#52 まおう
やっとルークと合流してレストランに入店。店員っぽい人がドタバタと忙しそうで案内とかはされず、適当な四人席に座った。
この店は特に肉が美味い、と聞いて三人とも同じ肉を注文しちまった。何の肉か知らねぇけど牛か何かだろ。
食べながらも色々と世間話というか雑談というかを経て、俺は『今まで放置していた疑問をこういう場で解決するべきじゃね?』と思いルークに聞いてみることにした。
「魔物って、けっきょくどういう存在なんだ?」
「危険な存在ですよ……ってそれは知ってますよね。魔物は、全て『魔王』が作った生物となります」
え!? そんな存在がこの世界にいるのかよ……ちゃっちゃとどっかの勇者が討伐してくれたりしねぇのか。
「魔王ってのは今も暴れてんのか?」
「魔王は……十年くらい前に、現騎士団長のエバーグリーン・ホフマン氏に封印されていますね」
なんだよ、封印されてんのか。それなら安心だが、
「……あれ、製作者がやられたら魔物も一緒にいなくなったりしねぇの? 今普通にいるよな」
「一度は魔王の封印と同時に少し減りました。全部は消えませんでしたが」
急に難しい話になってきた? 減ったと言う割には多い気がするんだが――
「でも、僕がマコトさんと出会ったあの日。ちょうどあの日の一週間くらい前から、魔物がどっと増え始めたんですよ」
「は……?」
出会った日――つまり俺が転移してきた日。の、一週間前か。『マコトが実は魔王説』とかは生まれなさそうだ。よかった。
それはいいとして魔物を作るのは魔王なんだろ? だが減ったはずの魔物がまた増えた……ってことは、
「その時期に魔王が復活したってか」
「封印を破った可能性は高いですね」
「マジか……そもそもどこに封印されてたんだ?」
「恐らくホフマン氏と、彼と近しい騎士しか知り得ないでしょう」
つまり、ルークはおろかほとんどの人間が封印場所を知らねぇってことだ。
理由としては『魔王復活』だの良からぬことを考える輩がいないとは限らなかったから、だそうだ。
結果、復活はしちまったっぽいけどな。
――ん? ルークはその情報知って……まぁ魔術師団のNo.2だし天才だし、知ってても良いのかな。
ちょっと待て、俺は魔物について質問しただけなのに、どうしてこんな重要な情報引き出したような雰囲気になってんだ?
全てが突然すぎやしないか。それに、
「その割にはみんなのんびり暮らしてるよな」
「平和ボケ、という物かもしれません。最近までは魔物が少なかったので」
う〜ん。
ルークからは言われなかったが、騎士団・魔術師団・国のトップも魔物について話し合ったりしてるのかな。気づいてない訳ねぇし……
ん? そういえば魔王を封印したっていう『エバーグリーン・ホフマン』、この一週間で名前は何度も聞いたが、騎士団の団長ってことはジャイロの父親だよな。
息子はあんなアホなのに、親御さんは魔王討伐を成し遂げたのか。すげぇな。相当強いんだろ――
バタンッ!
突然、店のドアが豪快に開かれた。その大音量を気にせず一人の男がズカズカ入ってきた。
「あー腹減った! 肉だ、今日もまた肉食うぜ〜!」
うっるせぇヤツだな、誰だ。と思って振り返ると、
「いやジャイロじゃねぇか」
「お、あんたか。そうだ、ちょうどあんたに用が」
噂をすればだな。




