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能力ガチャを引いたら、武器ガチャが出ました(笑)  作者: 通りすがりの医師
第三章 異世界人と交流を深めろ
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#59 檻の中、二人のパワーバカ

 ……あー、よく寝た。床がなんか硬くて冷てぇような気はするが、そんなの気にせずとも――



「出せコラァ!! ここどこだオイ出せ!!」



 あれ? ここは俺の知ってるいつもの部屋じゃねぇな。寝ぼけてんのかな俺は――



「オレをこんなもので拘束できると思うなよ!? ボコボコにされたくなきゃさっさと出せや!!」



 夢でなけりゃここは……どこだ? なーんか薄ぼんやりと鉄の格子みたいなのが見えるんだが。しかも四方それに囲まれて――



「クソーッ!! 出さねぇならオレは叫び続けてや――」


「うっるせぇな! 誰ださっきから――いやジャイロじゃねぇか」



 壊れた目覚まし時計のごとく永遠に叫び続けるうるせぇのは、やっぱり赤髪の脳筋男ジャイロだ。


 ……どうしてこうなった。

 ここは檻の中で間違いねぇ。囲んでるこの物質もまぁ鉄か、もしくは鉄っぽい物だ。ジャイロもガンガン殴ってるのに効き目が無さそうだ。


「火の魔法使ったら溶けねぇのか、こりゃ?」


「試してみたが無理だった。火もそんなに維持できねぇしよ」


 鉄って何度くらいで溶けるんだっけか。わかんねぇよ。試したジャイロも俺と同類っぽいのは触れないでおこう。

 さて、鉄格子を曲げて外に出ますかね――


「ったく、情けねぇなオレ。騎士団の二番手なのに檻一つも抜け出せねぇ」


 ま、まさかジャイロ、この男――今、弱音吐いたのか?


「さっきもあんたを助けられず、乱入者にあっさり眠らされてこのザマだよ。ヒョロ青髪があの時もっと近くにいたら上手くやってたろうな……親父だって、もし捕まってもこんな檻ぶち破る」


 あぐらをかいて、苦笑しながら俯くジャイロは相手が俺だからか好き放題ぶちまけやがる。

 ヒョロ青髪ってルーク……だよな? あいつのこと認めてたのかよ。というか自分より有能だと言ってるように聞こえる。

 それに親父ってエバーグリーンとか言った……騎士団の団長、魔王を倒した男か。人間離れした強さとか聞いたが。


 正直驚いた。

 悪いが俺はこの若者をただの戦闘狂で脳筋なバカだと思ってたから。『劣等感に苛まれる』なんてできるような男じゃねぇと、単純なヤツだと思ってたから。


「誰がオレらを閉じ込めたんだか知らねぇが、運のいい奴なのは確かだ。檻から脱走することもできねぇ奴らを――」


「できるぜ」


「あ?」


 完全に諦めてるらしくネガティブモード一直線のジャイロへ、反論を返す。俺にも話させろ。


「俺なら、この檻をぶち破れるからな」


「冗談だろ――ああ、いや、そうか。あんたはすげー強いんだった」


 今のところ俺は悩んでる男にトドメを刺した最悪の男って感じだが、もちろんこれだけじゃ終わらない。


「ジャイロ。俺達は似てるよな」


「は? どこが? オレには檻を壊すなんてできねぇぞ」


「檻を壊すことは問題じゃねぇよ。どっちも『パワーバカ』だって話だ」


 パワーバカって言うと、思い出すのはブラッドだ。あいつも自分で言ってたよな、「自分には力しか無い」とか。

 その点は俺にもピッタリ当てはまる、ほぼ同じだ。しかしジャイロには少し当てはまらない。


「ルークとは比較対象にならねぇ。お前も俺も『パワーバカ』、筋力にばっかりものを言わせてるワケだ」


「でもあんたの方が『ぱわー』? がある」


「その通りだがちょっと違う――俺とお前は似てるが、たった一つ変えることのできねぇ決定的な違いがあるじゃねぇか」


「オイ、似てるって言っといて違うって話がメチャクチャだぞ!」


 メチャクチャなようで、たぶんそうではねぇよ。この男には考える気が無さそうだから答え言っちまおう。


「魔法だよ、ジャイロ。お前は火属性の適性を持ってるだろ」


「……なんだそりゃ。さっき話したばかりだろ、オレの火は弱い。それにあんただって変な魔法みたいなの使ってんだろ!」


 変な魔法ってのは『武器ガチャ』のことだろう。確かにこの能力はなかなか使い勝手が良い。可能性も無限大。

 だがある問題が存在する。「自分には力しか無い」……つまり、


「使えるが、俺の(オツム)がついていけてねぇ。武器を生み出せたところで……俺には振り回すことしかできねぇんだよ」


 そう。けっきょくは《超人的な肉体》に頼るだけ。

 こんなにも良い能力なのに、活用できてるとは到底言えない。宝の持ち腐れとはこのことだ。


「お前の魔法はまだ死んでない。俺のは持ち主のせいで死んでるも同然だがな? お前のは使いどころが違っただけ、その火の出番はこの檻の中じゃねぇってことだ」


「……」


 ジャイロは俯いたまま黙りこくる。

 俺は仕方なく鉄格子へ近づき、その内の二本を握る。


「うおぉぉぉ!!」


 叫ぶと、体中から力が溢れ出てくるような感覚。見慣れた白いオーラが出始め、握ってた硬い格子がぐにゃりとひん曲がる。


「さ、開いたぞ。これだけが俺の取り柄だからな」


 さっきから自虐言いまくりの俺に、ジャイロは訝しむような視線を向けてくる。



「あんたを――信じていいのかよ、マコト」


「好きにしろ――もう出ようぜ、相棒」



 こんな息の詰まる所は、俺達のいるべき場所じゃねぇ。

 外に誰がいるか知らんが俺達のパワーを見せてやろう。そう思いながら、座り込む彼に手を差し出す。


「ったくよぉ。それ嘘だったらハリ倒すからな」


 厳しいことを言いつつも、歯を見せて笑顔のジャイロは俺の手を掴んだ。






要は、ジャイロにはまだ可能性があるよって話です。

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