俺を指差し、なんとなく名探偵とかがやりそうなイメージがある決めポーズ。
「アレか。いいだろう話してやる」
「そんなあっさり!?」
一瞬で決めポーズを崩したプラムはオーバーリアクションで驚いた。
「ルークの目に狂いはねぇさ、俺は魔法なんか使えん。これは『能力』だ。生まれつき持ってたんだよ」
「何それ……ちょ、ズルくない?」
「いやいや俺からすれば火の魔法なんてカッコいいの使えるお前が羨ましいぜ」
生まれつきって言えば、難しいことは自分でもわからないって説明もつく気がしてな。完成度の低い嘘をついた。
転移の話とか(言ってもたぶん問題はねぇだろうけど)長くて面倒だし、俺の方から話す必要ねぇだろ。今更聞かれることもほぼあり得ないしな。
でもって「それに」と言葉を繋いで、
「お前だってできるかもしれんぞ? 例えば、異世界に転移させられたりとかすれば」
「もー、からかわないでよ。そんなの絶対あり得ないでしょ」
「ぷっ……ははは! そうだな、あり得ねぇな! 異世界転移なんてだははははっ!」
「今の何が面白いの!?」
「いや別に? ただちょっと……ぷははは、まったくリサって奴はいつも俺の笑いのツボを……ははは!」
膝を叩いて笑う俺を、プラムは危険物でも見るかのような目で見た。直後に自分の顔にゴミとか付いてないか確認し始める。
「……? ちょっと待って、リサって誰?」
「んん? ははははっ、そんなこと言ったか? ははは、知らねぇよ誰だそりゃ、はは、あー笑い死にそうだぜ」
「ふーん……」
目の前にいるこの俺が異世界人だなんて、プラムはきっと想像もついてないだろうな。それを考えると笑えてくるんだ、失礼した。




