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能力ガチャを引いたら、武器ガチャが出ました(笑)  作者: 通りすがりの医師
第二章 冒険者となり大暴れせよ
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#40 発見

 かなりの時間をかけてウェンディに説明して、彼女は()()()()に納得がいった……とはすんなりいかないが状況は理解してくれた。


 で、ウェンディと一緒に来てた騎士は「東の墓地周辺でも少女発見ならず」をジャイロ達の方へ伝えに戻った。伝令兵みたいな役割だったのか。

 で、もう夜だったんで広場で火を起こして眠った。

 で、また朝がやって来て、全員で捜索を再開し今に至る。


「なんの痕跡も見つからんですね……」


「そうだな。う〜ん、とにかく俺ら油売りすぎたんだよな。くだらねぇ争いで」


「申し訳ねぇです……それ完全に俺の責任です親分……」


 すげぇテンション低いブラッド。自分達のせいで捜索が中断されたってのを理解して、反省してるらしい。事実お前らが悪いから当然の話だが。


「ところでよ、ブラッド。お前元からあんなにクソ強い魔法使えたのかよ?」


「『闇の魔法』のことですかい? あれはおかしな黒い本を偶然に路地裏で拾って、ちぃと読んでみたら、あんたへの復讐に使えるなと思っただけです」


「そんな危険な本が路地裏に……怖ぇな。その本は今どこにあるんだ?」


「一応持ってやす。もう使う気は削がれましたがね」


 慣れてなかっただろう魔法を利用してまで俺を殺そうとしたのに返り討ちにされた恥か、それともまた使うのが俺に対して気まずいのか。

 どっちか知らんが、本当に使いたくなさそうに苦笑してる。


「そういう親分も、なんか変な魔法使ってましたよね?」


「あ、ま、まぁな。なんつーの……俺固有のヤツだ」


 そんな感じの雑談をしつつ少女の手掛かりを探している俺達だが、ここで事態が動き始める。動かしたのは意外にもゼインだった。


「親分! 見てください、これなんスかね」


「おう。どうしたロリコン」


「その呼び方辞めてもらっていいっスか!? なんとなく嫌な感じがするんスが!」


 とはいえ茶番をやってる暇はねぇな。昨日一日、少女を放置してたんだから。一刻も早く見つけねぇといかん。

 ゼインが見つけたのは道に点在する……糸の塊? 糸って言っても毛糸とかじゃなくて、なんとなく虫が出しそうなやつ。


「うえー、ねばねばしてる……」


 いきなり触るとか危ねぇぞプラム。でもガキってあれだよな。何でもまず触りたがるよな。なんだろう、俺にもわかるあの心理。

 そのネバネバした糸の塊が土の道のところどころに落ちてるのが、どういう意味なのかはわからんがな。


「これは……まさか。マコト、急いだ方がいいかもしれん」


 糸を見て動揺し、ウェンディは糸を辿りながら早歩きを始める。その様子からすると、なにか心当たりがありそうだ。ヤバそうだし急ごう。



▽▼▼▽



「予想が当たってしまったな……」


 ぽつりと呟いたウェンディ。後に続いてた俺達もすぐに彼女の『予想』を目の当たりにすることになる。


「マジかよ、でっけぇ……蜘蛛(クモ)?」


 道が途切れ、そこには深く暗い谷……というか大きな穴ぼこ? 深淵? が広がっている。

 だが問題は途切れたこちらの大地から、同じく途切れてる向こう側の大地を繋ぐように張り巡らされた巨大な『蜘蛛の巣』。


 巣の中心にどっしりと構えるのは巨大な紫色の蜘蛛。胴は太く、八本ある足はそれぞれ長く細く先端が鋭い。顔には無機質な目玉が十個くらい並んでて気味が悪い。


 そして。


「あそこにいるっス……十二歳、茶髪、そばかす、白を基調とした服。かわいいし、迷子の少女で間違いねぇっス。かわいいっス」


 望遠鏡的な道具を覗きながらゼインは、聞いていた特徴と重ねていく。肉眼でも存在はわかるが……

 少女は巨大蜘蛛のすぐ横で、糸でがんじがらめにされてるように見える。


「たぶんあの子は気絶してて……蜘蛛は寝てるみたいっスね。とりあえず今は平気でしょうが……」


 さっさと助け出さねぇと危険には違いねぇ。あのクモ野郎が少女を連れ去ったのは明白だが、十中八九食うのが目的だよな。次あいつが起きたらどうなることやら、想像したくねぇよ。


「……くっ、"ジョーイ"が犯人とは。盲点だった」


「『じょーい』って? そりゃ、あのデカブツのことかい? 女騎士さんよぉ」


「ああ。奴の存在自体は知っていた。巨大蜘蛛型魔物:通称"ジョーイ"、命名したのはジャイロだ」


 魔物に付けるには妙に可愛らしいニックネームを呼ぶウェンディと、彼女に質問するブラッド。

 おいおい知ってたなら疑えよ、と内心で訝しんだ俺だが、直後のウェンディの説明ですぐに納得することになる。


「奴は滅多に巣から出ない。さすがに少女もわざわざ自分から巣に入るなんてしないだろう。だから最初から候補に無かったのだが、あの道に糸を見つけてしまったのでな……」


 『巣』ってのはこの張り巡らされた糸のことだろう。だとするとさっきの道にゴロゴロ落ちてた糸の塊は、本来あってはならないワケだな。

 それにしても――


「"ジョーイ"についてやけに詳しいな、ウェンディ」


「当然だ、騎士団と奴には因縁がある。簡単な話だ。最近になって奴はここに巣を張り……危険だからと四十人の討伐隊が巣に踏み込んだところ、ほぼ全滅したのだ。生き残った数人の者によると、『あの蜘蛛はまるで()()()()()()のように次々と仲間を殺していった』そうだ。それを聞いたジャイロが楽しげな子供らしく名付けた、"ジョーイ"と」


「……嘘だろオイ」


 可愛い名前の裏に、とんでもなくエグい理由が隠れてた。

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