#47 まだまだ始まり
一日目は目覚めた日。二日目は仕事を探した。三日目は迷子少女を助けた。で、本日四日目ではジャイロと決闘した。
俺自身が厄介事に巻き込まれやすい体質なのかもしれんが、本当のタイムスケジュールはこんな軽い文章では表せないほどに濃密だったな。
そのせいでかなり長いこと異世界にいるような気がしてならねぇよ。実際は全然だ、たったの四日しかいない。目覚めた日からまだ四日だ。
「気になる点は色々とあるよなぁ……」
時間がわからねぇけど、たぶん昼過ぎって感じの王都をぶらぶらと歩く。もう疲れたから寮に戻ろうと思ってんだけど。
気になることってののまず一つ目は……
「全然、超人じゃねぇだろ」
ツッコみたい。これにはツッコませてくれ。普通、《超人的な肉体》あげるよ……って言われたら誰でも思い描くのは『無敵のスーパーヒーロー』的なヤツだろ?
それがどうだ。初日からオークにぶん殴られ、一昨日はブラッドに負けかけた。
多少キングスケルトンの邪魔が入ったとか『闇の魔法』が強かったとか言い訳する要素はある。が、それにしても異世界のパワーバランスについていけてねぇよなこれ。
「なんか、強くすることもできる的なこと言ってたっけな」
これはうろ覚えの女神様の言葉だ。「鍛えることができる」と、そんな感じの言葉を聞いたような。
もしそうなら、未だ成長段階だということで目をつむれる。まだまだこれから強くなれるんだろうか。
そういえば女神様と話してねぇな、ここ最近ずっと……まぁ説明することも無くなったっぽいし、気にしなくていいんだろうけども。
あと微妙に気になることが二つ。
「迷子捜索の報酬。それとウェンディが北の森で感じ取った気配」
まぁ、報酬に関してはジャイロ辺りの騎士団がちゃんとやってくれるだろう。その時を待つだけだ。
ただ、密かに気になるのはウェンディが察知した気配。
――ゴブリン討伐が終わって、耳を回収してた時か。彼女は「誰だ」と言って周囲を見回したんだよな。けっきょく勘違いだと結論づけてスッと終わっちまったが、俺は覚えてる。
ゴブリンが異常に多かったのも、それと関係あるかもしれねぇからな。おっさんなりに気になる。
そうこうしてる内に、魔術師団の領地に到着した。
▽▼▼▽
「もう部屋に戻ってたんだな」
「うん。なんとなく今日は訓練早めに切り上げたんだ」
びっくりしたよ。寮の正面玄関からこっそり入ろうと思ったら「おかえりー」と言ったプラムが窓からロープを降ろしてきたんだからな。
団長にはここに住んでるのバレてるが。
「怪我治るのめちゃくちゃ早いんだねマコト。まさかもう帰って来るとは思わなかったけど、外見たら偶然いたからさ」
「偶然かよ。お前、もちろんお見舞いくらい来てくれたんだよな?」
「行ったよ、でもバカみたいにいびきかいてグースカ寝てたから、つまんなくてすぐ帰った」
「寝てたから、だけで言葉足りるだろそれ……」
さすが、いつもの日常に戻れば発揮される、ニヤつく生意気プラム。正直シリアスよりこっちの方がだいぶマシだが。
「明日から何か予定あるの?」
「ねぇな。疲れたから明日は一日中寝てようかな」
「また寝るのー!?」
お前退院したその日に木剣でタコ殴りにされてみろよ。一生寝てたくなるぞ……なんて面倒くさい皮肉、ツッコみながらもどこか楽しそうな少女には言わないでおいた。
まぁ明日は明日の風が吹くってヤツだ。まだ始まったばかりの異世界生活、金もぼちぼち稼ぎつつ、のんびり生きたいもんだ。




