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能力ガチャを引いたら、武器ガチャが出ました(笑)  作者: 通りすがりの医師
第一章 異世界で生き延びろ
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#6 〈超人的な肉体?〉と決断

「今の……どの辺りが能力なんだ?」


 突然にして初めての、魔物との戦闘を勝利で飾った俺。だがあの戦いのどこに『能力』があったのか思い当たらねぇ。


『一つ目の能力の名は、《超人的な肉体》です。ガチャではかなり当たりやすい能力ですが』


「……『肉体』が、能力?」


 とりあえず後に続いた変なガチャとかの話は置いといて、能力名が矛盾している気がして聞く。


『そうなります』


「じゃあそう理解しておくが、もう一つ」


 女神様の姿なんかどこにも見えねぇけど、人差し指を立てて『(いち)』を表現。


「肉体だけって地味だし、『超人』にしては弱くないか」


 普通にぶん殴られて鼻血噴いたしな。見るからに化け物なオークを二体、一撃とニ撃で倒したのは自分としてはもちろん凄いが、この世界の基準としては凄いのかわからない。


『確かに地味かもしれませんが、安定した筋力・耐久力を得られるという、一番いい能力ともとれます』


 なるほど。俺が地味だと思った理由は、もし戦闘系の能力ならもっと『炎を出す』とか『ビームを撃つ』とかそういうのを想像したからだ。

 転移時の女神様ギフトは二つの能力のみ。つまり最初から強いってわけじゃない、《超人的な肉体》が当たらなければ所詮ただの人間の身体能力。

 もしビームを出したりできても、自身が弱いんじゃとても生き残れない上にカッコ悪い。


「ってか、よく考えると……この能力無かったらあの時、もしかすると……」


 そもそも普通の肉体のままだったら、オークの拳を顔面に食らった時、鼻血じゃ済まなかったかもしれないな。真相がこの先わかることは無さそうだが。


『それから"弱い"という部分については否定しません。何故なら、この《超人的な肉体》に限らずほとんどの能力は鍛える事ができますので、まだ成長の途中なのです。あとは慣れでしょう』


 ほう、戦闘に使うとレベルが上がっていくって感じのアレか。まあ想像はつく。


 あれっ、いや待てよ……さっきの……


「そういえばお前さ、最初の方になんか『ガチャで当たりやすい』とか言ってなかったか? それって、俺以外にも転移者――」


『もう一つの能力も頑張って開花させてくださいね。ではまた』


 最初の方に置いておいた話。ふと、もしかしてあれはものすごい大事だったんじゃないかと思って聞いたのに……話の逸らし方が強引過ぎやしねぇかな。

 そうツッコんだってもう返答は無い、知ってた。重要っぽかったが考える気が失せちまったよ。



▽▼▼▽



「しゃーねぇ。いい能力を手に入れたとポジティブに思っとこうか」


 《超人的な肉体》の良さを簡潔に表すなら、『シンプル・イズ・ベスト』って感じかもな。

 身体の強さが安定するから、二つ目の能力を気兼ねなく期待ができる……たぶんそういうこと。


「……こんないい歳してビーム撃つとか嫌だな」


 どうやら俺には想像力が無い。『能力』とかいう意味のわからん言葉使われても、ビームとか炎とか氷くらいしか思いつかない。

 これは想像力が無いだけか、はたまたおっさんになると夢がなくなるゆえか。二つ目の能力はどんなんだろうなぁ。


 しかし……


 これでも、俺はただこの先の異世界生活にうつつを抜かしてるだけじゃない。

 自分が元の世界から逃げたかった理由に失望し、落胆しているし、でもやっぱりただの無能な男よりは()()()の方がだいぶイケてるとも思う、複雑な気持ちだ。


「あー、モヤモヤするばっかりだ」


 帰れそうな雰囲気を欠片も感じないこの状況で妙な罪悪感に悩まされても意味がないのは丸わかりだ。

 わかっているのにどこかスッキリしないんだ。きっと俺が仕事ダメダメだったのは無駄なことばっか考えてたからだろうな。


「腹くくるしか、ねぇんだよなぁ……」


 考えるのが無駄なら、やることは一つ。

 元の世界で無能だった分、異世界で強くなればいい。今までの自分を反面教師に、大暴れしてやるんだ。


「――あっ」


 ついに決断した俺はもたれていた木の幹から離れて立ち上がる。やっぱ初めの目的地はあの城かな、と思って顔を向けた。

 まだサングラスをかけたままの俺が視界に入れたのは、草原の中の道を走る金髪の少女。

 いかん、完全に忘れてた。あのクソガキ俺にオークなすりつけて逃げやがったんだっけ。


「んん?」


 城の下の方をよーく見ると、周りが壁に囲まれている。さすがにあの城には高さで負けるがな。

 詳細は遠すぎてわかりづらいものの、門みたいなのがあって、そこからクソガキが入って行くのはなんとか確認できた。


「色んな意味で、とりあえずの目的地はあそこしかねぇな」


 一人歩き始めるが、果たして元無能人間が本当に大暴れなんかできるのかどうか。

 俺さえも知らないこの『俺』がどこまでできるのか、見ものだ。

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