#49 昼飯の約束
食堂にて朝食を済ませ、プラムと二人で廊下を歩く。
「今日もまたギルド行くの?」
「そうだな。地道に金を稼ぐ以外やることねぇから」
転移した直後は生き残るため必死にてんやわんやしてた。冒険者になった直後も迷子捜索とかでバタバタしてたな。だが今はマジで何も事件が起きねぇんだ。俺にしては珍しい。
「じゃあ一緒に行く」
この子の同行についてももう何も問題ない。ルークからもマゼンタからも、俺が付き添うならいいと許可を貰ったらしい。
俺のクソみたいな不意討ち察知能力は向上する感じがねぇから、いきなり後ろから魔物になんか襲われたら終わりなんだけどな。そこはまぁなんとかする。
……あ。向こうから歩いてくるのは、
「あ、プラムにマコトさん。おはようございます」
汗だくで、タオルを首に掛けてるルークだ。
どうやら朝食を抜いてずっと魔法の訓練をしてたようだな。プラムもまた「おはよー」と返す。
そういえば転移初日の路地裏でこの二人はケンカ的なことをしてたが、今はもうすっかり仲良しだ。
理由は一週間経ったからだ、ってのは違うぞ。そんなに薄い関係じゃない。
元々プラムは練習メニューがあんまし気に入ってないようで壁外へ脱走しちまって、不満をルークに相談しなかったことが始まりだった。
だが、さっきも言ったようにルークは妹分のことをちゃんと考えて「マコトさん同伴なら出てもいい」と許可を出した。
これがプラムにとっては嬉しかったんだろう、お互いに謝ったりすることなく普段通りに戻ってた。
「二番手なのに、やっぱそんなに汗かくほど練習すんだな」
「二番手だからこそですよ」
軽く言ってみたがそりゃそうだよな。団長であるマゼンタより弱いってのは当たり前の話だが、部下に追い抜かれちまったら面目丸潰れだ。
『天才魔術師』って呼ばれることもあるとか聞いたが、それでも技を磨くのは当然ってワケかね。
「そうだマコトさん。食べた直後ですみませんが、後ほどお昼ご飯を外でご一緒しませんか? お金は僕が払います。プラムも来なよ」
「そりゃもちろんいいが、なんでお前が全部払うんだ? この俺も今は一文無しではないんだぜ」
横で喜んでるプラムを気にせずに聞いた。
この一週間まぁまぁ依頼こなして報酬もそれなりに貰ってるからさ俺。
「なんとなくですよ。意味はありません。時にはそういうのもいいかなと思っただけですから」
「そうか? じゃ、甘えとくか」
「はい、お願いします」
「甘えることもお願いすんのか!?」
まぁルークがやりたいって言うんなら、止めはしねぇけどよ。
四時間後にとあるレストラン的な店の前で待ち合わせる約束をして、ルークと別れて部屋に戻った。
――この時、まだ俺達は知らなかった。その店がちょっとした問題を抱えていることを……




