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能力ガチャを引いたら、武器ガチャが出ました(笑)  作者: 通りすがりの医師
第三章 異世界人と交流を深めろ
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#60 エルフの村

 立ち直ったジャイロと一緒に、曲がった鉄格子を通り抜ける。

 ひとまずここはまだ北の森の中のように見えるが、


「向こうに家があるな。どこだよここ」


「わかんね。オレも北の森には何度も来たが、こんな村みたいな場所は見たこともねぇ」


 木には囲まれてるが開けた土地で、だいぶ遠くに民家がいくつか見える。集落というか村というかそんな感じだ。

 ちなみに檻はこの村の外れ、つまり端っこの方にあるが、周辺に木とかツタとか雑草が生い茂っててすぐには出られそうもねぇな。


「……あ、でも聞いたことがある。北の森のどこかに、()()()達の隠れ住む村があるってな」


 エルフってなんか、別の種族だよな。ああ……最近忘れかけてきてたが、ここはファンタジーな世界だった。

 この場所が本当にそのエルフの村なのかは断定できな――



「人間ども! そこからどうやって出やがったんだ!?」



 突然、民家の影から何人もの男が現れてこっちへ向かって来る。俺とジャイロは迷わず両手を上げた。なぜなら、


「マコト知ってっか? エルフと人間は仲が悪ぃんだよ」


「もうその村で確定だな」


 男達は全員耳が尖ってて、なおかつ弓矢をこちらへ向けてたからだ。



▽▼▼▽



「お前ら……檻を脱出したのはもういい。なぜここに連れて来られたかは理解しているのか?」


 先頭で弓を構える、ガッシリした体格の男がイラつき気味に聞いてくる。立ち位置からしてリーダー格だろう。


「知らねぇな。何かした覚えもねぇし」


 俺はとりあえず事実を答える。実際この状況は意味不明だしな。


「さすがは人間、クズの極みだな。お前らは我々の仲間を襲っただろうが」


「「はぁ?」」


 ジャイロと顔を見合わせる。

 この男はいったい何の話をしてやがるんだ。勘違いも甚だしいぞ。


「それで檻に閉じ込めて後で処刑しようとか、そういう話になったのか? 言っとくが俺達はにんげ……エルフを傷付けるなんてしてねぇよ」


 おっと、耳以外は人間と同じだからわかんなくなっちまった。


「嘘をつけ! 俺はこの目で見たぞ、見たこともない兵器を握ったお前がリールを押さえつけているところを! お前も見ただろうルール!」


「はい、見ました」


 リーダーとその隣の男の間から出てきたのは、見た目十二歳くらいの女の子。名前はルールか。

 やはり尖った耳、薄い緑の髪に白い肌、なんだか見覚えがあるが、


「たぶんこの人がお姉ちゃんに暴力を」


 お姉ちゃん……そうか、わかったぞ。

 リールってのはカエルの腹の中にいた十八くらいの女、そこにいるルールはその妹ってことだな。


 俺はリール(彼女もエルフだったワケだ)を助けただけだが、どうも誤解されちまってるらしい。


「近くにマシュフロッギーもいたけど……どういう関係かはわかりません。とにかく今お姉ちゃんは衰弱していて――」


「こいつらが! やったに! 決まってる!!!」


 考察するルールの思考回路を遮断するかのごとく、リーダーの男が叫ぶ。男の目は――憎悪に満ちている。


()()を放て、早くしろ! 愚かで欲深い人間に罰を与えるんだ!」


 リーダーの指示に一人のエルフ男が駆け出し、そして戻って来る。手には鎖が握られていてその先には、


「グルル……」


 鎖と繋がった鉄の首輪をはめてる、大きなオオカミがいる。

 おいおい弓矢で仕留めるんじゃ面白くねぇからって、俺達を食わせようってのかよ。ヨダレ半端ねぇけど。


「こいつはずっとこの村に近づく魔物や人間を退けてきた、つまりこの村の守護神も同然。普通の人間が戦えば……ああなるのがオチだ」


 リーダーが指差す方向を見ると、そこにはちょっとした人骨の山が見える。質問してる暇はねぇが、村に迷い込んだ人間はこのオオカミに軽く掃除されちまうんだろう。

 そして俺達もその対象になるってことだ。


「マコト。どうする、戦うんだろうけどオレは必要か?」


「今は俺一人で十分だ。崖っぷちの状況だからお前の出番は必ず来る。まだ待ってろ」


「……よし、あんたを信じる。剣が無いのが気持ち悪ぃけど、魔力を集中させとくぜ」


 そういえばジャイロは剣持ってねぇな。エルフに没収されてこの村のどこかにはあるんだろうが、探す時間があるのかどうか。

 と思ってたら、男がオオカミの鎖を握る手を放した。一直線に走ってくるが、正面から戦うんなら問題はない。


「あれは魔物でなくて動物らしいからなぁ……」


 要するにただのオオカミだ。村の守護神とか言ってたし、個人的に殺すようなことはしたくねぇな。

 右手にボクシンググローブを装備し、身構える。


「ガルルァァッ!!」


 飛びかかってくるオオカミの横っ面に狙いを定め、右フックをねじりブチ入れる。


「ギャンッ!!」


 顔にグローブがめりこみ、そして離れ、オオカミが吹き飛んでいく。木の幹に衝突し、根本へ転がり落ちた。


「……あー、死んではねぇと思うぜ? 今のわんころ」


 グローブ付けてたし、パワーも加減したからな。だが泡を吹いたオオカミは立ち上がってくる様子がない。たぶん気絶してるんだと思う。


 状況は未だよくわからねぇ俺にも一つだけわかる、



「……!!」



 エルフの村全体に、戦慄が走ったようだった。

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