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能力ガチャを引いたら、武器ガチャが出ました(笑)  作者: 通りすがりの医師
第三章 異世界人と交流を深めろ
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#51 メイドさんの恋

「おい、嬢ちゃん魔術師団とこの使用人だろ? いくら金持ってんだよ〜。ちょっとよこせよ〜」


「や、やめてください……」


 横目に見えて、微かに聞こえたやり取り。

 それは薄暗い路地の入り口で交わされる、いかにもなチンピラと見知ったメイドさんの不穏なやり取りだった。


「え、ミーナ!?」


 彼女は魔術師団に雇われている使用人、ミーナ。

 ブロンドヘアにメイド服の彼女は、今叫んだプラムの友達というポジションも密かにこなしている。


 この状況は俺達にとっても唐突だ。何の前触れもなくこのやり取りが目に飛び込んできた。

 そんな俺にできることなんか、一つだけだが。


「ジャンピングフロントキーック!」


「べごッ!?」


 男の横顔に飛び蹴りが炸裂。路地に転がっていった男は、立ち上がってそのままの勢いで逃走した。

 まぁ追いかける義理は俺にはねぇし、ああいうのは騎士さん達に任せるわ。


「マ、マコト様、それにプラム様も。えと、ありがとうございます」


「怪我は……無さそうだな。よかった」


 このミーナも、一週間の内にけっこう話した人物の一人だな。最初は俺のこと不思議がってるような不審がってるような言動が目立ったが、今や友人だ。たぶん。


「あっそうだ、すみませんでした! ……お手をわずらわせてしまって!」


 たぶんチンピラに絡まれ始めたのもついさっきなんだろう、何もかもが突然すぎて混乱してるようだ。


「気にすんな。ところでどうしてここに? 買い出しか?」


「いえ、その……」


 買い出しではないのか、確かに時間的にはいつもと違う。もっと朝とか夕方とかに行ってるイメージだ。

 もちろん使用人はミーナだけじゃない。もうすぐ魔術師団も昼食だろうって時でもここにいるのは別におかしくはねぇんだけど……


「なんか隠してねぇか?」


「すみません言います! 実はルーク様と外食されるというお話を聞いて……」


「そうか作る昼食が三人分減るもんな。で、ルークがどうした?」


 まぁ三人分くらい減らす内に入るのかって話だが、真面目なルークなら報告するかもしれん。


「私、ルーク様が……好きなんです」


「「えっ!?」」


 メイドが雇い主(?)に恋してるってことか。確かにルークは美青年だが、それって……成立してもまぁ……おかしくはねぇか。ねぇかな?


「……ミーナを思って言うけどさ、あの人は誰にでも優しいんだよ? 良くも悪くも八方美人に等しいんだよ?」


 プラム〜〜〜!? 何言ってんだ恋心抱いてるヤツに残酷すぎるだろお前――


「それでも、そんな彼が好きなんですっ……」


 マジか。



▽▼▼▽



 要するに、かなり前から彼に惚れてたらしい。が、あくまで雇った人と雇われた人の関係というのもあって、まともな会話もできなかったと。

 話したくても話せない、と溜まってた鬱憤が爆発して、俺達を路地で待ち構えていたところをチンピラに捕まっちまったと。運悪いな。


「ただお話をするだけでもいいんです。とにかく彼と話さなければなんにもならないでしょうから……」


「そりゃそうだな」


「待ち合わせ場所は……あ、あのお店で合ってますよね……?」


「おう。来るまではまだ時間あるぜ……たぶん」


 三人で例のレストラン的な店の近くまで来た。ここにルークが一人で来るはずだから、偶然を装って話してみようという作戦。

 俺とプラムはルークに見つからねぇように観察する。


「どんなお話をしたら……」


「ん〜例えばだな――あ、来ちまった。早く行け行け!」


「えっ、ちょっ、そんな!」


 強引にミーナの背中を押し、あくまで文句を言わせないスタイル。


 おかしいな。体感時間的にはまだ約束の時間ではねぇと思うんだが……しかしそうだ、ルークの人間性を考えれば当然かもしれない。

 あいつは五分前行動、いや十分、十五分? いやいや、三十分前行動くらいするタイプだよな。大げさでアホみたいに感じるだろうが、マジであり得る話だ。



「あ〜っルーク様、ぐ、偶然ですね〜!」


「あ、ミーナさん。こんに――」


「はいッ!」



 爽やかな笑顔のルークと比べなくてもわかるほどに、ミーナは笑顔が引きつってるな。さすがに焦りすぎだろう。もしかして名前呼ばれるのも初めてってレベルなのか。

 結果、作戦会議らしいことは何一つしてねぇ(実際しない方が自然体で良いかも)けど、いったいどんな話をするんだ――



「……………………」


「……ミーナさん? どうかしましたか?」



 沈黙!? うっそだろオイ、何も言わねぇの!?



「……お、お仕事や訓練を頑張ってくださいね! またお話しましょうね!」


「あ、はい。もちろん頑張りま――」


「さよならっ!」



 そうして顔を隠したミーナは、陸上の選手かと思うほどの高速で逃げていった。

 いまだ笑顔を崩さないルークは、そんな彼女の背に小さく手を振っていた。


 ……あー、なんとなーく、もう少ししてからルークと合流しようかな。

 なぜかそう思ってしまう俺がいるが、隣のプラムも進む気配が無いからたぶん同じ気持ちなんだろう。

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