#36 ブラッド、再び
恐らくこっちだろう……それくらいの予測で木々に挟まれた道を進む、おっさんと少女。もとい俺とプラム。
墓地からただ一直線に続くこの道の先に、俺の目的であるブラッドはいるんだろうかな。すると、
「広場?」
「ああ、開けた場所だな」
急に広まった場所に出た。呟いたプラムの言う通りに広場だ。
――なにか、異様な感じがする。そう思い辺りを見回していると、
「おいお〜い……ダハハ、運が良かったなぁマコト」
「言ったろ。死なねぇって」
茂みをかきわけて、ブラッドが現れる。運が良かった……ね。こいつも察することはできねぇようだ。意地悪く教えといてやろう。
「ちなみにスケルトンとゼインは全滅だから、そこんとこよろしく」
「なっ……あぁ、ガキもいるし嘘じゃなさそうだ。おもしれぇ」
本人は隠したつもりか知らねぇけど、一瞬めちゃくちゃ驚いたな。ぐへへ、爽快だぜ。
さてこいつ、ついに俺の前に堂々と出やがったが、今度こそ俺とタイマン張る気か。あれ、今気づいたがあの野郎なんか背中にドでけぇの背負ってるような……?
「いいだろうマコト。物足りねぇようだから俺が直々に手を下してやらぁ。今、ここでな!」
「そう来なくっちゃな」
内心ちょっと緊張してる俺だが、やっぱりこいつへの返り討ちタイムがやって来たことの高揚感が若干勝ってる。
ブラッドの挑発に導かれるまま、その正面に立つ。さぁ、さっさと倒して迷子の少女捜索に戻り――
「マコト! なんか変な魔力が」
「ダハハ、もう遅いね!」
「あ?」
プラムが警告するように叫び、ブラッドが笑い、その二人が示す物が何なのか分かった俺は驚愕。
ブラッドと俺の足元には事前に描かれてたのか大きな丸い魔法陣的なのがあり、そいつの線が紫色に光り始めやがった。
「血を捧げる……いでよ、キングスケルトン!」
ドレッドヘアの大男がその姿に似つかわしくないセリフを吐き、掌にベッタリついた自らの血を魔法陣へ押し付けると――そこに黒いオーラが集中しだす。
次第にオーラは奇妙な形を作り出して、
「何だこいつは!? スケルトンかよ、デカすぎんだろ!」
魔法陣が描かれた地面から、骨の化け物――超巨大なスケルトンが這い出てくる。出てきたのは上半身だけみたいだが、魔法陣の中に立っていた俺とブラッドはそのスケルトンの両肩にそれぞれ乗っている状態になっちまった。
「オオオオオオ」
肩の上だからスケルトンの顔はすぐ横。至近距離で咆哮を上げられて、俺は必死で耳を押さえた。
反対側の肩にいるブラッドも笑いながら同じ動作をし、咆哮が終わると、
「へへ、こいつはキングスケルトン。スケルトンどもの大親分さ」
「知らねぇよ。てかまたお前、俺とまともに戦わねぇのか」
「復讐に礼儀が必要か? それにそんなこと言ってる場合か? 見ろよあれ」
ブラッドはもはやかなり下にある大地を指差す。見てみると、なるほど確かにマズい状況だ。
先程のキングスケルトンの咆哮により、地面から多数の普通サイズスケルトンが這い出てきてる。もちろん地面には他にも――
「プラム……!」
「うう、マコト……」
あいつが一人でいる。クソ、降りるか? いやブラッドを取り逃がしたらもっと面倒だ。
だったら……
「速攻でこのクソ野郎倒して、助けに行くから待ってろ!」
「夢見てんじゃねぇぞ」
ニヤつきながらブラッドは背負ってる何かを手に持ち、その布を取る。包まれていたのはデカくて、刀身がものすごく太い、いわゆる大ナタだ。
さらに、
「血を捧げる……闇を纏え、我が武器よ」
と呟くと、まだ掌に血が付いていたからか件の武器が紫色のオーラに包まれた。
このオーラ、墓地の門にくっついてたのと似てる……というか同じ『闇の魔法』なんだろう。
「地上にはスケルトン軍団、ここにはキングスケルトンと強化された俺の鉈。観念して、くたばれクソジジイ!」
「ああ、くたばってやるとも――お前の後にな!」
俺は、生み出した青龍刀を握り締めて叫ぶ。この状況、打破してやる。




